【インタビュー】首振りDolls、初ホール公演でナオが見せた涙の意味と新たな決意

ツイート

6月のある日、都内某スタジオに潜伏していた首振りDollsの3人を訪ねた。彼らはそこで、その日にショーン・ホラーショー(B)が持ってきたリフをもとに新曲作りに取り組んでいたのだった。昨今において曲作りといえば、データのやり取りをもとに自宅作業で進めるのが普通になっているが、彼らの場合は今現在も、実際に音を出してセッションしながらアイデアを膨らませていくという昔ながらのオーソドックスな手法をとり続けている。「相も変わらずこんなふうにやってます」「結局これが自分たちにはいちばん自然で」と口々に言う彼らの表情は、とても明るい。

◆首振りDolls 画像

去る5月15日、浅草・花劇場にて行なわれた自己初のホール公演を彼ら自身にとって納得のいくものにできたことも、それと無関係ではないだろう。今回は、3月にリリースされた最新アルバム『ドラマティカ』に伴うコンパクトなツアーのファイナル公演となった同ライヴについて振り返りながら、今現在の彼らの胸中を探ってみたい。

   ◆   ◆   ◆

■順風満帆じゃないことだけは確か(笑)
■だからこそあのライヴに賭ける気持ちが

──浅草・花劇場でのライヴからすでに約1ヵ月が経過しています。あの日のことが皆さんの中でどんなふうに記憶されているのかを今日は聞きたいと思うんですが。

ナオ(Vo, Dr):もうあの日からそんなに経つんですね。

ジョニー・ダイアモンド(G,Vo):あの日はめちゃくちゃ暑かった。しかも当日の会場入りがえらく早かったにもかかわらず、いろいろあって前夜はほとんど眠れず……

ナオ:かなりバタバタではありましたね。終演・退出時刻厳守ということもあったうえに演出の都合でいろいろと前倒しになったりもして、朝9時からの機材搬入の時にメンバーも立ち会うことになって。

▲ナオ(Vo, Dr)/<2021.05.15(SAT) 浅草花やしき花劇場 nao Birthday live!! DRAMATICAL DOLLS SHOW new album“ドラマティカ”release tour final!!>

──朝イチからの稼働だったんですね!

ジョニー:そういう意味でもすごく長い1日だったはずなんですけど、感覚的にはまさにあっという間の出来事のようでしたね。いいライヴだったと自分でも思いますし、いい1日というか、一生忘れられないくらいの日になりました。実際のところ、お客さんとの距離感というのが微妙ではあったじゃないですか。スタンディングでもなければ、声もあげられなくて。だけど、そんな中でも気持ちが通い合うのを感じられたというか。セットリストや演奏内容も良かったと思うんですけど、何よりそういう手応えがあったのが嬉しかったですね。みんなが喜んでくれてるのが伝わってきた、というか。

ショーン:それは僕もありましたね。なにしろ結構ギリギリまで「やっぱり延期?」みたいな話も出ていて。ただ、限定枚数だったとはいえチケットも早々にソールドアウトになっていて、ファンの皆さんのヴォルテージもいい感じに高まってるはずだというのがあったから、3人ともどうしても延期はしたくなかったし、その熱量が保たれたままの状態でやりたいっていうところでの意見は完全一致してたんです。そして実際、いろいろと制限の伴う状況ではあったけど、開催することができて、結果的には笑いあり涙ありのライヴになったというか。ホントにいいライヴ、感じるものの多いライヴになったなと思います。

──ナオさんにとっても特別な1日になったはずですよね。

ナオ:そうですね。あの日は自分の誕生日というのもあったし、ツアー・ファイナルで、しかもロケーションが素晴らしかったじゃないですか。浅草の花やしきの中にある花劇場という、まさに首振りDollsにうってつけの場所で初めてやることができて。このバンドの歴史においても、すごく大事な1日になったと思います。いろんな制約があるとはいえ、晴れてその日を迎えることができて……。そこでお客さんを楽しませることができるかどうかっていうのは常に心配してるというか、いつも考えてなきゃいけない部分だと思ってるんですけど、とにかく拍手が鳴りやまないという体験が忘れられなくて……

