【インタビュー】Ken Yokoyama、約6年ぶりアルバムが物語る「いろんな音楽要素に挑戦できるのが、この四輪のKen Band」

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Ken Yokoyamaが5月26日、5年8ヵ月ぶり、通算7作目となるオリジナルフルアルバム『4Wheels 9Lives』をリリースした。収録された全12曲はタイトでソリッドなパンクチューン。サウンドもリリックも突き抜けて、高揚する4人のバンド感が果てしない仕上がりだ。そこに込められたアティチュードは深い。ドラマー交代劇、横山健の療養やコロナ禍といった困難を打ち破って昇華したバンドが、“9Lives=しぶとく、容易に死なない”というタイトルのもとに真空パックされて、突き進む今を鳴らし続ける。

◆Ken Yokoyama 画像 / 動画

前オリジナルフルアルバム『Sentimental Trash』は愛器グレッチサウンドに触発されたロックンロールチューンを前面に押し出した作品だったが、『4Wheels 9Lives』に封じ込められたのは、それらを喰らったKen Bandが鋭利なビートをどこまでも疾走させながら、ジャンルを超越して彩り豊かなバンドサウンド。やりたいことをやるというスタンスが痛快にして壮快だ。ミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』でその片鱗をみせていたEKKUN加入による化学変化が大きく開花したといって過言でない。

BARKSでは一体感を増した『4Wheels 9Lives』サウンドに注目して、横山健とEKKUNにじっくりと話を訊いた。横山健曰く、「ドラムと歌を聴かせりゃいいじゃんと思った」というバランスは、これまでの作風とはひと味異なるものだ。先ごろ放送された『Mステ』出演時のパフォーマンスが大きな話題を呼んだ4Wheels=Ken Bandだが、その豪快なサウンドの充実度と成り立ちがうかがい知れるロングインタビューとなった。

   ◆   ◆   ◆

■バンドを4人の手に取り戻せたような気がして
■今までのことは忘れて4人の空気を作り直そうぜって

──『4Wheels 9Lives』は約6年ぶりのフルアルバムです。去年は身体を壊したことで表立った活動もままならなかったKenさんですが、曲は作っていたんですか?

Ken:一昨年9月に僕は身体を壊して、ライブ活動を中止したんですよ。それでも曲作りはずっとしていて。その時期にできた曲を、去年9月に出したミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』と、今回の『4Wheels 9Lives』に入れてるんです。

──作曲には集中して取り組めましたか?

Ken:すごく集中していましたね。身体が治ってライブ活動に復帰できるぞとなっても、コロナによってできなくなっちゃったから、曲でも作るしかないかなと。もともとはフルアルバムを作るつもりだったのが、まずシングルを作ろうかってことになり。シングルの必要性をみんなで考えたときに、シングルではなく、ミニアルバムを作ることにしようと。その分、曲も多く作らなきゃいけないわけで、息を吐くように曲を作ってましたね。

▲Ken Yokoyama

──EKKUNも、Ken Bandに2018年12月に加入したものの、なかなか音源に着手できなくて、いろいろ溜まっていたものも?

EKKUN:はい。

Ken:あんまり溜めるとニキビできちゃうからね(笑)。

EKKUN:初めて聞いた(笑)。でも“そっち”の溜まっちゃうという意味ではなく、Ken Bandでやりたいアイデアのほうですよ。まずは俺が加入したというシグネチャーを曲の中に刻みたくて。“サウンドで、それを表現したい”とずっと考えていました。ただ、今思い返すと、加入後のツアーでは試行錯誤していたんです。“ドラムは俺しかいねえだろ、やらせろ”って気持ちでKen Bandに入ったつもりだったけど、“意外と今までとは違う筋肉も使うのか”と思ったり。そこでもまた成長できたということなんですが。

