【インタビュー】ZIGZO、櫻澤泰徳×大西啓之×吉田トオルが語るアルバムとミックス「5人での集大成にして新機軸」

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ZIGZOが約7年ぶりのオリジナルフルアルバム『across the horizon』をリリースする。“ZIGZOの日”である“ZIGZO=21620=21年6月20日”にリリースされる5tnオリジナルフルアルバムは自主レーベル“21620 recordings”から届けられるもの。全て2021年のコロナ禍に書き下ろされた収録全11曲は、彼らのリアルタイムが詰まっていると言い換えることもできる。

◆ZIGZO 画像 / 動画

同アルバムには長年ZIGZOサウンドを支え続けている吉田トオル(key)が全面参加。ミックスを手がけたのは大西啓之と櫻澤泰徳だ。さらにマスタリングをMUCCのミヤが担当しているなど、そのサウンドプロダクションにも期待が高まるところ。

先ごろ公開した髙野哲×岡本竜治×吉田トオルインタビューに続く、櫻澤泰徳×大西啓之×吉田トオルインタビューでは、レコーディングが行われたSAKURAの自宅スタジオ“studio MIDNIGHT”、二人のミックスエンジニア、吉田トオルがもたらした新たなZIGZOサウンド、6月19日の大阪公演を皮切りにスタートする全8都市13公演の<ZIGZO TOUR 2021 ~across the horizon~>、アルバム先行販売イベント<ZIGZOの新作を絶対にお買い上げ頂きます爆音視聴会!~ちなみにDBD51~>について、じっくりと話を訊いた。結成20年を超えるバンドならではの懐の深さと、チャレンジし続けるロックバンドのアティチュードが浮き彫りとなったロングインタビューをお届けしたい。

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■2019年の『Zippy Gappy Zombies』制作から
■ミックスエンジニアの試運転が始まっていた

──コロナ禍になりライブ活動は控えめにしていましたが、ZIGZOは2020年からリテイクシリーズとして12ヵ月連続で過去曲のリテイクを配信リリースしてきました。その作業がひと段落した今、達成感めいたものはありますか?

櫻澤:2020年6月20日から2021年5月20日に掛けて、メンバーのセルフセレクトでリテイクを1曲ずつ、毎月配信リリースしてきたわけですけど、俺とDEN (大西啓之/B)はパート的に、昨年秋までには先に全曲を録っちゃっていたんですよ。DENは自宅でベースを録って、ベース以外はうちの自宅スタジオで録るというやり方で。ニューアルバムもそういうふうに進めようと青写真も見えていたんです。だからリテイクを早く録って、二人(髙野哲[Vo, G], 岡本竜治[G])にバトンタッチして、すぐにでもニューアルバムの作業に入るよって感じで(笑)。

大西:今は5月上旬なんで、現状、リテイクシリーズのミックス作業はまだやっていたりしますけど。

櫻澤:だから去年から今に至るまで、ニューアルバムも込みでひとつの制作作業をずっと続けている感じだよね。達成感をまだ得られる状況でもないんです。

▲櫻澤泰徳 [Dr]

──櫻澤さんの自宅スタジオ“studio MIDNIGHT”はいつぐらいに作ったんですか?

櫻澤:7年ぐらい前かな。防音を施工する業者に基礎を作ってもらって、内装に関しては自分と、ミュージシャンでもある大工の友達と一緒にしこしこやって。まだ全体の7割しか完成してない感じ(笑)。今までも自分のところにオーダーが来たドラムレコーディングとか、別バンドのgibkiy gibkiy gibkiyの全音源、あとRayflowerのドラムレコーディングは、自分のスタジオでフィニッシュさせていますね。

──スタジオを作るにあたって、ドラムが理想の鳴りになるように設計したと思うんですが、実際に使ってきての感触は?

櫻澤:いや〜、まだ満足はいってないですよ。僕の中で理想としている鳴りのスタジオってあるんですけど、そのスタジオはめちゃくちゃ広いんですよ。うちのスタジオは天井はそこそこ高いんですけど、そこまで広くないんで。でもうちのスタジオを選んで使ってくれるミュージシャンもいて、評価はわりと高いんですけどね。

大西:ミックスするには“SAKURAさん(櫻澤泰徳 [Dr])スタジオ”は、音作りしやすいですよ。

──自分のスタジオがあるのはレコーディングに打ち込みやすい環境ですが、リミットも決めにくい弊害もありませんか?

