【インタビュー】FINLANDSを照らした、閃きと繰り返しの日々

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ライブができず、もどかしい想いをした2020年を経てFINLANDSが3月24日に3rdフルアルバム『FLASH』をリリースする。憧れの地だったライブハウスに立ち、音楽活動を続けていく内に塩入冬湖(Vo&G)の中にフツフツと湧き上がってきたのは“もっと知らない世界を見てみたい。多くの人に曲を聴いてほしい”という想いだった。

新たなスタート地点から制作がスタートしたアルバムは新型コロナウイルス感染症による想定外の状況の中、塩入の人生観を見つめなおすキッカケになり、タイトルにもなっている“FLASH=閃き”がFINLANDSの楽曲に新しい光を当てることになった。その心境の変化、楽曲に込めたメッセージについてたっぷり話を聞いた。

  ◆  ◆  ◆

■いい転換期だったなって

──3rdフルアルバム『FLASH』は揺れる想いをひっくるめてエナジーが溢れ出す作品だと感じました。ライブが思うようにできない状況の中、どんな心境のもと生まれた曲たちですか?

塩入冬湖(以下塩入):これまでのFINLANDSはパーソナルな部分を多く含んだ作品が主だったと思いますし、自分たちの音楽を愛していたり、探し当てて聴いてくれる人たちが多いだろうと感じていたんです。今回は自分から扉を少し開いていくことによって生活の中に音楽が密接に根ざしていない人たちにも聴いてもらえたらいいなという想いが制作当初からありました。

──今まではライブに足を運んでくれたり、曲を聴いてくれる人たちに焦点を当てて作っていたけれど、もっと幅広くFINLANDSの音楽を聴いてほしくなったというニュアンス?

塩入:そうですね。たまたまコンビニで流れているのを聴いて「いい曲だな」と思ってくれたり、仕事帰りのタクシーの中のラジオで耳に止まったり、生活の中心に音楽があるわけではない人たちにも聴いてほしいなと思いました。

──その心境の変化はコロナ禍でライフスタイルが変化したことと関係しているんでしょうか?

塩入:そういうふうに考えていたのは2019年で、アルバム制作が始まる前だったのでコロナ前ですね。私はバンドを始めてからずっとライブハウスに憧れを持っていて、そういう音楽シーンに居られること自体が楽しかったし、幸せだなと思い続けてきたんです。もちろん今もそうなんですけど、その一方でこのまま今の環境や状況が楽しいだけでやり続けていくのはちょっと違うんじゃないかって。

──もっと広い世界で刺激を得たい、もっと多くの人に届けたいという想いが音楽をやっている内に芽生えたんですね。

塩入:違う場所にも行ってみないと作品やライブで還元することができないし、とどまっているだけでは面白さを逃してしまっているんじゃないかと考えるようになったんです。新しいところに足を踏み入れるからこそ納得できないことも出てくるんでしょうけど、知らないままで終わってしまうのはすごくもったいないんじゃないかと思ったんですよね。

──『FLASH』はそういう心境が反映されたアルバムでもあるんですね。コシミズさんが脱退してFINLANDSが塩入さんひとりになったことはどんな影響を及ぼしましたか?

塩入:ひとり体制になってもう2年ぐらい経つので、当初は辛いとか、しんどいという気持ちになりましたけど、前に進むしかないってがむしゃらに駆け抜けてきた感覚です。今回、ありがたいことに新しいサポートメンバーも参加してアルバムを作り上げることができたので、完成してそう思えたのはいい転換期だったなって。「ひとりになったけど、大丈夫だな」っていう印を与えられたような気持ちになりました。

──ということは、すごく大きな意味を持つアルバムですね。

塩入:そうですね。制作期間が長かったこともあるんですが、大きなアルバムだと思います。

──“閃光”、“閃き”という意味を持つタイトル『FLASH』は最後につけたんですか?

塩入:いつもアルバムのタイトルは最後のほうにつけることが多いんですが、今回はレコーディングの途中でふと“FLASH”という言葉を思いついたんです。というのも、アルバムの制作中に“閃きと繰り返し”というワードが自分の中にいつも存在していたので、一言で表現するなら“FLASH”だなって。

──“閃きと繰り返し”について、もう少し教えてください。

塩入:人って繰り返しの毎日の中、小さな閃きによって救われて生きていると思うんですね。「こんなところに近道があったんだ」とか「気づかなかったけど、私、この匂い好きなんだな」とか。そういう小さな発見が自分にとって光を与えていると感じていたので『FLASH』にしたんです。

▲FINLANDS/『FLASH』

──なるほど。収録曲についてお聞きしたいのですが、“私は何時でも新しく成れるから”と歌う「HOW」には不自由な生活の中、自分を解放する鮮やかさを感じました。

塩入:「HOW」はアルバムの中でいちばん最後に作った曲なんですよ。2020年は人と接する時間も新しく出会う人も少なかったので、その分、自分の内側、本質に焦点を当てて考えることが増えたんですね。毎日、辛いと思っていたわけじゃないけど、「ちょっと生きにくいな」って思ったりするのは何が原因なんだろうなって。そしたら私自身、当たり前になっていて気がつかなかったんですけど、自分で自分にルールを課していたことがけっこうあったんです。例えば「辛い」とか「疲れた」っていうのはあまり良くないと思っていたりとか、人に優しくするのって100%の優しさじゃなく、優しくしないとあとで後悔しちゃうからじゃないかという気持ちがあったり。人に怒らないのも怒ってしまったら、翌朝の目覚めが悪くなるからなんじゃないかとか。後々に起こることを想定して怯えて過ごしているから、生きにくいし、不愉快なんだなって気がついたんです。そのときに後悔すればいいし、いつか悲しいことが必ず訪れてしまうなら、そのときに存分に悲しめばいい。今は自分を大切にして、自分とうまく付き合っていけるように生きようって。「HOW」は自分を許可するような曲ですね。

