【インタビュー】ANCIENT MYTH、変貌を遂げた最新作『ArcheoNyx』

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■シンフォニック/メロディック・スピード・メタルをもっと突き詰めようと

──曲作り期間を含めれば、『Aberration』の制作直後から次作に向けて動き始めたと解釈してよいと思いますが、今回のアルバムに関する構想は何かあったんですか?

Hal:特にこういうテーマで、というのはMichalさんからも明言されていなかったんですね。僕が入る前のANCIENT MYTHももちろん聴いてましたし、その音楽性が好きだったので、曲作りをするうえでは、大きく雰囲気が変わらないようにしようとは思いましたが、シンフォニック・メタル、メロディック・スピード・メタルをもっと突き詰めようとは思ったんですね。たとえば、シンフォニックということで言えば、本物のストリングスやブラスを用いたり、もっと壮大な感じにしたかったですし。だから、曲を完成させていく過程でMichalさんにも聴いてもらって、「こういうのはどう?」「もっといこう」みたいな確認をしつつ進めてはいきましたね。

──ほとんどの楽曲はMichalさんとHalさんが作曲者としてクレジットされていますが、「River of Oblivion」の作詞作曲を手掛けたShibukiさんは、出来上がってくる曲を聴いて、どんな印象がありました?

Shibuki:何か二人の好きな曲調がすごく出ているなって(笑)。その中でも、スピーディに突っ走っているだけじゃなくて、たとえば「Crimson Stigmata」のようにヘヴィでミドルっぽい曲もあるし、個人的には「Hypno Temptation」というスローな曲が一番好きなんですよ。めちゃくちゃバラードで……ライヴではあまりやらないって先に言われてしまってるんですけど(笑)。

Hal:いや、対バン形式のライヴだと演奏時間も限られてくるので、ワンマンのときにはやりましょうって言っているんですよ(笑)。

Shibuki:そうですね(笑)。メロスピが基本にある中で、いろんなタイプの曲を上げてきてもらって、僕もそれを楽しみに聴いてましたね。

──「River of Oblivion」はいつ頃書いたんですか?

Shibuki:これがさっき言った、加入後の初めてのミーティングのときに持っていった曲なんです。個人的にはDRAGONFORCEぐらい速い曲をちょっとやりたいなと思って(笑)。BPMが200あるんですけど、エクストリームな感じで、ドラミングもブラストを入れてみたりして。実はANCIENT MYTHに入る前から、趣味みたいなものですけど、一人でシンフォニック・メタルをずっと作ってたんですね。それも加入を決めた理由の一つなんです。せっかく自分もフルオケのオーケストレーションができるので、微力ながら、こういう曲で力になりたいなと作りましたね。



──最初に持っていった曲がそのまま収録されたというのも凄いですね。新鮮に響いたのか、自分たちが思っていた通りのものが来たという感じだったのか。

Hal:まぁ、シンプルにドラフォが来たと思った(笑)。「やろう!やろう!」って感じだったよね。

Shibuki:白状すると、最初に持っていったときに、「サビがスピッツに似てます」って言って聴いてもらったんですよ。

Hal:そうそう(笑)。でも、僕はスピッツをあまり知らなかったんですよ。後日、レコーディングに入るちょっと前に、そういえばスピッツに似てるって言ってたなと思って、その曲を聴いてみたら、「はい、アウト」っていう(笑)。そこでサビを作り直したんです。

Shibuki:だから、大いに助けていただいて、どうにかANCIENTの曲になりました(笑)。

──BPMが200と言われても、そんなに速い曲という印象ではないんですよね。

Shibuki:サビはハーフに落ちてるし、後半はそんなにツーバスもなくて、3連符になるぐらいですからね。自分の中ではNIGHTWISHが一番カッコいいシンフォニック・メタルのバンドだと思っているので、そういう雰囲気とメロスピを折衷したら、こういう感じになったんだと思うんですね。

──Koheiさんが加入する時点では、ほぼ曲は出来上がっていたんですよね?

Kohei:そうですね。ANCIENT MYTHは活動経歴が長いじゃないですか。なので、さっきも言ったように、まずANCIENT MYTHの世界観の一部になろうと思って聴かせてもらって、基本的にはコンポーザーの意図どおりの演奏をしたんですね。「Chaos to Infinity」のイントロのピロピロしたギターは、僕が加入することが決まってから考えてくださったみたいで、ある程度、僕のやりたいことも世界観に当てはめてくださったんですけど、新しく入ったメンバーがいきなりオラオラし始めたら、受け入れ難いファンの方もいるんじゃないかという意識もすごくあったんですよ。だから曲を聴くときにも、こういうアプローチなら、もっとクサくてアンニュイな感じが出るんだなとか、自分のプレイを構想しながら、自分の中に流し込んでましたね。自分じゃ書かないな、書けないなという曲も多くて、そういう面で勉強にもなりましたし。



──たとえば、THE GENIUS ORCHESTRATIONとはまた違いますもんね。

Kohei:そうですね。コンポーザーが鍵盤奏者というのも面白いんですよ。僕が鍵盤で作ったとしても、ギターのことは常に頭にあるんですけど、やっぱりギターと鍵盤では見方が違うんですよね。コードひとつをとっても、たとえばギターが一人だったら、ベースがあって、ルートの音があり、そこに3度なり5度を当てる。でも、このバンドは3度から始まるアプローチだったり、何だったら5度とテンション・ノートで2本のギターに振り分けて和音を作ることもある。その点では難しい面もあるんですけど、そこを擦り合わせていく作業は面白かったですし、ギターがコードものとしてしっかり土台を作るよりも、色付けの扱いにしてる曲が多いんですね。吸収できるものも多かったですね。

──確かにキーボーディストが作る曲は、ギタリストからすると、運指の面からも困難なフレーズが出てくることがあるともよく言いますよね(笑)。

Hal:よく言いますよね(笑)。

Kohei:そのとおりですね(笑)。

──Michalさんは自身も多くの作曲を手掛けてはいますが、今のこのメンバーで出来上がってくる曲をどのように受け止めていたんですか?

Michal:そうですね……ガラッと変わったのは、以前はメンバーが作ったデモデータとかを、エンジニアの人だったり音楽的な理論がわかっている人に一回送ってチェックしてもらってたんです。今まではメンバーの中にクラシックの理論的にチェックできる人が存在しなかったから、ちょっと微妙な部分があったりしたわけですよ。でも、Halくんはそこを見ることができる人だから、それ(外部とのやりとり)をする煩わしさがまったくなくなったんですね。そこはすごく頼もしくて。仮に自分が変なコードをつけていたとしても、「こっちのほうがキレイにいくと思う」というアイディアをすぐに提案してくれる。曲作りに関してはすごくスムーズでしたね。これまでは自分が得意なキーではない曲もあったんですけど、それはギター基準で決められていることが多かったからなんですね。その点でも今回は……Koheiくんは苦労はしたかもしれないですけど(笑)、より自分の得意とする部分が歌えるようになったので、すごく肩の荷が下りたところはありますね。

──それはANCIENT MYTH以前のバンドでもそうだったのではないですか?

Michal:まぁ……でも、自分のレンジとはちょっと違うなぁと思いながらも歌ってきた中で、得をした部分もあるんですよ。ヴォーカリストの場合、普通、低音って伸びていかないんですよ。ただ、低く出さざるを得ない曲がたくさんあったからこそ、低音も出るようになった。

──鍛えられたわけですね。

Michal:そうですね(笑)。ポジティヴに捉えるなら、普通では鍛えられるはずのない低音が鍛えられてよかったなぁということですね。

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