【ライブレポート】Waive、20周年記念公演に決意と感謝「こんな誇らしいことはない」

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Waiveが2月23日、LINE CUBE SHIBUYAにて<20th Anniversary Special GIG「ライブハウス渋谷公会堂へようこそ。」>を開催した。その名の通りWaiveの結成20周年記念公演であり、施設名は変われど記念すべき初の“渋公ワンマン”である。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。

◆Waive 画像

2005年の解散以降、2010年、2016年、2018~2019年と断続的に再演し、近年では新曲すら生まれているが、あくまでも“解散中”というスタンスを貫いているのがWaiveだ。本公演の開催は約1年前の2020年元日に発表されていたが、その後、世界は新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われることとなる。コロナを巡る状況は刻一刻と変化。現在では、ルールさえ遵守すれば開催が禁じられているわけではないものの、中止や延期の判断をするアーティストも多いのが実情だ。彼らの沈黙の陰には熟慮の時間があり、悩ましい決断も多かったろうと察せられる。有観客での決行、ならびに高画質高音質なliveheavenをプラットフォームとした生配信(※2/28までアーカイヴ有り)とのハイブリッドで開催、との公式見解が発表されたのは、公演11日前のことだった。

新型コロナウイルス感染予防対策のガイドラインに則り、収容人数の制限を守った上での券売、間隔を空けた座席配置、マスク着用、受付時の検温・消毒、声援の自粛といったルールをバンド側と来場者共に徹底。観客はルールに従い、静かに開演の時を待っていた。



定刻を15分ほど過ぎてオープニングSEが流れると、手拍子が起きる。ステージ中央奥からメンバーが一人ずつ登場し、最後に姿を現した田澤孝介(Vo)が両手を広げると拍手が一際大きくなり、スタートしたのは「春色」だ。包み込む日差しのような柔らかいピンクと黄色のライトのもと、一音一音を噛み締めるようにゆっくりと歌い、鳴らすメンバーたち。間髪入れず「FAKE」に突入すると、「渋公! Waive20周年記念公演にようこそ!」と田澤が叫び、杉本善徳(G)、貮方孝司(G)、高井淳(B)が前へ出て一列に。サポートを務める山内康雄(Dr)はパワフルなドラミングでボトムを支える。ヘッドバンギングしたり手を頭上でワイプしたりと、メンバーも観客も全身を動かして音に没入した。

田澤が改めて「<ライブハウス渋谷公会堂へようこそ。>へ、ようこそ!」と挨拶し、「本物ですよ~?」と語り掛けると、鳴り止まない拍手で応じるオーディエンス。「あかん……泣ける(笑)」と早くも感極まった様子だ。様々なプロジェクトでボーカリストとして活躍する田澤にとっても有観客ワンマンは1年ぶりだそうで、「いたく感動しております」と語った。「ずっと当たり前だったことが当たり前じゃなくなってしまった」「葛藤もあったでしょう。今日ここに来ることを選んでくれてありがとうございます。来られなかった人も……配信で観ていてくれたらいいな、という気もしつつ……それぞれの場所、含めて渋谷公会堂20周年記念」と続け、様々な事情で来場を断念した人々にも心を寄り添わせていく。



明滅するライトの中「TRUEXXX」を放ち、「わがままロミオ」「PEACE?」と畳み掛け、Waiveワールドへと一気に深く引き込んでいった。力のこもった歌声、キレの良い動き、呼吸の合った演奏、音に合わせて繰り返されるジャンプ、こぼれる笑み。コーラスパート以外でもメンバーは口を動かし、田澤と共に歌っていたのが印象的で、バンドの良好なモードが感じ取れた。観客は曲ごとに馴染みのフリで手を動かしたり飛び跳ねたりと、大きな声援こそ送れないものの身体で想いを表し、ステージ上とのコミュニケーションを絶やさなかった。

「君と微笑おう」では、“確かに僕はココに居る 確かに君はココに居る”というフレーズが胸に響く。バンドのリズムがピッタリと合い、ライティングもそれに連動して切り替わるのが痛快だった「ピチカート」は、ドラマティックな音程の変化が田澤の声の魅力を際立たせていることを改めて実感。真っ赤な光の世界で始まった「spanner」は、切々と歌われるボーカルラインに杉本のギターが絡みつくように咽び泣く。観客はじっと立ち尽くし、聴き入っていた。曲調のバリエーションは幅広く、メロディーラインはドラマティック。Waiveの楽曲の魅力は20年の時を経ても全く失われていない。



