【インタビュー】vivid undressが愛を歌う。色彩鮮やかな新作ミニAL『愛のゲイン』

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■バラバラな世界観が合わさることで、化学反応を起こした

──「R-15 ~愛のゲイン~」はvivid undressの世界観を創る巧みさが遺憾なく発揮されていますね。この曲の歌詞についても話していただけますか。

kiila:今回“愛”をテーマにしているというのもあるんですけど、誰かを想う心には欲望みたいなものが含まれることもあるじゃないですか。その欲望が一番強いのは、中~高校生くらいだと思うんですよ。この曲はそういう欲がピークなときの感情を書いているから「R-15」というタイトルなんです。15才を超えたら、こういう恋愛もいいよね…みたいな感じで書いたんですけど、綺麗事だけじゃない愛も書きたくて、しかも私は女性ボーカルなので、女の子は本当はこういう欲望もあるんだよということを代弁したいという気持ちもありました。

──ストレートな歌詞ですがキュートに歌っていますので、エロい感じではなくて10代っぽさを感じさせる曲という印象です。

kiila:この曲はちょっとネジが外れた感じを表現したかったんです。一歩間違えるとストーカー気質の子というか、そういう危うさとかサイコパス感みたいなものも歌詞とかサウンドで表したいんだよねということを、みんなに話しました。

syunn:『愛のゲイン』で、僕の中で特に印象が強いのは「後悔」かな。この曲は今回の制作の一番最後にできて、一番最後にレコーディングをしたんです。そういうところで印象が強いし、ベースのフレーズ作りをより好きなようにやれたというのがあって。新しい感じに挑戦して、それを形にできて良かったなと思っています。

▲syunn(B)

yu-ya:間奏で、進化したスラップをやっているんだよね?(笑)

syunn:うん(笑)。あと、「後悔」は頭にSEみたいなのが入っていて、それは僕が作ったんです。普通に聴いていたらスーッと流れていくと思うけど、よく聴くと今までのvivid undressの曲が逆回転になったりして、いろいろ入っているんですよ。vivid undressの歴史を辿ってから曲が始まるという流れになっていて、そういうストーリーを自分が作ったというところでも「後悔」は印象が強いです。

yu-ya:「後悔」を作ったときは、今作はウェットなギターの曲が多いので、もう一歩ソリッドな部分も出したいなと思って。それで、アップテンポで、結構攻めた感じでバチバチのイントロがありつつサビは前向きで、開ける感じというイメージで作りました。僕は「オリジナルカラー」を作って、明るくなったので(笑)。それに、僕はこの曲の歌詞がすごく好きです。デモを渡して、kiilaちゃんに曲名を「後悔」にすると言われたときは“えっ?”と思いましたけど(笑)。でも、こういう曲にせつない歌詞を乗せるというのはセンスがいいし、歌詞そのものもいいなと思っています。

kiila:「後悔」という詩は、私の祖父がコロナで亡くなったことが元になっているんです、亡くなった次の日に詩を書いたんですけど。今はなにが起こるかわからない時代で、いつ誰の身になにがあっても不思議じゃないですよね。家族や友達といった身近な人が「急にいなくなったらどうしよう」という妄想をしたら止まらなくなってしまったんです。そういうことになったら、もっとこうしていれば良かったということがとめどなく出てくるだろうなと思って。そういう状態で、バァーッと歌詞を書いて、私はその詩で曲を作ろうと思っていたんです。そうしたら、ちょうどそのタイミングでyu-yaからこの曲がきて、純粋にいい曲だなと思ったんですね。それで、書いたばかりの詩をその曲に乗せることにして、うまくハマるように書き換えました。「後悔」はyu-yaと私のバラバラな世界観が合わさることで、化学反応を起こしたのかなということを感じています。

──同感です。先ほど“進化したベース”という話が出ましたが、syunnさんはボトムを支えつつグイッと出るべき場所では出るというタイプのベーシストだと思うんですね。今作はそういうアプローチに、さらなる磨きがかかったことを感じました。

syunn:磨きがかかってきたかはわからないですけど、最近のvivid undressは上物が進化しているというか、ギターの押し引きが目立ってきたし、シンセが増えたというのがあって。今まではyu-yaがギターで引っ張っていたけど、そこまで主張しなくなったので、今回はベースで誘導するようにしたんです。うまく上物を立たせながらベースで引っ張るということを考えながら全曲に取り組みました。それに、前々作くらいから、もっと歌を前面に出したいという気持ちがみんなの中で高まってきたんですね。なので、より歌を引き立てるということも意識したベースになっています。

tomoki:さっき「オリジナルカラー」が一番好きだと言いましたけど、ドラマーとしては「後悔」も印象が強いですね。「後悔」のイントロはシンプルな頭打ちなんですけど、今までのvivid undressにはなかったものなんですよ。yu-yaが作ったデモの段階でああいうドラムになっていて、そのまま活かすことにしました。そういうところで、印象が強いですね。あとは、どうだろう?

