【対談】丘みどり x コモリタミノル、「明日へのメロディ」が生まれたことで開き始めた新たな扉

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3月17日に新曲「明日へのメロディ」を発売する丘みどりが、都内の某スタジオで、今作の作曲を手掛けたコモリタミノル氏と対談を行った。丘みどりは“演歌歌手”として、またコモリタミノル氏はSMAPや嵐、aikoなどを手がけてきた“J-POP界のヒットメーカー”として広く認知されていると思うが、なぜ今回2人がタッグを組むことになったのか。楽曲完成までの知られざるエピソードや音楽に対する真摯な思い、また、この楽曲が生まれたことによって開き始めた新たな扉についてなど、興味深い話が繰り広げられた。

■「こんな曲を歌えるんだ!」という喜びと楽しみがありました
■今までに感じたことのない未来がパーッと開ける感じがした


――最初にお会いになったのはいつ頃ですか?

丘みどり:今回の楽曲「明日へのメロディ」のレコーディングの時です。ちょっと怖い感じの先生なのかなというイメージだったんですが、「あ、どうもおはよう!」ってすごく気さくで(笑)。最初から、とてもお話がしやすかったです。

コモリタミノル:よかった(笑)。丘さんも気さくな感じだったからだと思いますけど、そもそも自分に“先生”みたいな意識がないからじゃないですか(笑)。何も人に教えてないし、教わるばかりですから。

丘みどり:そんな(笑)。

コモリタミノル:やっぱり歌うってメンタルじゃないですか。出来ないと思ったら出ないし、出来ると思ったら出る。その中で威圧してもしょうがないですからね。


▲コモリタミノル

――お会いになったのはその時が初めてということですが、楽曲はたくさん耳にされていたのでは?

丘みどり:はい。先生の作られた楽曲は本当に幅広くて、「この曲も?この曲も!?」っていうイメージでした。

コモリタミノル:丘さんは高音がすごく気持ちよく伸びて本当に良い声だなと思っていました。あまりジャンルとか関係ない感じですよね。たまたま演歌という様式美でやった時はこんな感じだけどっていうくらいで、例えば先日放送された『セブンルール』という番組では、K-POPの曲なんかも歌われていましたよね。

丘みどり:はい。ジャンルではなく、いろんな音楽が好きという気持ちは大きいです。先生が作る楽曲の幅広さも、やっぱりいろんな音楽を聴いてこられたからなんだろうなと思います。

コモリタミノル:自分はもともと83年にバンドでデビューしたんですが(※小森田実&ALPHA)、その後、作家としての初めての仕事は森川美穂さんでした。当時の(自分の)担当の人は歌謡曲をどんどん作ってもらいたいということだったので、それまで自分がやってきたこととは違うことをいろいろ訓練させられましたね。その担当の人が満足するような歌謡曲みたいなものを毎週1曲持って行きました。

――“コモリタミノル”と言えば「SHAKE」や「ダイナマイト」、「らいおんハート」などSMAPの楽曲のイメージも強いですが、じゃあそこはまさに。

コモリタミノル:そういう”引き出し”は、その頃作ってもらった感じですね。だから丘さんのファンの方からすれば、コモリタがやるとなると「SMAPみたいな曲を歌うの!?」って不安になられたんじゃないかなと思うんですけど(笑)。でも自分にとっては、子供だった昭和の頃って演歌も何もかも全部ポップスだったんですよ。大人も子供も、演歌だからそうじゃないからとかじゃなく、流行っているものはみんな聴いていた。そういう時代を経験しているので、例えばアニメだとかビジュアル系だとか、個別のジャンルの中でアピールするということじゃなく、みんなに響くものがやりたいなというのを今もすごく思っているんです。

丘みどり:そうなんですね。

コモリタミノル:でも最近って、どの音楽も割と特化していますよね。幅広い層の方々に理解できる歌があっても良いじゃないか、と真顔で考えていました。だから逆に、その場所はすごく空いていると思っていたんですよね。今回お話をいただいた時も、その場所でアピール出来るものが何か作れるかなって思ったんです。