「20年なんですって、Waiveができてから」と田澤はライブの趣旨に言及すると、これまでの再演と今回には違いを感じているそうで、「今までは“再演だ!”みたいな、特別な感じだったんですよ。(でも今回は)なんか、現役続行中な感じ」と明かした。杉本から「なに言い訳してんの(笑)?」とのチャチャが入って以降、話が大幅に脱線しつつも、「より“自分のもの感”がある。“あのまま歌ってたら、こう歌ってたかな?”みたいな感覚があるんですよ」と田澤は結ぶのだった。続く「そっと…」ではその言葉通り、丁寧に一言一言を慈しむような歌声を聴かせ、声を長く伸ばす部分でも、声量の凄みよりも表情の繊細さで魅了し、歌い手としての深化を感じさせる。杉本のギターは最後の一音まで情感豊かで美しく、直前のMCのトーンとは別人の表情。気付けば背後には星空のようなライトが瞬いていた。

集中して聴き入っていた会場が静寂に包まれたまま「C.」が始まると、杉本と田澤が交互に歌い、時にハーモニーを響かせて、しっとりとした空気を醸し出す。終盤を迎えると強い光がステージを照らし、銀河に輝く天の川のような星々が背景に出現。ロマンティックなムードが最高潮を迎えたところで、「BRiNG ME TO LiFE」のピアノイントロが鳴り響く。2019年の再演時にツアーで披露された新曲である。悲喜こもごもを映し込んだように、表情が移り変わっていくメロディー。田澤の熱唱に、杉本、貮方、高井が“♪ラララ”とコーラスを重ねるのもエモーショナル。逆光の中シルエットとなって曲を終えると、熱い拍手がいつまでも鳴り響いていた。



「BRiNG ME TO LIFE」を振り返り、「再演後に書かれた曲。杉本くんの歌詞は予言者っぽいというか、当たっとるね!」と感心した様子の田澤。杉本は「“20周年公演”って言ってるけど、あと2ヵ月で21年を迎えるバンドで」と笑い、コロナ禍に見舞われて変更を余儀なくされたものの、本来ならば2020年の10月頃から20周年ツアーを開催、本公演をそのファイナルに位置付ける予定だったと明かしつつ、「……大変やったな、正直、今回は」と溜息交じりでしみじみ。会場に実際に足を運んだ人たち、様々な事情で断念した人たち、生配信で観ている人たち、後日アーカイヴで観る人たち。様々な立場があり、想いがあり、参加の形がある。杉本は言葉を慎重に選びながらも、「解散しているバンドに対して(観てくれる人たちがいて)、こんな誇らしいことはないよね」「できない可能性もあったから……泣きそうだね! 解散したバンドが再演して、最初にそれでも観に来てくれた時ぐらいの喜び、この感謝は二度と味わえないかもね。ありがたいことだね」と感無量な様子。「どうすればこの気持ちを返せるんだろう? 茶化しきれんぐらいグッと来るね、今回は」と語る杉本に、貮方も高井も同意するように頷き、観客と共に拍手を送っていた。田澤も「全部の人のことを考えると何も言えなかったり、できなかったりしがちなんだけど……」と配慮しつつ、「止まってるわけにはいかへんから、少しずつでも模索しながらでも前に進んでいかないと、無くなっちゃう。“皆さんにとっての音楽って何ですか?”みたいなことが、もしかしたら変わり始めていたり……。僕らは僕らで何かやっていかないと」と苦悩を滲ませ、前向きに行動していく姿勢を示した。



「引き続き、心と身体、目いっぱい動かしていこうやないか!」との田澤の呼び掛けから、後半へ。「Lost in MUSIC.」では、メンバーコールに続いてソロプレイを披露する各メンバーの見せ場の後、本来はコール&レスポンスで盛り上がるところで、Q&Aコーナーがスタートした。“Twitterで4日前に、用途不明のまま急遽募集し始めた質問”に答えるという。田澤が「ポン酢のポンってなんですか?」と貮方に届いた質問を読み上げると、「皆、ホンマに知らんの?」(貮方)との質問返しを皮切りに「ポン酢って何?」とボケてオチ。高井には「今ハマッている美容グッズは何ですか?」(『筋肉をリリースするヤツ』と回答)、杉本には「一日休みがあったら何がしたいですか?」(田澤との小競り合い夫婦漫才の後、最終回答は『仕事!』)、そして田澤は「筋肉ムキムキは、今後どこまで成長させる気ですか?」という質問に、「鍛えてるのは身体じゃない、心だ!」と回答。ここまでで既に8分以上経過していたのだが、信じがたいことに、さらにもう1問、全員宛の質問を読み上げる田澤。

