【ライブレポート】reGretGirl、メジャーデビュー後初の東名阪ツアーファイナルに「こんな幸せな職業はない」

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reGretGirlが3月26日(金)に東京・TSUTAYA O-EASTで<reGretGirl spring tour 2021 “curtain call”>ツアーファイナル公演を開催した。

◆ライブ写真

本ツアーは1月にリリースされたreGretGirlのメジャー1stフルアルバム『カーテンコール』を引っさげて行われたもの。ファイナルとなった東京・TSUTAYA O-EAST公演のライブレポートをお届けする。

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今年1月にメジャー1stフルアルバム『カーテンコール』をリリースしたreGretGirl。その鮮烈な1stアルバムを引っさげての東名阪ツアーが行われ、3月26日(金)、東京・TSUTAYA O-EASTで最終日を迎えた。

ライブでは、『カーテンコール』収録のすべての楽曲がセットリストに組み込まれ、アルバム同様、より自由度の高いバンドサウンドを響かせる。過去曲もアレンジをアップデートしながら、オーディエンスの心に直接語りかけるような熱いライブを繰り広げていった。


前田将司(Dr)が叩く弾けるようなドラムの響きから、アルバムと同じく「ルート26」で、ライブはスタート。初っ端からライブをする喜びが、その音にも表情にも表れている。「手拍子ください!」と続けざまに「インスタント」へなだれこみ、小気味好いテンポでオーディエンスをさらに楽曲世界に引き込んでいく。

続く3曲目には過去曲でも特に人気の高い「Shunari」。ミニマムなアンサンブルを響かせ、歌をしっかりと聴かせる。さらに平部雅洋(Vo,G)が「新しい曲をバンバンやっていきます。次はミュージックビデオにもなっている曲を」と告げると、シンバルの高らかな響きから3ピースの音がドライブする「pudding」へ。アップテンポなバンドサウンドとオーディエンスの絶妙なハンドクラップが融合し、そこにまるでシンガロングしているような有機的な一体感が生まれた。

このコロナ禍の状況では客席では声を出すことができないが、こうやって心の温度を伝え合うことはできる。この日のreGretGirlと客席とは、そんなコミュニケーションが序盤からしっかり出来上がっていた。

続けざまに、うねるようなギターリフでロックなアンサンブルを響かせる「AJAX」、そしてミドルテンポで十九川宗裕(B)が紡ぎ出すベースラインが印象的な「幸せなんて」と、『カーテンコール』からの楽曲を間断なくプレイし、3ピースのアンサンブルの成熟を存分に感じさせた。それはやはり新作アルバムの豊かな音楽性が引き出したものだと思う。エモーショナルで切ない歌にスポットが当たりがちなreGretGirlだが、オーガニックなギターサウンドとポップなメロディーも、彼らの大きな魅力だと再認識する。


「少し古い曲もやっていきます」と平部が告げると、「キスの味」から、「ブロッサム」、さらに「ピアス」へと続けざまに披露。「ブロッサム」の、静かに心が走っていくようなリズムに乗って平部の歌の切なさがさらに増していく。その歌声がバンドのダイナモとなって、今度はまたバンドサウンドにもその「エモ」が還元されていく──。

この3ピースの「ライブ」の本質はここにある。「ピアス」での十九川のベースなどは、まるで平部と一緒に歌っているかのように響いて、その感情の昂りは客席にもシンクロし、多くの腕が高く突き上げられた。これぞreGretGirl。曲が終わったあとすぐさま平部は「やっぱライブってええな」と2回繰り返しつぶやいた。

後半はサポートメンバーを加えての5人編成で、より奥行きの深いアレンジで新旧織り交ぜた楽曲を披露していく。昨年11月の大阪城野外音楽堂でのワンマンから、reGretGirlは3ピースでの演奏にこだわらず、自由な発想で楽曲を表現していくほうへシフトした。その思想は最新作『カーテンコール』にも引き継がれていて、この日の5人編成の演奏でもワクワクするような自由度の高いアンサンブルを聴かせてくれた。

ギターに坂本夏樹、キーボードに雪下直矢を迎え入れた5人バージョンのreGretGirlは、闇雲に音の厚みを増すというのではなく、より深く広がる豊かな音像を作り上げて、バンドの新たな可能性を提示していく。「グッドバイ」でかき鳴らされる坂本のギターカッティングと前田の16ビート、アウトロで響くキーボードのメロウな響きなどは、音源よりもグルーヴィー。平部の歌にも、どことなく大人の余裕が感じられる。ア

コギのアルペジオが彩りを添える「二色浜」、スポークンワード的に吐き出される平部の歌に引き込まれる「デイドリーム」と、5人編成の演奏では楽曲ごとのコントラスト=多様性がより鮮やかに示されて、過去曲もまたreGretGirlの現在地を見せるものへと進化していた。


平部がギターを肩から下ろし、ステージ中央に素早くエレクトリックピアノがセットされる。「コロナ禍で家にいる時間が長くなって、ピアノが弾けるようになりました。1曲やろうと思います」と、『カーテンコール』の最後に収録されている「約束」を披露。失恋の痛みや寂しさをずっと歌にしてきた平部の、その地続きにあるような切ない楽曲だが、ここに描かれているのは“誰かにフラれた悲しみ”ではなく“自分から別れを告げた恋の悲しさ”だ。これまでのreGretGirlにはなかった叙情を見せる歌が、エレピでの弾き語りで静かに始まる。