丘みどり:私も、演歌はもちろん大好きで小さい頃から聴いていましたし、昨年もしっかり演歌を歌ってきましたが、“演歌”と言ってしまうことによって入り口の扉が重くなっている気がしたんです。例えば若い世代の人たちが「演歌かぁ」と言って聴かないのは悲しいなと思ったので、もっと幅広く歌うことで演歌も聴いてもらえるようになって、さらには新しいチャレンジも出来るんじゃないかなと思って、2021年は演歌からちょっと離れ、新しいチャレンジがしたいと思ったんですね。それで先生にお話をさせていただいたんです。


▲「明日へのメロディ」プレミアム盤<CD+DVD>


▲「明日へのメロディ」Type-A<CD>


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コモリタミノル:自分は逆に「演歌を書いてください」と言われても経験があまりないので、自分のフィールドで出来ることであればということでやらせてもらいました。ただし、丘さんが築いてこられたファンの方の気持ちは無下には出来ないので、ちゃんと納得してもらえるもの──100%納得してもらえるとは思ってないです。7割以上納得してもらえれば、あとはもっと違う、今まで聴いてこられなかったお客さんに広がって行けばいいのかなっていうところではありましたけどね。ただTwitterなどを見ていると、9割くらいは応援していただけているというか支持していただいているので…。

丘みどり:そうですね。はい。

コモリタミノル:とりあえずは、少しホッとしました。

丘みどり:そんなところまで考えてくださって(笑)。

コモリタミノル:気にしますよ(笑)。だって、方向性を変える場合の責任は大きいなと思いますから。

丘みどり:ありがとうございます。曲をいただいた時は、「こんな曲を歌えるんだ!」という喜びと楽しみがすごくありました。今までに感じたことのない未来が、パーッと開ける感じがしたんです。

コモリタミノル:もうこの曲は何度かステージで歌ったんですか?

丘みどり:はい。ステージでも歌いましたし、テレビの収録でも何度か。

コモリタミノル:どうでした?

丘みどり:すごく新鮮な感じでした。今回はスタンドマイクなので、ちょっと振付けもあるんですよ。着物以外で歌うこともめちゃくちゃ新鮮で、逆にちょっと恥ずかしいような感じです(笑)。

コモリタミノル:でも着物って、締め付けるから発声とか大変じゃないですか?

丘みどり:私は小さい頃から民謡を習っていたので、ずっと着物を着て歌ってきたんですよ。だから慣れていると言えば慣れているんです。いつもたくさん着込んでいる分、洋服はなんだか裸で出ているような気持ちになって照れるんですよね(笑)。

コモリタミノル:(笑)。

――(笑)。新しいチャレンジをするって、勇気も必要ですよね。

丘みどり:そうですね。ようやく「丘みどり・演歌歌手・着物」で知られてきたところをゼロにしちゃっていいのか。ここからまた、1から覚えてもらうのは大変だろうなって、いろんな葛藤もありました。でも一歩踏み出さないと何も始まらないし、今のままじゃ絶対にダメだって去年は思いましたから、思い切って踏み出すことにしたんです。

■「音は外してもいいから、もっと気持ちぶつけて!」
■こういうレコーディングは初めてでした



――では、具体的にこの「明日へのメロディ」が出来上がるまでのエピソードを伺いたいのですが。

丘みどり:実は最初に3曲いただいたんですけど、どれもすごくいい曲で全然選べなくて。「どうしよう!?」って、本当に最後までスタッフの間でも迷っていました。

コモリタミノル:「明日へのメロディ」は2番目に出来たんですが、自分でサビが気に入らなかったんです。悩むくらいなら別の曲を作ろうと思って3曲目を作っていたら、もう締め切りギリギリになってしまって。それが、大晦日だったんです(笑)。

