【インタビュー】The Floor、新作『CLOCK TOWN』に凝縮された約1年半の挑戦

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札幌を拠点に活動するロックバンド・The Floor。彼らが3人体制初作品『nest』から1年7ヶ月というインターバルでリリースした『CLOCK TOWN』は、コロナ禍で札幌に身を置くなかで感じた率直な心境や、その環境だからこそ可能にした挑戦が凝縮されたミニアルバムだ。メンバー3人全員が作詞作曲を行なうことで実現したバリエーション豊富な楽曲群と、同じ時間を共にしてきたバンドメンバーゆえの共通項が同居した今作には、三者三様の音楽に対しての誠実な姿勢が表れたと言ってもいいだろう。彼らにとって約1年半ぶりの北海道以外でのライヴとなる同作のリリースツアー直前に話を伺い、現在のThe Floorのモードを探っていった。

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■自分たちのモードを研ぎ澄ました結果生まれたアルバム

──コウタロウさん、見事なおひげを蓄えるようになって。お似合いですし貫禄がありますね。

ササキハヤト(Vo/Gt):そうなんですよ。コウちゃん、この1年ちょっとの間でどんどん中身がワイルドになってまして(笑)。中身がワイルドになると外見もワイルドになるんですねえ……。

──今作にそのワイルド感は反映されているかもしれませんね。前作『nest』もソングライター3人それぞれの心境や人生哲学が素直に楽曲へ反映された作品でしたが、今作『CLOCK TOWN』はさらにその解像度を上げていると感じました。2020年に感じたことがダイレクトに出ているというか。

コウタロウ(Dr):今回の楽曲制作はコロナ禍の影響も大きいですね。毎度のことながらコンセプトを決めて制作したわけではないんですけど、3人それぞれやりたいことや表現したいことを曲にしていった結果、3人とも“時間”がモチーフになった曲が多くて。やっぱりコロナ禍というままならない日々のなかで曲を作ったから、自然と統一感が生まれたのかなと。

ミヤシタヨウジ(Ba):コロナ禍に入ってから各々の自宅で曲作りをしていたんですけど、やっぱり実際に集まらないとバンドとして不健康になっていくなとは思って、去年の自粛明けにスタジオに入る機会を増やすよう提案しました。それで曲がどんどん完成していって。『nest』のリリースツアーが延期になった時期はダメージもありましたけど、『nest』を作ったことでついた自信もあったし、バンドはネガティブなムードだったわけではないんです。

コウタロウ:テンションの浮き沈みはあったけど、時間が出来たぶんチャレンジは多くできたかな。初めて自分でミックスをしてみたり、普段しないアレンジをやってみたり。

──たしかに『CLOCK TOWN』にはチャレンジも多いですし、今作に収録されている「slow motion」の元バージョンは2020年6月にラジオでOAされています。コロナ禍というシビアな状況に胸を痛めつつも、今出来ることに対して精力的に動いてらっしゃったんだろうなと。

ササキ:「slow motion」は<見放題2020>のコンピに収録した新曲で、アルバムバージョンはそこからさらにリアレンジして音を足しました。精力的に動いていたかと言われると……俺は浮き沈みがすごく激しかったんですよね(苦笑)。1年半も北海道にこもりっきりなのも久し振りだから、最初の2~3ヶ月は“こんなに長い期間札幌にいるの久し振りだなあ”とのんびりしてたけど、ある程度経つとお客さんの笑顔が見られない物足りなさも感じて。“よしっ、制作やってやるぞ!”とやる気満々の日が3日続いたかと思えば、なんもしたくなくなる日が3日続いたり。自分がどういう気持ちなのかわからなかった(笑)。今もよくわかってないかも(笑)。

ミヤシタ:まじ?(笑)

ササキ:うーん、今も不安定な感じが続いてる感覚はあるかなあ。

──1年前の春よりはウイルスとの付き合い方がわかってきたとはいえ、まだコロナ禍真っ只中ですものね。

ササキ:そういう自分たちのモードを研ぎ澄ました結果生まれたアルバムなのかなって。だからブチ明るい曲はないけど(笑)、前向きな気持ちで作った曲が集まった気はしてますね。

コウタロウ:自分を鼓舞する曲が集まったなとは思います。めっちゃ楽しい気分の曲を作れるモードでもなかったし。

ミヤシタ:突き抜けた楽しい曲も作りたいなあと思ったりはするんですけど……いかんせんガラじゃないなと(笑)。

ササキ:とはいえ「Talking is Hard」や「Coffee Cup City」は明るいんじゃない?(笑)

