【インタビュー】清春、新たな選択肢としての配信 “今こそ考えたい、選ばれる理由の大切さ”

ツイート

この5月より、清春が<ライヴ2021 残響>と銘打ちながら有観客ライヴ活動を再開することが発表された。東京ではホールでの着席形式、また、名古屋と大阪では有観客+配信によるハイブリッド公演という形がとられる今回のライヴは、従来のライヴへの単純な回帰を意味するものではないようだ。

◆清春 画像

そこで重要な意味を持ってくるのが<A NEW MY TERRITORY>というタイトルのもとで継続的に実施されてきた配信ライヴである。実際、彼はリアルライヴ再開後も、この配信の機会を定期的に設け続けていく方針を明らかにしている。かねてから配信ライヴというものについて「ライヴの代替手段ではない」と明言してきた清春自身、こうして実験的な配信活動を重ねながら、改めて自らの核にあるものを確認し、手段と目的の関係について再考のプロセスを経てきたようだ。

今回は、そうした一連の配信を通じての経験から彼が再確認するに至った真理とでもいうべきものについて語ってもらう。取材自体は、デビュー記念日にあたる去る2月9日の配信ライヴ(ZAIKO本社内の、半屋外的な環境でのパフォーマンスとなった)を終えた数日後に行なわれたものだ。話題は当日のライヴのことに始まり、コロナ禍で彼が感じたさまざまな疑問、さらには話題の映画『ロード・オブ・カオス』に関することにまで及んだ。じっくりと、お楽しみいただきたい。

   ◆   ◆   ◆

■極寒配信ライヴの舞台裏
■そして試行期間を経ながら見つけたもの

──先頃は28回目のデビュー記念日でしたね。おめでとうございます。とはいえ、まさかストーブが設置された環境からの配信になるとは思ってもみませんでしたが。

清春:いやー、ホントです(笑)。確かあの時点で、気温が4度くらいだったらしくて。事前に「結構寒いんですよ」とは言われてたんですけど、実際に行ってみたら想定してた以上の寒さで。映像監督でもあるYUTAROにも、うちのマネージャーにも、思わずちょっと嫌味を言いましたけど(笑)。「20何年もやってきて、こんなことはなかったよねー」って(笑)。

──まるで冬場にデパートの屋上でサイン即売会でもやるかのような。もしくは『ザ・ベストテン』とかでの現地からの中継とかならばありそうな話ではありますけど。

清春:いや、ホントに。でもテレビの中継だったら1曲とかでしょ? それだったらいいんですけど……。以前、クリスマスに横浜でやった時にベイホールの屋上で1曲だけ歌ったことがあったけど、それくらいならともかく、丸々2時間でしたからね。それこそ水風呂って、一瞬だけ入るからいいわけじゃないですか。だけどあの時は、いわば水風呂に浸かりながら、どうにか自分で運動しつつ温めながらやる、みたいな。全身が冷えることになると声も出なくなるし、僕自身にとっても大問題なんだけど、ギターが大変で。指板がアイスバーンみたいになっちゃうというか。

──中村佳嗣さん、K-A-Zさんのお2人も大変なことになっていたわけですね。

清春:急遽、それぞれが1人で弾く曲というのを2曲ずつ増やして、弾かないでいい間はストーブに手を当ててもらうようにして。とはいえ、2人ともかなり……無言でしたね(笑)。いつもは配信とはいえアイコンタクトをとりながらエンディングを決めたりとかしてるんですけど、もうホント、苦笑いするしかない感じでしたね。まあみんな、貴重な経験をさせてもらったということで(笑)。衣装も、あそこまでの寒さは想定してなかったわけですよ。もう時期的に春物を用意してたし、ライヴの場合は会場にいつも大量の服を持ち込んでそこから選ぶようにしてるんだけど、場所の都合も含めてそこまで多くは持って行けなかったんで。後半のほうなんかあまりに寒かったんで、その日着てきた服を重ねて。中にはわざわざリースしてきた服もあったんだけど、ブランドのデザイナーの人に「すみません。寒過ぎてお借りした服は着られませんでした」みたいな連絡を入れたりもして。

▲清春

──配信ではあれ、記念日にライヴを実施できたのは素晴らしかったと思うんですけど、いろいろと苦労もあったわけですね。加えて、記念日ライヴならではのオーディエンスからの反応を味わえない寂しさというのも少なからずあったんじゃないですか?

清春:そういう部分はありますよね。誕生日(昨年10月30日)のライヴは一応、ホテルでハイブリッド形式(制限を設けての有観客+配信)でやりましたけど、普段よりみんなに祝ってもらえるはずの場面で、本来そこに居るべきみんなが居ない、というのはね……。当然、無観客という前提でやってることではあるんだけど。ただ、僕らの場合、あれをライヴだとは思ってやってないんですよ。それも踏まえてのリズムレス方式、という部分もあるんです。

──どういうことでしょうか?

