【インタビュー】THE ANDS、10周年の転機と偶発的覚醒「曲を作って演奏してればいいという時代じゃない」

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■もうこのアルバムの曲しかやりたくない
■言葉を選ばずに言うと。やりますけどね

──その中でも今回、最も手応えを感じた曲を挙げるとしたら?

磯谷:そうだな。僕がピアノを弾いている曲があるんですよ。それはさっき聞かれた新しい試みと言ってもいいのかもしれない。2曲目の「ghost of you」は、僕がピアノを弾いて、THE NOVEMBERSのケンゴマツモト君にギターを、NATSUMENの加藤雄一郎さんにサックスとフルートを演奏してもらったんです。僕がピアノでデモを作って、「これ、僕がピアノを弾くから、そういう曲にしよう」とメンバーに言ったら、メンバーもおもしろがってくれたんですけど、そこから「せっかくだから3人以外のメンバーとセッションしましょう」って流れになって、ケンゴ君と加藤さんに協力してもらったんです。

──じゃあ、磯谷さんはこの曲ではギターを弾いていない?

磯谷:弾いていないです。ピアノだけです。そういう意味では、今までとは違いますね。

──なぜ、この曲はピアノでデモを作ったんですか?

磯谷:ピアノを習慣的に弾いているんですけど、その時、たまたまできたんですよ。ただ、ギターに起こすのは違うと言うか、ギターアレンジを求めている曲じゃないと思ったので、ピアノで骨組みを作っちゃったんです。

──習慣的にピアノを弾いているということは、これまでもピアノを弾きながら曲ができることがあったんじゃないかと思うのですが、その時はギターに起こしていたんですか?

磯谷:そうですね。曲が弱かったんだと思います。ピアノで作ったものの、ピアノに落とし込むような曲じゃなかった。でも、「ghost of you」は絶対ピアノだって感じだったんでしょうね。

▲THE ANDS

──「ghost of you」に参加しているおふたりとはどういう繋がりなんでしょうか?

磯谷:ケンゴ君は、彼がTHE NOVEMBERSに加入したぐらいの頃からの古い友人です。お互いにリスペクトしあっていて、僕は新曲ができるといつもケンゴ君に聴いてもらっていたんです。そしたら、ありがたいことに彼が「弾きたい」と言ってくれてですね。それで弾いてもらったのが「parallel」。2年前ですね。メンバーも「いいですね」って言ってくれたんですけど、今回、アルバムをレコーディングしている時に、「またケンゴ君に弾いてもらおうか」って話になって、「ghost of you」で弾いてもらいました。

──「parallel」のE-bowを使ったロングトーンのギターはケンゴさんですか?

磯谷:そうです。

──最初にアルバムを聴いたとき、ケンゴさんがどの曲に参加しているのかわからなかったんですけど、「parallel」を聴きながら、これはケンゴさんっぽいって思いました。

磯谷:ですね(笑)。

──そして、NATSUMENの加藤さんは?

磯谷:加藤さんは同郷の先輩です。それこそSuperflyだったり、矢沢永吉さんだったり、エレファントカシマシだったり、錚々たる人たちの現場で演奏している方なんですけど、福島会って同郷のミュージシャンだけで飲む集まりがあるんです。そこで仲良くさせてもらっていて、何度か僕のソロライブでセッションしたこともあるんですよ。そうしたら、今回、アルバムのレコーディング中に「他にも誰かとセッションしたいね」って話になって、「それだったら、いい人がいるよ」ってメンバーに提案して、加藤さんに声をかけさせてもらいました。

──ゲストの演奏も含めたバンドサウンドやユニークな音像ももちろん大きな聴きどころだと思うのですが、今回、すごくいいなと思ったのがメロディを含めた曲の魅力でした。アルバムを聴かせてもらってから、けっこう知らず知らずのうちにメロディを口ずさんでしまうんですよ。

磯谷:そんなふうに言っていただけるとうれしいですね。すごくプリミティブなところだと思うんですよ。楽しければ、踊りたくなるし、心地好ければ口ずさむしっていうのは、人間的なところなんじゃないかな。そういうところまで行けたんだとしたら、すごくいいですね。


──改めて、『herein』はTHE ANDSにとってどんな作品になったという手応えがありますか?

磯谷:僕らのようなバンドがいたんだという証明じゃないですけど、THE ANDSというバンドがいるんだよって誰かが紹介してくれる時に、このアルバムを薦めるみたいな、バンドのアイコン的な作品なのかなと思ってます。言葉を選ばずに言うと、もうこのアルバムの曲しかやりたくないです。いや、やりますけどね(笑)。お客さんからお金をいただいてライブをやる立ち場なので、みなさんが聴きたい曲をやりたいと思いますけど、それぐらいの気持ちと言うか、最新の曲だけ聴いてもらって、感じてもらいたいという気持ちはありますね。

──悔いはない、と?

磯谷:はい。それはもちろん。ただ、悔いはないんですけど、出しきったら出しきったで、また次のフェーズに進みたいという気持ちが出てきて、すでに新曲も書き始めているんですよ。今日、サウナに入っていたら、1曲、これからの代表曲になるんじゃないかっていうくらい良い曲ができて(笑)、それぐらい物を作りたい、生み出したい。以前は燃え尽き症候群みたいなことがあったんですけど、今回はすぐに「おまえの人生、もう残り少ないんだから曲を書かなきゃダメでしょ」って声が聞こえてきて(笑)、自然と曲を書いちゃってますね。このエンジンがかかった状態が続けば、すぐに次の作品が出せるんじゃないかな。今のことしか考えられないと言いつつ、それくらいの気持ちもあるんですよ。

取材・文◎山口智男

■vorfahr第一弾アルバム『herein』

2021年4月21日(水)発売
※サブスクリプション配信:2021年5月21日(金)スタート
VFCD-001 ¥2,200(税込)
01. dumm
02. ghost of you
03. hopeless
04. helicon was fire
05. draw breath
06. no way
07. pine baron
08. parallel


▼配信リンク
・iTunes:https://itunes.apple.com/jp/artist/the-ands/446703919
・Apple music:https://music.apple.com/jp/artist/the-ands/446703919
・Spotify:https://open.spotify.com/artist/1GK5RSgqfuXWdvbaCVABqm
・Amazon:https://www.amazon.co.jp/THE-ANDS/e/B00872UKGC/ref=dp_byline_cont_music_1


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