【インタビュー】上杉昇「10代のロックキッズだった頃の自分に聴かせたい」

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歯に衣着せぬストレートな表現でシーンを騒がせた前作『The Mortal』から2年半、上杉昇がアルバム『Dignity』を完成させた。

『The Mortal』では、大東亜戦争の時代を生きた先人や、孤独感に苛まれる現代人を歌った楽曲など内省的な作品が目立っていたが、今作は内省的でこそないものの、世界観はさらに深みを増している。タイトルの『Dignity』とは、尊厳/品格といった意味。誇りや愛国心を忘れかけている日本人を叱咤するようなメッセージが込められた楽曲に、ハッとさせられるリスナーも多いだろう。プロデュースは、ここ数枚のシングルでも組んでいる岡野ハジメ。華やかなロック・サウンドを得意とする岡野との作品らしいヘヴィかつインダストリアルなサウンドメイクと、それに拮抗するエネルギッシュなボーカルとの競演が実にパワフルだ。もともとハイトーンには定評のある上杉昇だが、今作では以前にはなかった力強いファルセットボイスなど、キレッキレの高音域に驚かされる曲も。年齢を重ねてなお進化を続けるボーカルも必聴だ。


──先行シングル取材時に、「前アルバム『The Mortal』が目次だとしたら、今後の作品がその1ページ1ページになっていく」という話を伺いましたが、今作はその流れを汲むもの?

上杉昇:そのつもりでやっていたし、今でもその思いはあるんですけど、やっぱり今の自分が戦時中に生きてるわけじゃないので、テーマをその次元に一度持ち込んで、その視点から書くのがどうしても難しい曲もあって。そういう曲に関してはあまり意識しないでやってたかなという感じですね。普遍的な精神面とかって、時代背景は関係ないじゃないですか。

──数年前のインタビューでも、いろんな状況下に於ける人の幸福というものを考えたいと仰ってました。

上杉昇:そうですね。だから、時代背景的な上辺のところは、当時(戦時中)のシチュエーションを生かしながらも、結局言いたいことは、今現在起こっていることと対比させて。あくまでも今の自分はこう思うっていう、今の時代の中でどう考えてるかということを言っている曲が多いかなと思いますね。

──日本に対して警鐘を鳴らしたり、政治への疑問を書いてる曲もありますが、それは国を大事に思うからこその厳しさというか、「しっかりしろよ」みたいなニュアンスなんですか?以前の取材でも“愛国左派”という言葉が出ましたけど。

上杉昇:俺が言うのも何なんですけど、政治家も含め、あまりにも事なかれ主義の奴が多すぎると思うんですよね。棚上げしてるというか、とりあえずこうしとけ、みたいな風にしか思えないような政策が多いんじゃないかなって。今回曲にはしてないですけど、最近思うのは尖閣ですね。漁師さんが漁に出られなくなってますから。

──なるほど。アルバムのタイトル『Dignity』というテーマはどんな経緯で生まれたんですか?

上杉昇:“尊厳”っていうのもすごく大きいというか、簡単に一言で言い尽くせるようなものじゃないんですけど、でも何かわかりやすい形がないかなと思った時に、ある動画を見たんですね。YouTubeで、ホームレスの方たちにハンバーガーを数十個買ってばらまくっていう動画がけっこうバズっていて、1人バズったら猫も杓子もみんなやるようになって。

──それって、再生数を伸ばすためにホームレスを利用してるみたいですけど。

上杉昇:利用してるんですよ。それで一食分助かる人も確かにいるとは思うんですけど。コメント欄にも「やらない偽善より、やる偽善」みたいなことを書いている人もけっこういて。でも、動画を撮ってる時点で本末転倒なんじゃねぇの?と思って。わかるんですよ、言ってることは。だけど、何だろうこの違和感はっていうのがあって。それを曲にしたんですよね。

