【インタビュー】The Floor、新作『CLOCK TOWN』に凝縮された約1年半の挑戦

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■僕らよくバトりますしね。だからこそ3人全員が納得できる

──「24」の歌詞にも《君に会いに行く 一生そばにいてよ》など、ハヤトさんの素直過ぎるマインドが出ていますが、作曲者のヨウジさんとしてはこの曲にこのような歌詞が乗ったことに対してどのように感じていらっしゃいますか?

ミヤシタ:弾き語りでメロディを考えて、自分なりにいいメロディができたなと。そこからアレンジをつけるときに、今まで全然やってこなかった2ビートを入れてみて。これまでの僕らから考えるとすごく異質な曲だし、個人的にはメンバーにカウンターを食らわすような、ギャグっぽい感覚で作ったんです。でもハヤトの書いた歌詞はすごく熱い気持ちが込められていて……。

ササキ:……つまり俺はギャグに対してマジレスしちゃったってことでいい?(笑)

ミヤシタ:(笑)。でもそのおかげでエモい曲ができました。歌詞が入って曲の印象がまったく変わるのは面白いですよね。僕は自分の作った曲で自分のやりたいことを通したいというよりは、メンバーのアイディアが入れてみんなの曲にしたいんです。そうすると自分の想像の範疇を超えるものになる。思ってもみないところに着地するんだけど、それがいいなと思うんです。「24」はまさにそんな曲ですね。

──この2ビートをコウタロウさんが叩いてるのか、と想像するとちょっと面白いですし。

ミヤシタ:僕らのことを知ってくれている人からはちょこちょこその感想をもらいます(笑)。

コウタロウ:僕も叩いていて面白かったです(笑)。

──コウタロウさんはドラムの表現の幅が広がっているだけでなく、今作のジャケットもデザインやミックスもなさって、アレンジも新しいことに挑戦なさっていて。今作をきっかけにさらにクリエイティブが爆発している印象があります。

コウタロウ:やらざるを得ない状況になった、というのも大きいんですけどね(笑)。もともと永田(※永田涼司。The Floorの元ギタリストであり、在籍時はメインで作曲を担当していた。2019年4月に脱退)が中心となってミックスをしていたので、3人になってからは永田がやっていたのを見様見真似でやってみて。ちょっとずつやれることを増やしていった結果が『CLOCK TOWN』につながっていったというか。僕はヨウジと逆で、『CLOCK TOWN』に俺の意志を入れすぎたというか、独りよがりになっちゃったんじゃないかなと……。

ササキ:いやいや。ヨウジも俺もなんとも思ってないし、『CLOCK TOWN』はバンドとしてひとつのかたちになってるんじゃない? ……ってこれインタビューで言うこと?(笑)

ミヤシタ:俺らもコウタロウが進めていることに対して、屈託なく意見を言ってるしね。それを反映してくれてるから独りよがりではないよ。……ってこれはミーティングで言うことだね(笑)。

ササキ:コウちゃんは今作の立役者。今回はサポートギタリストを入れずにレコーディングしたから、僕も初めてリードギターを弾くことになって。それをかわいそうだと思ったヨウジとコウちゃんがそれぞれリードギターを弾いてくれてる曲もあるんです。だから特にコウちゃんは本当に大変だったと思います。

▲『CLOCK TOWN』

──コウタロウさんが作詞作曲した楽曲は歌詞とアレンジの相乗効果で、楽曲の持つ物語をより立体的に表現しているものが特徴的だと思います。特に「Coffee Cup City」は、堂々巡りをコーヒーカップに例えているのも、頭文字が全部Cなのもすごくアーティスティックです。

ミヤシタ:俺もめっちゃびっくりしました(笑)。すげえなって。コーヒーカップに対して時計のイメージを重ねる人いなくないですか? 大きな円のなかに小さな円があって、どっちもぐるぐる回っていることを世界の縮図として重ねるのも……感動しましたね。最初は“なにこの意味わかんないタイトル”と思ったんですけど(笑)。

ササキ:俺も最初はそう思った(笑)。

ミヤシタ:曲を聴いてみるとちゃんと意味がわかる。それってすごくいいことだと思うんです。

コウタロウ:自分が飽きないように必ずひとつは新しいチャレンジをするという自分ルールがあるんですけど、「Coffee Cup City」はサビで転調したり、歌詞のなかに出てこない言葉をタイトルにすることもそうで。それが楽曲の解釈の余地を広げられたのかな、とは思っています。

──ポップな曲ですし耳馴染みもいいけど、じっくり聴いてみると隙がないくらい音楽家としてのポリシーが隅々にまで通っていて、そこに途轍もない熱量が宿っている。そういうのが、The Floorのエモさの理由のひとつでもあるのかなと。

