【インタビュー】Psycho le Cému、結成記念日に<理想郷旅行Z>完全復活「新たなスタートを一緒にお祝いできたら」
Psycho le Cémuが結成記念日の5月3日、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて20周年アニバーサリーであり、新たな一歩を踏み出す意味も含めたライブ<理想郷旅行Z 〜二十年後の僕達へ…〜>を開催する。結成20周年の一大プロジェクト『TWENTY STORY』が幕を開けたのは、約2年前の2019年5月3日のことだ。袴や着物姿でのライブ<Psycho le Cému 20th Birthday Party 〜ぼくらの成人式〜>を皮切りに、氣志團やMUCC、cali≠gariやLM.Cなど全7組との対バンライブ<ライバルズ>に挑むなど、全20章におよぶ様々な企画を打ち立てて精力的な活動を行ってきた。
◆Psycho le Cému 動画 / 画像
同20周年プロジェクトは2020年5月3日にPsycho le Cémuの地元である姫路文化センター大ホールで大団円を迎えるはずだったものの、新型コロナウイルスの影響により、昨年春以降予定していた全国ツアーが中止になるなど、当初の計画の変更を余儀なくされることとなった。ところが、20年の歴史の中、さまざまな困難を乗り越えてきたPsycho le Cémuはやはりタフなバンドだった。持ち前のエンターテインメント精神を活かし、考案したシナリオをゲーム映像に落とし込んだ5周連続のオンラインライブを実施したほか、カラフルでぶっ飛んだコスチュームを脱ぎ捨て5人が真っ白な衣装でステージに立つなど、挑戦を続けている。その日々は復活シングルのタイトル「あきらめないDAYS」の如し。コロナ禍におけるPsycho le Cémuの活動や心境を振り返りつつ、約1年ぶりのお芝居も披露されるという5月3日の結成記念ライブについて、DAISHI(Vo)とseek(B)にたっぷり語ってもらった。
◆ ◆ ◆
■オンラインライブは自分を成長させてくれた
■以前より歌にも音にも神経質になっていった
──2019年からスタートした結成20周年の記念プロジェクト『TWENTY STORY』は新型コロナウィルスの影響で思うように進まなかったことも多々あったと思います。どんな風にモチベーションを保ってきたんでしょうか?
seek:2020年2月に予定していたツアーが延期になったこともあって、4月ぐらいまでは再開できるのかどうか対応に追われていたんですが、それと並行して、「配信ライブが今後は新たなライブのあり方のひとつになってくる」という話を制作チームとしていました。Psycho le Cémuのようなエンターテインメントなバンドなら、配信に特化したライブを作れるんじゃないかと水面下では進めていたんです。なので、モチベーションを保つというより新たなチャレンジをするという観点からいろいろ詰めていきましたね。
DAISHI:22年間、いろいろあったバンドなのでコロナ禍でライブができないということに関してはそんなにネガティヴに考えずにオンラインという新しい方法の中で何ができるのかっていう。当初はここまで長引くと思ってなかったですけどね。
▲DAISHI [Vo] |
DAISHI:ですよね。その頃はオンラインには慣れていないけど、ライブでゲームっぽい映像を入れてみようとか、配信映像にどう向き合うのか考えていたので、そんなに苦しく感じることはなかったです。
seek:僕らはバンドなのでメイクをして変身するのが本来のPsycho le Cémuのあるべき姿なんですが、5人で集まることすら去年4月の緊急事態宣言が出た時期は、“密”だと言われていたんですよね。バンドという形態自体がコロナに向いていないというか、僕はすごく息苦しさを感じていました。そんな状況下でもエンターテインメントをできる方法がないか考えていた時期ですね。
──では、オンラインライブをやることを具体的に考えたのは緊急事態宣言の後ぐらいだったんですか?
seek:そうですね。本来、5月までツアーをやる予定だったのが延期になって、当初は夏以降に仕切り直すつもりだったんですが、それも結局はできないまま中止という結論になってしまったんです。オンラインライブのミーティングをリモートで始めたのが4月ぐらいだったと思います。そこで新しいPsycho le Cémuの見せ方を見つけようとはしていました。
──ミーティングを何度もされたと思いますが、配信ではこういう見せ方をしようとか、一致したヴィジョンはありましたか?
seek:オンラインライブ<勇者物語 外伝~未来をあきらめない日々~>は6月から5週連続でやらせていただいたんですけど、Psycho le Cému自体、衣裳を含めていろいろな見せ方ができるバンドだし、歴史の長さもあって曲数もたくさんあるので、週ごとにテーマを変えてお届けしたんです。いろいろな自分たちを楽しんでいただけたんじゃないかなと思います。
──無観客ライブは初体験だと思いますが、チャレンジしてみての発見や戸惑いがあったら教えていただけますか? 誰しも最初は試行錯誤だと思うんですよね。
DAISHI:個人的なことを言えば1回目と2回目は良くなかったですね。歌いにくいというか、ライブがしにくい感じはありましたから。
──どんな面でそれを感じました?
