【ライブレポート】いきものがかり、リスナーの心を未来へとそっと誘ってくれた特別配信ライブ

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2021年3月15日にメジャーデビュー15周年を迎えたいきものがかり。彼らがその前日にあたる2021年3月14日に、自身初となる無観客配信ワンマンライブ<いきものがかり デビュー15周年だよ!!! ~会いにいくよ~特別配信ライブ>を、3人の地元・神奈川県にある横浜アリーナにて開催した。

結成20周年を迎えた2020年は、2本の全国ツアーを企画するも、新型コロナウイルス感染拡大の影響により全公演中止を決断。だが9月にはグループにとって初のデジタルフェス<いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! ~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~>を開催するなど、今すべきこと、今できることを慎重かつ真摯に見極めてきた。


いきものがかりの横浜アリーナでのワンマン公演は、2015年以来6年ぶりとなったこの日のオンラインライブ。節目のタイミングに相応しく、過去の始まりとこれからの始まり、それぞれを堂々と提示する約2時間の公演となった。


開演時間を迎えると、画面に映し出されたのは横浜アリーナの客席エリアと3人の姿。吉岡聖恵(Vo)がカメラに向かって「みなさん、お久し振りです。今日は一緒に楽しんでいきましょう」と挨拶をすると、リーダーの水野良樹(Gt)と山下穂尊(Gt/Harp)が奏でる「会いにいくよ」のアコースティックギターに乗せて歌声を響かせる。シンプルな編成が作り出すサウンドスケープが、会場の広さをより際立たせていた。

今回のライブリハから設営の様子までを追ったドキュメンタリーで構成されたオープニング映像は、舞台裏でソーシャルディスタンスを取りながらバックバンドのメンバーと円陣を組むメンバーの映像へとなめらかに切り替わる。そのままカメラは、にこやかにステージへ向かう3人の姿を捉え続け、同時にその画面にはこのライブへの3人の想いと15年間の感謝が文章として映し出された。

ステージに到着し、セッティングを終えた3人はバックバンドとともに「笑顔」でライブを口火を切った。カメラに笑顔を向けたり、吉岡は歌唱の合間に「見てるー?」と語り掛けたりと、アットホームな空気感のなか視聴者へのコミュニケーションを欠かさない。楽曲の終盤では、事前にファンから募った動画を組み合わせた映像が、ステージの背景に設置された巨大パノラマモニターに広がる。無観客の空間を覆すかのように、序盤から視聴者やファンとの一体感を作り上げた。




「茜色の約束」を披露したあと、水野は「お客さんがいないからゲネプロと同じような状況と言えばそうなんだけど、やっぱり今カメラの向こうで観てくれてるんだなと思うだけで、ステージの空気が変わるよね」と語り、無観客ライブでもファンの想いがチームに刺激を与えていることを示唆する。ツアー恒例の「こんにつあー」のコール&レスポンスを3人それぞれ行ったあとは、2008年にリリースされたシングル曲「気まぐれロマンティック」へ。吉岡は振り付けだけでなくステージを動いたりジャンプをするなど、パワフルなパフォーマンスで魅了した。

続いて披露された「アイデンティティ」は2019年4月にリリースされた曲ではあるが、無観客配信ライブという環境だとコロナ禍に揉まれる人々へ捧げるメッセージとしても響く。真剣な表情で一言一言を噛みしめながら歌う吉岡の姿も凛々しく、シンガロングのあとの曲の締めくくりに彼女の口から零れた「一緒にがんばろう」という言葉も、非常に象徴的だった。


「去年この曲を歌わせていただく機会が多かった」「みなさんの旅立ちに向けて、みなさんと一緒に大切に育てていきたい曲」という言葉のあと披露された「YELL」で切々としたシリアスな演奏と歌唱で魅せたあと、「夏・コイ」で3人がヴォーカルを取り、和やかな空間を作り出す。3人のキャラクターや絶妙なバランスも、彼らが愛され続けている理由のひとつ。マイクリレー的につなげられる歌唱と、ラストのハーモニーで、3人のファミリー的な柔らかいムードが横浜アリーナ中を包んだ。