▲tomoki(Dr)

──ドラムに関しては、スクエアでいながら生々しさも感じさせることや繊細なハイハットワークを効果的に活かしていることなどが印象的です。

tomoki:シンバルとかハットは、僕がvivid undressに加入してからメンバーみんながそういうところを重視しているということを伝えてくれたんです。それで、シンバルワークをちゃんと意識しないといけないんだと思って、いろいろ研究や鍛錬をして今に至っています。繊細なハットワークということでは、今回は「後悔」のAメロでやっていますね。あと、「オリジナルカラー」とか「夢見る2人」は、ハイハットとライドを同時に鳴らすということをやりました。最初のアイディアは今回の制作にプロデューサーとして関わってくれた人が世間話をしている中で、冗談っぽく「両手でシンバルを叩くというのも面白いんじゃない?」みたいなことを言ったんですよ。それで、やってみようかなと思ってやってみたら、自分が出してみたいと思っていたノリに近づいたんです。それで、新しい奏法として、今回採り入れました。

──どこにヒントが転がっているか、わかりませんね。タイム感については、いかがでしょう?

tomoki:タイム感に関してはsyunnさんが、すごく詳しいんですよ。なので、いろいろ話を聞きながら、ああだこうだいって叩いた結果が今回のドラムです。

syunn:さっき「オリジナルカラー」の話になったときに、ダンサブルだけど、それだけじゃないと言われたじゃないですか。そういうことを自分も感じていて、ダンサブルそのままというのは面白くないなと思うんですよ。それで、tomokiといろいろディスカッションして、それぞれの曲のグルーブを作っていったんです。あとは、tomokiと同じブースに入って、細かいところをその場でも話し合って、なおかつお互いを見ながら演奏できたのも大きかったと思いますね。

kiila:『愛のゲイン』の私の推し曲は「そばにいて ~愛のゲイン~」です。この曲は今回の中で、一番最初に取りかかった曲なんですよ。アルバムを作ることが決まってから書き下ろしたわけではなくて、去年すごく時間があった中で書きました。今までは作品を作るとなったときに締切があって、そのデッドまでに必要な曲を作らないといけなかったけど、この曲は本当に自分の中から湧き出たものというか。自分の感情の赴くままに、ツルッとフル・コーラスできたんです。私は毎回アルバムを作るときに自分の中で指針にしている曲というのが絶対にあって、今回はそれが「そばにいて ~愛のゲイン~」になりました。この曲の歌詞に《愛とは あなただ》という言葉があるんですけど、愛は誰かがいないと生まれないものですよね。恋は片想いみたいに1人でもできるのに対して、愛は両者がいないと成立しない。だから、『愛のゲイン』というアルバムの答えが「そばにいて ~愛のゲイン~」の中にあるというところで、私はこの曲が一番聴いてほしい曲です。

──深く心に染みるバラードに仕上がっています。もうひとつ、冒頭に話したように『愛のゲイン』はカラーの異なる6曲が収録されていて、それぞれの楽曲に合わせて大きく表情を変えているボーカルは本当に聴き応えがあります。

kiila:ありがとうございます。でも、歌の面で意識したことは、特になかったですね。今までは1曲1曲歌い方を意識して歌ってきたんですけど、今回は純粋にこういう歌詞だから、こういう歌い方をしたいというところに任せて、すごくフラットに歌いました。だから、歌い方でいうと実は一番なにも考えていない作品かもしれない。

──「Yeah! Yeah! Yeah!」のようにセクシーな曲もあれば、「R-15 ~愛のゲイン~」の10代感が香る歌もあるなど、歌唱力や表現力の高さが光っています。

kiila:「Yeah! Yeah! Yeah!」はvivid undressっぽくない歌を歌ってみたいなと思って作ったんです。セクシーさとかも表現したいなというのがあったので。でも、ぽくない曲を作って、みんなに持っていったら意外と自分達らしくなりましたね。

──「Yeah! Yeah! Yeah!」も“ジャズのテイストを活かした曲”で、ジャズ・ソングではないですよね。

▲rio(Key)

rio:最初は、かなりジャズの方向にいこうとしたんです。この曲はコードづけとか土台になるアレンジを自分が任されて、メロディーだけの状態でくるから、“なるほど、ジャズに挑戦したいのね”と思ってしまって。それで、4ビートで、ベースがウォーキング・ラインを弾いて…みたいな形にして投げたら、実はそうじゃないということだったんです。

kiila:そう。ダンス・ミュージックっぽくしたかったんです。

rio:“えっ、そうなの?“ってなって、全部消して(笑)。頭を切り替えて、今の形に持っていきました。

──メンバー皆さん、“その気になればジャズもやれるというところを見せたい”ではなくて、独自の音楽を作ることに喜びを感じることがわかります。

syunn:うちは、そういう人間が集まっていますね。みんながやっているようなことは、やりたくないんですよ。“ああ、ジャズね”みたいな曲はスッと流されてしまって、印象に残らないから。捻りを加えて、耳に残るものにしたいという気持ちがある。

