【インタビュー】ASKA、様々な時代を軽やかに渡る日々…新作CD「笑って歩こうよ」

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ASKAが「歌になりたい」以降、2年ぶりにCDシングルを発売した。タイトルは「笑って歩こうよ」。日本の80年代後半から90年代の懐かしいメロディーを取り入れた若手メロディーメーカーたちが作る楽曲が、TikTokなどのSNSを通して次々とヒットを生み出す音楽シーン。そこに着想を得て、その時代にヒットを連発してきた張本人であるASKAはいったいどんな風にこの「笑って歩こうよ」を生み出していったのか。今回はこのシングルのことも含め、6月に開催されたASKA初の配信ライブ「すべての事には理由がある」、さらには10月9日から開催が決定した<ASKA premium concert tour-higher ground-アンコール公演>についてASKA本人に聞いてみた。

◆ASKA 画像

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■お客さんに喜んでもらうこと。
■それが、最終的には自分の喜びに変わる


──まずは先日の配信ライブについて聞かせて下さい。あのときは現場でライブを見させてもらったんですが。ホールでは神々しいオーラを放って歌うASKAさんですけど、至近距離で見るステージングはすごく若々しくエネルギッシュで、カッコよくてビックリしました。

ASKA:いえいえいえ(照笑)。

──あの日は、CHAGE and ASKAやASKAソロで関わってきたミュージシャンが総出演。しかも、みなさんノーギャラなんですよね?

ASKA:そうでしたね。ボランティア。その意味は僕からは言えません。僕の投げかけによってあの全員が集まってくれたんです。迷う人は誰もいなかった。Jess (※Jess Bailey。ロンドンから参加)も最近、何10年ぶりにメールのやりとりをして。でね、そこで分かったんだけど。Jessはあんなにパソコン使って音楽作ってるくせにZoomを知らなくてね。どうやら彼はネットには弱いらしい(笑)。

──はははっ。でも、1本の配信ライブのためにあれだけの豪華ミュージシャンが集まり、編成を変えながら演奏していくというのは、ASKAさんしかできない贅沢なステージだなと思いました。やってみてどうでしたか?

ASKA:僕はあのときに集まってくれたメンバーがどの瞬間もぶれることなく、一つの目的に向かって進んでいったから、その目的を達成できた喜びをみんなと分かち合えた。これが最高の収穫でしたね。僕にとっても、彼らにとっても。

──その目的というのは?

ASKA:それは僕が言うことではないので。ただ、やらなきゃいけない意味があったんです。あのときは。

──だから「すべてのことには理由がある」?

ASKA:そう。その理由を彼らは瞬時に理解してくれて集まってくれた。1人の「ギャラはいただけません」の発言。それが伝染するかのようにみんなが口々に。そうしたらあの日録音をしてくれたエンジニアも。それを配信してくれた「ZAIKO」「ローソン」さんまでが…。本当に幸せでした。“心が通い合う”これを全員が感じていました。

──そこはASKAさんの人徳もありますよね。

ASKA:いえいえ。僕はね、この世に生まれおちて、この世を2つに分けるとするならば、「自分」と「それ以外」だと思ってるんです。だって、自分の人生、自分の喜びのために世の中はあるわけだから。

──それはどういうことですか?

ASKA:どんなに人のために頑張ろうが、世の中のために頑張ろうが、それが達成できたときって、どんなにその人や世の中が喜んでくれたとしても、最後はそれを達成することができたという自分の喜びでしょう?

──ああ。たしかに。

ASKA:そう考えると、世の中は自分が中心なんですよ。だから、自分にとってどんなに大切な人でも、自分の喜びを得るための登場人物だって考えるとすごく分かりやすくて。でも、その登場人物がいないと自分は成立しないんだよ。その大切な人が喜んでくれることで、誰が幸せな気持ちになる? 自分でしょ。そう考えると分かりやすい。


──なるほど。ではライブに話題を戻して。あの日最後にASKAさんが会場のお客さんに向かって「来てくれてありがとう。助かった」とおっしゃってたのが印象的でしたが。

ASKA:自分は、テレビ出演をものすごく制限してきたんですね。なるべく出ないようにしようにしてきた。画面の向こうにはたくさんの人がいるんだろうけど、歌ってる側には見えないから、どうしてもパフォーマンス自体がステージとは全然違うものになっちゃうんですね。だけど、お客さんが10人でも20人でも30人で目の前にもいてくれたら、1万人、5万人の前でやるのと変わらないステージができるんですよ。

──そうなんですか?