▲ジョニー・ダイアモンド(G,Vo)/<2021.05.15(SAT) 浅草花やしき花劇場 nao Birthday live!! DRAMATICAL DOLLS SHOW new album“ドラマティカ”release tour final!!>

──声をあげられないぶん、なんとか拍手や手拍子の大きさで気持ちをステージまで届けたい。オーディエンスのそんな気持ちがステージ上の皆さんにも伝わっていたわけですよね?

ナオ:うん。首振りDollsには慣れない初ホール・ライヴでもあったので、会場内の空間を埋めるというか、その空間を支配するためにはどうすればいいのか、みたいなことをかなり考えて臨んだんですけど、結果的にはお客さんが空間を作ってくれたというか。そういう意味でも、一緒に首振りDollsなりのホール・ライヴってものを作れたかな、と思います。しかもあの日は私、感極まって泣いちゃいましたからね(笑)。

ジョニー:実はその横で、なんだか俺もちょっと……

──えっ? もらい泣きしてたんですか?

ジョニー:いや、ナオが泣いてるのには気付かなかったんですよ。俺も俺で同じ場面で「なんか、ええなあ」と感傷に浸ってて、じわーんと感動してたんです(笑)。

ショーン:じ、じつは僕も(笑)。

──コロナ禍の続く中、ギリギリまで準備などにも追われて、不確かなところも大きなまま臨んだライヴが結果的に素晴らしいものになって、しかもお客さんたちとの繋がりを感じることができた。そりゃあ、じわーんときて当然ですよね。

ナオ:まあ、バンドとしてこうやってずっと続けてきた中で、紆余曲折というか、いろんな波もあって。しかも今、この制約の多い状況下でバンド活動を続けていくのって、やっぱり並大抵のことじゃないんですよ。俺たちぐらいのバンドにとっては。辞めていく人たちも結構いるし、みんな大変で、自分たちとしてもいろいろと思うところはあって……。そんな中、お客さんと一緒にあの空間を作れたっていうことで、なんかやっぱり、こみ上げてくるものがあったんですよね。

ジョニー:上京して、いろいろ自分たちなりに環境を整えてきて、さあこれからっていう時にコロナの影響が出始めたわけで……もちろん辛い思いをしてきたのはみんな同じだろうし、自分たちだけが不幸とかそういうことじゃないけど、なかなか不運ではあったと思いますよ。だからまわりからもよく言われますもん、「タイミング悪いよな、おまえら」って(笑)。

ナオ:順風満帆じゃないことだけは確かですね(笑)。でも、だからこそのあのライヴに賭ける気持ちがあったんですよね。

▲ショーン・ホラーショー(B)/<2021.05.15(SAT) 浅草花やしき花劇場 nao Birthday live!! DRAMATICAL DOLLS SHOW new album“ドラマティカ”release tour final!!>

──単純に、ステージから目にする客席の風景というのもちょっと異様だったはずですよね。なにしろみんな着席しているわけで。序盤、続々とみんなが立ち上がる場面もありましたけど、会場的には立って観ること自体もあの日は駄目だったんですよね?

ナオ:そうなんです。「ご自分のお席にてお楽しみください」ということの意味をちょっと取り違えていて。自分の席の場所から離れなければいいんだろうと思ってたんで、序盤に「座ったまま踊れんのかよ!」とか煽ったりもして。その時、女の子がひとり躊躇いながらも立ったら、それが合図だったかのようにみんな立ち始めて……

ショーン:その瞬間は「キターッ!」と思ったんだけど……

ジョニー:総立ちみたいになったと思ったら、今度はウェーヴみたいにだんだんみんな座っていって(笑)。あれもやっぱり、忘れられない光景のひとつでしたね。

ナオ:そこで「ああ、起立すること自体も駄目なんだ」って理解して。ただ、その後、座ったままの状態でも、お客さんがすっごく笑顔でいてくれて。

──全員マスク着用だから、笑顔とはいっても目しか見えないんじゃないですか?

