【レポート＆photo_gallery】＜京都大作戦2021＞岡崎体育、「ワシの地元じゃー!!!」

太陽が丘といえば、ロック好きなら＜京都大作戦＞ってことになる。しかしこの男にとって、太陽が丘は実家のすぐ近く。“チャリで来た”と自身のサンプリングボイスが繰り返し流れる中、ステージ袖から主婦が買い物に使うママチャリに乗って現れたのは、岡崎体育。

◆岡崎体育 画像

“チャリで来た、岡崎体育、実家から”とか“ここから10分”といったサンプリングボイスを連発させ、徐々にハンドクラップも起こり始めた、そのときだった。

「おりゃー！ 岡崎体育じゃー!! ワシの地元じゃー!!!」とママチャリから降りてマイクをむんずと掴み、叫びを繰り返す。ここから10分の実家にまで届いてしまいそうな大きな声で。


「みなさん、＜京都大作戦＞が始まってますよ！ 今年はみんな声出せへんね。でも身体動かせるよね。下が(ぬかるんで)ビチャビチャとか関係ないから！ 全員で踊れ！ ディス イズ “宇治スタイル”！」

勢い良く煽りたてながらライブ本編へ突入。4つ打ちのダンサブルなトラックをバックに、ぽっちゃり体系ながらキレある動きと、リズム感のいいラップボーカルを決める。そして突き刺さってくる歌詞やワードは、クスッと笑えるところも。そのライブパフォームと曲に自然に煽られ、会場はオープンエアーの健康的なディスコのようになっていった。


「＜京都大作戦＞、サイコー！ 気持ちいい!!　地元ぞ、ワシの。普通に中体連(中学校体育連盟)の大会とかやってたからね、ここで。SiMの伝説のMCってあるじゃないですか？ “あの丘を超えるのに5年掛かった”って。僕、この15年間で100往復ぐらいしてるんで。何回行き来したことか」

地元ならではの嬉しさと思い出話に、笑いと拍手が同時に起こる。また地元だからこそ、80歳を超えた岡崎体育のおばあちゃんがライブを観に来ているとのこと。音がうるさくないか、おばあちゃんを気遣う優しさも見せる岡崎体育。MCでイジられたおばあちゃんも、ピンクのハンカチを振って嬉しそう。

そんな身内話はともかく、ライブの中身だ。自分のことを書かれたフェスのクイックレポートが好きな岡崎体育が、自分で自分のクイックレポートを書いた曲が「Quick Report」。”自分にとってのパワーワードであり、好きな誉め言葉でもある“観客のボルテージは一気に最高潮”を散りばめ、本日の＜京都大作戦＞のレポを歌に構築。そのレポ内容に合わせて、“ステージ袖で観ていた10-FEETのTAKUMAがモニターに映し出される”わ、“観客が掲げたタオルの大海原が会場に広がる”わ、誰も彼もがやりたい放題。実際、ボルテージは最高潮になって、岡崎体育も満面の笑み。さらにMCで、本日が誕生日であることを告れば、オーディエンスから祝福の拍手も起こって嬉しさ爆発。「Voice Of Heart2」では舞台袖をチラチラ見ながら「バースデーケーキ出てくるまで動かんぞ、俺は」と“心の声”がつぶやく岡崎体育だ。



「2012年ぐらいから音楽をやっているんですけど、地元のスーパーでアルバイトしながら音楽活動してて。この季節になると、朝方、おにぎりとかスポーツドリンクとか買っていくバンドTシャツの人がスーパーに来ていました。みんな、大作戦に行くんやなって。地元のミュージシャンとして、なんで俺はあそこに立てないんだと。悔しい思いをずっとしていましたね。でもめげずに頑張って、今、こうやってステージに立つことができてます。何事もあきらめずに続けることが大切だなというのを、この＜京都大作戦＞でヒシヒシと実感している所存でございます。ありがとうございます」

SiMに次ぐ伝説のMCの誕生である。いつもは笑いに持っていこうとする岡崎体育が、素直な思いを語る姿に感動すら覚える。客席エリアでは、小さいころからの岡崎体育を知る地元のおじちゃんとかおばちゃんらしき方々も拍手を贈っていた。そんな多くの人たちの愛情を受け、エンディングに向けて岡崎体育は、上半身をのけぞらせ吠え始める。

「俺が宇治出身のミュージシャン、岡崎体育じゃー!!」


「XXL」では激しいビートを流しながら、力の限り叫ぶように言葉を連発させる。顔に絶え間なく流れ続ける汗が、この10年近く夢見てきた＜京都大作戦＞に出演することができた嬉し涙のようにも見えた。そして自身を育んでくれた宇治に、＜京都大作戦＞で出会ったみんなに感謝を込めながら「The Abyss」を決めた。

ここでライブは終わったかに見えた。しかし最後は10-FEETがバースデーケーキを持って、岡崎体育の32歳の誕生日を祝福。岡崎体育の＜京都大作戦＞への愛が、相思相愛になった瞬間とも言えるだろう。



取材・文◎長谷川幸信
撮影◎HayachiN／青木カズロー／瀧本 JON...行秀


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