櫻澤:そのとおり(笑)。全ての案件に関して期限はあるんだけど、ドラムを録るときは、その期限を気にしながらもテイクを何回も重ねちゃう。自分ひとりでディレクションするから。でもテイクが2桁にいかないようにしてる(笑)。多くても8テイクにしようと。

大西:けっこうやってるね、それでも(笑)。

──だって以前は2〜3テイクで済ませるのが櫻澤スタイルだったでしょ。

櫻澤:いや、前はやっぱりディレクションしてくれる周りの人がいたりとか。俺がL'Arc-en-Cielにいた時代とかZIGZOの初期は、レコーディングはアナログのマルチテープだったんですよ。ドラムを録るときにテープコンプを重視するってこだわりで。でもマルチテープは録れて18分なんです。そうするとテープ1本で3テイクしかいけないわけですよ。それでテイク数は重ねてなかった。そういうスパルタな環境で育ってきたものの、今はテクノロジーの進化と自分ひとりでやれる環境だから、“おもしろいテイクかもしれないけど、これはなんとなくイヤだから、もう1回やろう”みたいな考えになって(笑)。ZIGZOの初期を思い返すと、1stアルバムの『MONSTER MUSIC』はわりと勢いでドラムを録ったけど、2ndアルバムの『Add9 Suicide』は鬼のようにテイクを重ねてた。『BATTLE OF LOVE』は1日で9曲録っちゃったりしたけど。

大西:ずっと付き合ってベース弾いてたからなぁ、僕は(笑)。あれはけっこう残酷だよ。「今のテイクはめっちゃ良かった」となっても、「ドラムはもう1回」となったら、そのベースのテイクは使えなくなる(笑)。ドラムと合わなくなるからね。そういう時代から考えると、今は個人で録りに集中できるよね。テイクを重ねることだったり、録り直したり。

櫻澤:そうだね、納得いくまで。

▲5thアルバム『across the horizon』

──アルバム『across the horizon』のレコーディングは、リテイクシリーズと並行で進めていったんですか?

櫻澤:俺とDENは早々にリテイクものを録り終えているから、気持ちを切り替えてアルバムに向かえたところはある。

大西:ベーシストとしてはそう。でも同時作業で、ミックスはずっとあるので。バンドのベーシストとして弾く時間よりも、ミックスやっている時間のほうが長いんで、エンジニアの気持ちになってるもんね。曲の仕上がりの雰囲気とか、未だに“これでいいのか”ってところもあったりするんで。アルバムはこれから世に出るので、みなさんからどういう評価があるのか楽しみではあるけど。

──二人がミックスエンジニアでアルバムに携わることは、前から決めていたんですか?

櫻澤:2019年がZIGZOにとってデビュー20周年ということで、Book & CD『Zippy Gappy Zombies』を作ったんですよ。その作品にはファン投票によるリテイクのベスト盤も付いていて、その制作のときからDENと俺はミックスに参加するという状態で。プロのレコーディングエンジニアも参加した3人体制で、13曲を3人で分けてミックス作業したんです。そのときからDENと俺のミックスエンジニアとしての試運転は始まっていた。

──ミックスにも自分が関わるようになると、ミュージシャンとして楽曲やアンサンブルの捉え方など変わりますか?

大西:僕は、ミックスもやるギタリストと前に話したことあるんです。そのときに自分と同じタイプだなと思ったんですよ。どういうことかと言えば、自分のパートの音を、ミックスではどちらかと言えば下げたくなる。ベースだけ弾いていたときに、「ベースの音をどんどん上げてくれ」ってエンジニアさんに言ってた僕が、ですよ(笑)。

櫻澤:俺も、ミックス作業を始めたころはドラムを下げていたよ。でも他の参考になるような音源とか聴いたりすると、外タレとかはドラムの音が実は大きいんだよね。“こんなにドラムが音量があってもいいのか”って、徐々にドラムの音量を上げていったと思う。ただ、ドラムを入れたときに一番ぶつかりやすい歌とかを定位をイジったりすることで解消する独自の法則は、すでに2019年のときに自分の中であった。DENともエンジニアとしての話はよくするんだよね。俺のミックス担当曲の仮ミックスをうちのスタジオで聴いているとき、俺がどのプラグインを使っているのかをDENが覗くんだよ。シェフのソースの秘密を見られている気分だよね(笑)。

大西:おもしろいところがあると、やっぱ見たくなるよね。お互いにミックスのやり方も全然違うから。個人的には、今回は楽曲の作りからトオルちゃん(吉田トオル [Key])の鍵盤の存在感があったんで、ミックスするときにどう表現するか、すごく考えたな。

吉田:レコーディング後にラフミックスが送られてきたとき、「鍵盤の音はでかくない?」って、逆にSAKURAさんにもDENさんにも聴いたぐらい。そうしたら「5人でのアンサンブルを考えたとき、鍵盤を下げて隠す必要もない」と。「ミックスは任せておいて」と言われたのがすごく心強かったですね。二人ともエンジニアとしてバンドアンサンブルがよく考えられたミックスだと思います。

櫻澤:音楽的に間違ってないんだから、鍵盤がデカくていいじゃんってね(笑)。

大西:あと2020年のリテイクシリーズを作っていたとき、トオルちゃんからの意見が的を射てて。定位の細かいところまで指摘してくれて、助かったりもしたんですよ。だから、まずラフミックスをトオルちゃんに聴かせるのも楽しかったな。このミックスを聴いて、どう反応するんだろうって。

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