【ライブポート】フラカン×ヒグチアイ、自然に流れる“ライブ”という時間

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フラワーカンパニーズが東京・新代田FEVERで開催するマンスリー企画<月刊フラカンFEVER 2021>の第5弾が、5月31日にヒグチアイを迎えツーマンライブとして開催された。

ヒグチアイとフラワーカンパニーズの組み合わせは、2019年冬に大阪のラジオ番組のスタジオで生対バンして以来。ライブハウスでの対バンは今回が初だというから、キャリアは違えどともに“ライブ”に定評がある両者がどんなケミストリーを生み出すか楽しみである。また前回、4月の<月刊フラカン>が無観客配信による開催であったため、有観客による対バンライブという点にもワクワクする。客席は早い時間から埋まり、開演を待つ観客の熱も高い。

◆ヒグチアイ ライブ画像
◆フラワーカンパニーズ ライブ画像

そんななか、最初に登場したのはヒグチアイ。ふらりとステージに表れて、中央に置かれたピアノの前に座るとまずは腕を伸ばし、ストレッチ。息を整えると、静かに歌い出す。語りかける歌のリズムと、そこに相槌を打つようなピアノでスタートしたのは、フラワーカンパニーズの名曲「深夜高速」だ。多くのアーティストもカバーしているこの曲のドラマ、人生や日々の旨味も澱もたっぷりと染み込んだ叙情を、歌とピアノとでじっくりと描きあげると、続けざまにパーカッシヴで鮮烈な響きのピアノイントロから「前線」へとなだれ込む。


冒頭の2曲で、静から動へとドラスティックに躍動していって、グイグイと観客を引っ張り込んでいくライブ。フロアからは大きな拍手が沸き起こった。「ライブが本当に久しぶりで、家を出る時に何の靴を履いていいかちょっとわからないくらいだった」とMCしたヒグチアイ。そして「ライブの王様のフラカン先輩と一緒のライブ。でも下克上の気持ちでいきたい」と言いつつ、はじめから先輩の曲を借りてしまいました、と笑顔を見せた。

当たり前でいてかけがえのない日常、“今日を生きることが 明日につながるから”と歌う「ラジオ体操」を、徐々にエネルギーと熱を増幅させるようにプレイする姿にも惹きつけられる。聴き手の心をじかに掴んでいく歌とピアノのパワーが凄まじい。かと思うと、MCでは本音の言葉を軽妙に聞かせて、フロアからジワリと笑いを引き出していく。中盤のMCでは、今年初めて出演した舞台についてトーク。たくさんの人が関わり作り上げる舞台の難しさやその体験を語った一方で、この春手掛けたドラマのエンディングテーマでは、そのドラマ作品の枠組みで自分ができる最大限の曲を書くことができたという。



そんなMCの後に続いたのはドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』のエンディングテーマとなった「縁」。音源ではフィドルやバンジョーといった楽器も交えたバンド演奏で、軽快さとそこに横たわる哀愁感とを表現する曲だが、ここではピアノと歌のみで、“縁”やつながりがもつ二律背反的な複雑な感情を紡ぐ。自然と体が揺れる小気味良いリズムに、観客の肩や頭が揺れる。そして2020年に作られ、リアルな街の変化とそこに暮らす人々の心情が描かれた「東京にて」を、希望をにじませたビブラートに乗せて、ドラマティックに響かせた。ピアノと歌というミニマムな形だが、その歌は聴き手の想像に働きかけて、それぞれの心象風景を広げていく。とてもエモーショナルで、深い味わいだ。

最後の曲に前に「こういう時期にライブをし続けるバンドがいることは、音楽をやっている身としても心強い」と改めてフラワーカンパニーズへの思いを述べたヒグチアイ。久々のステージができたこと、そしてお客さんが来てくれたことなど、たくさんの“特別”があったことを語り、自身も背中を押されて6月には企画ライブを行うことができるとアナウンスした。その後に演奏したのは、未発表の新曲「mmm」(ハミング)。コロナ禍の景色、そして“今”を生きる姿が刻々と映し出された曲であり、ライブとラブとに溢れた曲だ。「口を開かずに歌うことをハミングと言います」と観客に促すヒグチアイ。シンガロングができない今だからこその歌でもある。約40分、“ライブ”だからこその醍醐味を味わわせてくれるステージとなった。


