【ライブレポート】大塚紗英、「みんなをハッピーにするためにやってきました!」

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2020年2月にソロデビュー・ミニ・アルバム『アバンタイトル』をリリースしたシンガー・ソングライター大塚紗英のワンマンライブ<SAE Vo.yage! vol.0〜出航!〜>が、4月9日にKT Zepp Yokohamaで開催された。

◆ライブ画像

元々は2020年6月に開催予定が新型コロナウイルス感染拡大の影響で、約1年越しのデビューライブとなったこの日。ライブを待ち望んでいたのは会場を埋めたファンばかりでなく、大塚紗英本人だということは開演直前に舞台袖から聞こえてきた彼女の気合いと歓喜の声からも伝わってきた。

タイトルである“出航”にちなみ、大きな波に乗って揚々と出航する様をドローイングするオープニング映像ではじまったライブ。バンドメンバーである、ひぐちけい(G)、瞳(B)、岩佐結里(Key)、mika(Dr)が登場しアンサンブルをスタートすると、大塚紗英が元気に登場して、「今日も今日とて雨ですが、みなさんを快晴にするためにやってきました」と挨拶すると1曲目は「ハロー快晴!」。後のMCで語られたが、彼女のライブの日は雨に好かれてしまうことが多いようで、これまでには台風や雪に見舞われるということもあったという。この日も申し合わせたように、開演直前に突然パラパラと雨が降りはじめるという安定の(?)ライブ日和。そんな天候もまた一興という感じで、とにかくビッグスマイルでその歌声を弾ませる姿に、こちらも笑顔になってしまう。


「みんなのこと、ドン引きされるほど愛してるよ!」という声でスタートしたのは、大塚紗英の代名詞とも言える曲「ドン引きされるほどアイシテル!」。君への思いがつんのめって妄想が加速する女の子をポップにキュートに描くこの曲では、カメラに向かって投げキッスしたり、少し恥じらいながらもかわいいポーズを決めたりと忙しい。マジカルなマーチングバンドのようなポップチューン「フォトンベルト」では、明るいハイトーンを響かせながら会場の高揚感を指揮していく。各楽器のソロに合わせてメンバー紹介をし、最後に「そして私がみんなをハッピーにするためにやってきました、大塚紗英です」と、パワフルな声を上げた。

そして改めてMCで昨年2月のデビューから、ようやくこの日を迎えられた思いを語り、「みんなの前で歌えるのは本当に幸せ。すごく幸せな気持ちです。なので、みんなも私と同じかそれ以上幸せにな気持ちになって帰ってもらえたら嬉しい」と語る。観客は感染症対策で声援や歓声を送ることはできない分、大きな拍手やサイリウムを振って思いを返す。声は出せなくとも、いかにこの日を待っていたかは観客が発する熱で伝わってくる。ステージとフロアの熱と歓喜が衝突して生まれる多幸感が、会場に満ちている。


そんなすっかり温まった会場に届けるのは「7月のPLAY」と「アンニュイが美的なのはファインダーの中だけ」というエモーショナルな2曲。また2年前に発売した写真集「Saestain」に合わせて作られたという「ピントは永遠に合わない」をピアノと歌というミニマムなスタイルで、じっくりと聴かせた。馬力あるエンジンを搭載しているような、周囲を明るく照らすエネルギッシュなヴォーカルとはまた一味ちがう、心が揺れ動く瞬間を切り取った繊細なヴォーカルもまたライブではより染みる。大塚紗英の豊かな表情を見せてくれる曲だ。

この日はゲストとして、同じ事務所に所属し『BanG Dream!』などでも共演している志崎樺音が登場。大塚の方が早く事務所に所属した先輩だが、志崎のマイペースぶりにタジタジになりながらも、ふたりのトークからはその仲の良さが伝わってくる。愛される末っ子キャラ的な大塚がお姉さんとして、優しいツッコミや合いの手を入れている感じもまたいい。そんな志崎を迎えて、「マーキング」と「Personality or States?」を抜群のコンビネーションで聴かせた。

「のんちゃん(志崎)が残してくれた熱気がすごい(笑)。負けないように歌います」と終盤に披露したのは、新曲「37兆2000億個の細胞全てが叫んでる」。自身の気持ちを表現するこのインパクトの高いワード感のタイトルは、まさに大塚紗英節。ハイカロリーなロックサウンドで、またコロナ禍でなかったら大きなシンガロングが巻き起こるだろうパートも用意された曲は、これからもライブで育っていく曲になるだろう。続く「アナタ茸」の疾走感溢れる曲、そしてラスト「ぬか漬け」では「踊れ!」と声を上げた本人が、ステージを跳ねまわり、しゃがみこんだり、ゴロゴロと寝転がって歌ったりと、エネルギーをすべて使い尽くすようなアグレッシヴさで歌い上げて、最後の最後まで会場の熱気をぐいぐいと上げていった。


「めっちゃ楽しい!」とアンコールのステージに立った大塚紗英は、今日のライブを迎えた喜びを改めて語った。この日は、MCで喋ることもカンペなしで、心のまま、ありのままで話をしようと思ったという。その言葉には、文字にするなら“!”とか“!?”がたくさんついてしまいそうな、溢れ出る興奮がリアルに伝わってくる。「本当に今日ライブができたのは、奇跡みたいだなって思う。でもみなさんに会えたのが、いちばんかな」と笑顔を見せる。

そして、7月に2ndミニ・アルバム『スター街道』がリリースされることがアナウンスされ、そこからの新曲「田中さん」を披露。一筋縄ではいかないタイトルに慣れっこだったファンも、「田中さん」は意表をついたようで、タイトルコールとともにファンは驚きの表情を見せる。しかしキャッチーなその曲に、会場は瞬時に大きな盛り上がりを見せた。この日披露された新曲の感触からも、幅広いサウンドで、エネルギーがこれでもかと注がれた作品になることはわかる。いよいよ“出航”となった、その旅先でさらにいろんな表情を見せてくれそうだ。

取材・文◎吉羽さおり

セットリスト

1.ハロー快晴!
2.ドン引きされるほどアイシテル!
3.フォトンベルト
4.7月のPLAY
5.アンニュイが美的なのはファインダーの中だけ
6.ピントは永遠に合わない
7.マーキング
8.Personality or States?
9.37兆2000億個の細胞全てが叫んでる
10.アナタ茸
11.ぬか漬け
アンコール
1.生き様
2.田中さん
3.What's your Identity?

2ndミニアルバム『スター街道』

発売日:2021年7月14日(水)

販売形態
【ライブ盤】AVCD-96721/B(ミニAL+Blu-ray)
価格:6,050円(税込)

【MV盤】AVCD-96722/B(ミニAL+Blu-ray)
価格:3,850円(税込)

【通常盤】AVCD-96723(ミニALのみ)
価格:2,750円(税込)

◆大塚紗英 オフィシャルサイト
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