【インタビュー】神はサイコロを振らない、アユニ・D (BiSH/PEDRO) × n-buna from ヨルシカと初コラボ「受けた刺激はめちゃくちゃデカい」

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神はサイコロを振らないが7月16日、“神はサイコロを振らない × アユニ・D (BiSH/PEDRO) × n-buna from ヨルシカ”名義による初コラボ曲「初恋」を配信リリースする。初恋の感情を綴ったノスタルジックなラブソングは、n-bunaが作曲とサウンドプロデュースを手掛け、神はサイコロを振らないの柳田周作(Vo)が作詞を担当、アユニ・Dをコラボボーカリストに迎えたものだ。

◆神はサイコロを振らない 画像 / 動画

プライベートでも交流があったn-bunaに吉田喜一(G)が、「一緒に制作をしたい」と切り出したことがきっかけで始動した同プロジェクトは、“この曲は絶対に女性アーティストの声が必要だ”と感じた柳田が「日本の女性アーティストの中で一番コラボをしたい!」と思っていたアユニ・Dにオファーし、実現に至ったという。結果、「初恋」は第一線級アーティストによるコラボならではの未知と新鮮さに溢れる仕上がりとなった。現在までの神サイの足跡、そして話題のコラボ楽曲について神サイのメンバー全員に訊いたインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■“バンドはライブで集客を増やすもの”という
■当時の風潮にちょっと違和感があったんです

──メジャーデビューからもうすぐ1年が経ちますね。神サイはデビュー以降どんどん新曲を発表していたので、この1年間はかなり忙しかったんじゃないですか?

柳田:忙しい日々でした(笑)。今月に入ってからやっと落ち着いてきて。最近は、先輩と2人でプリクラを撮りに行ったり、千葉のサウナに行ったり、音楽からちょっとかけ離れた生活を送っているところです。電車に乗っているときも、音楽じゃなくて環境音とかを聴いています。

──休みの日以外はずっと音楽を聴いているわけですしね。

桐木:でも“メジャーデビューした!”という実感がわいてきたのは、わりと最近になってからかもしれないです。僕らは無観客のオンラインライブでメジャーデビューを発表したので、直接お客さんに報告ができていなかったんですよ。そこから徐々に有観客のライブができるようになって、今年5月にようやくツアーが始まって。お客さんの前でライブをしたことによって、やっと実感がわいてきました。

▲柳田周作(Vo)

──改めてメジャーデビューまでの道のりを振り返ると、昨年春頃、2019年5月にリリースした「夜永唄」のバイラルヒットにより再び注目を集め、そこからユニバーサルミュージックとの契約が決まり、7月にメジャーデビュー。コロナ禍でどのバンドもなかなかライブができない状況のなか、SNSやストリーミングを経由して飛躍した神サイの動きは、インディーズバンド界隈に希望を見せてくれるものだったと思います。

柳田:でも、SNSで戦ってきたのは今に始まった話ではなくて。ライブハウスでの活動に魂を込めてきた反面、SNSにも力を入れるというやり方はずっと変わっていなくて。なので、「夜永唄」の再生回数とかがガーッと伸びて、メジャーデビューが決まったときも、“当初からそんな感じだったよな”とか“ここにきて、やっと手応えのある反応がきて嬉しいな”という印象でした。だからこそ、コロナ禍でも全然揺さぶられず、むしろ逆境を逆手にとって、楽しく音楽ができたんじゃないかと思います。で、希望というふうにおっしゃっていただきましたけど、バンドマンの友達から結構相談されるんですよ。「どうしてお前ら、あんなときでも楽曲をバズらせられたの? 何か計算してたの?」って。

──確かにそれは気になります。

柳田:でも、計算していないんですよね。確かに僕らはずっとSNSを盛り上げようとしていたけど、「夜永唄」は1年前にリリースした曲だし、自分たちが力を入れていたところとは別軸で、TikTokというアプリが出てきて、たまたまそうなったという。だから相談されたときは「活動スタイル自体はずっと変えてないよ」と答えたんですけど……やっぱりみんな、悩みに悩んでいますよね。仲間内にも、終わってしまったバンドもたくさんいますから。

──そうですね。私は2016年から2017年にみなさんのライブを観る機会がたくさんあったんですよ。なぜかというと、興味のある対バンやサーキットに行くと、高確率で神サイも出演しているから。あの時期、めちゃくちゃライブやってましたよね?