ASKA:自分のパフォーマンスで目の前のお客さんに喜んでもらうこと。それが、最終的には自分の喜びに変わるんだから。だから、あの日いった言葉は心の底から思ったこと。

──いままでと違って、お客さんはマスクをして声も出せない状態でしたが。それでも?

ASKA:いてくれるだけで全然違いますよ。マスクをしてようが(ライブの瞬間は)見えないものでつながってるんだから。波動の交換だからね。ライブは。よく映画やアニメなんかではそれを視覚化してビビビビーって電気が走ったようになってたりするけど。あれね、本当にあるから。それは昔から思ってる。

──最初はこの配信ライブも無観客でやる予定だったんですよね?

ASKA:そういう案も出てたんだけど、僕が「お客さんを入れてくれ」ってお願いしました。

──当日のセットリストについても聞きたいんですが。「NO PAIN NO GAIN」の選曲にはグッときました。あの日これを入れた理由は?

ASKA:そこ、よく反応してくれました(笑)。あれは急に変えたんですよ。それまでみんなに譜面も渡して、曲順も決まってたんですけど、前日に変えたんです。「あの曲にしなきゃダメだ」と思って。

──なんでですか?

ASKA:なんかあったんでしょう。急に。そんなものです。歌いたくなった。歌わなきゃいけない気がした。2曲変えたんですよね。これと「Man and Woman」を入れた。なんで入れたかっていうと、あの日のライブという脚本には、どうしても必要なりました。

──でも「NO PAIN NO GAIN」は聞いていて、いまの状況下だからこそ歌う意義があったのかなという届き方をしてきたんですよね。

ASKA:そういう部分が自分の中にもあったんだと思いますね。これを歌わなきゃダメだというところには。

──こうして前日のセットリスト変更にすんなり対応してくれるメンバーも凄いですね。

ASKA:長年やってるメンバーだからね。彼らは「この人のいうことは聞かなきゃ」じゃなくて「この人がやるっていうんだったらやってみようよ」って思ってくれる人たちだから。


──配信ライブの途中にはもぐもぐタイム、質問タイムに続いてラジオ『Terminal Melody』の公開録画が入ってきたのがまた衝撃でした。あれはASKAさんのアイデア?

ASKA:ちょうどラジオをやってたからね。脚本に登場させました(笑)

──この配信ライブを通してASKAさんが伝えたかったものとは?

ASKA:僕はオンラインライブに対して、自分がそこでやったところで自分は表現できないだろうと思って、これまで避けてきたんですね。でも、あのときにやらなきゃいけない事情ができた。事情ができたからには、避ける必要がなくなり、むしろやらなきゃいけなくなった。で、やるからには徹底的にちゃんとしたものをやらなきゃいけないと思ったんです。だって、僕のステージですから。いつものステージスタイルを守って、オンラインライブではあったとしても、いつものようにやりたかった。いつも僕がツアーでやるようなステージ。その感覚を味わって欲しかった。

──あの小さな空間にあれだけの豪華メンバーを集めた背景には、そういう理由もあったんですね。ASKAさんはあの日のステージ、楽しめました?

ASKA:もちろん。楽しかったです。小さいといっても結婚式で歌うような距離感ではないですから。

──結婚式で歌うのは近すぎていまでも苦手だとあの日おっしゃってましたもんね。

ASKA:結婚式はキツいですね。かなり歌えない(苦笑)。

──今後もオンラインライブはやりたいなという気持ちにもなりました?

ASKA:いまちょうど僕は新しい動画配信サイトのプラットフォームを作って、立ち上げ準備をしている仲間がいます。ミュージシャンが作るプラットフォームですから、完成すれば、ここで動画配信するミュージシャンたちには必ず喜ばれるものになります。

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