──タイトル曲「Dignity」の歌詞ですね。


上杉昇:最初にやった奴は、アメリカでホームレスにハンバーガーを撒いたんですけどね。俺は日本人の恥と思っちゃって。なんだかなぁと思ってたんですけど、その流行に便乗して日本国内でも真似してる奴がいて。でも、鯛焼きかなんかを配ったらホームレス側のひとりが「余ってるならもらうけど、配ってるならいらない」って言ってたんですよ。

──それはプライドを感じる言葉ですね。

上杉昇:俺は“そうだよなぁ”と思って見てたんですけど、そしたら「なにそんなこと言ってるの」とか「どういう意味?」みたいなコメントがたくさん付いてて。そんなことも分からないんだなと思って。それで、俺も「ホームレスだからって弱いとは限らないし、世捨て人とは限らないし、可哀想にしないでおくれって思いながらそこにいる人だっているんだよ」ってコメントしたんです。そういう倫理観というか、ちょっとおかしくなってるなって。

──ホームレスだから下に見ていいんだ、とか。

上杉昇:そうなんですよ。完全に下に見てるっていう。

──可哀想な存在、憐れみの対象にしないでくれってことですね。最近は愛国心という文脈でDignityという言葉が使われることは多いですけど、一人一人の尊厳も大事だと思います。

上杉昇:そこからですよね。それがないのに国としてどうこうって言っても、結局間違った方向に行っちゃいそうで。自分でも何故か分からないけど、日本のこれからの事だったり時事問題には自然と目が行くし興味がわくし、何かできないかなって考えちゃうんですよ。今の日本人に一番何が足りないかって言ったらそこ、Dignityだと思うので。それはずっと思ってたことなんですけど、テーマが大きすぎるので形にするのは難しかったですね。

──サウンド面では前ツアーのMCで、次のアルバムは今までで一番ハードなものになりそうだと言ってましたが、まさにそういう作品になりました。

上杉昇:岡野さんと数曲やってみて、非常に自分のバックグラウンドや嗜好に近いというか、ほぼ同じなんですよね。もちろんジェネレーションが違うので、そういった差はあるんですけど、好みが似てる。ロックというものに対する、見ている部分やカッコいいと思う部分の嗅覚というか、惹かれる部分、打ち出そうとする部分がすごく近いなと思って。この人とやったら、俺がこれまで目指してたロック調の曲をそのまま提示すれば、カッコよくしてくれるだろうし、そうなるっていうのを肌で感じていて。もう一回ロックを、唄えるうちにやっておこうかなっていう。

──唄えるうちにって?

上杉昇:俺が思うロックって、自分の持ってるものを削って出すというか。身を削る、くらいの。それってエネルギーが余ってる時期じゃないとできないし。エネルギーの放出がロックだと思うので、それができるうちにやっておきたいなと。年齢的に考えても、人生、もう半分以上来てるのでね。『The Mortal』まではずっと、自分も癒やされるような曲を好んでやってたんですけど、せっかく岡野さんみたいなロック的なアプローチの才能に出会ったんだったら、できるうちにもう一回原点回帰してみるのもいいのかなって思って。だから、10代のロックキッズだった頃の自分に一番聴かせたいアルバムになりましたね。

──ロックという言葉の解釈もいろいろありますが。

上杉昇::精神的なスタンスとしてのロックとかスタイルとしてのロックっていうのは、もちろん自分の中にそれは根付いてるので、何をやってもロックかなとは思ってるんですけど。単純にサウンドとしてのヘヴィネスみたいなことを構築していくって意味でのやり方は、今もう一回やるときが来たのかって感じはしてます。自分が培ってきたロックっていうもののカッコ良さをシンガーとして純粋にぶつけた感じですね。

──今作は5月26日に全国発売されますが、3月13日からスタートするツアー&イベント会場で先行発売されるんですね。バンド編成でのツアー<[ACT AGAINST COVID-19]SHOW WESGI HEAVY TOUR 2021 Dignity>は、どんな感じになりそうですか?