柳田:そうですね。結成からの5年間は、地方でのライブやサーキットにも出演しながら、地道にライブを重ねてきて。でも、だからといって神サイがライブシーンの主役だったかというと、そうでもなかった気がするんですよ。むしろSNSのほうが盛り上がっているなと思っていたくらいで。

──あの頃は、フェスからの流れで、4つ打ちで楽しく盛り上がれるバンドが流行り、My Hair is Badを筆頭に、THE NINTH APOLLO系列のバンドが台頭し始めた時期で。神サイの音楽性は、当時の流行ど真ん中ではなかったですからね。

柳田:そうなんですよね。

桐木:実は、“バンドはライブで集客を増やすもの”という当時の風潮にちょっと違和感があったんです。ライブは好きですし、ライブをたくさんやることは最高で、もっともっとやりたいんですけど、「でも、ライブだけじゃ集客は増やせないでしょ。むやみにライブをやりすぎるのもどうなんだろうね?」という気持ちもずっとあって。

柳田:それに、音楽はライブが全てじゃないというか。考えてみれば僕自身、ライブを観ている時間よりも、イヤホンで音楽を聴く時間のほうが圧倒的に長いんですよ。ほとんどの人にとっては、ライブハウスにいる時間よりも、寝る前の数分間とか、電車通勤/通学している時間に音楽を聴くほうがずっと身近で。だから当初から神サイは、ライブどうこうよりも、楽曲としての完成度や、CDや携帯で聴いた時にどう感じるのかを重きに置いて、楽曲制作をしていました。早い段階からDTMで制作していましたし。もちろんその中で“こういう曲を作ったらライブもちょっと変わるかな?”と思いながら作った曲もありましたけど、基本はそんな感じのスタイル。だから当時の僕らのライブのときは、お客さんもお地蔵さんみたいになるというか(笑)。

▲吉田喜一(G)

──でも、お地蔵さんでもいいと思えたし、そういう自分たちらしさを曲げなかったからこそ、メジャーデビューに辿り着けたんでしょうね。

柳田:いや~、紆余曲折ありましたけどね。

桐木:シリアスな曲しかなかったのに、ライブ中、急にMCで「盛り上がってこうぜー!」みたいなことを言い出したりとか(笑)。

柳田:俺、2~3年前に車の中で、涙ながらに感情をぶちまけたことがあるんですよ。神戸かどこかのサーキットに出たときに。

黒川:あ~、思い出した(笑)。

柳田:思い出した(笑)? その日は、僕らの直前に出たバンドがお客さんをぶわーっと盛り上げていて。それを見て“羨ましいな。俺らもいつかこういうライブができるようになれるといいな”と思っちゃったんですよね。

黒川:スタンスが違うというだけの話なんですけど、実際にお客さんが盛り上がっているところを見ると、どうしても敗北感を感じてしまって。

柳田:そうそう。その日は吉田(喜一/G)だけが打ち上げに出て、ほかの3人は車の中でボーッとしていたんですけど、「俺らは何でああならんの?」と言いながら感情をぶちまけた覚えがあります、涙ながらに。でも、「別によくね?」と桐木が言ってくれて。

桐木:「手が挙がることが全てじゃないよ」ってね。

柳田:同じ楽曲でも、イヤホンで聴くのとライブで聴くのでは、楽曲の在り方が全然変わってくるじゃないですか。だから“音源で聴くよりライブのほうがいい”ということが起こるんだと思うんですけど、同じように、“ライブで聴くより音源のほうがいい”ということもあると思っていて。

──分かります。両方の良さがあるはずなのに、バンドシーンって“ライブがいいバンドのほうが素晴らしいんだ”という風潮に偏りがちですよね。

桐木:そうですね。だから、今のやり方、今の環境は自分たちにすごく合っていると思います。

──みなさんの活動を見ていると、バンドというものに対する愛憎を感じるんですよ。“この固定観念ってどうなの?”という疑問と“とはいえ、やっぱりバンドが好きなんだよな”という気持ちが混濁していると言いますか。

柳田:あ~、めっちゃそうですね。

桐木:自分の発言もライブを軽んじて言っているわけではないですから。

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