【インタビュー】ザ・フラテリス「マルチカラーなイメージのアルバムになっている」

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たとえ洋楽に興味がなくても、彼らの楽曲に耳を奪われたことがある大人世代は多いはず。超絶キャッチーな「♪パラッパッパララララ♪」のフレーズで大きな反響を呼んだiPodのCMソングこそ、この英グラスゴーの3人組、ザ・フラテリスの「気取りやフラッツ」(原題は「Flathead」)なのだ。


同曲を収めたデビュー・アルバム『コステロ・ミュージック』の発売15周年を迎えている彼らが、通算6枚目となる最新アルバム『ハーフ・ドランク・アンダー・ア・フル・ムーン』をリリースした。ファンタジックでドリーミーなタイトル曲で幕を開ける今作には、ブラスとストリングスがグッド・メロディを壮麗に彩る、成熟を極めたポップ・チューンが見事に並ぶ。パンデミック疲れから束の間、解放してくれることは間違いない。フロントマンのジョン・フラテリに、話を聞くことができた。


──未曾有のパンデミックで世界が一変してしまいました。ミュージシャンとしての毎日も、大きく変わったかと思います。

ジョン・フラテリ:まあ、個人的にそういう生活に向いていたというか。もともとひとりで時間を過ごすことが多かったから、ロックダウンや自粛生活は苦にはならなかったし、わりと淡々と過ごしていた感じで。そりゃあまあ、本来なら去年の予定だったアルバムの発売日が延期になったり、ツアーやら何やらがキャンセルになったってことはあるけど、それも仕方がないというか。

──メンバーも、元気で変わりないですか?

ジョン・フラテリ:まあ、だいたい僕と同じ感じというか、家でじっとしているのも、それほど苦痛じゃなかったはずだよ。ツアーに出て、ツアー・バスや楽屋でじっとしているのと同じだと思えばね。


──今回のニュー・アルバムの構想やイメージは、どのようなものだったのでしょうか?

ジョン・フラテリ:いや、それを言葉で説明するとなると、また難しいところでね。言葉ではどうしても埋められないギャップみたいなものがあって、アルバム自体が単体で存在しているようで、音楽を聴いてもらうしかないというか。確かに自分の内側から聴こえてくる音があって……もうそうとしか言いようがないんだよ。ただそれを捕らえようとしていただけなんだ。結果的に、それがアルバムになったみたいな。

──全英チャート5位を記録した前作『イン・ユア・オウン・スウィート・タイム』をふまえ、意識したことなどはありましたか?

ジョン・フラテリ:いやもう、それとこれとは完全に切り離して考えていて。ずっと前に学んだんだけど、うまくいった方法論や曲に引きずられ出すと、それはもう地獄への道まっしぐらというかね(笑)。手痛い経験から、そのことを学習したんだ。今はただ、純粋に自分が楽しむために曲を書いている。もし、自分以外のみんなはどういう音楽が好きなんだろう?っていう視点から、曲を作るようになったら、悲惨な結果にしかならないだろうから。悪魔に魂を売るようなものでね。だから、毎回ゼロの状態からスタートしているんだ。



──自粛疲れで鬱屈した心を解放してくれるような、会心のポップ・アルバムに仕上がっていると思います。今改めて、どんな作品になったと実感していますか?

ジョン・フラテリ:そうだな、アルバム全体の印象として、色…カラフルな色だね。それが、今回自分が追求してみたかった音のイメージとしてあったんだ。だから、君が今言ってくれたことも、あながち偶然ではない気がしている。ある人には、気持ちが明るくなるようなサウンドとして受け止められるというね。色とりどりのサウンドの、マルチカラーなイメージのアルバムになっているんじゃないかと思う。


──穏やかで優しい「アクション・リプライ」や「ハロー・ストレンジャー」からは、余裕のようなものが感じられます。キャリアを重ねてきたからこそ、できた楽曲と言えますか?それとも、いつでも作れる曲だけど、今のほうが歌いたいと思えるという?