Ken:自分で言うのは照れ臭いんですけど、Ken Bandって、ものすごく独特なステージの運び方をするじゃないですか。メンバーが一人変わったら、本当は振り出しに戻るわけなんですけど、「いろんな人に時間もお金も掛けて観に来てもらっている以上、“入ったばかりなんでまだできない”という状態ではダメだ」という話をしたんです。のっけからこの4人でずっとやってきたような空気感を出そうとしたという。でも、無理な話なんですよね。精神的にはカッコいいですけど、実際は無理。その無理を僕らは本気でやろうとしてたんです。そのシワ寄せが、EKKUNにいくわけです。それが「今まで使っていなかった筋肉を使うことになった」という、さっきの言葉だと思う。間の取り方だったり、曲のちょっとしたスピード感だったり、ドラムって要じゃないですか。だから荷は重かったと思うんですけど、それでも「今はしょうがないよね」という言葉で済ませたくなかったんですね。

──EKKUN加入直後となる2019年のライブやツアーは、大切な準備期間でもあったわけですか。

Ken:というより、最初に人前に出るそのときから“できて当然”っていう。ステージに上がるというのは、それぐらいシビアなものだと思うんです。

EKKUN:Ken Bandに入ることによって、それまでぼんやりと通り過ぎてきた疑問たちが、目の前に待ち構えていたんですよ。通り過ぎていたというより、“俺はその答えに全然辿り着いていなかったんだな”って思い知らされた。“こうじゃないといけない”ってことを突き付けられて、“やっぱそうだよな”って。こういう言い方するとイヤがられるかもしれないけど、“やっぱ頂点に立つって、こういうことなんだな”と。

Ken:ううん、イヤじゃないよ〜(笑)。

EKKUN:Ken Bandの話をもらったとき、“俺のキャリアの最高潮になる、やってやるよ”って気持ちで入ったけど、さっきのような紆余曲折があって。

──やる気だけではクリアできないことが山ほどあって、それを見えないふりするんじゃなく、真摯に立ち向かっていったわけですか。

EKKUN:そうです。

Ken:EKKUNがそこにブチ当たっている姿って、すごく良かったんですよ。ステージ上で険悪にもなったし、練習スタジオで困り果てているEKKUNも見たりしたけど。でも、EKKUNは根が明るくてポジティヴだから、“課題は見えたから、やってやるよ”と。だから、“そのマインドが必要だよ”って思ってた。時間を掛けて、経験して、Ken BandのメンバーになろうとしているEKKUNの姿は、曲作り期間にもいい意味で繋がった気がしますね。

▲7thオリジナルフルアルバム『4Wheels 9Lives』

──“コイツが喜ぶ曲を作りたい”という思いも湧いたんですか?

Ken:それはね、あんまりなかった(笑)。

──う〜ん、残念な答え…と思いきや、嘘を言ってる顔してますから(笑)。

Ken:ははは。

EKKUN:少なからず、俺はこういうジャンルやバンドが好きで聴いてきたし、ライブもよく観に行っていたはずなのに、いざやってみると、“すんなりハマらないな”とか“思い通りに身体が動かないな”ってのがあって。

Ken:そこはジャンルじゃなくて、Ken Bandだからなのかもしれないよね。ものすごく独特な空気感を持っているバンドだから。

──でも、格闘した分だけ成長できますから。

EKKUN:まだまだ格闘するし、成長しますから。

──表立った活動をストップしていた期間、バンドの内部はものすごく活性化されていたことになりますね。

Ken:そうなんです。今の話が2019年のツアーをしながらの出来事なんです。コロナでライブ活動ができなくなり、スタジオで4人で集う時間ばかりが増えていくわけです。その結果、逆にバンドをちゃんと4人の手に取り戻せたような気がして。それはすごく貴重な経験だったんです。人前に出られないから4人の世界にフォーカスできる。今までのことは忘れて、4人の空気を作り直そうぜって。だからすごく忙しい時間を過ごしてました。新曲を作って、常に課題もあって。その課題も、この曲をどうしようってことから、どうやって4人の集団になっていこうかっていう大きなことまで。

EKKUN:今までにないぐらいドラムと向き合って、すごく練習しましたね。個人練習に行ったある日、スタジオの人から「今年に入ってから400時間も個人練習してますよ」って言われて。“コイツ、また来たよ”って感じだったんでしょうね(笑)。

──今、語っていただいたことが、『4Wheels 9Lives』というアルバムタイトルに象徴されていますね。

Ken:そうですね。Ken Yokoyamaというバンド名だから、なにかと僕一人がクローズアップされがちだけど、この4人による四輪のバンドになっています。

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