【インタビュー】GALNERYUS、新作『UNION GIVES STRENGTH』は必然的にコロナ禍がテーマ

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日本のヘヴィメタルシーンのみならず、海外からも高い支持を受け続けるGALNERYUSが、新ドラマーを迎え最新アルバム『UNION GIVES STRENGTH』を2021年6月16日にリリースした。前作『INTO THE PURGATORY』から約1年半、近況やコロナ禍をテーマにした最新スペシャルアルバムについて、SYU(G)、小野正利(Vo)、YUHKI(Key)に話を聞いた。



──前回のインタビューから約1年半ぶりですが、コロナ禍はいかがお過ごしでしたか?

小野正利:2020年2月頃からスケジュールが全部延期や中止になったり、レッスンも休講にしたので毎日家に居ましたね。特に何かをした事もなくずっと巣篭もりでしたけど、散歩はよくしていましたよ。

YUHKI:1年前くらいに予定していたSYUとふたりのイベントも飛んでしまって、あれはショックでした。ずっとステイホームでしたけど、自分はSYUみたいに鬼練習するわけでもなく。制作の意欲も低下してしまいダラダラとしていたけど、自分は本当に何が好きなんだろう?と昔の音楽を聴いていたら、やっぱり1970年代、1980年代のものが好きなんだなと改めて思ったり。そんな自分探しをしていましたよ。

SYU:僕は忙しいフリはしていましたけど(笑)、プラス思考で生きていました。そんな中で、2020年2月くらいからエフェクター作りに没頭し始めて、ひたすらやっていましたけど、これが楽しくて仕方なくて。あと、自分のギター奏法についても凄く見直す事ができて、技術的に自分がダメだなと思う部分を研究・分析ができましたね。多くのミュージシャンが自分を見直す時間だったと言いますが、僕もそのひとりかなと思います。

小野正利:うん、それはあるよね。

SYU:よう言うわ(笑)、小野さんもYUHKIさんも歌唱法や演奏が完成されてるもん。僕は常に色々と何かを抱えているんです、何かダメだと思うところが自分の中にあって、アラを探したくて。

YUHKI:自分は完成というより反省してるよ(笑)。

──活動が思うようにできない事は、どう感じていましたか?

YUHKI:東日本大震災の時も思いましたけど、今まで当たり前に活動ができていたから、無力感というか。お客さんありきなので、ライブに呼べない・来れないのは悲しい気持ちになったよね。

小野正利:ライブ会場が槍玉に上がったのもあったし、確かに密になるしね。去年は何も知識もなかったから桜が咲く頃にはきっと普通に戻るでしょ?くらいに思っていたけど、とんでもなかったよね。その中でもできる事は何か、それで配信ライブをやってみたり、Youtubeチャンネルを立ち上げてみたり。でもこういう時に僕らミュージシャンという仕事は世の中でどんなポジションなんだろう?こういう時に必要なんだろうか?「いや、今はいいから。」と言われてしまう仕事なのだろうか?とか考えましたよね。やって元気付けたい、でもやる事がダメだ、という矛盾でどうなっちゃうんだろうと思っていました。

──そしてドラマーがLEA(レア)に交代、彼は、叩いてみた動画でGALNERYUSの曲を多数アップしていますね。

SYU:そう、もともとYoutubeの動画を観て知っていたんですよ。面識はなかったけど、ある時スタジオでバッタリ会って「あの子、動画の子じゃない?」って(笑)。そこから「今度一緒にスタジオ入ろうよ」となり、凄く感触も良くてメンバーになってもらいました。曲を知っていて叩けるのは、凄く強みでしたね。

小野正利:僕より曲をよく知ってるの(笑)。テンポがいくつとか言えるんですよ。若いし背も高いし、なかなかイイ男でくやしいですよ(笑)、歌詞も覚えてて口ずさみながら叩くしね。

SYU:彼は、以前ファンクラブで開催した沖縄イベントにも来てくれていたみたいだし、結構昔からGALNERYUSの凄いファンでいてくれたんですよ。

小野正利:僕のソロライブにも来てくれていたみたいなの(笑)。


──お披露目となった初の配信ライブはいかがでした?

