【ライブレポート】Official髭男dism、「この1年4ヶ月が俺たちをまたひとつ強いバンドにしてくれました」

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「みんなと生で音楽を一緒に味わう、宝物のような時間をやっと世界から取り返すことができたことを、本当に嬉しく思っています」──藤原聡(Vo,Pf)

オンラインライヴでも言っていた「取り返す」という強い言葉に、彼らがこのステージをどれだけ待ち望んでいたかが窺える。決して立ち止まらなかったOfficial髭男dismが、諦めずに守り続けた“宝物”。それは、封印されていた1年4ヶ月の間でくすむどころか、さらに輝きを増して、まばゆい光を放っていた。

◆ライブ画像

6月24日、25日に、ぴあアリーナMMにて行われた<Road to 「one – man tour 2021-2022」>は、タイトルどおり9月からのツアーに先駆けた前哨戦であり、同時にコロナ禍後初の有観客ライヴ。25日はバンド初の2部公演で開催され、2日間で合計3公演という大ボリュームだ。本稿では、そのラストとなる25日夜公演のレポートをお届けする。


待ちわびていたオーディエンスからの期待がステージに注がれる会場内では、恒例のBGMであるマイ・ケミカル・ロマンスの「ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード」に合わせて手拍子が巻き起こる。楽曲の終わりとともに暗転し、ドラムロールが轟いてライヴがスタート。1曲目は「I LOVE...」だ。メンバー4人にサポート6人を加えた10人編成が横1列に並び、背景には巨大なLEDビジョンが広がる。豪華なアンサンブルを立体的な照明が彩り、いきなり壮大な世界観に目と耳を奪われた。

思えば1年4ヶ月前、『Traveler』のツアーではこの「I LOVE...」が新曲として披露されていた。その続きを描くのだというように、「HELLO」「パラボラ」と2020年リリースの楽曲が次々と奏でられていく。家でも、テレビの中でも、街中でも、何度も耳にしたメロディが、ライヴという空間で、10人の音で新たな命を得て響き渡る。小笹大輔(G)のリフが鮮やかに空間を彩り、躍動的なリズムを担う松浦匡希(Dr)と楢﨑誠(B,Sax)も眩しい笑顔だ。


最初のMCで「早く生で聴かせたい、聴いてほしい曲が、このあとセットリストにめちゃくちゃ渋滞してるんで」と藤原が語っていたように、この1年4ヶ月でたくさんの新曲を生み出してきたヒゲダン。

2020年7月にリリースされた「Laughter」もその筆頭だ。オンラインライヴでもすでに存在感は伝わってきていたが、会場全体を使って表現されるさまは圧巻だった。歌詞にある“鉄格子みたいな街”をイメージしたような光の柱がぐるりとアリーナを囲んだり、“稲妻よりも速く”の部分で雷鳴のように点滅したり、ドラマチックに展開する楽曲と合わせた照明の演出。メロディと歌詞、一つ一つの音と視覚的な効果が渾然一体となって描き出す光景はまるで舞台演劇のような迫力だった。続く「Rowan」では、ミニマムなラブソングをムーディな紫の照明が照らし、「Pretender」では巨大なミラーボールが印象的に輝いていた。

楽曲ごとの世界を盛り上げる精密な演出と、それを一本のライヴに練り上げる構成力は、オンラインライブを経たからこそだろう。観客がいない状態でも音に心を込め、楽曲の力を届けるために腐心した経験は、バンドにとっても大きな糧になったに違いない。


その演出力は最新曲「Cry Baby」でもっとも発揮されていた。「Pretender」の柔らかな空気から一転、赤いサイレンと火花が飛び散り、スモークがたちこめるステージ。スリリングなイントロと力強いグルーヴが会場を揺らす。転調を繰り返す複雑な構成が、演出と呼応して物語を描いていく。中盤のヘヴィなパートで“どうして”と絶叫し、拳を突き上げて歌いあげる藤原を、息を呑んで見つめることしかできなかった。

ポップでピースフルなものというイメージの強いヒゲダンのグッド・ミュージックが、ここまで攻撃的で独創的なロックを鳴らすとは。改めて彼らの進化をまざまざと見せつけられるひとときだった。


もちろん、ピースフルな側面もパワーアップしているのがヒゲダン。サックスを構えた楢﨑が「ヘイ! ぴあアリーナ!」と呼びかけてホーン隊と練り歩き、小笹と松浦が順番にボーカルを担えば、一気にロックンロール・パーティが幕を開ける。

「俺たちにできることは、今日みんな声が出せなかったとしても、みんなの心の声を腹の底からひきずり出させていただいて、マスクの奥をとびきりの笑顔にして帰ってもらうことなんじゃないかなと思っています!」という藤原の言葉は、満場のハンドクラップが響いたジャジーな「夕暮れ沿い」を経て、レゲエのアレンジが組み込まれた「ノーダウト」(楢﨑がドレッドのウィッグをかぶる遊び心も)で、完全に実現していた。