曲が終わるや否や、視聴者の画面は長尺のムービーに切り替わる。舞台はFM YOKOHAMAのラジオブース。彼らがメジャーデビューする前から担当していた、3人にとって初のレギュラーラジオ『寄り切り!押し出し!!上手投げ!!!』が放送されていた放送局だ。吉岡と水野による洋画吹き替えモノマネで幕を開けると、ラジオタイトルの由来、ラジオの初回で最新アルバム『WHO?』に収録している高校生時代からの持ち曲「からくり」をOAしたというエピソードなど、思い出話を多数披露した。

トークで終わるかと思いきや、3人はこのラジオブースでメジャーデビュー曲「SAKURA」を披露。3人で向き合って演奏と歌唱をすることに懐かしさを噛みしめる。水野もFM YOKOHAMAについて「しゃべっている3人の空気感はここで作ってもらったもの」と語り、彼らの原点のひとつであることを再確認していた。

ムービーが終わると、再び視聴者の画面は横浜アリーナへ。15年間の感謝を込めた「ありがとう」、光を巧みに用いたLEDモニターの映像が楽曲のムードをより高めた「きらきらにひかる」、追い風を吹かすようにパワフルで華麗な演奏を繰り広げた「BAKU」と畳み掛け、「じょいふる」ではテンションも最高潮。15周年と掛けて15回連続ジャンプで楽曲を締めくくった。




吉岡が「配信というかたちではあるけれど、ライブができて本当にうれしく思っています。また会えるように前を向いていきます」と言い感謝を伝えると、3人は揃って深々と頭を下げる。「最後はやっぱり自分たちの15年の始まりの曲を。この曲を歌うと当時のあたたかい空気を思い出すし、これから頑張ろうという気持ちになれるから、またこの曲を歌って次に進みたいと思います」と吉岡がまっすぐ伝え、「SAKURA」をフルバンドで披露。15年間の歴史の深みを感じさせる、壮大なスケール感で本編ラストを締めくくった。

カメラは舞台袖に捌けるメンバーとバックバンドの姿を捉える。バックバンドのメンバーはそのまま椅子に座って談笑。アンコールで再びステージに現れるまでの過ごし方をそのまま放映するという非常にレアなシーンだ。メンバー3人の準備が整い、全員でふたたびステージへ。するとメンバーの口から、4月から開催する有観客ツアー<いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!>の追加公演が決定したこと、『WHO?』収録の新曲「TSUZUKU」が映画『100日間生きたワニ』の主題歌になることが発表された。


水野が「2020年は“続く”ことがめちゃくちゃ難しい1年間で、これからもこの困難は続くと思う。自分の感情や目の前の日々を大切にすることがすごく難しい時代だけど、すごく大事な時代だとも思います。その意志を込めてこのタイトルをつけました」と語り、3人は「TSUZUKU」を本邦初公開。水野の言葉のとおり、強い意志が貫かれた華やかなバラードで、いきものがかりにとっての新しい記念碑にもなり得る楽曲だった。続いての「風が吹いている」では3人が演奏/歌唱をしながらステージを降りてアリーナエリアへ。3人が会場の中央に揃うと、ステージ上のモニターには「次は、会おう! みんな、元気でね!」の文字が浮かび上がる。横浜アリーナという広大な空間が、そのメッセージをより晴れやかに伝えていた。


自分たちの過去を振り返るセクションを作りつつも、俯きがちになってしまうこの時期に、聴き手の視野を未来へとそっといざなうという懐の大きさに、J-POPシーンでキャリアと信頼を積み重ねてきたグループの頼もしさを感じるライブだった。

このオンラインワンマンライブのチケットは、2021年3月21日(日)12:00まで「サンキュー15周年価格」の3915円で販売されており、アーカイブは2021年3月21日(日)16:59まで視聴可能。このライブを観ながらいきものがかりの歴史と、さらに続く彼らとわたしたちの未来に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

文:沖さやこ
写真:岸田哲平/TEPPEI KISHIDA

なお、いきものがかりのニューアルバム『WHO?』は3月31日にリリース。CD購入者限定配信ライブ<THE“特典”LIVE>が4月10日に開催されることが決定している。

セットリスト

M-1 笑顔
M-2 茜色の約束
M-3 気まぐれロマンティック
M-4 アイデンティティ
M-5 KIRA★KIRA★TRAIN
MC
M-6 YELL
M-7 夏・コイ
M-8 ありがとう
M-9 きらきらにひかる
M-10 BAKU
M-11 じょいふる
M-12 SAKURA
ENCORE
EN-1 TSUZUKU
EN-2 風が吹いている

