【ライブレポート】Homecomings × 羊文学、共鳴しあう自然発生的な音楽

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Homecomingsによるツーマン企画<"here">が4月16日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。ゲストは羊文学。インディーロック、シューゲイザー、グランジ/オルタナといった音楽性とポップネスを兼ね揃え、女性ギターボーカルで男性メンバーは1名といったバンド構成に、畳野彩加はくるり、塩塚モエカはASIAN KUNG-FU GENERATIONとそれぞれ日本のロックシーンにおいての最重要バンドの楽曲にゲストボーカルとして参加しているなど、非常に共通項の多い2組だ。

◆羊文学 ライブ写真
◆Homecomings ライブ写真

なかでもこの2組が共鳴しているのは、空気感が音楽と直結していることと言えるのではないだろうか。“強い意志を持ったこの4人、この3人が集まったからこういう音楽になるのだ”という自然発生感がある。2組ともあれだけ歪んだギターを鳴らし、インパクトの大きなドラムが響くというのに“心地のいい音楽”と評されることが多いのは、メンバーのナチュラルな呼吸や立ち振る舞いが土台にあるからだろう。これだけ多くの共通点を持ちながらも、2組の楽曲が一切似通っていないのも、同様の理由と言っていい。

人数制限を設けての開催ながらも反響が大きく、急遽2部制となるも両公演ともソールドアウト。羊文学は1日に2回ライブを行う経験は初めてだったという。2020年12月にリリースした『POWERS』の楽曲を大枠とし、最新の配信シングル「ラッキー」など全9曲で現在のバンドのモードを届けた。


ブルーグレーのノースリーブのロングワンピース姿の塩塚モエカ(Vo,G)、白いノースリーブのロングワンピース姿の河西ゆりか(B)、地面と近い位置にセットされたドラムを黙々と叩く黒いシャツとパンツ姿のフクダヒロア(Dr)と、装飾を限りなく排除したステージも一人ひとりの存在をより際立たせる。

塩塚と河西がフクダのもとに身体を向け、3人で円を作って音を鳴らすシーンも多かった。その情景が羊文学の音楽の“3人以外が立ち入ることができない聖域”的な側面をシンボリックに映し出す。それがさらに、彼女たちの音楽のなかへ飛び込みたいという衝動を掻き立てた。3ピースならではの音数が、塩塚のエフェクターワークやリズム隊の作り出すなめらかな強弱によって厚みや造形を変えていく様子も、しなやかで美しい。


ざらついていてもキュートな音色、飄々としながらも凄みを感じさせる佇まい。軽やかでありながら重厚感もあり、アンニュイでありつつもフレッシュで、歪であり可憐で、無垢な透明感と耳を劈くような暴力性が同化し、幻想的だけど禍々しい。塩塚の声は消え入りそうな危うさを放ちながらびくともしない強さを感じさせるなど、対照的なものが同居する音の渦に翻弄されてゆく。

隅々まで切なさで溢れているのに、音から見える景色は雨模様や闇というよりは光だ。謎めいた世界が繰り広げられながらも、ただただそれに身を任せていればいいと思わせる不思議な安心感。その正体はなんなのだろうかと考えていたが、ラストに演奏していた晴れやかなポップナンバー「あいまいでいいよ」の歌詞にあるように、本当のことは後回しでもいいのかもしれない。木漏れ日のなかで見た夢のような、甘くもほろ苦い時間だった。


Homecomingsは序盤から「Cakes」「LIGHTS」「HURTS」と、バンドの重要曲を連ねていく。先日行ったインタビューで福富優樹(G)が“バンドとしてしっかり地に足がついている感覚がある”と話していたとおり、それを物語る晴れやかで堂々としたサウンドスケープだ。凛々しさで満ちた石田成美(Dr,Cho)のドラム、弾力のある福田穂那美(B,Cho)のベース、ロマンティックで瑞々しくピュアな福富のギター、フレッシュなリズム隊のコーラス、クールでオーガニックな佇まいの畳野の歌声が、楽曲を鮮やかに照らしていく。内なる高揚感がじっくりと音を通して露わになっていく様子は雄大な風格があり、4人それぞれ持ち合わせる個性が隅々まで溶け合っていくグルーヴは爽やかな風が吹き抜ける春のような清涼感だ。


2時間きっかりで終演するためアンコールはないとMCで語る福富は「また羊文学とLIQUIDROOMで完全版のツーマンをしたい。そのときは2組で一緒に演奏したりもしたい」と次回への意欲を見せる。続けて観客にメジャーデビューを報告。「一心不乱にメジャーデビューを目指していたわけではないけど、自分たちのやりたい音楽を続けていたらここに辿り着いて。この4人、誰も欠けることなくメジャーデビューできて……本当にうれしいですね」と幸せそうにはにかむ姿に、胸があたたかくなった。直後に披露された「Songbirds」は、4人それぞれの音がHomecomingsの音楽を構成しているのだという自覚と矜持、そこへの居心地の良さを噛みしめているように聴こえた。


澄み渡る青空を想起させる「Hull Down」のあと、5月にリリースされるメジャーデビューアルバム『Moving Days』収録曲であり、イベントのタイトルでもある新曲の「Here」を披露する。穏やかさのなかに力強さを宿した楽曲で、心地のいい緊迫感は春の肌寒い夜明けのよう。4人の音楽への美学や、覚悟にも似た真摯な心情が伝わってきた。そこから幻想的で繊細なタッチのインタールードを挟み、ラストは「Blue Hour」。静かに燃え上がるような迷いのない演奏は、バンドがこれまでに積み重ねてきた道程を感じさせた。


ステージに残響を残したまま、4人がその場を去ったのは20時57分。21時までに終演するという約束をしっかり守るところ、<here>という場所を優先させるために「Herge」ではなく「Here」を演奏するところも、Homecomingsらしいポリシーを感じさせた。メジャーデビューという新しいスタート4人の、夜明け前のような1日。ここからどのような物語が広がっていくのだろうか。『Moving Days』から始まる新章を心待ちにしたい。

取材・文◎沖さやこ
写真◎Tetsuya Yamakawa

夜公演セットリスト

■羊文学
1.ハイウェイ
2.ラッキー
3.mother
4.powers
5.人間だった
6.優しさについて
7.1999
8.ghost
9.あいまいでいいよ

■Homecomings
1.Cakes
2.Lights
3.HURTS
4.Songbirds
5.Hull Down
6.Here
7.Blue Hour

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