【Pearl75周年特集】つのだ☆ひろが語る歴史、「最初に入手したのは1963年頃。一番安いドラムセットでした」

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現役Pearlドラマーはもとより現在のPearlスタッフを含めて、その歴史を最も古くから知る人物が、つのだ☆ひろだろう。1949年生まれ、71歳。15歳の頃から本格的にジャズドラマーを目指し、高校在学中にプロデビュー。渡辺貞夫カルテットやザ・ジャックスへの参加など、ジャズ/ロックを問わずさまざまなセッションにドラマーとして参加してきた。また、1971年にソロシンガーとしてリリースした「メリー・ジェーン」はあまりにも有名だ。

◆つのだ☆ひろ 画像 / 動画

作詞家、作曲家、パーソナリティー、タレントetc. 枠にとらわれない活動で数々の実績を残してきたつのだ☆ひろだが、<Pearl Drums 75th Anniversary Special Day>で披露した新製品紹介が実に見事。知識量の豊富さに加え、テンポと抑揚に優れた語り口調は、ドラマーのリズム感と芸能人の話術を併せ持つ、つのだ☆ひろならではのもの。ぜひともオンラインイベント動画をご覧いただきたい。もちろん言うまでもないが、熟練の業に冴えたドラムソロも必見だ。

インタビューでは、75周年記念モデルとして復刻されたプレジデントシリーズのオリジナルを1960年代当時から使い続けていたからこその知られざるエピソードをはじめ、イアン・ペイスとのドラム秘話や、ドラム開発者としての横顔、今回のドラムソロのテーマまで、Pearlの魅力を軸として存分に語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■リモートハイハットは
■僕のアイデアなんです

──つのだ☆ひろさんといえば、Pearl Drumsの生き字引みたいな人です。

つのだ☆ひろ:そうなりますか(笑)。僕が最初にPearl Drumsを使ったのは中学生のときですからね。当時、一番安かったヴァレンシアというセットの中古が、僕の最初のドラムセットなんです。1963年ぐらいのことですね。それぐらい昔からPearl Drumsを使っていて、その後、国内外のありとあらゆるタイコ遍歴を辿ったんですよ。最終的に安定性などを考えると、やっぱりPearlに勝るものはない。僕がPearl Drumsのモニターになった当時、カタログに載っているモニターの方は、全員ジャズドラマーでした。ロックをやる人間でPearlのカタログに載ったのは、僕が最初です。

──はい。昔からカタログでお顔を拝見していますから。

つのだ☆ひろ:ええ、相当昔から。もう苔が生えている感じ(笑)。

▲つのだ☆ひろ with President Series Deluxe

──いえいえ。最初に購入したヴァレンシアの印象は覚えていますか?

つのだ☆ひろ:覚えてないです。もう買っただけで嬉しくて嬉しくて。2年使ってないと思います。さっきお話したように、それからどんどん違うドラムセットを使っていきましたからね。それらを使ってみてPearlの良さも分かったし、Pearlの良さが分かる年齢になったということですね。

──そのPearlの良さをズバリ教えていただけますか?

つのだ☆ひろ:今回、75周年記念モデルとしてフェノリックシェルを用いたシリーズが発表されるんですけど、これはもともとどこから来ているかと言えば、Pearlのプレジデントシリーズ(1966年発表)からなんです。プレジデントは、僕の師匠である富樫雅彦が使っていたタイコなんですね。音のスペシャリストである師匠のチューニングで聴いているから、プレジデントはいい音がするに決まっている。本当にいい音を出すんですよ。だから、僕がロックをやるようになってからも、Pearlのプレジデントは生産終了するまでずっと使ってきました。それぐらい素晴らしいタイコなんです。今回のフェノリックシェルは、そのプレジデントのオマージュと言える復刻モデルなんです。

──具体的にどういった点が?