ササキ:僕らよくバトりますしね。コウちゃんのヴォーカルディレクションに対して、自分的に曲げられないことがあったら“こういう理由があるから、絶対こう歌ったほうがいいと思うんだけど?”と主張するし。僕はデモをふわっと仕上げることが多いから、それに対してふたりもはっきり“どういうことがしたいのかちょっとわかんないんだけど”と言うし。しっかり相手の言い分を加味したうえで討論できてるし、だからこそ3人全員が納得できるんだと思うんです。全員作詞作曲ができるので、ふたりがいい曲をつくると触発されるし。無意識のうちに切磋琢磨してるんですよね。

コウタロウ:3人全員が曲作りをしているとそれはあるね。モチベーションが上がらないタイミングでほかのメンバーがデモを上げてくると、対抗心が燃えてくる。

──バンドを引っ張っていたメインソングライターが脱退して“どうしたらいいんだろう?”と路頭に迷っていた時とは見違えるほど頼もしいお言葉で(笑)。

ササキ:あの頃ほんと地獄みたいでしたよ(笑)。全然うまくいかないし、なにをするべきかもわからなくて不安しかないなかで“取り敢えず作ってみましたが、どう?”とデモを送っていた時に比べれば、今は健全ですよね。

──すごくバンドとして健全なのに、The Floorみたいなバンドはあまりいないのも面白いですよね。パワーバランスが均等なバンドは役割分担がしっかり分かれていることが多くて。でも今のThe Floorは全員ソングライターですし。

ミヤシタ:そうなんですよね。だからこの感じを分かち合えるバンドマン仲間ってなかなかいないんですよ。3人全員作詞作曲をするし、一般的な解釈でいう“3ピースバンド”ではないのにギタリストがいないし……おまけにメインで曲作りをしていた人間が脱退してもなおバンドは続いていて(笑)。すごく変なバンドなんだけど、僕らにとってはそれが自然なんです。自分たちの出来る範囲で作品作りをするのも、無理をしているわけでもないし。

──The Floorというバンドのイメージや理想像に則った音楽を発信するというよりは、メンバーが3人になり、全員が楽曲制作をするようになったことで、各々の個性やマインドが色濃く出たものがThe Floorの音楽として成立するようになったんでしょうね。

ミヤシタ:そういう意味でものびのび音楽活動が出来てるなと感じます。

ササキ:3人で『nest』というアルバムを作れたことが今の俺らにつながってるよね。あれを作れたからこそ、“もっとこういうものが作りたい”という意志が強くなっていったし、自分で作詞作曲をするからこそ、もっと自分を出した曲を作りたくなった。いろんなことを誤魔化したくないという気持ちが強くなっているんです。そういう楽曲を受け止めてもらいたいし、そういう楽曲を作っても受け止めてもらえる人間でありたいという思いはどんどん大きくなっていますね。

コウタロウ:どこかひとつ尖ったものを持っていたり、なにかひとつしか表現できていないものに魅力を感じることが最近多いんです。僕らもそれぞれ表現したいことをかたちにできる力もついてきたので、メンバー個々のやりたいことをThe Floorでより追求して、曲のなかで光るものをどんどん尖らせていくのもアリなのかなとは思っていて。そしたらもっと面白い曲が作れる気がしているんです。

ササキ:たとえばコウちゃんはどんなところを尖らせていきたいの?

コウタロウ:んー……変な音を出したい(笑)。バンドという型にとらわれず、いろんな楽器を使って曲を作ってもいいんじゃないかなと。

──2020年はライヴがあまり行えなかったからこそ、そういう方向性に踏み込んでみたいなと思ったところもあるのではないでしょうか? 人の目を意識しないというか。

コウタロウ:ああ、それはあるかも。今回の曲たちも自粛期間中に巣ごもりしていて、演奏する人のことを考えずに作ったから。だから「Night Walker」も打ち込みでベースリフから作ったんですけど、ヨウジも弾くのが大変だったんですよね。

ミヤシタ:この曲、手首が痛いんですよ。

コウタロウ:ごめんなさいね(笑)。北海道から出ない期間が1年半続いて、北海道は東京と違って密集度も高くないから、より自分の世界を研ぎ澄ますことができる環境なんだと思います。でも東京はバンドも多いぶんすごく刺激も多いし、影響を受けられる場所。それもそれで素敵だし、北海道は自分のやりたいことを集中してやるにはすごくいい場所だと思いますね。北海道だから思うこと、やれること、いっぱいあるなと思います。

ミヤシタ:札幌が好きだなと再確認した2020年でもあって。だからこそ『CLOCK TOWN』の東名阪札ツアーという久し振りの本州でこの曲たちを演奏したとき、どういうふうに自分たちの目に映るのか、どんなことを感じるのかが楽しみなんですよね。

取材・文◎沖さやこ


4th Mini Album『CLOCK TOWN』

2021年7月7日発売
¥1,760(税込) LILC-1010
【収録曲】
1.We can't put the clock back
2.Talking is Hard
3.Coffee Cup City
4.Faraway
5.雨中
6.slow motion -Album ver-
7.24
8.Night Walker
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