【ライブレポート】谷山浩子、9ヵ月半ぶり有観客ライブで栗コーダーカルテットと2時間超 全21曲の共演

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6月12日に東京文化会館小ホールで行われた<谷山浩子と栗コーダーカルテット 放課後の音楽室>で、谷山浩子が久しぶりにステージに立ち元気な姿を見せてくれた。もともとこのコンサートは2020年6月に予定され、コロナ禍による緊急事態宣言を受け一旦中止となり、その後は谷山浩子の病気治療もあって延期されていたもの。およそ9ヵ月半ぶりの有観客ライブでファンの期待も高く、会場は満員の観客で埋まった。

◆谷山浩子と栗コーダーカルテット 画像

コンサートは二部構成。第一部は栗コーダーカルテット(栗原正己、川口義之、関島岳郎)にゲストのタバティ(ビューティフルハミングバード)と安宅浩司を加えた5人編成で、代表曲「ピタゴラスイッチ オープニングテーマ」や、谷山浩子作曲の「テルーの唄」など10曲を披露。谷山浩子もオープニングのトークに登場し、エンディング曲「うれしい知らせ」にはトイピアノで参加。「この曲が私にとっての本日のクライマックスです(笑)」と言いながら、栗コーダーカルテットの奏でる牧歌的なサウンドにぴたりと息を合わせ、楽しい演奏を聴かせてくれた。



20分間の休憩をはさみ、第二部は谷山浩子オンステージ。栗コーダーカルテット、タバティ、安宅浩司を加えた6人編成で、まずは「わたしじゃない月のわたし」「マギー」と、谷山いわく“夜をうろつく歌シリーズ”2曲を披露。心配された体調も声もとても調子良く、これまでと変わらぬ美しく澄んだ歌声が会場いっぱいに響きわたる。栗コーダーカルテットとは過去に何度も共演しているが、谷山浩子の持つしっとりとした暗さや幻想的な物語性と、栗コーダーカルテットの持つアイリッシュトラッド風のおおらかさや哀愁との相性は抜群だ。

映画『コクリコ坂から』挿入歌として手嶌葵に提供した「朝ごはんの歌」は、ジャズ調で軽快に。「ウミガメスープ」「向こう側の王国」「きれいな石の恋人」などファンタジー色の濃い楽曲はリコーダー、鍵盤ハーモニカ、アコースティックギター、チューバなど様々な楽器のアンサンブルで、不思議な無国籍感たっぷりに。演奏は精密だが合間のトークは和気あいあいでゆるく楽しく、栗コーダーカルテットが3人でも5人でも“カルテット”である理由が明かされたり、川口がかつて谷山浩子「そっくりハウス」の譜面の間違いに気づかず演奏していたことが暴露されたり。明るい笑いの中で楽しい時間が過ぎてゆく。



1985年にNHK『みんなのうた』のために書かれた「恋するニワトリ」を軽やかに歌い上げると、最新アルバム『花さかニャンコ』収録の「ネムルル」では、この日は歌うことに徹していた谷山浩子が唯一のエレクトリックピアノ演奏を披露。さらにラスト曲「さよならのかわりに」まで、全9曲を歌い終えてステージを降りたメンバーに向け、アンコールの拍手が鳴りやまない。

アンコールでは2019年にNHK『みんなのうた』で放送された「花さかニャンコ」を、メンバー全員のコーラスを交えて陽気に盛り上げ、2時間以上に及ぶコンサートは幕を下ろした。「またコンサートを、できたらやりたいなと思っています」と、力強く語る谷山浩子の言葉に応える満場の拍手は、谷山浩子と栗コーダーカルテットの音楽が、コロナ禍を生きてゆく力になっている証のように聴こえた。先の見えない時代の中に確かな希望の灯をともす、心があたたかくなるコンサートだった。


取材・文◎宮本英夫

■<谷山浩子と栗コーダーカルテット 放課後の音楽室>2021年6月12日(土)@東京文化会館小ホールSETLIST

【1部】
01. ピタゴラスイッチ オープニングテーマ
02. マヨネーズ第二番
03. サウスポー (Short ver.)
04. しっぽのきもち
05. ボンネットバス
06. 羊どろぼう。
07. 青空節
08. 帰り道
09. テルーの唄
10. 川口くんのおすすめトラッド1&2
11. うれしい知らせ
【2部】
12. わたしじゃない月のわたし
13. マギー
14. 朝ごはんの歌
15. ウミガメスープ
16. 向こう側の王国
17. きれいな石の恋人
18. 恋するニワトリ
19. ネムルル
20. さよならのかわりに
encore
en1. 花さかニャンコ

▼出演
谷山浩子、栗コーダーカルテット(栗原正己、川口義之、関島岳郎) + 安宅浩司、タバティ

■<栗コーダーカルテット コンサートスケジュール>

7月03日(土) 東京・調布国際音楽祭
7月11日(日) 埼玉・飯能市市民会館
7月31日(土) 茨城・水戸市みと文化交流プラザ
8月07日(土) 富山・射水アイザック小杉文化ホール
8月09日(月) 東京・江東区文化センター
8月28日(土) 岐阜・高山国府さくらホール

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