【インタビュー】DOLL PARTS、情念と初期衝動で彩る『THE FIRST TASTE OF ME』

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ARISA(Vo,G)、シンジョー(B)、児太郎(Dr)の3人からなるロックバンド・DOLL PARTSが、1stミニアルバム『THE FIRST TASTE OF ME』を完成させた。妖しげでギラギラとしたオーラを放つ攻撃的なバンドサウンドや、昭和歌謡の雰囲気を帯びた日本人の琴線に触れるメロディライン、そして、様々な女性達が生々しくも力強く息をする詞世界を、ときに破壊的に、ときに艶やかに、ときに瑞々しい声で歌い上げるロックアイコン然としたARISAの歌声と、様々な魅力が詰まった1枚になっている。今回のBARKS初登場インタビューでは、最新作はもちろん、バイオグラフィーも含めて幅広く話を聞いた。

  ◆  ◆  ◆

■予定から総入れ替えみたいな感じで、ある意味パワーアップ

──元々、DOLL PARTSはARISAさんの個人ユニットだったんですよね。

ARISA:そうです。私とプロデューサーのCOZZiのユニットとして、2年ぐらい活動していたんですけど、バンドをやりたい気持ちはずっとあったんですよ。ただ、メンバーを探すのになかなか手こずっていて。サポートではなく同世代の人達と集まってやっていったほうが自分の音楽活動的にもおもしろくなるかなと思って、個人ユニットのほうは一旦活動休止してメンバーを探し始めました。

▲ARISA

──そもそもプロデューサーのCOZZiさんと出会ったきっかけというと?

ARISA:私もCOZZiも福岡の出身で、共通の知り合いから紹介してもらって出会いました。私は土屋アンナさんの「LUCY」っていう曲を聴いてロックに目覚めたんですけど、たまたまCOZZiがその曲を書いていたんです。そのときは知らなかったんですけど(笑)。その話をしたときに、一緒にやってみようかという感じになって。最初は手探りだったんですけど、ロックがやりたいということを伝えて、2人でやっていた感じですね。

──土屋アンナさんであり、「LUCY」のどんな部分に衝撃を受けました?

ARISA:見た目も曲もかっこいいし、日本で活動している女性の中で、こんなにパンク全開、ロック全開みたいな女性がいるんだ!?って。そこからいろんな音楽を聴くようになって、その次に衝撃を受けたのがコートニー・ラヴのHoleでした。こういう風なバンドの見え方にしていきたいなって強く思いましたし、DOLL PARTSというバンド名も、Holeの中で一番好きな曲から取ってます。

──そしてメンバーを探して行った中で、まず加入されたのがシンジョーさん。

ARISA:個人ユニットで活動していたときの対バン相手にシンジョーがいて。個性的なパフォーマンスをしていたし、ベースのフレーズもおもしろかったので、ライヴの後に「バンドやってくんない?」って話をして。

シンジョー:対バンしたときにライヴを観て、声をかけてもらった後に動画も観たんですけど、パワーが強いっていうのが第一印象でしたね。バンドサウンドがかなりしっかり鳴っているのに、そこに負けない声で歌っているなって。このご時世そういう声ってなかなか貴重だし、後日セッションしてみたらいい感じだったので、やってみようかなっていう感じでした。

▲シンジョー

──フレーズがおもしろかったというお話がありましたけど、どんな音楽が好きだったんですか?

シンジョー:ずっと好きなのはレッチリ(Red Hot Chili Peppers)ですね。最初はベースが有名というところでフリーから入ったんですけど、レッチリのバンドサウンドがどんどん好きになっていって、いまも好きで聴いてます。最近の日本のバンドでいえば、ヒトリエが大好きですね。どっちのバンドも、同期を簡単に鳴らせられる時代でも人間が演奏するところにこだわっていて、すごくリスペクトしています。DOLL PARTSも同期は使っているんですけど、あまりピコピコした要素は入れずに、ギターの音やバンドサウンドを大事にしているので、自分の好きなものとかやりたいものと合っているなと思いますね。

