【俺の楽器・私の愛機】120「母親の男気が詰まった思い出」

【musicman stingray】（東京都　ロン毛のベース弾き　36歳）


今から15年以上前に購入したmusicman stingray。元々この一本前にs.u.bのstingrayを使っていました。

しかし、大学の学園祭4日前にジャックが壊れ、楽器屋に持ち込むも修理に3週間かかると言われ、仕方なくお預け。

「しまったなぁ。友人からベースを借りるかぁ。でも周りはみんな学園祭で使ってるからなぁ。使ってないやつとか持ってないかなぁ。」と意気消沈しながらピンチを切り抜けるべく、周りに聞き始めていました。

母親に何気なく楽器の故障などの話をしていると、突然、「最後の学園祭で借り物を使って出るのか。その借りる友人にも負担が掛かるし、君のバンドメンバーにも迷惑だ。この悩みは金で解決できるのか。」と言われました。

そりゃね、手持ちのお金を使えば何とか安い代替品は買えるけど、、、んー、と悩み続けていると。

バサっと封筒を一つ、渡してくれました。

中を見ると20万円入っていました。
「使いなさい。すぐ楽器屋に行きなさい。」と、一言。

・・・マ、マ、ママーン！！！！（涙）
なんて、なんてロックなんだ！！！！（大涙）

普段、こんなことあったら遠慮しますが。
これは断ってはいけないと、この気持ちをありがたく受け止めて、ずっと欲しかった本家のstingrayを買いに出掛けました。

電車に乗っている間、カバンの中の現金を絶対落とさないように、そして絶対に後悔のない買い物をしなきゃという熱い気持ちでした。

渋谷の楽器屋に着くと、店の奥に何本もstingrayが並んでいて。その中から黒のやつが気に入ってしまいました。まさに自分が欲しかった音。どかーんとミッドが出て、バリバリとハイの鳴る、ローも全部素敵。

しかし、販売価格が25万円、、、。ネットで見ていたやつより高いやつ、、、。あるある、そんな出逢い。

足りない、しかしどうしても欲しい（「いや、自分で追加資金出せよ」と、今思いますが。それすらできない金欠状態だったのです。）。

店員さんに事情を話し、「即金で20万円払います。ケースも何もいらないから値下げして欲しい。このベースで学園祭に出たい。母親が支援してくれたんです。」と頼みました。

後にも先にも、楽器買う際に必死に値引きをお願いしたのはこの時だけ。
店員さんが店長さんに相談してくださり、「いいよ、今日は月締め日だからいいよ。お母さんに感謝しなね。」と快諾。
20万円ぴったりにしていただきました。

安いソフトケースをもらい、またもや慎重に慎重に家に帰りました。

ただ、帰ってから母親に見せるも「前のやつと何が違うの？？」と笑われましたが。

ママン、違うんですよ。全然違うんですよ。

以来、ずっとこのベースがメインです。どんなライブでも、セッションでも。

この楽器を引っ提げて、色々な場所へ行き色々な方に出会い、色々な音楽に出会いました。
あの時購入していなかったら、恐らく楽器はもうやっていなかったかもしれません。

色々な出会いを経て、自分にも家族ができて、子供もいます。
いつか息子らが同じ悩みを抱えた時、自分の母親と同じことができるよう、そんな相談をしてもらえるような関係でいられるよう甲斐性を持って、仲良くしていきたいです。

けど、このベースはちょっと譲れないなぁ。

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全米が泣いた。ママン、これが人間だよ。ここまで読んだ人、もう一回頭から読み直して、その思いを胸に染み込ませよう。（JMN統括編集長 烏丸）


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