SYU:本来なら加入告知も2020年5月にはするはずだったのが、少しずれました。そこから曲作りとリハーサルも少し始めて、10月にお披露目的な配信ライブができました。これがもうね、初づくし(笑)。配信もLEAも初だったし、わかっちゃいたけどお客さんの反応がこちらにないのよね(笑)。慣れるのに少し時間がかかるだろうな。

YUHKI:でもやっぱり、ステージに上がるとライブモードにはなれるよね。客席にスタッフはいるし、カメラもあってライブの雰囲気があるから、結構イイ感じでできました。

小野正利:でもMCは、やっぱりその場のリアクションって必要なんだなと思いました。芸人さんってボケとツッコミで笑いがあってでしょ?その反応でネタも作るんだろうし、音楽もお客さんがいて熱気もあって空気ができてお互いが楽しむものだからね。でもこの先、配信ライブは残っていくと思うので、経験としてできて良かったですね。ソロの場合は、僕と鍵盤orギターだけなので音の調整もシビアではないんだけど、GALNERYUSの場合はちゃんとバランス良く配信されるのだろうかと思いましたけど、トラブルもなくできて良かったです。

──そんなコロナ禍に完成したニューアルバム『UNION GIVES STRENGTH』ですが、どんな作品になりましたか?

SYU:いつも一生懸命に作るのは変わらないんですが、今回は必然的にコロナ禍がテーマになっています。曲順通り聴いていただくとわかりますが、ダークなところから明るく抜けて行くイメージを持って作りました。LEAが加入してわりと早くこのスペシャルアルバムを作ろうと思っていましたし、コロナ禍での曲作りもあって曲調もそうなったのも必然的ではありましたね。

──ストレートで王道な印象ですが、1曲目から9分台とは(笑)。

YUHKI:イエス(プログレバンド)くらいしかやらないよね(笑)。


SYU:そうそう、普通はあまりやらない(笑)。でもプロデューサーも分数はあまり感じないと言ってくれたし、1、2曲目が我々の中では新しいかな。今回はこのご時世と相まって行く曲調になって行く事は制作していても感じていて「The Howling Darkness」は特にそんな感じです。おどろおどろしく蠢いているものを歌詞でも表現していて、感染源というか種の起源はどういうところから出て来たのかをTAKAさん(B)に伝えて英詞を書いてもらいました。脅威に対してどう闘って行くかを問題提起しているような、ね。テンポが非常に速いので、史上最速なユニゾンフレーズとかも面白い部分だし、新しい感覚だったのであえて1曲目にしたんです。

──SE部分が今回は独立していませんでしたね。

SYU:最初はもっと長かったんです。トラックを分ける事も考えましたけど、今回はアルバム最後にリレコ曲を収録すると決めていたので、今回はイントロダクションとアウトロはなしで行こうと。とは言え、いきなりバンドサウンドから始まるのも何か違うなと思って30秒くらいのSEを付けたんです。

YUHKI:頭に凄くダークな感じが出ていて、ギターも7弦で重いリフを弾いているけれど、それだけではなくてサビではキャッチーになるし、ガルネリのフレーズはたくさん出てきます。だから9分の中でも目まぐるしい展開をしていて、SYUは鬼練習をしていたから楽勝だっただろうけど、僕ら大変で全然上手く録れなくて。

SYU:いや、録りの時はそこまでじゃなくて、録った後にめっちゃ練習したの。2曲目の「Flames of Rage」はこのご時世に対しての怒りや憤りを表現してますが、それでも頑張って行こうという強い気持ちを持った曲になりました。

──小野さんの「アーッ!」も健在ですね。

小野正利:これね、コロナ禍で色々な仕事がなくなって、最初は喉を少し休められるなと思っていたんですよ。何もしなかったのに、喉がカサカサしてきちゃって何だろう?と思っていて、治らないので怖くなって病院へ行ったんです。そしたら「休み過ぎで、声帯を閉じる筋肉が痩せちゃっている。しっかり声を出しなさい。」と言われて。でもこのカスカスがデフォルトになって来て、歌は歌えるんだけど出し続けないとダメなんですね。よくプロ野球選手もシーズン終わってすぐにキャンプして自主練して、僕は休みなよって思っていましたけど、やり続けないと筋力とか維持できないものなんだなと思いましたよ。

