【ライヴレポート】MORRIE、＜幻葬回帰の夜 〜足立祐二を偲んで〜＞に時空を超えたコラボ

MORRIEが6月16日(水)、南青山MANDALAにて＜幻葬回帰の夜 〜足立祐二を偲んで〜＞を開催した。同公演はDEAD ENDのギタリスト、故足立“YOU”祐二の一周忌に彼のことを思い、歌い、語るという主旨のもとで行われた公演だ。当日のライヴレポートをお届けしたい。

◆MORRIE 画像

あの日から、気付けば丸1年が経過した。しかし、この＜幻葬回帰の夜 〜足立祐二を偲んで〜＞においてMORRIEも口にしてように、やはりいまだに現実味はない。それゆえに＜追悼ライヴ＞と言われても、なかなか実感が沸かないのが正直なところだ。とはいえ、嘆いていても彼は戻ってはこない。その素晴らしき功績に思いを馳せるためのもの。そんな解釈をしながら会場へと向かった。




セットリストを一覧すればわかる通り、MORRIEのソロ公演で、ここまでDEAD ENDの楽曲が並んだことはこれまでなかっただろう。YOUこと足立祐二にまつわる特別な演目を組んだのは、この事実からも容易に想像できる。

それぞれの曲を選んだ理由について、MORRIEには確認していない。ソロ公演＜SOLITUDE＞でもしばしば演奏される「Sleep In The Sky」や「Serafine」は順当なセレクトであり、「Heaven」は二人が最後に共にプレイしたマテリアルであることから合点がいく。たとえば、「夢鬼歌」や「神猿」はどうかと言えば、前者には“あなたが夢”、後者には“あなたにもう一度逢うために、今”と歌われる一節がある。本来の歌詞の意味とは異なるものの、その対象として足立祐二を想起した人も少なくなかったかもしれない。ソロ作品から唯一組み込まれた「Goodnight Reverie」も同様で、これはまさに鎮魂歌といった趣旨で採り上げられたように思える。

再始動後のDEAD ENDのライヴでは聴くことができなかった「Skelton Circus」が披露されたのも、いつもとは違う一夜であることを印象づけた。また、音楽活動から離れていたYOUの復活作となった『You’s Alien』に収録されていたインストゥルメンタル「Immoral」では、MORRIEが歌詞を書き下ろして内なる思いを伝えることになった。時空を超えた予期せぬコラボレーション。そう言っていいだろう。ぜひこれは正式に音源化されることを期待したい。




MORRIEは一つ一つの言葉と音に、より神経を研ぎ澄ませて向き合っているように感じられる。中盤(「Goodnight Reverie」)からは、河村隆一のツアーで足立祐二ともステージを共にしていたサックスプレイヤーのyukarieが登場。あの独特で魅惑的なギターソロパートなどを鋭く、そして優しい音色で巧みに再現していく手腕には改めて頷かされる。序盤から舞台上で醸し出される空気感は心温まるものだったが、MORRIEと彼女の和やかな語り合いも、足立祐二の人柄を微笑ましく偲ぶ標になった。

ただ、本編最後の「冥合」での緊張感は、それまでの雰囲気をガラリと変えた。もちろん、受け止め方は十人十色である。しかし、曲が始まるやいなや、個人的には溢れる涙が止まらなくなった。昨年8月9日の深夜にTOKYO FMで放送された『ギタリスト 足立祐二 追悼特別番組 ～ You's Alien』でも、MORRIEは「DEAD ENDで一番好きな曲」だと話してこの曲を選び、番組の最後でオンエアされた。急に思い出したのは、あのときの寂寥感である。番組が終了したのは午前4時。その後は同局のプログラムがなく、「冥合」が流れ終わると同時に、ラジオは無音の状態になった。偶然とはいえ、その暗黒にも感じられた闇に同調してしまったことで、しばらく現実に戻ってこられなくなったのだ。


あくまでも個人的な観点だが、MORRIEも少なからず、特に「冥合」を奏で、歌うことによる観客の反応を見据えていたのではないか。もっと言えば、その瞬間に自身に押し寄せるかもしれない稀有な感覚を客観視していた可能性もある。アンコールでは足立祐二とも親交の深かったKatchin(アコースティックギター / 元SHOTGUN MARRIAGE)を招き入れ、弁の立つ彼のトークを交えて抱腹絶倒の空間を生み出しつつ、「Luna Madness」で締め括ったのは、明らかに雰囲気を一変させる狙いを持ったものだった。これからも意識下に存在する足立祐二をポジティヴに称える、それこそが＜幻葬回帰の夜＞に込めた思いの一つでもあったのだろう。

“YOU are my heaven”──「Heaven」で綴られたフレーズは、これからも新たな意味を宿した歌として、多くのファンの心の奥底で響き続けていくことになるに違いない。

取材・文◎土屋京輔
撮影◎荒川れいこ(zoisite)