つのだ☆ひろ:プレジデントのシェルは、もともと紙だったんですよ。紙に樹脂を塗りながらタイコの胴として巻いていって、一定の厚さまで巻いたら、今度はそこに焼きを入れて作るような成型方法だったんですね。「えーっ、紙ですか?」と驚く方もいるかもしれません。でも紙って何から出来ていると思いますか? そう木なんです。木というのは年輪があり、枝がはえたら節目もできますよね。それではシェル素材として均等ではない。プレジデントシリーズのフェノリックシェルは簡単に言えば紙と樹脂を合成したものなので、一種ケミカルとも言えます。でも、どんな箇所も硬さや厚さが全部一緒なんですよ。木胴だと、円形に成型するためにつなぎ目がありますよね。ところが、フェノリックシェルにはつなぎ目がない、シームレスなんですよ。だからいい音がするんです。

──ケミカルな素材だから真円を作ることもできるという。

つのだ☆ひろ:そう。木をつなぐ成型方法では、真円を維持することが難しいんです。経年変化で徐々に歪んでくる。でもフェノリックシェルは熱に強いし、強い衝撃を与えても壊れない。分かりやすいところで言えば、ビリヤードの玉はフェノリックですよ。あれだけガンガン叩かれても、ビリヤードの玉が割れたって話は聞かないじゃないですか。すごく強い素材なんです。

──すごく分かりやすい説明です。

つのだ☆ひろ:アッハッハ。Pearlではこういうのを説明する係もやってますから(笑)。

▲つのだ☆ひろ with President Series Phenolic

──つのだ☆ひろさんのアイデアや意見によって生まれたPearl製品や改良された製品もすごく多いという話を聞いたこともあります。

つのだ☆ひろ:そうですね。僕はジジイだからすごくケチをつけるし、歯に衣着せず何でも言うので(笑)。でも、それによって製品がもっと良くなるならば言うべきじゃないですか、だって僕はモニターなんですから。Pearlのためになると思って、僕が一番文句言ってます。ただ、数人いるんですよ、細かいこと言うPearlドラマーは。例えば、ザ・クロマニヨンズの桐田勝治くん、Sakura(櫻澤泰徳)くん、LEVINくんもそうかな。

──ドラムに対する愛情が深すぎる人たちばかりです(笑)。

つのだ☆ひろ:そう。自分でもカスタマイズしちゃう4人ですから、Pearlへの愛情も愛着もありますよ。それに僕自身は、「こういうのを作ってください」「ああいうのを作ってください」とも言ってます。例えばドラムの下に敷くゴム製のマット。あれを作ってくださいと言ったのは僕が最初ですから。

──そうだったんですか! 叩いていくうちにドラムセットがズレてしまうことを抑制するマット。セッティングをマーキングしておくこともできますよね。発売されたとき、“こういうのが欲しかったんだ”って思いました。

つのだ☆ひろ:みんな使っていますよね。あとワイヤーのハイハット(リモートハイハット)ってありますよね。あれは僕のアイデアなんです。僕が作った試作品をPearlに渡して、試作品をバージョンアップしてリリースしたわけです。

──試作品をつのだ☆ひろさんが作るってこと自体、すごく熱い話です。

つのだ☆ひろ:自転車のブレーキ用ワイヤーとかを用いて作ったんです。そういうのが得意な僕の知り合いに制作は頼みましたけどね。でもアイデアは僕ですよ。僕はドラムが好きなので、どうやったらもっと良くなるかって、いつも考えているんです。例えばツインペダルも、なんで左足はハイハット側なんだ、と。「右足のすぐ横に設置することはできないの?」って、Pearlに頼んで作りましたからね(笑)。そうやって、“なんでなの” “どうしてなの”といつも思っているから、新しいアイデアが浮かんだら、すぐに形にしたいんですよ。今も未発表のアイデアが2〜3個あります。そのうちPearlに設計図を書いて渡そうと思ってますよ(笑)。

◆インタビュー【2】へ
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