「来世ではどんな人生を歩みたいですか?」の問いに、高井が「猫。誰かに拾ってもらおうかな?」と答えると、杉本が「どんな人に飼われたい?」と追加質問。「綺麗なお姉さんです」(高井)、「何歳ぐらいの?」(杉本)と炎上ギリギリのリスキーなやり取りを展開。貮方は「セミ」、杉本は「石」、山内は「人間になりたい」などと答えつつスタッフから巻きの指令が入ったとメンバーに伝達した。田澤が「人間になります! もう一回ミュージシャンになります! 生まれ変わっても俺になりたい」と締め括ってスモークが噴出。ようやく曲に戻ったのだが、新しい形のコール&レスポンスはトータルでまさかの25分間。いびつで異例なパフォーマンスに驚かされ笑ったが、あの常軌を逸した脱線こそWaiveらしいひと時だったのかもしれない。


「ヘイ渋谷、踊ろうぜ!」と田澤が叫んで「ペーパードレスレディ」「バニラ」とアップテンポな楽曲を連打する。テンションが高まった田澤は、この後のさらなる盛り上がりゾーンを前に予め「俺、“声出せ!”って言うよ。あ、“心の中でな”みたいな(意味だと捉えてほしい)」と断ってからグルグルと腕を回し、「Sad.」へ突入。ヘヴィなイントロから早くも髪を振り乱し、身体を折り畳むようにして田澤も観客もボルテージ最高潮。スモークと火花が噴出し、焦げるような匂いが漂ってくる臨場感はライブならでは。全員が一心不乱に16分のビートを細かく鋭く刻んで昂っていった。

「ネガポジ(Negative&Positive)」に雪崩れ込み、そのサビを迎えるといろとりどりのライトが点滅し、田澤、杉本、貮方が呼吸を揃えてジャンプをみせた。さらに燃料を投じるように「ガーリッシュマインド」を放つと、エフェクトで声を歪ませ咆哮するように杉本が歌う。田澤も歌いながら、右、左、右と交互に腕を挙げて全身で表現。メンバーは立ち位置を離れ入れ替わり、ステージをダイナミックに動き回る。コール&レスポンスが繰り広げられるパートでは、ファンは突き上げる拳に心の声を込めているようだった。メンバーはそれぞれに会場を見渡し、観客とコミュニケーションを図っていた様子だ。貮方はステージ脇の花道に歩み出て、ファンとの距離を縮める。「みんなの声が聞こえる気がする」と呟いた田澤は「Say,oi oi oi!」と繰り返し、声を次第に荒げていき最後は絶叫へ。「ラスト行くぞ! 悔いの残らないように!」と何度目かも分からなくなるほど繰り返したサビに突入する。高井は後方で台に乗り、髪を振り乱して荒々しくプレイしていた。火花が勢いよく噴出するステージで最後の音を全員が鳴らすと、拍手喝采が割れんばかり。間髪入れず、ドラムカウントから「いつか」へ。客席が明るく照らされた視界良好な会場。大きく脚を開き、真っ直ぐな歌声を全身から轟かせる田澤の“いつか、死ぬ僕たちは。”という歌詞が、歌も演奏も、一音一音に思いきりアクセントを付けたような力強さで、胸に楔を打ち込んでくる。浮き彫りになったのは、“生きている”実感だ。渾身の歌、コーラス、演奏、そのすべてに射抜かれる本編ラストの1曲だった。


すぐにアンコールを求める拍手が起きて、約5分後ステージにメンバーが再登場した。「自分たちがみんなの何かになれたらいいなと思いながら、結局助けられました。決意できる時間になりまして。ありがとうございました」と田澤。杉本が「話すことないな……悪い意味じゃなくて」とここでも言葉を選びながら、「もう1本やろう、ライブを」と告げると、大きな拍手が。「チャレンジし続けようかな?という気がするので、“またWaive、どんどん訳分からんようになっていく”と思うかもしらんけど、もう一度20周年(笑)、やりましょう。満員になってる渋谷公会堂、やろうぜ!」「2022年1月29日、ここLINE CUBE SHIBUYAでやりましょう。20周年を22年目にやろうぜ」と、自らに言い聞かせるかのように、表現を変えて繰り返し述べた杉本。先のことは誰にも分からないが、次なる約束は光となり、生きる糧となることだろう。