──だから“未来の夜で悲しもうぜ”って歌っているんですね。

塩入:ええ。最後の“わたしはわたしと居ようと思う”は自分に宛てて書いているんです。1曲目ではありますが、自分にとっては内側を見つめて出た答えの曲ですね。

──ひとりを受け入れて生きるしなやかな強さがあります。

塩入:他人のために生きているつもりは一切ないんですが、誰かとか何かのためという大義名分がある行動は気が楽な面があると思うんですよね。それに対して100%自分のためだけに動くことはすごく怖い。ずるくこなして生きていた自分がすごくイヤだったし、それって優しいんじゃなく軟弱なだけなんだなって自分を律する気持ちもありましたね。

──「HOW」は歌とギターのバランスが絶妙ですが、サウンドでこだわったところはありましたか?

塩入:レコーディングのギリギリでデモを送って「こういう感じにしたい」って伝えた曲なんですけど、FINLANDSのサポートギタリストが弾いてくれたド頭のギターがめちゃくちゃ良かったんですよ。それを採用してリードギターをメインにしたアレンジになったんです。曲調に似合わずギターのフレーズや音が骨太というか、すごく強いんですよね。そこがすごく好きだったので活かしたサウンドになりました。

──サポートメンバーとのやりとりも楽曲たちに反映されているんですね。

塩入:かなり反映されています。楽曲の作り方とかアルバム全体の在り方はバンドですね。ドラムとギターはもう何年も一緒にやっているのでお互いの癖もわかっているし、新たに加入したサポートのベーシストも含めて、全員、音楽のバックボーンが違うので、「この曲はこうだから」って一辺倒な考え方をしがちな私に「こういう方法もあるけど、どう?」って楽曲をより良くするための選択肢を増やしてくれるんです。

──FINLANDSの引き出しの多さを感じさせてくれるアルバムでもありますものね。先行配信された「ラヴソング」はビートの刻みが小気味いいポップなナンバーであり、“さよならさ つまらない人”という出だしから振り切っているなと思いました。

塩入:(笑)。

──自己愛が強い恋人との恋愛をイメージしてしまいましたが。

塩入:これも「HOW」でお話したように自分を解放するというか、私は人見知りではないんですが、内弁慶なところがあるんです。恋人に嫌われたらイヤだなとか期待外れなことを言ってしまったら申し訳ないという気持ちがあるので「その話、興味ないんだよね」とか「もう眠いから寝たい」とか」年々、言えなくなってきていて。

──ははは。もっと若い頃には言えたのに?

塩入:そうなんですよ。20代前半と後半は違うなと思っていて、それなりに人間関係をちゃんと築こうという気概が出てきたんです(笑)。そしたら、人とうまく付き合えなくなってきて、本音を言えないために猛スピードで逃げるみたいな。そういうことが何度もあって、私は私をかわいがりすぎていたんですよね。自分が傷つかないように。

──「HOW」で話してもらったことと繋がりますね。

塩入:はい。嫌われないように自分を守って、相手は相手で自分の話ばかりして自己愛が強すぎるっていう。お互いに自己愛が強すぎた顛末がこの「ラヴソング」なんだろうなっていう想いで作った曲です。

──結果、すれ違った恋愛ですが、なぜ「ラヴソング」というタイトルにしたんでしょうか?

塩入:私は私にラヴソングを歌うし、あなたはあなたにラヴソングを歌っているという意味あいですね。

──ミュージックビデオはアーティスト写真と同じく“赤”で統一されていますが、塩入さん自身が変わりたいという気持ちの現れでもあるんですか?



塩入:アートワークはいつも大川(直也)さんにお願いしていて話し合いながら作っていくんですけど、私がふざけて金髪から赤い髪に変えたときに大川さんに会ったら、「赤で行こう」って。その提案に乗っかった形ですね。ミュージックビデオは根底は一緒だと思うんですが、進化の仕方が面白いと思うので、ぜひ見ていただきたいです。

──さっき「ラヴソング」の意味の話をしてくれましたが、ミディアムナンバー「ナイトハイ」は塩入さんの艶っぽいヴォーカルも含めて引き込まれた曲でした。本当に愛しているからこそ見える景色を歌った曲だと感じたんですが、どうでしょう?

塩入:「ナイトハイ」は祖母のことを歌った曲なんです。数年前に認知症で施設に入ったので、今はコロナで面会できないんですが、その前までちょくちょく会いに行っていて、そのとき感じたことをそのまま歌詞にしました。「もうちょっと優しくしてあげたかったな」とか後悔していることもたくさんあるんですが、一緒に暮らしていた10数年前に戻ったとしても私は同じように祖母を苦しませたり、反抗的な態度をとってしまう気がするんですよね。だったら、悔やむよりも願えたらいいなって。祖母はこれからいろんなことを忘れてしまうだろうけれど、辛かったことは全部忘れて「今日のお昼ゴハンは美味しかったな」「レクリエーションの折り紙、楽しかったな」っていうことを短時間でもいいから覚えていてくれたら嬉しいなって。

──最後に“どんな夜も あなたが いたから ひとりきりだって 迷わないわ”と歌っていて、そばにいなくても支えになる存在を思わせる。これは恋ではなく愛の歌だなと思ったんですよね。

塩入:そうですね。今まで“ごめんね”とか“好きだよ”とかストレートな言葉を使って歌詞を書くことってなかったんですが、本当に思っていることなので、真っ直ぐな言葉で伝えたいなって。最後の2行もそうですし、いちばんストレートに言葉を繋げた曲なんじゃないかと思います。

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