【インタビュー】布袋寅泰、活動40周年を語る「“自分を信じて戦え”と言うでしょうね、あの頃の僕に」

■「Dreamin'」から始まり
■「GLORIOUS DAYS」で終わる

──それから武道館ライヴ映像作品『40th ANNIVERSAY Live “Message From Budokan”』。収録当夜は、もし客席が映らなければオーディエンスを前にしたライヴと錯覚するような迫真のステージでしたね。あのとき、一体どのような心持ちで舞台に立たれていたのでしょうか？

布袋：直前に緊急事態宣言が発令されて無観客を余儀なくされた時は本当にショックでした。コロナによってライヴ活動が一年間できず、僕にとってもファンにとっても、そしてバンドやスタッフにとっても、とても大きな意味を持つステージだったのでね。観客のいない武道館はライヴのサウンドチェックの時しか見たことがなかったので、とても非現実的でした。大気圏に一人放り出されたような、何とも言えぬ恐怖と孤独感を覚えました。しかしライヴが始まると今までのライヴの記憶が重なり、空っぽの客席に満員のオーディエンスを思い描くことができた。配信で観てくれてる人たちを何よりもハッピーにしたかったし、最後まで気持ちはブレることなく2日間を無事終えることができました。まさに“伝説のライヴ”ですよね。10年後にこの映像を観たらまた、感慨深いのではないでしょうか。

──それをパッケージ化するにあたって何を考えられましたか？

布袋：有観客の通常のライヴではできない演出ができるな、と。普段観客の上をカメラが移動するのは規制されているので、今まで観たことのないアングルからの撮影が可能となりました。生配信の映像とは違い、それぞれのカメラが捉えた奇跡的瞬間をじっくり編集し、サウンドも細かいニュアンスまで調整しました。オーディエンスの声がないことで、演奏がより明確にミックスでき、今までのライヴ作品よりダイレクトなサウンドが楽しんでもらえると思います。


──歴代ギター40本を両脇に並べた花道から登場するオープニングシーンが壮観でした。

布袋：あのシーンは今観てもゾクっときますよね。それぞれ思い出のあるギターが40周年のステージの花道に立って僕を拍手と共に迎えてくれてるように見え、胸が熱くなりました。長き道のりを共に旅し、戦った相棒たちですからね。

──初日は、BOØWY、COMPLEX時代の楽曲が中心となった＜～とどけ。Day 1 (Memories)～＞。当時の楽曲を再現するにあたってイメージしていたことはありましたか？

布袋：BOØWYもCOMPLEXもオリジナルが完璧ですからね。下手なことするとファンに叱られますし（笑）。今回はサックスが加わったことで、曲を作った当時、頭に描いていたサウンドやアレンジを完全化することができました。BOØWYにはキーボードがいなかったので、僕がギターでホーンセクションやシンセやパッドの音に近い音を加えるために、ハーモナイザーやオクターバーやコーラス、ディレイといった様々なエフェクターを駆使して、楽曲に色添えしていました。BOØWYの多くの曲はサックスの音やフレーズを想定して作ってたんです。「Dreamin'」や「ホンキー・トンキー・クレイジー」などね。「MEMORY」と「1990」のアコースティックの弾き語りは、歌いながら当時の心境が蘇り、良い意味で感傷的かつ懐かしい選曲でした。



──対して2日目は、ソロになってから現在に至るまでの長いキャリアを振り返る＜～とどけ。Day 2 (Adventures)～＞。

布袋：40年の活動のうち、BOØWYは6年、COMPLEXは2年でしたからね。ソロのキャリアの方が全然長いんですよね。

──2DAYSを締めくくるナンバーは「GLORIOUS DAYS」でした。この曲は本来、あの頃には戻れない、という内容の曲だと思いますが、今回の流れの中で披露されたそれは、戻れないからこそ前へ、という歌として力強く響きました。そこも含め2日目のセットリストを組むうえで、キーポイントとなった楽曲はありましたか？ また、セットリストにどのようなストーリーを思い描いていたのでしょうか？

布袋：ステージではライブ映えをする曲というか、オーディエンスが楽しんでくれる図をイメージして選曲しますから、無観客というのは当たり前に未経験だし、なかなか難しかったです。「Dreamin'」から始まり「GLORIOUS DAYS」で終わる、という流れはとても象徴的だし、前向きなストーリーだと思いました。満員の武道館なら、演奏が聞こえなくなるくらいの歓声が止まぬセットリストだったと思います。作品化された映像に映る誰もいない客席を、皆さんに是非埋めつくしてもらいたいと思います。

──さて、この秋からはいよいよホールツアー＜HOTEI 40th Anniversary ～Double Fantasy Tour～ “BLACK or WHITE ?”＞が始まります。9月25日の北海道・コーチャンフォー釧路文化ホールを皮切りに12月10日の宮城・仙台サンプラザホールまで、全10ヶ所18公演のツアーとなりますが、今回はどんなメンバーでやることになるのでしょう？

布袋：ここ数年バンドメンバーはパーマネントな形です。サックスも加え、この武道館ライブ(＜40th ANNIVERSAY Live “Message From Budokan”＞)と同じ編成で回りますよ。重厚かつキレのある最高のバンドです。

──演奏曲はどのような内容をお考えでしょうか？

布袋：＜～DOUBLE FANTASY TOUR～ “Black or White ?”＞のタイトルから連想してもらえるように、2DAYS会場は2つの異なるセットリストを用意し、楽しんでもらうつもりです。今までにない試みなので、僕もとてもワクワクしています。40年のBest of Bestといった内容で、もちろんBOØWY、COMPLEXの曲もやります。「Pegasus」など新曲もあるし、コロナの状況も踏まえ、じっくり聴いてもらえるコーナーも用意しようかな、と思っています。とにかくいつも通り“最新のHOTEIが最高のHOTEI”を更新したいし、観に来てくれる全てのオーディエンスが元気になる、ハッピーで心温まるツアーにしたいと思います。お楽しみに！


──最後に40周年記念映画について。先ごろ実施されたトークセッションイベントで、初のドキュメンタリー映画『Still Dreamin’〜布袋寅泰情熱と栄光のギタリズム〜』が2022年に公開されることが発表となりました。アーティスト活動40周年アニバーサリーを記念して制作されるとのことですが、現時点でどのような内容になるのか、答えられる範囲でお教えください。

布袋：“布袋寅泰”という唯一無二のアーティスト、人間がどのような気持ちを軸に40年という長い年月を旅してきたか。単なる過去の映像やインタビューを繋ぎ合わせただけではない、ファンタジーとリアルが絶妙に絡み合う、ファンのみならず多くの人々に楽しんでもらえる映画にしたいと思っています。まさに現在進行形。どんな結末になるか僕自身もまだわかりません。このコロナ禍という想定外の時間も映り込むでしょう。公開は2022年です。どうぞご期待ください。

取材・文◎今津 甲
撮影◎山本倫子