この好演を受けてのフラワーカンパニーズのステージは、賑やかでアグレッシヴで、眩しいパワーに満ちていた。ステージにミスター小西(Dr)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、鈴木圭介(Vo)が揃い、ジャーンとバンドの音を炸裂させると、「どうもフラワーカンパニーズです。<月刊フラカンFEVER>へようこそ。最後までよろしくおねがいします!」と鈴木が声をあげ、2020年末にリリースした18枚目のアルバム『36.2℃』収録の「産声ひとつ」でライブがスタート。ノイジーなギターにハーモニカが絡むとサウンドのスピード感と熱量が上がっていく。観客は音に乗って気持ちよさそうに体を揺らす。そして小西の「ワン、ツー、スリー、フォー」のカウントで「ピースフル」に突入すると、メロディアスに歌と掛け合うベースと疾走感のあるビートに、観客の手が上がって、鈴木もまたその声を大きくし、コブシを突き上げる。立て続けに爆裂なパワーで一気に会場を一体化する「NUDE CORE ROCK’N’ROLL」が続き、新旧の曲で観客の心も体もがっちり掴んでいった。

MCでは鈴木とマエカワとで、今回のゲスト・ヒグチアイとの由縁を語り、また1曲目に「深夜高速」を演奏してくれたことや、最後の新曲も良かったと口にする。「原曲を超えるのはやめましょうよ」(鈴木)なんて言いつつ、曲の純度を高めてくれたヒグチの後を受け、それを薄めることなくやりたいと「DO DO」でさらにゴキゲンなビートでフロアを沸き立たせ、「元少年の歌」では大人だからこそ歌える無邪気さや純度の高い涙や汗のほろ苦さを、じっくりと観客の胸のうちに広げていく。



「青い春」から「こちら東京」へと、徐々に哀愁の色味を増しながら鈴木は呼びかけるように歌い、バンド・アンサンブルは重厚さを増してその歌を遠くへと響かせた。コロナ禍で今まで通りにライブができなくなって、活動のリズム、句読点のつけ方がわからなくなるようなこともあったと鈴木は語る。30年以上のキャリアを誇る百戦錬磨のライブバンドであり、常に軸足がライブハウスにあるフラワーカンパニーズだからこそ、この“ライブ”という場が失われる痛みは大きいだろう。だからこそこの<月刊フラカンFEVER>も、時には配信のみという形になることもあったが、毎月続け、音楽の鳴る場所を確保してきた。そういうバンドマンとしての姿が、ヒグチアイもMCで語っていたように、様々なアーティストやバンド、足を運ぶ観客にとっても前に進んでいく一歩を踏み出していく勇気になっているのだろう。

そんな熱い姿や背中を見せつつも、MCとなればヒグチアイの「ラジオ体操」という曲がいかに好きかを鈴木とマエカワで張り合ったり、ラジオ体操で思い出したようにマエカワが毎朝見ているというNHK『テレビ体操』の話題で盛り上がったりと、ぽんぽんと話題が連なっていくMCで会場の空気を和ませる。メンバー同士で楽しそうに話すMCの感じもまた、ライブに来たな、ライブってこんなふうだったよなと嬉しくなる。



そして後半は、「いましか」「チェスト」「YES,FUTURE」と、エンジンを震わせて爆音のロックンロールで一気に飛ばしていく。ぐんぐん上昇していく観客のコブシやジャンプ、テンションも温度も上がっていく晴れやかなステージとフロアの衝突が最高だった。

アンコールでは、ヒグチアイも登場してフラワーカンパニーズとのセッションが行なわれた。ツーマンのイベントならではの楽しみだ。1曲はヒグチアイの曲「恋人よ」、もう1曲はフラワーカンパニーズの「夜空の太陽」を演奏。両者ともに、本編とはまたちがったリラックスした表情もうかがえる。充実した時間であったことを物語る笑顔だった。


取材・文◎吉羽さおり
写真◎吉田圭子

セットリスト

■ヒグチアイ
1. 深夜高速
2. 前線
3. ラジオ体操
4. 縁
5. 東京にて
挨拶
6. mmm(未発表曲)

■フラワーカンパニーズ
1.産声ひとつ
2.ピースフル
3.NUDE CORE ROCK'N'ROLL
4.DO DO
5.元少年の歌
6.⻘い春
7.こちら東京
8.いましか
9.チェスト
10.YES, FUTURE

■アンコールセッション
恋人よ/ヒグチアイ
夜空の太陽/フラワーカンパニーズ

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