清春:実際、この1年、他の人たちの配信を資料として観ることがあったんですけど、やっぱりサウンド的に激しくあろうとすればするほど成立しにくい。だからとにかく削ぎ落としに削ぎ落として、なんとか限られた空間の中で歌唱を際立たせられるようなパフォーマンスをやろう、と。配信ライヴをやることの落とし穴みたいなものに、みんな嵌まっていきそうな傾向はあると思うんですよ。配信をライヴのようにやることにこだわり過ぎてしまう、というか。

──それに取り組むことに使命感を感じるようになってしまう、みたいなことでしょうか?

清春:そうです。ライヴの代わりに配信をするという考え方でやった場合、多分、観てるほうも最初の2~3回ぐらいでちょっと辛くなってくるんじゃないかな。最初はいいんだけど、観る機会を重ねていくほど、それが今までのようなライヴではないってことを実感させられる。僕の場合、これは初めから、ライヴの代わりではない。僕らにはライヴとかレコーディングの他にも、撮影とか、こういうインタビューとか、いろいろ仕事があるじゃないですか。そこに今は、配信でのパフォーマンスというのが新たにひとつ増えた、という感覚です。ライヴは状況的にお休みせざるを得ないところにこれが増えたんだけど、あくまでライヴの代わりではない。そこが僕はすごく大事だと思っていて。これまでやってきていちばん感じたのが、そこだったかな。

──最初のうちは清春さん自身の中でも半信半疑というか、不確かだったはずですよね、それをやることの意味みたいなところについても。

清春:うん。だから最初はタイトルも<THE TEST>にしてました。実験的にどんなことができるか、ということを何ヵ月かは試してました。最初のうちは、MVを撮ってるところを生中継でお伝えしながら歌唱するみたいなことだと捉えてたんですね。いまだにそういう意味合いで捉えてる部分もちょっとはあるんだけど、それがこの経過の中で徐々に変わってきていて。今は……感覚的なところで言うと、半年前よりも映像にこだわってないです。そこへのこだわりは最初の半年ぐらいでクリアしてしまったというか。もうちょっと画面に向かってアピールしたり、セットを過剰気味に組んでみたりとかしてた時期もあったんですけど、こうして慣れてくるにしたがって、僕の最新の音楽というか、今の僕の歌の表情とかを伝えることのほうに、より重きを置くようになってきて。そのためには映像的にはむしろシンプルなほうがいいのかな、というバランスの問題もある。コロナの影響でライヴ活動ができないからこういうやり方をしてますよとか、ライヴじゃなくて映像を重視してますよとか、電車やバスに乗って会場に行かなくても家で観られますよとか、そういうことじゃなくて、あくまで“今、こういう感じで歌ってますよ”ということを伝える手段というかね。

──ライヴ以上にそこに特化されたもの、ということでしょうか?

清春:そういうことになるのかも。僕の配信ライヴは音源がダウンロードできるようになってるんですけど、たとえばこれを始めた頃の音源と聴き比べたら、すでに結構変わってきてるのがわかるはずだと思う。CDの音源というのは録音の段階でダビングとか編集とかを経ているものだけど、この配信のいちばんのメリットは、今、自分がどういう感じで歌唱してるのかというのを、リアルタイムで、無編集で、ダイレクトに伝えられることだと思う。それを良い形でやるためには音の構成ができるだけシンプルなほうが都合いい。そういうことなのかもな、という感触が機会を重ねていくごとに強まってきてますね。それは、本来ライヴってものの軸であるはずのエンターテインメント性という部分、楽しませるっていう部分からは、かなり離れてるように思うんですよ。

──だからこそ配信はライヴの代替ではない、と?

清春:活動におけるカードがいくつかあるなか、この状況ゆえに出せないカードというのがいっぱいあるじゃないですか。そこで配信というカードをもらったんでライヴの代わりに使いますよ、というのは観る側からしたらちょっと違う気がするんです。結局、レコ―ディング以外で歌う機会って基本的にはライヴしかないわけですよね。そこでライヴってもの自体にも、ああしようこうしようという戦略的な部分というのが多少なりとも伴ってくると思うんでですけど、それに対して配信は“どういう歌を、どれぐらい歌えるんだろうか?”というよりシンプルなところが問われる。そこで本当に“ミュージシャンとしてどんなプレイをしているのか?”ってことが浮き彫りにされることになってくる。僕の場合、こうして定期的にたってきたことの結果として良かったなと思えたのは、そこでいちばん大きくてシンプルなものとして、今の僕の場合なら“歌唱”で勝負しなければいけないんだなってことを再確認できたことかな、と思っていて。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報