配信情報

【無観客配信ライブ「いきものがかり デビュー15周年だよ!!! ~会いにいくよ~特別配信ライブ」情報】
【見逃し配信】~2021年03月21日(日)16:59
□チケット発売期間
03月21日(日)12:00迄
□チケット料金
3,915円(税込)※サンキュー15周年価格
□視聴プラットフォーム
Streaming+
https://eplus.jp/sf/streamingplus 
Stagecrowd
https://stagecrowd.live/

ライブ・イベント情報

【アルバム「WHO?」CD購入者限定配信ライブ「THE”特典”LIVE」】
開催日時:4月10日(土) 開場 18:00/開演 19:00
Newアルバム「WHO?」CDご購入の方のみご覧いただけるプレミアムな配信ライブです。
*視聴期間 2021年4月10日(土)18:00~4月13日(火)23:59まで
「THE“特典”LIVE」 VIP観覧席抽選応募:受付期間 : 2021年4月5日(月)23:59まで
※応募時には、本抽選のご案内の裏面にあるシリアルコードが必要です。大切に保管ください。
※応募サイトにある注意事項を必ずお読みになってからお申し込みください。
※裏面のシリアルコード1つで「THE“特典”LIVE」の視聴とVIP観覧席抽選へのご応募、どちらにもご参加頂けます。

ライブ・イベント情報

【有観客ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」情報】
2021年04月14日(水)開場16:30 / 開演18:30 大阪城ホール[大阪]
2021年04月15日(木)開場16:30 / 開演18:30 大阪城ホール[大阪]
2021年04月24日(土)開場14:30 / 開演16:30 日本ガイシホール[愛知]
2021年04月25日(日)開場14:30 / 開演16:30 日本ガイシホール[愛知]
2021年05月07日(金)開場16:30 / 開演18:30 幕張メッセ 国際展示場1~3ホール[千葉]追加公演
2021年05月08日(土)開場13:00 / 開演15:00 幕張メッセ 国際展示場1~3ホール[千葉]追加公演
2021年06月10日(木)開場16:30 / 開演18:30 横浜アリーナ[神奈川]追加公演
2021年06月11日(金)開場16:30 / 開演18:30 横浜アリーナ[神奈川]追加公演
チケット料金
全席指定 9,350円(税込)

リリース情報

2021年3月31日(水)発売
NEW アルバム『WHO?』
・「WHO?」iTunesプリオーダーはこちらから (3月30日(火) 23:59まで):https://erj.lnk.to/tWZS0qWN
●初回生産限定盤[CD+DVD]
ESCL-5505~5506 \3,800 +税
・スリーブケース・デジパック仕様
・いきものカード057/058封入
・「THE“特典”LIVE」視聴&VIP観覧席抽選応募シリアルコード封入
【初回生産限定盤DVD収録内容】
1. TALK SESSION about “WHO?”
2. “BAKU Music Video” Behind The Scenes
3. BAKU Music Video
4. “きらきらにひかる Music Video” Behind The Scenes
5. きらきらにひかる Music Video
6. 生きる Music Video
7. 『BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!!~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~』Live Video
OPENING
笑ってたいんだ
キミがいる
アイデンティティ
コイスルオトメ
ブルーバード
YELL
からくり
きらきらにひかる
じょいふる
■初回生産限定盤のご予約はこちらから: https://erj.lnk.to/q8ZJ0y
●通常盤[CD]
ESCL-5507 \2,700 +税
・いきものカード057封入(初回仕様のみ)
・「THE“特典”LIVE」視聴&VIP観覧席抽選応募シリアルコード封入
■通常盤のご予約はこちらから: https://erj.lnk.to/IpiJBE
【CD収録内容】※初回生産限定盤・通常盤共通
TSUZUKU(映画『100日間生きたワニ』主題歌)
生きる(『100日後に死ぬワニ』テーマソング)
きらきらにひかる(テレビ朝日系木曜ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官』主題歌)
BAKU(テレビ東京系アニメーション『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オープニングテーマ)
からくり
チキンソング
わたしが蜉蝣
もう一度その先へ
他、全9曲収録(順不同)
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