DAISHI:アーカイブ配信が音楽的に気になったという部分ですよね。リアルタイムのライブ感を重視するのか? 後でアーカイブでも見られることを考えたほうがいいのか?っていうせめぎ合いがあって。ライブって会場の爆音の中で「わー、今日は楽しかった!」って帰ってくれるものだったけど、あとでじっくり見直したり、冷静に聴くと、気になる部分が出てくるのかなと思ってたんです。体験していく内にそういう点とライブ感を両方、意識できるようになったので、オンラインライブは自分を成長させてくれましたね。練習量や気にする度合いが増えました。前より歌にも音にも神経質になっていったという。
──歌で言うと例えばピッチだったり?
DAISHI:そうですね。ピッチもリズムも含めて。バンドとしての演奏もかなり良くなっていったと思います。
▲seek [B] |
DAISHI:そこはすぐに慣れて、画面越しにファンの方々の存在を感じるようになりましたね。AYAくんから「8bitの音楽に合わせてゲームの映像を入れたい」とか、プロデューサー的な視点で「こうしたい、ああしたい」ってアイディアが出てきて。それがハマったんですよね。
seek:オンラインに関して言うと、Psycho le Cémuのライブと考え方を切り替えていて、例えばSEが鳴ってメンバーが登場するのが通常のライブですが、配信で無観客なら、SEを映像にすることもできるし、板付きであれば映像からそのまま演奏が始められる。生のライブでは僕らがお芝居をして楽しんでいただいていたけれど、オンラインライブではゲームのシナリオを作って、お芝居ではなく映像が世界観となってゲームが進んでいくという演出をしたので、配信ライブだからこそできる見せ方を多く盛り込んだんです。結果、いつもと違う楽しみ方をしていただけたんじゃないかなって。
──オンラインライブだからできることを探していたんですね。
seek:ええ。さっきDAISHIさんも「5本中3本目ぐらいからすごく良くなった」という話をしていたと思うんですが、公演が終わるごとにメンバーもスタッフもアーカイブで確認して、細かいところをブラッシュアップした作業がすごく大きかったですね。そうしないといけないぐらい初めての作業がたくさんあったんです。音響さん然り、照明さん然り、今までのやり方と違うので、実際にスピーカーから出ていない音も使っていたり、初めての経験なのでみんな技術を上げていかないといけないところが多々あるんです。何かトラブルが起きたときに過去の事例とは対処の仕方も違うので、「今回のトラブルを今後、どう解消していくのか?」っていう話をしたりしましたね。
──観ている人の環境もそれぞれ違いますからね。
seek:こっち側のトラブルなのか? そうでないのか?によっても対処の仕方が変わってきますから。
──意識的にも大きな変化が生まれたんですね。
DAISHI:変化は明らかに自分の歌にも出ていますね。アーカイブで見直すたびに良くなっていったのは、今まであまり味わったことがない経験でした。演奏チームもオンラインを通して確信するぐらい変わったと思ってます。以前、cm単位で気になっていたことが今は㎜単位になったぐらいのイメージがありますね。
seek:オンラインライブってカウントから始まって演奏に移行するという意味では、TV番組の収録に近いんですよね。でも、同じではないし、自分が視聴者になって観てみると、生で演っているはずなのにライブDVDを観ているような感覚があって、ファンの方からすると実はストレスがあるんだなって思ったんです。ライブDVDやBlu-rayの映像はちゃんと編集してあるじゃないですか。“ここは見せ場”というところにちゃんとカメラがスイッチングされて、然るべきメンバーにスポットが当たるんですけど、配信ライブはやる前に僕らもすごく細かい資料を作るし、映像チームも確認した上で臨むんですけど、どうしても生なのでファンの人が見たい画がなかったりすることもある。環境的にも家で観ていたり、何かをしながら観ていたりとか、ライブハウスにいて集中している環境とは明らかに違うんですよね。でも、そういう中でいかにライブと同じように興奮していただけるのか?って。
──そこも課題だったんですね。
seek:TV番組の収録って煽らないし、レスポンスを求めないですよ。でも、配信ライブである以上はお客さんが画面の向こうにいるわけで、バランス的に通常よりは煽り過ぎないほうがいいかなって。でも、回数を重ねていくと、お客さんがホントに目の前で観ている感覚になって、気持ちよく煽れるようになってくるんですよ。そういう意識の変化はあった気がします。
DAISHI:確かに。
seek:演奏も初めはちゃんと弾かなければいけないっていう意識があったんですよ。音源に近いベースというか、ライブレコーディングに近い感覚だったと思うんです。だけど、もっと自然体というか、ライブ感とうまくバランスをとって演奏できるようになったかなと思います。
──エンターテインメントという意味で、演出を含め、Psycho le Cémuならではのバンドの特色が配信という形で活かせるんじゃないかと思ったのも、シフトする上で大きかったですか?
seek:僕ら、配信を始めたのは早いほうだと思うんですが、スピード感を含め、こういう不自由な時代でも面白いことをやっているバンドがたくさんいたんですよ。サザンオールスターズやMUCCもそうですが、そういうバンドはどんな状況下でも面白いことができるんだなって。振り返ると僕らも自信を持ってAYAくんのアイディアを形にして良かったなと思いますね。
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