YUHKI:ガルネリはアスリート級だから(笑)。

小野正利:休んじゃダメだと思い知りました。

SYU:スタジオもちょっと間が空くとめちゃくちゃ疲れるもんね。毎週やって行くと段々と身体も目覚めますね。

──「Hold On」は鍵盤のキラキラが印象的です。


YUHKI:ステイホームで聴いていた1970年代、1980年代の音楽から自然と出て来たんですよ。ある日、散歩しながらサビのメロディが出て来て、小野さんのイメージで言葉も出て来ていて、これはいつか完成させて発表できたらいいなと思っていたんです。そしたらSYUとこのアルバムの打ち合わせで、「YUHKIさんにはダークな中にも希望が見えるような曲が欲しい」と言われて、ピッタリじゃんって(笑)。なのであまり労せず作れた感じです。イメージがあったので、みんなでやったらこんな感じだろうとデモを作り、実際それぞれのパートに差し替えたら想像以上のものができて凄く満足してます。

小野正利:歌詞もほとんどYUHKIさんなんです。僕が書く予定でしたけど、YUHKIさんからイメージしてる言葉や単語があるからとは言われていたんだけど、ほぼ歌詞ができ上がっていた。できてるじゃんって(笑)。

YUHKI:メロディとともに自分なりの言葉を乗っけていたんだけど、例えば「舞い散る」なんて言葉をメタルバンドが使っていいのか?と思いながらも実際、小野さんが歌うとすんなり来てね。明るい部分だけでなくて世相を反映したようなAメロの部分は上手い言葉が浮かばなかったので小野さんにお願いしたら、やっぱり自分では出て来ない言葉が上手くハマって、良い感じの共作になったと思います。ギターソロに至ってはSYU節が満載だし、欲張りな曲ですよ。

SYU:素晴らしい曲。ピアノの旋律が印象的だしね。

YUHKI:リズムとのシンコペーションで、ちょっとプログレッシブにね。

SYU:僕もこういう曲を書きたいんですよ、でもYUHKIさんがこの手は天下一品だなと改めて思いました。

YUHKI:最近ね、SYUがイエスの「Roundabout」が好きだって言うんですよ。だからいつかスティーヴ・ハウみたいな曲をやってみたいよね。

SYU:僕ね、マイケル・シェンカーを好きになる前までは、「なんやこの鼻が詰まったような音は」って思ってたの。音が軽いし、ミックス全体を聴いてもイマイチで、全然魅力に感じていなかったのが、ある日めちゃめちゃハマって何て良い音なんだろうって。そこから完全に自分の身体に入れて。それと同じような感じである時、セッションで仲間が「Roundabout」を弾いたり歌ったりしていて、自分の中で大爆発したの。まだこの曲だけなので、もっと色々な曲も聴いてこの先のエッセンスにできたらいいかな。

YUHKI:そのうち歌まで変拍子になっちゃうよ(笑)。

小野正利:ヤバいね~(笑)。

SYU:何を考えてんの?ってくらい自然な変拍子がツボるよね。

YUHKI:そう、あれを自然に聞かせるから凄いんだよね。それはメタルにも通じていて、あえて難しくしているわけではなくて、アンサンブルの妙で表現できれば良くて、結果的に変拍子になったりもするだけで。

SYU:素晴らしい曲があってこそ、テクニカルなものが映えると思うよね。今回は全て7弦ギターで録音して、ローB♭の曲が多いんですけど、「Bleeding Sanity」はミディアムテンポでケルト風でもあり、お客さんとのコールアンドレスポンスを意識して作った曲でもあります。なのでライブで声が出せるようになったら一緒に楽しんでもらって、ジャンプもできるしヘドバンもできる、大いに一体感が出せて楽しめる曲ですね。

YUHKI:ケルティックなベースが自然にハマって、お客さんとの掛け合いの雰囲気と重たくて雄壮な曲だよね。


──歌謡曲的な雰囲気の「See The Light of Freedom」もガルネリらしいです。

SYU:ザ・GALNERYUSですね、おっしゃる通りで我々の得意な感じです。これは小野さんが歌詞を書いていますが、悲しい気持ちも混ぜて、だけどしっかり頑張って行こうというものを特にヴォーカルを引き立てる為の曲になっています。

YUHKI:初期のガルネリの雰囲気を持った、泣きと哀愁のある曲だよね。歌だけでなくギターも泣きがあるし。

SYU:「Whatever It Takes」は僕がひとりで歌詞を書いたんだけど、これは「Angel of Salvation」以来くらいのガルネリの得意なやり方ですね。「Destiny」や「Promised Flag」の雰囲気もあるし、これがMV曲になっています。あえてコロナ禍の苦しさを出して、サビで救いの手が入るような歌詞なんですが、最終的には全てが晴れ渡るような感じで作りました。