ショーン:ただ、その目の表情がわかるだけでも違うんですよ。

ジョニー:そうそう、なんかすごくキラキラした目をしていて。

ナオ:すごく一生懸命見てくれてるというか、そんな感覚がありましたね。

ショーン:いつものライヴより、しっかり見られてる感みたいなのがあったというか。

ジョニー:2階席、3階席までありましたからね。いろんな方向から視線が集まってくる感じで、いつも見に来てくれてるお客さんの顔を上のほうに見つけたり。

ナオ:そういうホールならではの環境だと、やっぱりライヴハウスでやる時とは攻め方も全然違ってくるじゃないですか。そういう意味でもあの日のセットリストは正解だったな、と思っていて。

ジョニー:確かに。「ロックンロール」を敢えて外したのも良かったと思う。

▲<2021.05.15(SAT) 浅草花やしき花劇場 nao Birthday live!! DRAMATICAL DOLLS SHOW new album“ドラマティカ”release tour final!!>

──このバンドのライヴにおいては定番中の定番ともいえる曲ですよね。当日、アンコールでの予定曲リストの中には入っていましたけど、単純に時間的な制約のために削ったわけではなく、そこには意図もあったということですか?

ナオ:そうですね。当初、アンコール用には3曲考えてあったんですけど、それは希望的観測に基づくものでしかなくて、時間的に1曲しかできなくなったら「タイムマシン」にしようって決めてたんです。単純に、「ロックンロール」をやると延々10分ぐらいになっちゃうから、というのもあるんですけど(笑)。

──ええ。あのリフの応酬こそがこれまでの首振りDollsのライヴを象徴してきたともいえるはず。ただ、逆にあの曲をアンコールでやってしまうと、結果的に“いつものライヴハウスでのライヴ”と同じになってしまい兼ねない、というのもあったように思います。

ジョニー:それもそれで悪くないかなと思ってたんですけど、それ以上に、あの曲を外してもいいライヴにできそうだっていうのを感じていたので……。とはいえ結構大胆だったとは思います。なにしろあの曲を外すというのは初の試みだったから。

ナオ:そう。俺たちかれこれ10年近くバンドをやってきてますけど、あの曲をやらなかったのは初めてだったかも。

▲<2021.05.15(SAT) 浅草花やしき花劇場 nao Birthday live!! DRAMATICAL DOLLS SHOW new album“ドラマティカ”release tour final!!>

──重要なのは本編を「サボテン」で締め括って一度ステージから姿を消した時点で、“ここで「ロックンロール」をやらないと誰も納得して帰ってくれそうにないね”みたいなライヴにはならなかった、ということだと思うんです。

ジョニー:そうそう、まさにそういうことです!

ショーン:うん。本編で出し切れた感があったんですよね。

ジョニー:これはバンドとして一個、大きな成長なんですよ。新たな一歩を踏み出せたというか。あの曲をやるとみんな喜ぶじゃないですか。対バンの時とかもそうだし、初見の人たちも盛り上がってくれるし。

ナオ:「ロックンロール」で始まり「ロックンロール」で終わる、なんてライヴをやったこともあったくらいだし(笑)。

ジョニー:しかも、そのうえアンコールでもやってみたり(笑)。

ショーン:ははは!

ジョニー:そういう馬鹿なライヴも好きなんですけどね。いつか大きなホールでも「ロックンロール」を延々とやりながら……

ショーン:そう、会場内を駆け回りたいですよね。

ジョニー:たとえばAC/DCのライヴで、アンガス・ヤング(G)がステージから姿を消して、突然2階席にスポットライトが当たるとそこで弾いてた、みたいなのってあるじゃないですか。俺はああいうのをやりたい、いつか(笑)。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報