──その結果、独自の魅力を持った音楽が生まれていますので、ずっとそうあってほしいなと思います。さて、『愛のゲイン』は最新のvivid undressの魅力が詰まった、必聴といえる一作になりました。本作のリリースはもちろん、その後の活動も楽しみです。

yu-ya:コロナの影響で先が見通せない状況が続いていますけど、僕の中にはとにかくライブをしたいという気持ちがありますね。自分達は週1くらいでライブをしていた時期もあるんです。毎月、必ず関東圏外にもいくようにしていたし。それが日常だったのに、コロナでそういう日々を奪われてしまった。この間、本当に久しぶりに人を入れてライブをしたんですよ。それまではずっとライブがなかったから本当に嬉しかった。ライブができるようになったらガンガンやっていこうと思っているので、そのときはぜひ遊びにきてほしいです。

syunn:自分も、すごくライブをしたいです。コロナのせいで、前作、前々作の楽曲をみなさんの前でまともに演れていないんですよ。アルバムを買っていただければ曲を聴けますけど、うちはライブバンドだと思っているので、ライブにきていただいて、生で曲を聴いてほしいんですよね。ライブで演奏することで楽曲は育っていくものだし。この間有観客ライブをして、お客さんは声を出せない状態だったけど、ライブを観てもらえる、お客さんの表情が見れるということの喜びや楽しさを、あらためて痛感したんです。だから、今年は普通にライブができて、来てくれた皆さんとvivid undressの音楽やそれぞれの思い、楽しい空間といったいろんなものを共有できるようになるといいなと思っています。

rio:2人が話したように、本当に自分達はライブで勝ち得てきたバンドだと思うんですよ。ライブで演奏することで曲が育っていくし、自分達も気づきがあるし。だから、今年はいっぱいライブをしたいです。今の状況は本当に空しいんですよ。こういうふうにライブをまわれるといいな、その中でいろんな種明かしをちょっとずつしていけたらいいなというふうに自分で構想を練っても、それを崩さないといけないから。ライブの数日前に公演がやれなくなってしまうことが決定して、関係各所に連絡して、払い戻しのシステムとかを作っていただいて。そうなったときに、関係各所の人達もツラい状態なのに、温情があったりするんですよね。「また来てくれればいいから、キャンセル料はいらないよ」と言ってくださるライブハウスの方がいたり、励ましてくれるイベンターさんとかがいたりするんです。そういう声に、本当に救われました。なので、ライブができるようになったら、待ってくれているお客さんはもちろん、関係者の方々にもちゃんと恩返しができるように、いいライブをしないといけないと思っています。

tomoki:去年、最初の緊急事態宣言が出てライブやイベントができない状態が長く続いたけど、その間はライブができないことに対する喪失感や苛立ちみたいなものはなかったんです。だけど、オンラインライブをすることが決まって、久しぶりにみんなでスタジオに入って音を合わせたらすごく楽しかったし、オンラインライブは無観客だったけど、めちゃめちゃ楽しかった。でも、何回かやっていくうちになにか違うなということを感じるようになって、今年に入ってから有観客ライブをして、“やっぱり、これだよ!”と思った。つまり、僕はこの1年間で音楽を始めてからこれまでやってきたことを、もう1度経験したような感覚があるんです。音楽やバンドの楽しさや掛け替えのなさといったことをあらためて実感できて、それは今後の活動にいい形で活かしていけると思います。

kiila:私は、音楽の在り方というものが時代とともに変わっていくのは自然なことなのかなと思っているんです。なので、またライブにきてほしいという気持ちは当然あるし、ライブは楽しいものだという気持ちももちろんありますけど、それが全てだとは思わないんですよね。音楽は人を幸せにするものということや、自分達が幸せになっていくということを一番に考えて活動していくというのが今は第一優先かなと思う。2年後、3年後のことはそのときに考えますけど、今思っているのはライブに来たくてもコロナ禍でどうしても来れない人達がいるということを知ったんですよね。そのときに、ライブをすることすら申し訳ないような気持ちになったんです。だから、今はライブが主体になるのではなくて、みんなが幸せになれることを最優先した活動をしていければいいなと思います。具体的にいえば、ライブもするし、配信もするし、他にもいい発信の仕方があればやっていくということですよね。いろんな方法でvivid undressを届けて、それぞれが一番楽しめる形で受け取ってもらえるようにしていきたい。そうやって、これからもみんなと一緒に歩いていけるといいなと思っています。

取材・文◎村上孝之

major 2nd mini album『愛のゲイン』

2021年6月23日(水)発売
TKCA-74946 ¥1,800(税込)
[収録曲]
1. オリジナルカラー
2. 夢見る2人 〜愛のゲイン〜
3. そばにいて 〜愛のゲイン〜
4. R-15 〜愛のゲイン〜
5. Yeah! Yeah! Yeah!
6. 後悔


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