もはやライブでは欠かせないキラーチューンとなったハードロックナンバー「FIRE GROUND」で熱狂はさらに高まり、「声を出せない今日だからこそ、一緒に歌いたい歌があります」と始まった「Stand By You」の時には、誰しも頭の中に、シンガロングと大歓声が響いていたはずだ。


「この1年と4ヶ月はあまりにも長い時間でした。俺たちは何者で、誰に必要とされているのかっていうことをまったくわからなくなってしまうような時が、僕にはありました。でも、この1年4ヶ月が、俺たちをまたひとつ強いバンドにしてくれました。それは、1年4ヶ月の間、ライヴができなくても、みんなと音楽で繋がって、前を向いて、胸張って生きていける自信をつけることができたからです。それはみんなのおかげです。俺たちはもう大丈夫だよね。また奪われても、絶対取り返せるってわかってるし、奪われたなら、奪われたなりの繋がり方ができる。そういう時代に、あなたたちと音楽で繋がれたことを心から誇りに思ってます」──藤原聡

温かな拍手を受けて藤原が涙声になりながら語ったMCのあと、会場を包み込んだのは「ラストソング」。明日へ、もっと先へ、確かに続いていく約束のメロディが響き、堂々本編の幕を下ろした。


「宿命」で始まったアンコールでは、武道館ライブを彷彿させるくす玉が設置され、中から飛び出してきたのはニューアルバム『Editorial』発売決定のニュース。朗報に沸く会場の興奮を受け止めながら、小笹が「めちゃめちゃいいよ。間違いない」とさらなる自信を覗かせる。

1年4ヶ月を取り返すどころか、遥かに上回る「この先」への期待。どこまでも突き進んでいくヒゲダンを象徴するように、最後に贈られたのは「Universe」だった。ビジョンに映る4人の表情も、十分に満足げでありながら、まだまだ先を見据えているように見える。3公演を駆け抜けたとは思えないのびやかな藤原の歌声に導かれ、紙吹雪の舞う華やかなフィナーレとなった。


最後に「僕たちはいつでも、最高のライヴを準備してステージの上でみんなのことを待っています。また絶対会いましょう!」と宣言し、満面の笑顔でステージをあとにした4人。彼らがこの夜残したものは、ニューアルバムとツアーというプレゼントだけではない。目には見えないけれど音楽でたしかに繋いできた絆を証明し、その想いを糧に次へ進んでいけるという自信が、4人にも、オーディエンスにも宿ったはずだ。ヒゲダンの音楽の力は、まだまだ進化し、拡がっていくのだ。

取材・文◎後藤寛子
写真◎TAKAHIRO TAKINAMI

セットリスト

1.I LOVE…
2.HELLO
3.パラボラ
4.イエスタデイ
5.Laughter
6.Rowan
7.Pretender
8.Cry Baby
9.旅は道連れ
10.夕暮れ沿い
11.ノーダウト
12.FIRE GROUND
13.Stand By You
14.ラストソング

ENCORE
15.宿命
16.Universe

Major 2nd Album『Editorial』

2021年8月18日(水)発売
■CD / PCCA.06057 / 3300円(tax in)
■CD+DVD / PCCA.06056 / 5500円(tax in)
■CD+Blu-ray / PCCA.06055 / 5500円(tax in)

[CD収録内容]※曲順未定
I LOVE...
HELLO
Laughter
パラボラ
Universe
Cry Baby
他、全14曲収録予定
※収録予定曲は変更になる可能性がございます。

[DVD / Blu-ray収録内容]
Official髭男dism「Official髭男dism FC Tour Vol.2 - The Blooming Universe ONLINE -」
01. Second LINE
02. 異端なスター
03. ESCAPADE
04. What's Going On?
05. コーヒーとシロップ
06. Laughter
07. ゼロのままでいられたら
08. ダーリン。
09. 犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!
10. ブラザーズ
11. ノーダウト
12. 発明家
13. Universe
14. I LOVE...
15. Stand By You
ほか

DVD音声:16bit 48k PCM 2ch
Blu-ray音声:24bit 48k PCM 2ch / 24bit 48k Dolby true HD (Dolby Atmos)

[CDショップ 予約購入先着特典]
■TOWER RECORDS全店(オンライン含む):缶バッチ
■Loppi・HMV全店(HMV&BOOKS online含む):カード付ストラップ
■TSUTAYA RECORDS(TSUTAYAオンライン予約分含む):ICカード型ステッカー
■WonderGOO/新星堂:A4クリアファイル
■山野楽器CD/DVD取扱い店舗(オンラインショップ含む):アナザージャケット
■セブンネットショッピング:スマホスタンド
■Amazon:オリジナル巾着
■楽天ブックス:クリアポーチ
■その他法人:オリジナル・ステッカー

※全国のCDショップにて2021年8月18日(水)発売「Editorial」をご予約・ご購入のお客様に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。

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