ミヤシタ:たしかにそうだね。ハヤトとコウタロウは僕が作れないような曲を作ってくるので、やっぱり3人で曲作りをしているのは大きいです。でも作っているものが離れすぎているわけではない。長く一緒にいるからこその共通の感覚もあるし、みんなでアレンジを作るからみんなのカラーが入ってくるし……。いいですよね、そういうの。

▲『CLOCK TOWN』

──そうですね。「Faraway」のようなリフ押しの渋めの曲が堂々と躍動感をもって響いてくるのも、各々の人間性と音楽の結びつきが強いからこそだと思います。ダンスビート感のあるドラムをはじめ浮遊感のあるポップソング「Talking is Hard」は、すごくハヤトさんの人間性が出ていますし。

ミヤシタ:僕もそう思います。すごくハヤトっぽい。

──人懐っこいメロディやポップな曲調もハヤトさん節ですけど、歌詞は顕著ですよね。身の回りの大切な人を傷つけてしまって悩んだり、どうやったら大事にできるんだろうと考えあぐねているというか。

ササキ:ああ、そうかもしれない。あんまり人とうまく関係を築けてないという自覚があるから……。本当はもっと仲良くなりたいのにうまくコミュニケーションが取れなかったり、関係を進めたい異性の人の前で粗相をしたり……うまくいかないことばっかなんです!(苦笑)。

ミヤシタ:ハヤトはもともとマイナスな感情や、人間関係でうまくいかなかったことを曲にすることが多くて。それを曲にするのはその出来事を忘れられないからで、なぜ忘れられないかというとマイナスな感情が心に引っかかってるからだと思うんです。それを歌詞にすることで気持ちを昇華していると思うので、どんどん嫌なことが起きればいいなと(笑)。

──ははは。でもハヤトさんはどんなに幸せな状況でも、ネガティブな気持ちを抱いてしまいそう。

ササキ:(笑)。たしかにハッピーな状況だとちょっとした気になることに敏感になって、すぐ落ち込んじゃうタイプではありますね……。めっちゃ幸せな気持ちを曲にしたいと思ったことはそんなにないかも。どっちかっていうと幸せになりたいから曲を書いているし、そのなかでも人間関係について歌うことは多い。すごく仲がいいやつが悩んでたらそいつに向けて歌いたくなるし、最近あいつに会えてないなと思ったらそいつの歌を書きたくなる。

──コロナ禍という状況が、そのマインドをよりディープにしたのかもしれないですね。

ササキ:そうですね。だからこそ聴いている人がどう感じるかは二の次で、とにかく“伝えたい!”と思ったんです。何も着飾っていない状態の楽曲に対して、聴いてくれる人たちが自分を投影するなり、いろんなことを感じてもらえればいいなって。今までも嘘を書いたことはないんですけど、照れ隠しからぼかして表現することが多かったので、“飾らずに歌詞を書く”というのはすごく勇気の要ることでした。

──照れ以上に、ストレートに自分の心情を伝えたい気持ちが上回ったと。

ササキ:かっこつけて言葉を選んで“結局こいつ何言いたいんだ?”と思われることはなくしていきたいし、情景が浮かんでこない歌詞は嫌で……。聴いてくれる人にわかってほしかったんですよね。面倒臭くてこじらせてる自分も素直に出せてるんじゃないかな。そういう意味では音楽と誠実に向き合えてるのかなと思うし、成長している気がします。

──「雨中」というバンドにとって初のバラードが生まれたのも、そういう心境が影響していますか? バラードは特にフロントマンにスポットが当たりやすくなるので、ハヤトさんのフロントマンとしての矜持が生み出したものなのかなとも思ったのですが。


ササキ:最初のうちはバラードにするつもりではなかったし、なんなら速い曲でも全然よかったんですけど、3人で話し合うなかで“やるならとことんバラードにしない?”という話になって。これまではバンドとして攻めのスタンスを取りたかったから、しっとりした曲を作るのは違う気がしてたんです。でも今回は攻めのスタンスでバラードを作りたいと思ったんですよね。アルバムのバランスを考えてバラードを作ったという思考ではなかったので、結果的にアルバムのなかでいちばん泥くさい曲になった気もしています。

ミヤシタ:うん。ハヤトみは強いよね。ドロッとしているというか女々しいというか……いろんなことを引きずっている感じ。歌詞だけでなく曲の展開やメロディも、ハヤトの曲史上いちばんハヤトかもしれないです。

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