――みどりさんが、YouTubeで手打ちの年越し蕎麦の動画をアップされていた日ですね(笑)。

丘みどり:そうです、そうです(笑)。

コモリタミノル:庭掃除しなきゃとかいろいろ思っていたけど、全部ほったらかして(笑)。

丘みどり:そんな日にすみません(笑)。

コモリタミノル:あと、いつもは自分で仮歌もやって、それを女性のキーに変えてお聴かせするんですが、今回はやっぱりちゃんと歌える女性の方にお願いしたいなと思い、無理言って仮歌の方に歌を入れてもらったんです。大晦日なのに(笑)。

丘みどり:えー!

コモリタミノル:とりあえず、年を越す直前くらいには送ることが出来ました(笑)。

――この楽曲は歌詞ではなく曲が先だったそうですが、テーマとかキーワードとか、何か起点となるものがあって制作をスタートされたんですか?

コモリタミノル:やりとりをさせていただく中で、例えばちょっと自分を追い詰めると言いますか、明日をも知れぬみたいな、身も蓋もないみたいな、そういうざっくりした方向性のイメージかなというのはありました。そこから、何かこう、四面楚歌みたいなものをやろうかなと。

――どれも今のこの世の中にも通じるような言葉ですね。

コモリタミノル:そうですね。今回歌詞は自分ではないんですが、まずいろんな方にお願いしてみたところ、今の世の中やこの状況を表現しているものが多くて。それだけ心にずっしりとのしかかっているんですよね。歌って、その時の空気を形にするものですから。一歩外に出たらみんなマスクをしていて、エスカレーターに乗る時は3段空けるとか、エレベーターは4人までとか、1年前じゃ考えられなかったとんでもない時代を生きている。曲を作っている時はその時の空気に支配されていますから、自ずとそうなるんでしょうね。

――その時の空気を形にする。つまりドキュメンタリーという一面もあるんですね。

丘みどり:そうですね。今まで私は、“女の情念”のように経験したことのない気持ちや物語を想像しながら歌ってきましたが、今回は詞も曲もやっぱり“いま”歌えるもの。だからこそもっともっと魂を込めて歌わなきゃ伝わらないんだろうなっていうことをすごく思いました。

コモリタミノル:レコーディングは2日間やりましたね。

丘みどり:はい。1日目の段階で「これでOK」ってことで終わっていたんですが、最後の方に録ったものに思いが乗っていたから、もしかしたらもう1日やればもっと思いを爆発させられるかもしれないということでやらせていただきました。今までのレコーディングでは、譜面通りにちゃんと歌わなきゃということを一番に考えていたんですが、「音は外してもいいから、もっと気持ちぶつけて!」「もっとぶつけて大丈夫!」という感じで言われて。そういうレコーディングは初めてでした。

コモリタミノル:え!そうなんだ(笑)。

丘みどり:はい(笑)。だから私も、レコーディングスタジオの小さなブースの中ではありましたけど、集中して、ステージに立っているみたいな気持ちで曲の世界に入り込んで、思い切り魂をぶつけるように歌ったんです。そういうやり方は初めてだったので、本当に新しい感覚を教えていただいたなという感じでした。「こんな風にも歌っていいんだ!」っていう。

コモリタミノル:デビューしたての歌手の人やアイドルの子たちが、スタジオで怒鳴られてブースから出てこられないみたいな時代、ありましたからね。…あ、今もあるかもしれないですけど(笑)。

丘みどり:(笑)。もちろん「これくらいでいいかな」なんてことは思ってはいませんでしたけど、自分でも気づかないところでラインを引いていたというか、なんとなく遠慮していたようなところがあったのかなとは思いましたね。だって自分で聴き比べてみると、全然違うなっていうのがありましたから。

コモリタミノル:1日目の経験を踏まえて、どんどん良くなっていきましたよね。

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