──リレコーディング曲についてもお聞きしたいのですが。

SYU:LEAの加入もあり、過去曲から小野さんで既に録っていてライブでも評判の良かったもの、自分たちも好きなものを選びました。「Deep Affection」はYUHKIさんの初期の名曲だし、「Everlasting」は2009年の<PURE ROCK JAPAN>で小野さんが初めてゲストヴォーカルをしてくれた時のメモリアルな曲なのでね。

YUHKI:初期のオリジナルの雰囲気は壊したくなかったし、そこは意識しましたよ。現メンバーの今できる技量で録り直してソリッドになったかなと思います。

SYU:リレコーディングって凄く難しくて、賛否両論も避けられないしね。今だからこうなりましたけど、また10年したら違うだろうし。

──アルバムのテーマ的にバラードがないのも違和感ないですね。

小野正利:うん、そう言えばなかったけど違和感はないね。

SYU:なんかね、バラードをやる気持ちには全くならなかったですね。勇気付けたい気持ちしかなかったので。

YUHKI:色々詰まったものにはなったよね。SYUとLEAが早い段階から準備してくれて土台がしっかりできていたので迷わず作れたよね。

SYU:デモ制作に時間が取れた事で自然と楽器のソロパートも充実して、演奏したい・バンドで合わせたい欲が良い意味で出た作品になりましたね。


──そして久しぶりのツアーですが、やはりお約束のアルバム全曲再現でしょうか?

SYU:今回はね、全部演るけどもうちょっと自由度を高くして人間的にやります(笑)。感染対策でいつもとは違う形にはなりますし、お客さんは楽しめるのかな?とか、演者としてはやっている事は変わらないけれど、お客さんには色々な制限があって申し訳ないなとは感じます。それを払拭するような良いステージにしますよ。

YUHKI:多分、懐かしい曲も聴けるんじゃないかな。何よりお客さんに会える事が楽しみだし、声が出せなくても気持ちは通じ合えると思う。絶対に楽しいツアーにしますよ。

小野正利:演者はいつも通り変わらないです、あとはお客さんとの空気感だと思うので一緒に楽しめればいいですね。皆さんが期待しているステージにしますよ。

取材・文◎Sweeet Rock / Aki


GALNERYUS(ガルネリウス)『UNION GIVES STRENGTH』

2021年6月16日発売
・T-シャツMサイズ付き完全生産限定盤(CD+DVD)/ \7,300+税 / WPZL-31875~6
・T-シャツLサイズ付き完全生産限定盤(CD+DVD)/ \7,300+税 / WPZL-31877~8
・初回限定盤(CD+DVD)/ \4,300+税 / WPZL-31815~6
・通常盤(CD)/ \2,300+税 / WPCL-13279
1.THE HOWLING DARKNESS
2.FLAMES OF RAGE
3.HOLD ON
4.BLEEDING SANITY
5.SEE THE LIGHT OF FREEDOM
6.WHATEVER IT TAKES(Raise Our Hands!)
7.DEEP AFFECTION(2021 Re-Recorded Version)
8.EVERLASTING(2021 Re-Recorded Version)
DVD※初回限定盤、完全生産限定盤
GALNERYUS Stream Live "We'll See The Light Of Hope"
・PURGATORIAL FLAME
・MY HOPE IS GONE
・NEVER AGAIN
・POINT OF NO RETURN
・FLAMES OF RAGE
・EVERLASTING
・THERE'S NO ESCAPE
・RAISE MY SWORD
・DESTINY

<FIND THE WAY TO OVERCOME TOUR 2021>

6月27日(日) 名古屋 Electric Lady Land
7月3日(土) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
7月9日(金) 福岡 DRUM Be-1
7月10日(土) 広島 SECOND CRUTCH
7月14日(水) 仙台 MACANA
7月16日(金) 札幌 cube garden
7月23日(金) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
7月25日(日) 長野 CLUB JUNK BOX
8月11日(水) 新宿 BLAZE
8月12日(木) 新宿 BLAZE
※公演は、その時点での地域のガイドラインに従って、ソーシャルディスタンスによる会場の収容人数制限や、飛沫感染防止、換気、消毒やマスク着用等を遵守した上で行わせて頂きます。

◆GALNERYUSオフィシャルサイト
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