【インタビュー】グレタ・ヴァン・フリート「全ての曲をライヴで自然にレコーディングする」

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4月16日、グレタ・ヴァン・フリートのニュー・アルバム『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』がリリースとなった。

世界中のロック・ファンが騒然となった2017年3月のデビュー・シングル「ハイウェイ・チューン」で聞かせた衝撃のサウンドは、そのまま以降4曲を全米ロック・ラジオ・チャート1位に叩き込み、ライヴ会場は故郷ミシガン州のバーから15,000人規模にまで拡大、五大陸で行ったワールド・ツアーで100万枚のチケットを売り上げる破壊力を持っていた。

世界の喝采と熱狂をたっぷりと吸収して、彼らはすべての体験を音楽の進化に反映、ここに『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』を生み出した。アルバムには、2020年10月に先行リリースされ、またも全米ロック・ラジオ・チャート1位をマークした5thシングル「マイ・ウェイ、スーン」を含む全12曲が収録されている。各曲にはそれぞれにシンボルマークがあしらわれており、「自由」「自分に力を与えること」「コミュニティの力」「母なる地球へのリスペクト」…といったテーマが与えられている。各曲のビジュアル・ストーリーもあり、その神秘的なビジュアルや12のシンボルは、全てアルバムのブックレットに掲載されている。


ここでは、キャッチすることができたダニー・ワグナー(Dr)に話を聞いてみよう。


──ミシガンからテネシー州のナッシュヴィルに拠点を移したそうですね。

ダニー・ワグナー:もともと僕達のビジネスの中心が長年ナッシュヴィルにあったんだ。マネージメントがナッシュヴィルにあって、バンドの機材も全部ナッシュヴィルに置いてあったからね。僕以外のメンバーは1年ちょっと前にナッシュヴィルに移住したけど、僕だけロサンゼルスに住んでいた。その後パンデミックが始まって、しばらく家にいなきゃいけないって分かったから、メンバーと一緒に活動ができるように僕も引っ越すことにしたんだ。

──そうして完成した新作『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』は、クラシック・ロックでありながらユニークなサウンドを持つ素晴らしい作品となりましたね。

ダニー・ワグナー:制作を始めたのは約2年前の夏…7月だった。その後半年ぐらいの間に10曲のベーシックをレコーディングしたんだけれど、その後パンデミックになって時間以外は何もないっていう、これまで経験したことのない状況になったから、森の中の山小屋に籠ることにした。目標ももたず、この期間に正気で前向きでい続けられるように、ただ4人でプレイして作曲をしていたんだ。その間に2曲ができた。アルバムの作曲ばかりしていた時期だったから、この2曲もアルバムにフィットする楽曲になったよ。仕事が再開されてからスタジオに戻って、その2曲をレコーディングしたんだ。ツアーができないかわりに、このアルバムに曲を沢山詰め込みたかったから全部で12曲になったけど、10曲はパンデミック前の作品、2曲がパンデミック後なんだ。奇妙だよね。

──最初の10曲はロサンゼルスでレコーディングされたんですね。

ダニー・ワグナー:そうだよ。でも最後の2曲もロサンゼルスでレコーディングしたんだ。プロデューサーのグレッグ・カースティン(フー・ファイターズ、ポール・マッカートニー、アデルなどをプロデュース)のプライベートスタジオでね。ロサンゼルスには1年行ってなかったけど、RV車を借りてロサンゼルスまでドライブしたんだ。6日間…本当はそんなにかからないけど、時間をかけてキャンプしてレコーディング前の旅を楽しんだんだよ。

──後からアルバムに加えた2曲は、どの曲ですか?

ダニー・ワグナー:「ザ・バーバリアンズ」と「キャラヴェル」。

──アルバム全体のまとまりがしっかりしているので、この2曲が他と違う時に作られたことは分からないですね。

ダニー・ワグナー:この2曲をレコーディングする時は凄く緊張してたんだ。グレッグの新しいスタジオで、使うのは僕達が初だったからどういうサウンドになるかが分からなかったんだ。けど、その前のレコーディングの時と同じ意識で臨んだら全てが迅速に進んで、この2曲も完成したらアルバムのサウンドになってた。だから、この時点での僕達は、他の曲とフィットするような曲のレコーディング方法が分かっていたんだと思う。



──『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』でのサウンドの進化とユニークさを聴くと、レッド・ツェッペリンの名前を出す人はいなくなると思いますが、バンドとして達成したかったことは何ですか?

ダニー・ワグナー:個人的な目標はあっただろうけど、バンドとしては新しいアルバムを出すこと以外に目標はなかった。僕達は、長年のツアーを通して自分達のスキルを磨いてライヴでの自信を培ってきたから、ニュー・アルバムの主な目標のひとつは、スタジオに入って全ての曲をライヴで自然にレコーディングするっていうことだったんだよ。メトロノームの使用も最低限に抑えた。多分、アルバムの90%がメトロノームもプログラミングも使わずに演奏して作られたものだよ。僕達がこのアルバムで一番誇りに思うのはその部分だと思う。

──グレタ・ヴァン・フリートらしいですね。

ダニー・ワグナー:グレッグの提案だったんだ。「ライヴは何も使わずに演奏してるんだよね?」って聞かれて「そうだよ」って返事したら、「じゃあ、同じようにレコーディングしてみようよ」って。僕達は顔を見合わせて「いい提案かもな」って思ったんだ。だから制作を始めた当初はテーマとかはあまりなかった。ただレコーディングを始めて、可能な限り自然にレコーディングをして、作品自体に発展させるっていうやり方だよ。


──今作の12曲にはそれぞれに神秘的なシンボルがついていますが、これは?