自身の感情の吐露のような内省的な歌が、やがてバンドサウンドを携えて普遍的なポップミュージックへと変わっていく、その「昇華」の過程を見ているようなライブ演奏だった。このバンドのアンサンブルがあるからこそ、平部は何も怖がらずに自身の心の声を思い切り歌にすることができるのだろう。これこそがreGretGirlの核にあるものではないか。

ドラマチックな5人編成でのアレンジで響く「おわりではじまり」を挟み、ラスト3曲はまた『カーテンコール』からの楽曲。とびきりヘヴィで、歪んだ坂本のギターに触発されるかのように切実な歌声を響かせた「Longdays」、そして「スプリング」のまぶしさも格別だった。


さらに本編ラストの曲へと進む、その前から平部の感情が、今日こうして無事にツアーの最終日を迎えられたことへの思いが、堰を切ったように溢れ出てくる。思うように活動ができなかった昨年のことを振り返りながら、「みんなもう僕らのことなんか忘れてしまうんちゃうかなって思う日があったんですよ。でも今回久しぶりにツアーができて、僕らまだまだやっていけるなと感じることができました。自分の住んでない街にも、こうして足を運べば待っていてくれる人がいるなんて、こんな幸せな職業はないなと身にしみています」と語った。

平部はもう涙を隠そうともしなかった。そして「僕らの曲は、どちらかといえばマイナスな感情を歌うことが多くて。でも僕も人間ですから嬉しいと思うことがある。嬉しくて嬉しくて、泣けてしまうこともたくさんある。そんな僕の喜びをみんなと分かち合いたい。みんなの喜びを、幸せを、僕も分かち合いたい。だからこの曲を作りました。君がいてよかったって、ほんとによかったって、嬉しくて嬉しくて泣いてしまう歌です」と告げると、5人全員の思いがひとつに重なるような密度の濃いサウンドを響かせながら「カーテンコール」をプレイ。

reGretGirlがメジャーデビューを果たしたアルバムの中でも、飛び抜けてバンドの新たな可能性、音楽性の広がり、そしてポップの普遍性を見せたこの曲は、純粋で大きな愛をストレートに深く歌う歌だ。感極まる平部は時折また涙声になりながら、このピュアなバラードを心の底から歌い上げた。


アンコールでは再び3人編成に戻り、軽快に奏でる「胸の内を聞かせてほしいだけ」を演奏。すると「みんな、あの曲まだ聴いてないとか思ってるやろ?」と問いかける。そして「この曲がなかったらきっと僕らはここに立ってなかったでしょう」と、次曲が「ホワイトアウト」であることをほのめかす。

「reGretGirlは頑張れよとか大丈夫って言葉を投げかけてあげるバンドではない。でも僕は不安な時、辛い時の気持ちをよく知ってるから、無理すんなよ、泣いたらええよって言うことならできます。背中を押すんじゃなく、隣でぎゅっと手をつないでいられる、僕はそういう人間です」と言って歌い上げたこの曲が、とても力強く、あたたかく会場中に響いていった。

ラストは「replay」。3ピースのプリミティブな高速ロックサウンドが駆け抜けるように響くと、最後は「また絶対会おうな!」と叫んで、この日のライブは幕を閉じた。


このライブでreGretGirlは、3ピースでのエッジーなバンドサウンドと、サポートメンバーを加えてより自由度高くポップを表現するアンサンブルとで、あざやかなコントラストを描いて魅せた。プリミティブな衝動とアレンジへの探究心。おそらくこれからも、そのどちらを失うこともなく進化していくのがreGretGirlなのだろう。

そしてこの日はまさに「隣でぎゅっと手をつないでいる」というバンドの在り方が明確に伝わるエモーショナルなライブであり、1stアルバム『カーテンコール』の豊かな音楽性を実感する夜でもあった。今、reGretGirlのバンドサウンド、そして平部の歌は、より普遍的な魅力を放つグッドミュージックとして、輝きを放っている。

なお、ツアー最終日の東京公演のセットリストのプレイリストが各配信サイトにて公開!レポートと一緒に楽しんでいただきたい。

Text by.杉浦美恵
Photo by.白石達也

■公演情報

<reGretGirl spring tour 2021 “curtain call”>
2021年3月26日(金)東京・SHIBUYA O-EAST
【SETLIST】
1.ルート26
2.インスタント
3.Shunari
4.pudding
5.AJAX
6.幸せなんて
7.キスの味
8.ブロッサム
9.ピアス
10.グッドバイ
11.二色浜
12.デイドリーム
13.約束
14.おわりではじまり
15.Longdays
16.スプリング
17.カーテンコール

En1.胸の内を聞かせてほしいだけ
En2.ホワイトアウト
En3.replay

【プレイリスト】
『reGretGirl spring tour 2021 “curtain call” at SHIBUYA O-EAST 2021.3.26(FRI)』
配信URL:https://lnk.to/reGretGirl-spring-tour-2021

■メジャー1stアルバム『カーテンコール』

2021年1月27日(水)リリース
【初回限定盤】COCP-41383/4134/¥3,400+tax
【通常盤】COCP-41385/¥2,800+tax

【収録曲】
[DISC 1]
1.ルート26
2.pudding (TOKYO MX 月曜ドラマ『片恋グルメ日記』オープニング主題歌)
3.インスタント
4.カーテンコール
5.グッドバイ
6.幸せなんて
7.AJAX
8.Longdays
9.スプリンング
10.胸の内を聞かせてほしいだけ
11.約束

【初回限定盤のみ収録 】
[DISC 2]
1.ホワイトアウト (Acoustic)
2.二色浜 (Acoustic)
3.Shunari (Acoustic)
4.おわりではじまり (Acoustic)

◆reGretGirl オフィシャルサイト
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