【レポート】Q.A.S.B.が触ってみたYamaha reface「“小さい見た目の割りに本格的な音が出る”という以上に素晴らしい!」

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“レア・グルーヴ”バンド・Q.A.S.B.と、フェラ・クティ直系のアフロビートバンド・JariBu Afrobeat Arkestraで鍵盤を担当している石川雅道と申します。両方のバンドで代表を務めていますが、一方でSoul Garden Recordsという主にアナログレコードをリリースするインディー・レーベルを主宰していますので、合わせてよろしくお願いします。

◆Q.A.S.B.が触ってみたYamaha reface 関連動画&画像

■ツアー“だけ”用に購入したものの
■結局日本でも使い倒しているreface

僕の、初めてのシンセサイザーは大学2年のときで、奇しくもYamahaのDX7。20kgくらいある重い楽器で、楽器屋から最寄りの駅まで運ぶのを友人に手伝ってもらったのを覚えています。このころシンセサイザーといえば大体がDX7か後継種のDX7II、あとはKORG M1が出たばかりだったか……そんな時期かと思います。当時DX7はパネルに表示されているアルゴリズムがマニュアルを見ても自分には理解できず、音作りに難儀して、結局、プリセット音源ばかり使っていたような記憶がありますね。要は、使いこなすだけの実力と根気が無かったということですが(笑)。

▲JariBu Afrobeat Arkestra(写真は筆者提供。右端が筆者)

さて。今回タッチ&トライするYamahaのrefaceは、2016年のJariBu Afrobeat Arkestraでフランス/スペイン・ツアーが決まっていたタイミングで、鍵盤をどう調達しようか頭を悩ませていた、ちょうどそのころ偶然目に止まった逸品です。現地ミュージシャンから、とある鍵盤を貸してもらう話にはなっていたものの、現地ではいろいろと機材トラブルもあるだろうと思ったのと、このrefaceは乾電池で動くので電圧の違いに関係なく駆動して、また、小さいので機内持ち込みできるということもあって、試奏もせずに即購入した経緯があります。JariBu Afrobeat Arkestraでは主にエレピとオルガンの音色が使われるのですが、テーマなどリードをとるとき以外は、基本ミニマルというか、決まった単純なリフレインを引き続けるというタイプの奏法だったため鍵盤数も少なくても全く問題ない……ということで、購入したのはオルガン系のYC、それにエレピ系のCPの2機種。

結局、ツアーで使用したのはYC(オルガン)のみでしたが、CP(エレピ)も思わぬところで役に立ったエピソードが。パリでのライブの前日の晩に、フェラ・クティが率いていたEgypt 80のギタリストだったKiala Nzavotungaさん(娘さんのKiala OgawaさんもミュージシャンでKodamaというユニットでフジロックにも出演)を、パリに在住のフェラ・クティの奥さんが経営されているバーで紹介していただき、話の流れでせっかくだからKialaさんが当時(1981年)レコーディングで吹き込んでいる「Original Suffer Head」を一緒に演奏しようということになってしまい……で、僕がその曲を知らなくて……(汗)……翌朝早起きして、観光ついでに宿泊していた近郊のビュット=ショーモン公園に行って練習しようと思い、そのときにreface CPを持っていきました。そう、refaceにはスピーカーが付いているのでアンプとかなくても音が出せるのです。


ところで、これらrefaceはツアー用に購入したので、日本では使わないだろうなと思っていたのですが、特にYCはキチンとドローバーが搭載されていたり非常に出来が良く、有名なハモンド系オルガン音色だけでなく、他のヴィンテージ・オルガンも用意されていて(中でもイタリア系ヴィンテージFARFISA系の音色は重宝します!)、JariBu Afrobeat Arkestraのライブでは毎回使っている優れものだったりします。


一方CPはRhodes、Wurlitzer、Clavinetのようなブラック・ミュージックに欠かせないヴィンテージ・エレピ系音色が搭載されていて、WAH/TREMOLO、CHORUS/PHASER、REVERBなどで、本格的なエレピと同様、自在に音色を作れます。DELAYがデジタルとアナログの2種類あるのがユニークで、特にWurlitzerやRhodes系音色にアナログDELAYをかけるとヴィンテージらしさが増しますね〜。37鍵と鍵盤数が少ないため、普段からエレピを使う方には物足りないかもしれないですが、鍵盤のタッチの強弱で思った以上に表情を作ることができるので、鍵盤そのものの設計にも細かい工夫が施されているのだなと感じます。

■コンパクトならではなデザインで
■パラメーター動かし過ぎな件

ということで、前振りが長くなりましたが今回お借りしたのはreface CSとDXの2機種。


まずアナログ・シンセ系のCSですが、シンセの音作りのための各パラメータが視覚的に非常に分かりやすく表示されています。パソコン上で動かすDAWでは、いちいち数値を入力してその都度音色を確かめて好みに合うように少しずつ調整するのですが(僕の場合)、このCSでは片手で音を出しながらもう一方の手でパラメータを動かせるので音を探しやすいという操作上のメリットがあります。