ダニー・ワグナー:パンデミックが始まってから、ツアーはできないしすぐにレコーディングもできなかったけど、時間だけはあったからそこで色々なアイディアを出し合っていたんだ。このアルバムは僕達にとって凄く重要だって分かってたから、それぞれの曲に文脈とパーソナリティを持たせたかった。それでシンボルを描いていった。古代の錬金術師達のシンボリズムや世界中のシンボルのことも調べたよ。ちゃんとやりたかったから長い時間がかかったけど、それぞれの曲を表すシンボルが見つかった。全ての曲がすごく重要だからね。

──ツアーでの経験も、そういった作品作りに影響を与えているんでしょうね。

ダニー・ワグナー:全てのアーティストが何らかの期待を持ってツアーに出てて、ツアーはそれぞれに意味がある。僕達は世界中をツアーする体験のために活動をしている。様々な人々に会って、彼らと触れ合ってある種のケミストリーが交換される。そして僕達はアーティストとして、それを世界に発揮できる最高の自由を手にしているんだ。ツアーは熱狂的で最高のフィーリングを僕達に与えてくれて、ツアー中の僕達はいつもポジティヴになれる。ツアーはそのフィーリングを提供してくれていたと思う。だから「マイ・ウェイ、スーン」の歌詞も、ジョシュにとってすごく自然に出てきたもので、彼もこんなにパーソナルな曲を書いたのは初めてだって言ってたな。これは僕達の真のロード・ソングなんだよね。「ハイウェイ・チューン」もそうだけど、あの曲よりもパーソナルだね。

──「マイ・ウェイ、スーン」のミュージック・ビデオは、自ら監督・制作を担い、ホームビデオを使った素敵な作品になっていますが、制作はいかがでしたか?

ダニー・ワグナー:最高だったよ。パンデミックが始まって、社会から離れて森の中の山小屋という安全な場所で僕達だけで過ごすことになったとき、カメラを沢山持っていったんだ。特に目的はなかったけど、自分達の記録のために全部を撮影しようってね。僕達がそういうことをする時間って今までなかったから大切なことだと思ったんだ。古い8ミリで撮影したんだけど、「マイ・ウェイ、スーン」は僕達にとってパーソナルな曲だから、パンデミック中に僕達が撮影した映像を入れたら凄くいいな…希望のエネルギーを出せる、と思ったんだ。使いたい映像を選ぶ以外は、そんなに時間をかけずに作れたよ。大丈夫だよ、誰でも同じことをする自由はある、そんなに難しいことじゃないってね。


──グレタ・ヴァン・フリートはライヴ・バンドですけど、ライヴができない状況というのは、バンドにとってどれほどのダメージなのでしょうか。

ダニー・ワグナー:想像を絶するほど大変だよ。パンデミックが始まった当初は、その後何が起こるか誰にも分からなかったし、数ヶ月のオフはいいことだと思った。その状況で全員ができるだけのことをやって、自分達の時間を持てばいいと気付いたから、すごく生産的だった。曲作りをしたり、アルバムのアイディアを出したり、アルバムをまとめたり…色々とやってた。でも6ヶ月ぐらい経過したところで、僕達はクレイジーになった。長い間奪われるまでそれに依存してたことに気づかない依存症みたいで、それは身体の内側から蝕まれるような感じだったんだ。ツアーのあのエネルギーが恋しくてたまらない。僕達はライヴを愛してるライヴ・バンドで、そうやって始まったんだっていつも言ってるから、その発言に自信が持てたことは良かったけどさ。

──自分のアイデンティティの一部が失われてしまったような感じですか?

ダニー・ワグナー:そうだね、そんな感じだよ。ただ、この1年間で過去数年の活動を振り返ることができた。当時は色々起こりすぎてて把握できなかったことをじっくり考えた年になった。ちゃんと座って、僕達がやってきたことを考えることができたんだ。そして、僕達にとってライヴは本当に大きな位置を占めるもので、それがないと僕達の内側が少し空っぽになったような気がしてしまうってことにも気づいた。

──日本でのライヴ再開も楽しみにしています。

ダニー・ワグナー:こんにちは、日本。君達がすごく恋しいよ。僕達は日本に行くのが大好きだよ。日本公演をキャンセルしなきゃならないこともあった。だから、また日本に行ける日をすごく楽しみにしてる。世界がなんとか解決策を見出してくれることを願ってるよ。僕達は日本に行きたいからね。僕達の新しい曲の数々を、楽しんでもらえるといいな。

インタビュアー:鈴木美穂
編集:BARKS編集部


グレタ・ヴァン・フリート『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』

2021年4月16日発売
UICY-15978 / ¥2,750(税込)
※日本盤アルバムにボーナス・トラック収録
※日本盤CDの購入者から抽選で直筆サイン・プレゼント
詳細:https://www.universal-music.co.jp/greta-van-fleet/news/2021-03-19/
試聴・予約:https://umj.lnk.to/gretavanfleetpr

◆グレタ・ヴァン・フリート・レーベルサイト
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