ジョン・フラテリ:いや、最初からああいうタイプの曲を難なく書けてしまう人もいると思うし、そういう人たちこそ、本当に才能あるアーティストと言えるんだろうね。僕自身は、自分のことしか話せないけど、確かに君が言う通り、長いプロセスを経て学んできたからこそ、ようやく辿り着いた曲なんだ。最初からストレートに到達できてしまう人は、僕なんかからすると本当にうらやましい限りだけどね。



──歌詞に前作と同じキャラクターが登場するという点で、前作と今作は連作コンセプト・アルバムと考えるべきなのでしょうか。

ジョン・フラテリ:そうだね、パート1、パート2的な。前回のアルバムのストーリーについて、もう少し掘り下げたかったところを取り上げていたりね。確実に繋がっているよ。ただ、今回のアルバムで、そのストーリーは終わりなんだ。一連のストーリーが完結している。

──『コステロ・ミュージック』でのデビューから、15周年ですね。バンドの活動休止と再始動を経て、あのデビュー作と「気取りやフラッツ」でのいきなりのブレイクを、今はどう振り返りますか?

ジョン・フラテリ:自分の中では、すべてが遠い記憶みたいな感じだよ。リリースされて15年、レコーディングして16年、曲を書いて17年になるんだけど、曲を書いたのは、もはや自分とは別の人間のようで(笑)。少なくとも、今のこの2021年には存在していないんだ。自分の感覚としては、そうなんだよね。ただ、今でもあのアルバムの曲を楽しみにしてくれるお客さんが、たくさんいる。それは僕たちにとっても嬉しいことで、これからも喜んでプレイし続けていくよ。

──今回の新作を聴くと、早くあなたたちの来日公演が実現することを願わずにはいられません。


ジョン・フラテリ:ライヴに関しては、本当に早くステージに戻って演奏できる日を待ち侘びていて…実際、最後にツアーしたのは2018年の終わりなわけでね。しかも、去年1年間は一切ライヴができない状態だった。来年ツアーを再開できたとしても、約4年ぶりになるから。いや、本当に、自分でもステージに立っている時の感覚が薄らいでいるくらいなんだ。お客さんとの一体感とかね。ライヴを通して、曲がどう変化していくのか楽しみな気持ちもあるよ。来年のいつになるかわからないけど、もしまた日本に呼んでもらえるなら、どんな形であったとしても嬉しいというか。今でもまだ自分たちの音楽が好きで、楽しみにしている人たちがいるなんて、どれだけ恵まれているのかと思うし、言葉では言い表せないくらい感謝の気持ちでいっぱいで。しかも日本とは、何年もかけて絆や愛着を深めてきたわけだからね。それこそ、来年1年間の自分にとっての一大イベントになるはずだよ。うまく説明できないんだけど、日本とか日本の人たちには、何か自分の中に響くものがあるんだ。だから、来年には日本でライヴができるような状況になっていることを願っているよ。

取材・文◎鈴木宏和


『ハーフ・ドランク・アンダー・ア・フル・ムーン』

2021年04月09日
OTCD-6807 ¥2,400+税
※解説/歌詞/対訳付、日本盤ボーナス・トラック2曲収録
1.HALF DRUNK UNDER A FULL MOON
2.NEED A LITTLE LOVE
3.LAY YOUR BODY DOWN
4.THE LAST SONGBIRD
5.STRANGERS IN THE STREET
6.LIVING IN THE DARK
7.ACTION REPLAY
8.SIX DAYS IN JUNE
9.OH ROXY
10.HELLO STRANGER
11.NEED A LITTLE LOVE (THE SKELETONIC SESSIONS) (BONUS TRACKS)
12.LAY YOUR BODY DOWN (SLOE GIN VERSION) (BONUS TRACKS)
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