──そして、昨年に児太郎さんが加入されたと。

ARISA:すごいたくさんのドラマーとセッションしてきたんですけど、なかなか見つからなかったんですよね。もうドラムなしにする?って話していたときもあったぐらい。そういうときに、たまたま共通の知り合いから紹介してもらって、一回セッションしてみたらすごくよくて。だから、決まるときはすんなりというか。

児太郎:うん。かなりすんなり決まりました。しっくりきたってことですかね。

シンジョー:会ったときから「コイツうまいなぁ」って。やっぱりロックバンドはドラムがうまいとほんとに助かりますね(笑)。バンドマンはドラマーにもっと感謝したほうがいいと思う。

──そこはありますね。児太郎さんとしては、声をかけられて、会ってみたときの印象というと?

児太郎:第一印象は「怖い」ですね。

──(笑)。ちなみにどちらが?

児太郎:いや、両方怖いじゃないですか!(笑) 

ARISA、シンジョー:はははははは(笑)。

児太郎:でも、話してみたらすごく優しくて。人ってこんなに外見と中身が違うんだなって思いましたね。僕としても、リズム隊で合わせて気持ちいいと思う人と今までなかなか出会えなかったので、すごく楽しかったし、即入りたいですって。

▲児太郎

──児太郎さんはどんな音楽が好きだったんです?

児太郎:僕はそこまでロックは聴いてなくて。マイケル・ジャクソンがすごく好きで、「Beat It」とかのロックテイストな曲から派生していった感じですね。エディ・ヴァン・ヘイレンがギターソロを弾いているっていうところから、ロックに興味を持ち始めました。

──元々ダンスをやっていたりとかは?

児太郎:どこかに習いに行ったりとか、ガチな感じでやっていたわけではないんですけど、(マイケル・ジャクソンが)大好きすぎて、ダンスのコピーをしたりとかはしてましたね。

──踊れるドラマーなんですね。

児太郎:まあ、言ってみればそうですね(笑)。

──いつかそういう場面が観れることを期待してます(笑)。今回リリースされる『THE FIRST TASTE OF ME』は、本来であれば昨年発表する予定だったそうですね。

ARISA:去年の5月に出す予定だったんですけど、コロナの影響もあって、レコ発ライヴも2回延期になってしまっていて。ただ、その当時に出す予定だったアルバムと今回のアルバムって、内容がまったく違うんですよ。総入れ替えみたいな感じで、ある意味パワーアップしたかなと思います。本来出すはずだったアルバムに入れようと思って作った曲もあって、それはなくなってしまったんですけど、その当時はまだ児太郎が入る前だったので、しっかりとDOLL PARTSのバンドサウンドになったかなって。

シンジョー:うん。この期間は悪いことばかりでもなかったですね。延期になったりもしたけれど、できることをやってきたらこういう形になったので。

──ただじゃ転ばないという。DOLL PARTSの楽曲は、ロックサウンドを軸に、歌詞は攻撃的なものや挑発的なもの、あとは官能的なところや毒もあったりと、様々なベクトルはありつつも、芯がしっかりしている人物像が目に浮かんでくるところがありますね。

ARISA:歌詞は基本的にすべて女目線なんですよね。そこは今回のアルバムもそうだし、私がやっていきたい世界観でもあるんですけど、テーマは「女」なんです。たとえば「Anata」みたいなちょっと切ない感じとか、「ア.イ.ノ.カ.タ.チ」の情念や執着心みたいなちょっと怖い部分とか、そういうものを全部書いていきたいし、大事にしていきたいなと思ってます。

──お2人は、ARISAさんの歌詞をどう受け止めています?