上杉昇:ライブの醍醐味って、やっぱりコール&レスポンスかなと思うんですよね。だから、マイク向けても歌ってもらえないと、最初はみんな曲を知らないから当然そうなると思うんですけど、そこはちょっとシビアというか大変かなと思います。どう盛り上げていいものかと悩みますね。でも今回は、盛り上げようとか、一体感とか、そういうことを考えるよりは、いかにこれを全部唄えるかっていうところですかね。今回のアルバムの曲は、レコーディングでも一曲一曲、自分の持てる力を全部出しちゃった感じなので。それを全部唄うとなると相当なものなんですよ。だからどれだけ歌をちゃんと唄えるか、それだけだと思います。

──ゲネの一週間くらい前に、急きょセットリストの変更があったそうですが。

上杉昇:モチベーションとして、自分に対するご褒美がないとイヤだなと思って。唄ってて楽しい、ただ楽しい、みたいな。そういう曲を追加しました。

──あと、今回のツアーではライブの開演前に必ず購入して欲しいグッズがあるとか?

上杉昇:ヒントを言うならば、青い色をしています。それもお楽しみに。

撮影◎加藤正憲
インタビュー・文◎舟見佳子



上杉昇 NEW ALBUM『Dignity』

初回限定盤 OPCD-9211 CD+DVD ¥4,000(+税)
通常盤 OPCD-2211 CD ¥3,000(+税)
1.斬れ
2.dioxin
3.カワラコジキ(Full Length Version)
4.Dignity
5.安息の希求
6.黒い雨
7.I Am A Pig -Cover Of Two-
8.防空壕
9.荒野の獣
10.濫觴
11.火山灰[Not Song of War]
12.消滅
DVD
1.カワラコジキ
4.防空壕
2.濫觴
3.斬れ
5.dioxin

<[ACT AGAINST COVID-19]SHOW WESUGI HEAVY TOUR 2021 Dignity & 上杉昇 2021 第1弾DISC爆音試聴トークライブ+先行販売+サイン会>

3月13日(土)静岡・浜松FORCE【LIVE】OPEN17:15 START18:00
3月14日(日)静岡・LIVEHOUSE UHU【Talk】OPEN16:00 START17:00
3月20日(土)長野:Rosebery cafe【Talk】OPEN17:00 START18:00
3月21日(日)新潟:GOLDEN PIGS RED STAGE【LIVE】OPEN16:15 START17:00
3月27日(土)群馬:高崎club FLEEZ【LIVE】OPEN16:15 START17:00
4月3日(土)福岡・博多Voodoo lounge【LIVE】OPEN16:15 START17:00
4月4日(土)佐賀・RAG.G【Talk】OPEN16:00 START17:00
4月10日(土)広島・BACK BEAT【LIVE】OPEN16:15 START17:00
4月11日(日)岡山・城下公会堂【Talk】OPEN16:00 START17:00
4月17日(土)京都・Second rooms【Talk】OPEN17:00 START18:00
4月18日(日)大阪・バナナホール【LIVE】OPEN16:00 START17:00
4月25日(日)東京・恵比寿リキッドルーム【LIVE】OPEN17:00 START18:00
5月2日(日)北海道・札幌SUSUKINO810【LIVE】OPEN17:15 START18:00
5月3日(月祝)北海道・函館あうん堂ホール【Talk】OPEN16:00 START17:00
5月7日(金)愛知・名古屋SPADE BOX【Talk】OPEN18:30 START19:30
5月9日(日)三重・松阪ROCKERS CLUB【Talk】OPEN17:30 START18:30
5月15日(土)群馬:高崎SLOW TIME cafe【Talk】OPEN17:00 START18:0
【LIVE】前売り¥5,000 当日¥5,500(要ドリンク代)
【Talk】前売り¥2,000 当日¥2,500(要CD代[アルバム『Dignity』通常盤または初回限定盤をお選びください]+ドリンク代。各会場限定ポストカード付)
[問]ネクストロード 03-5114-7444(平日14:00~18:00)

◆上杉昇オフィシャルサイト
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