【インタビュー】SOMETIME’S、信頼関係から生まれた『Slow Dance EP』

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■喜びを感じられる作品に

──SOMETIME’Sは2020年から着実にリスナーを増やしていますが、なにがターニングポイントになったと感じてらっしゃいますか?

SOTA:「Honeys」のMVですね。IRORI Recordsとやんわり関わるようになって、すごく素敵な映像チームを紹介してもらえて。映像を工夫してみようなんて、それまでは考えてもみなかったんです。想像以上に聴いてもらえるようになりました。でもその実感はなかなかないんですよね(笑)。

TAKKI:前のバンド含め、ライブ会場で500枚売るのがやっとというバンド人生だったから“○○万回再生”と言われてもピンと来なさすぎる(笑)。おまけにご時世的にライブがなかなか開催できないので、リスナーが顕在化しないというか。

SOTA:ライブハウスを基盤に活動してきたから、Twitterの名前と顔が一致しないという経験がなかったから変な感じだね(笑)。サブスクのおかげで音楽の間口が広がっているので、そこからもっと深い関係値を作っていけたらなと。それには人間性が不可欠だと思うんです。僕はアナログなものが大好きなので、ライトリスナーさんにのめりこんでもらえるような活動は引き続きしていきたいと思ってますね。



──プレイリストや自動再生も発達しているので、知らず知らずのうちにSOMETIME’Sの音楽に触れている人は多いかもしれません。

TAKKI:僕らはアルバム単位で楽しむ文化で育ってるから、曲間の秒数とかアルバムの流れにかっこよさを見出してたんですけど、いまは1曲で勝負しなきゃいけない時代だなと感じてますね。僕らは大きく分けると今作の「Never let me」みたいな打ち込みのサウンドがメインの楽曲と、「シンデレラストーリー」みたいな生楽器のサウンドがメインの楽曲の2本柱でやっているけれど、プレイリストに入るためにはどの楽曲もクオリティに妥協はできない。だからやりがいはありますね。

──「Raindrop」はその2本柱がいいバランスでブレンドされていますよね。

SOTA:道哉がいちばん苦労したのがこの曲のアレンジなんですよ。というのも、「Raindrop」は前のアレンジも道哉がしっかり作っていて。

TAKKI:「Slow Dance」と「シンデレラストーリー」は道哉とジョインする前の曲なので道哉は初めてこの2曲のアレンジをしたんですけど、「Raindrop」は道哉とジョインしたあとに出来た曲なので、道哉は自分で作ったアレンジをリアレンジしなきゃいけなかったんです。

──ああ、なるほど。最初の段階でご本人的にかなり完成度の高いアレンジができていたぶん、崩すのが難しかったということですね。

TAKKI:今回収録しているバージョンに至るまでに、“ちょっと暗いかな”や“楽器が多いと思う”といったディスカッションがありました。サビでエレクトロのドラムから生ドラムへと変えてるんですけど、曲中でそういうことをするのは初めてで。レコーディングしてみないとわからないというギャンブル性の高い曲ながら、ドラマチックに仕上がって良かったです。アウトロのピアノも、ピアニストさん様様です。

SOTA:ジャズのテイストを入れたくて、昔から仲のいいジャズピアニストの永吉俊雄さんに初めて弾いてもらって。それがめちゃくちゃ曲にハマりましたね。Recの最中に“最高だな!”と興奮しました。

──実力のあるミュージシャンが、しっかりと自分たちの音楽に向かい合ってくれるのは、本当に幸せですし励みになるだろうなと思います。

TAKKI:これだけ協力してもらえるのは、間違いなくSOTAのおかげですね。歌唱力があることはもちろんなんですけど、それだけではなく人を惹き付ける魅力があるんです。僕は人と距離を縮めるのがそれほど得意ではないから、ここまでSOMETIME’Sに人が集まってくれるのは、SOTAの存在が大きいです。

SOTA:いやいや(照れ笑い)。集まってくれる人がみんなあったかいし、その楽しい空気感をチーム内で共有できているから、おのずといいグルーヴが生まれるんだと思います。


──たしかに、SOTAさんはすごく太陽みたいな人だと思いました。だからラブソングにも説得力があって。TAKKIさんはそのあたりも考慮したうえで歌詞を書いてらっしゃるのでしょうか?

TAKKI:SOTAの作るメロディにいつもデタラメ英語が乗っているので、そこに歌詞をはめていくんですけど、自然とラブソングに着地していくんですよね(笑)。この世にある音楽は、拡大解釈するとすべてラブソングだと思うんですよ。

SOTA:“僕の歌ったデタラメ英語の解像度を上げたらこう言ってました”みたいな歌詞が返ってくるんですよ。メロディを大事に歌詞を作ってくれてるなと感じます。僕が歌いたいことが明確にある場合は僕が自分で歌詞を書くし、メロを大事にしたい場合はTAKKIにお願いしてますね。「HORIZON」は譜割りやメッセージを相談しながら作りました。

TAKKI:「HORIZON」は完全に共作だね。メロディもサビは僕が提案して、そこにSOTAがAメロとBメロをつけてます。「シンデレラストーリー」はSOTAが歌詞を書いているので、SOTAの色がしっかり出てるなと感じますね。



──TAKKIさんの書く歌詞にもポジティブな要素が多いのは、SOTAさんのキャラクターが影響してるのかなとも思いました。

TAKKI:相当影響してますね(笑)。「Slow Dance」で表情や動作の描写を取り入れていて、主人公はもう少しクールで紳士な雰囲気にしたかったんですけど、どんどんSOTAのおちゃらけたキャラクターに引っ張られていって(笑)。そのおかげで絶妙なバランスの日本語が書けたなとは思っていますね。満足感があります。


──IRORI Recordsからリリースする前に、バンドの始まりの楽曲と最新のモードを1枚の作品にコンパイルできたことは、SOMETIME’Sにとってとても有意義な新章のプロローグになったのではないでしょうか。

SOTA:2枚目の自主制作盤で知り合ってくれたIRORI Recordsさんが、1枚目の自主制作盤の楽曲を気に入ってくれて“出そうよ!”と言ってくれて。サラリーマンのなけなしのお金をはたいて作ったCDの楽曲がお蔵入りにならずにすんで、おまけにいまジョインしてくれるメンバーの手によってこんなに豪華になって、聴きごたえのある作品になって──すごく美しい流れでリリースできる作品なので、うれしさでいっぱいですね。本当にありがたいです。

▲SOMETIME'S/『Slow Dance EP』

──おふたりが積極的に行動を起こすことで、周りの人々がどんどん可能性を広げてくれているんですね。

TAKKI:最近、レコーディングをしていても、ライブをしていても、まず最初に“うれしい”という感情が生まれるんです。“楽しい”より先にそう感じるのは、15年くらい音楽をやってきて初めてで。不安を抱えながらも手探りしていかなければならない状況で、チームみんなで知恵を出し合って今作のレコーディングを決めてくれて、歩みを止めないでくれたことが本当にうれしいし感謝しているんです。そういう気持ちを抱きながら音楽を続けることに、喜びを感じられる作品になりましたね。

取材・文◎沖さやこ

2nd EP『Slow Dance EP』

2021年5月26日(水)発売
PCCI.0005
¥1,650(税込)
CD Only(6曲入り)
[収録曲]
M1.Slow Dance
M2.Never let me
M3.interlude
M4.Raindrop
M5.HORIZON
M6.シンデレラストーリー

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