シンジョー:一本の映画やドラマを見ている感じがありますね。ただ、言葉は強いんだけど、たとえば“死ね”とか“殺せ”みたいな言葉は出てこないんです。その間にもう一枚挟まっていて。だけど哲学的すぎず、曲が聴き終わる頃には何が起こっていたのかがわかるっていう。

児太郎:特に「シャイなあなた」は、一回聴いただけで、「あ、ストーカーの話か……怖っ」みたいな。すんなり入ってくるし、そこはライヴでも同じですね。ライヴだと歌詞が入ってこないバンドって結構多いと思うんですけど、ARISAの場合は入ってくるのが魅力かなと思います。

──女性の考えている生々しい部分に触れる感じになると思うんですが、そこに驚きとか発見もあったりします?

児太郎:まぁ、怖いな……っていう。

──児太郎さん、ずっと怖がってますね(笑)。

シンジョー:はははははは(笑)。

ARISA:でも、前に「ARISAの歌詞って人を殺して食う曲ばっかだよね?」って言われて(笑)。

児太郎:でも、そんな人じゃないと思ってますから!(笑) 怖い歌詞もあるけど、「Anata」みたいな曲も書く人だっていうのはわかっているので。

──ARISAさんとしては、歌詞を書くときはあまり直接的にしすぎないように考えたりもされるんですか?

ARISA:どうだろう……そこら辺はあまり考えてないかなぁ。

──映画的なものにしようとかは?

ARISA:そこはあります。わかりやすいストーリーがあるものにできたらいいなというのは意識しているんですけど、私の頭の中に、さっき出てきた“死ね”とか“殺せ”みたいな言葉のチョイスがないから、たぶんそういう言葉が出てこないんだと思います。あとはスマホとかも、私が書くのであれば別の言葉にするんじゃないかなって。

シンジョー:タピオカとか絶対に出なさそう。

ARISA:出ないでしょ(笑)。

──先ほどお話にも出た「ア.イ.ノ.カ.タ.チ」はミュージックビデオを制作されてますね。


ARISA:「ア.イ.ノ.カ.タ.チ」は、DOLL PARTSはこういうものをやっていきたいというのが見え始めたときに作ったんです。さっき話したような情念や嫉妬みたいなものを描きたかったんですけど、そういうのってちょっと昭和っぽいというか。そういった「ロックだけど昭和っぽいニュアンスがあるもの」を作っていきたいし、それをバンドのカラーにしたいと思って、相談しながら作った第一弾がこの曲です。

──様々な感情の中でも、なぜ情念を描きたいと思ったんです?

ARISA:この曲は阿部定事件を元に書いたんですけど、情念ってある意味ちょっと切ない部分もあるじゃないですか。たとえば、あるカップルがいたとして、毎日すごく幸せなんだけど、それがずっと続いていると壊したくなる気持ちになる女の人って、たぶんたくさんいると思うんですよ。

──こんなの全部ぶち壊してやる的な?

ARISA:うん。結局はそれを実行に移すか、移さないかっていうだけで、たぶんそういう女性って多いと思うし、そういう歌詞を書くとおもしろいかなと思って。自分もそういうことを思う人だから、スラスラ書けるし、楽しくやれるので。

児太郎:そういった歌詞ではあるんですけど、曲調的にはわりと軽快で、メロディもポップなので、それがより怖い感じに聴こえさせているというか。なので、ドラムは軽快で、タイトなリズムを意識してました。バックビートというよりも、ジャストなタイミングで打つように心がけてます。

シンジョー:曲としても、自分達にとってわりと新しい感じではあるんですよ。リフも軽快だったりして。だけど、やっぱり最後はARISAの歌をしっかり聴いてほしいんですよね。この曲はDOLL PARTSの中でも何を歌っているのかストレートで伝わりやすいから、最初に聴くのにちょうどいいし、まさにミュージックビデオにふさわしい曲だなと思ってます。

──本作には「金曜日のベッド」や「シャイなあなた」といった過去に発表されている曲も収録されていますね。

ARISA:「金曜日のベッド」は個人ユニットの頃からやっている曲で、実は何バージョンもあるんですよ(笑)。ちょっとずつギターが増えたりとかして、やっと完成した!みたいなところがあって。

──まさにパワーアップですね。

ARISA:はい。今回のアルバムのために作った曲は「FAKE」で、他の曲もわりと最近のものが多いです。

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