しかも、しばらく使ってみてようやく分かったのですが、全てのパラメーターが、アナログ・シンセによくある(左右に回す)ツマミ形式ではなく、上下に動かすスライダー形式であるのが、非常に重要なポイント。上下に動かす場合、隣接するスライダー(例えばLFOのDEPTHとRATE、EFFECTのDEPTHとRATEなど)を親指、人差し指、中指の3本の指を使えば、同時に2パラメータを動かすことが操作上可能なんです。これはツマミでは無理(やって出来なくはないが、コントロールは難しい……)。エンベロープ(音の発信の速さ、減衰の速さなどの調整)でさえ、(弾いていない方の手の)5本の指を使ってスライダーを動かせば、アタック、ディケイ、サステイン、リリースをほぼ同時に変えることも可能ではないでしょうか? あと、僕的に面白かったのが、MONO/POLYの切り替えスライダーの延長上にポルタメント機能が付いているというデザインでした(一番下がMONOで、その上がPOLY、スライダーをさらにあげるとポルタメントのかかり具合が徐々に強くなる)。小さなことかもしれないですが、うまく組み合わせて省スペース化したなと感心しました。パネルもなく、まさに“アナログ感”満載。内蔵メモリーが無く本体内に作った音を保存することはできないようですが、シンプルな設計なので再現性が高いと思います。


次にDX。まさに自分が最初に手に触れたDX7系統のFM音源です。CSに比べれば複雑といえば複雑ですが、それでもかなり分かりやすいパネルが音作りを容易にしていますね。DX7はもうかなり昔に手を離れてしまったので比較が出来ないのですが、4つあるオペレーター(波形の元)がどういう順番で並べられているか、そしてそれらがどのようにお互い干渉しあっているのかという状態(フィードバック)を表すアルゴリズムがパネルに表示されるので、今鳴っている音の状況把握が一目で分かるというのが助かります(DX7のパネルは音色名のみの表示だったかと思います)。これが分からないと最初から迷子になっている状態で音作りをしないとならないので……。このreface DXの場合、4つあるオペレーター(波形の元)は、音が鳴るキャリアというオペレーターと、音に影響を与えるモジュレーターというオペレーターの2種類のどちらかに割り当てられるのですが、その順列組合せで次の12通りのアルゴリズム(割当・配置)が考えられます。

・キャリアが1個(モジュレーターは3個)の場合 5通り
・キャリアが2個(モジュレーターは2個)の場合 3通り
・キャリアが3個(モジュレーターは1個)の場合 3通り 
・キャリアが4個(モジュレーターはゼロ)の場合 1通り

ところが、DX7ではオペレーターの数が6個ということで、アルゴリズムは32通りにもなり、その選択だけでも大変で、それぞれいろいろなパラメーターをエディットするとなると考えただけで目が眩みます。reface DXはその複雑さを避けて、かつ、音色の豊富さを失わない程度にシンプルに設計されています。実際、reface DXにプリセットされている音色(32種類)は十分に厚くキレイなものばかりと感じました。もちろん、エディット・モードに入ればそれなりに複雑な設定を地道にやらないといけないのですが、オペレーターの数がDX7の6つに比べて4つに減っているおかげで、根気のない僕でもストレスなく作業できます(笑)。最初のDX7がこんな感じだったら音作りに挫折しなくて済んだかも?と思いました。オペレーターの数が4つというのは操作性と音色の精密さを考慮した絶妙なバランスの取れた数なのだと改めて思います。

このrefaceシリーズですが、「小さい見た目の割りに本格的な音が出る」という以上に素晴らしい音源が搭載されていると思います。ライブでは落としてしまわないように神経使いますが(なにしろコンパクトなので!)、これまでライブで音色面で物足りないと思ったことはないです。また、すぐに音が出せるというのも魅力。比較的安価なので初めてシンセや鍵盤を使う方には最適ではないでしょうか。学校教育の現場とかでも活躍の余地がありそうですね。

最後に余談ですが、オプションのソフトケースがドラムケースで有名なProtection Racket社製(!)というのもあって持ち運びも安心。拙文にて恐縮ですが、導入を検討されている方の参考となれば幸いです。

▲筆者宅にて。文中にあるようにCP、YCは筆者私物。

文・石川雅道(Q.A.S.B. / JariBu Afrobeat Arkestra)

■製品情報

◆reface CS/DX/CP/YC
価格:オープン(市場想定価格 49,500円前後 税込)
発売中
◆Yamaha reface用ケース
価格:6,600円(税込)
発売中


『Candy Dream』

2021年4月28日(水)
Soul Garden Records SG-075 2,500円 + 税

■ Track List
1.Candy Dream
2.Shaky Shaky
3.VIVALAVA
4.Baby Soul
5.Wolf (Instrumental)
6.サンキュー
7.The Sun And Moon
8.Can’t You See Me feat. Hiro-a-key
9.Escape

◆Yamaha refaceシリーズ オフィシャルサイト
◆Q.A.S.B. オフィシャルサイト
◆JariBu Afrobeat Arkestra オフィシャルサイト
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