田澤の「希望を込めようじゃないか! もう1ページ、俺たちの思い出が増やせるように、この曲を贈ります」との言葉から、「Days.」へ。決然として力に満ち、曇りのない歌声が会場に響き渡った。メンバー全員が声を合わせて歌うように演奏もエモーショナル。ドリーミーなメロディとアンサンブルが優しく全てを包み込んでいき、白い光がやがてオレンジへと色を変えていく。長く伸ばす最後の声は澄み渡り、演奏は名残を惜しむようにテンポダウンしてラストに向かっていく。「ありがとうございました、Waiveでした!」と田澤が叫び終えたのを合図に、遂に最後の一音が打ち鳴らされた。メンバーは一列に並んで会場の隅々まで手を振り、深々とお辞儀をして一人ずつステージから去った。最後まで残った田澤は、両手を口元に当てマイク無しで「ありがとうございました!」と叫びステージを後にした。約2時間50分、ライブは幕を閉じた。

程度の差やスタンスの違いこそあれ、どのアーティストもコロナ禍に打撃を受け、思う通りには活動しづらい状況が続いている。「抜け出せない20周年」と杉本がMCで表現していたのだが、2020年以降の時計は従来とは異なる速度で針を進め、多くの人々の人生の時空を歪ませていることだろう。そんな中、完全に止まっていても何らおかしくないはずの“解散中”のバンドが意欲的に活動し、音楽を止めてしまわないように、前へ進もうと懸命にもがいている。それはどこか不思議な、しかし心を温め鼓舞してくれもする姿だった。BARKSにて2018年の再々々演以降インタビューやライブ取材を通じて動きを追っている者として、思い出されたのは、2019年7月に公開された田澤&杉本のインタビューである。将来の展望を問うと、結成20周年に再演する可能性に触れた杉本が、「この半年ぐらいで世界が滅びたりしない限りは(笑)」と答えていたのだが、まさに、それに近い状況に我々は今襲われているわけである。“いつか、死ぬ僕たちは。”という“いつか”のフレーズがより一層、切実に響く幕開けとなった混迷の2020年代。今回のライブ開催にあたっては様々な声があっただろうし、正解など見つけようが無いが、Waiveとしての誠心誠意、彼らの物語の次なるページを見せてもらったのはたしかなこと。生命力と強い意志を感じるライブであり、配信映像をアーカイヴで観返すと、メンバーの表情には笑顔が多かったことにも勇気付けられた。2022年1月29日の次なる再会が、より心軽やかなものとなることを願うばかりだ。

取材・文◎大前多恵
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle)


■<Waive 20th Anniversary Special GIG 「ライブハウス渋谷公会堂へようこそ。」>2021年2月23日(火・祝)@LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) セットリスト

01. 春色
02. FAKE
03. TRUE×××
04. わがままロミオ
05. PEACE?
06. 君と微笑おう
07. ピチカート
08. spanner
09. そっと…
10. C.
11. BRiNG ME TO LiFE
12. Lost in MUSIC.
13. ペーパードレスレディ
14. バニラ
15. Sad.
16. ネガポジ(Negative&Positive)
17. ガーリッシュマインド
18. いつか
encore
en1. Days.

■アーカイブ配信<Waive 20th Anniversary Special GIG 「ライブハウス渋谷公会堂へようこそ。」>

公演:2021年2月23日(火・祝) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
アーカイブ配信期間:〜2月28日(日)23:59
▼配信チケット
¥5,500 (税込)
※別途配信システム手数料がかかります。
販売期間:2月12日(金)18:00〜2月28日(日)21:00
https://web.liveheaven.net/rd/waive20210223/
※チケットの購入・動画の視聴には『LiveHeaven!』への会員登録が必要となります。
※配信チケットは『LiveHeaven!』にてチケットを購入した『LiveHeaven!』会員アカウントのみで閲覧可能です。
※必ず推奨環境・注意事項をご確認の上チケットをご購入・ご視聴ください。



■<Waive 2Øth Anniversary Again GIG「2Ø22 -俺たちの戦い(20周年)はこれからだ-」>

2022年1月29日(土) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
詳細は近日オフィシャルサイトにて

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