【インタビュー】NOISEMAKER、新曲「APEX」にこの1年間のリアル「それでも上を見ていたい」

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■英語の歌詞の符割と韻を生かしたまま
■内容がわかるような日本語を入れて

──ジミ・ヘンドリックスの名前が出ましたけど、「APEX」はHIDEさんのギターもどこか1970年代っぽい雰囲気があります。

HIDE:そうかもしれないです。あんまり6弦すべてを鳴らすみたいなリフのイントロはもう弾いていない。聴いたら気持ちいいんですけど、前にやったなってなっちゃうんです。ムズいんですよ。今後、そういう曲もあってもいいんだろうけど、自分もワクワクするようなもので考えると、ちょっと昔っぽい音が……昔っぽいって言うか、元々、NOISEMAKERの音って古っぽいと言うか、ハイファイではないと思うんです。バチバチに音圧で聴かせる感じではないと言うか。そこで、俺らには何ができるか、何が強いのかって考えた時に、そういう昔っぽい音と現代の音楽を混ぜたり、掛け合わせたりしたら新しい音楽が生まれるんじゃないかって。そういう漠然としたイメージはあって、それがどんどん形になってきているんですよ。

──ジミ・ヘンドリックスが一番好きなんですか?

HIDE:いや、そういうわけじゃないですけど、気づいたら、今回、ジミヘンが使っていたものを使ってたんですよ。ファズとかストラトキャスターとか。俺、アンプのディストーションチャンネルって使ってないんです。クランチチャンネルで弾いて、アンプの歪みを使わずにファズで歪ませるから、なおさらそういう古っぽい音になる。ジミー・ペイジが使ってたトーンベンダーみたいな1970年代のファズを使うとか、そういうちょっとしたことでサウンドってそれっぽい音になるんですよ。あと、うちはギターの音を敢えて小さくしているんです。ギターが、がって前に出ていて、ドラムとボーカルが奥にあるみたいなサウンドが、俺が言うバチバチのサウンドなんですけど、うちは逆にセンターにあるドラムとボーカルがでかくて、両サイドのギターとベースは小さい。つまり、リズムと歌がメインっていう。


▲2018年に入手したNASH GUITARS S MODEL(ストラトタイプ)。米国のハンドメイド・ブランドであるNASH GUITARSは、経年変化や風格を再現したレリック加工の老舗であり、ルックスもサウンドもヴィンテージを彷彿とさせる。



▲HIDE曰く「最近のレコーディングではストラトばかり使ってる。それもシングルコイルのフロントピックアップを。単音の響きがいい」とのことだ。

──じゃあ、リズムの音色やプレイにもかなりこだわっているわけですね?

HIDE:いつもこだわってますけど(笑)、今回だったら16分とか32分とかのビートが入ってくるから、クラッシュシンバルでバシャンバシャンと刻むのではなく、ハイハットで刻んでいるのをちゃんと聴かせるところじゃないですか。バシャンバシャンじゃなくて、ツツツツっていう。あと、タンバリンを使ったところ。タンバリンだとアタックと音の響きに間があるからちょっとズレるんです。それが良いんですよ。誰が気づくんだ?って話ですけど(笑)。

──いやいや、そういうこだわりはインタビューで言っていきましょうよ(笑)。そういうアレンジはデモやプリプロの段階で、すでに考えているんですか?

HIDE:もちろん考えてます。さっきも言ったようにレコーディングスタジオでは清書するだけなんですよ。もしくは、作業スペースでできたものが良かったら、スタジオでは録らない。よくあるじゃないですか。漠然と、さらに良い音を求めるって。それが俺にはわからない(笑)。自分がイメージしている音が一番良い音だと思うんですよ。イメージができていないから、もっと良くなるかもしれないって思っちゃうわけで。それは危ない。一番重要なのは曲なんです。その次がサウンドだから、サウンドを重視しちゃうと、曲がおろそかになっちゃう。そこは一番気をつけています。


▲HIDEのファズコレクション。左から時計回りに、JMIのTone Bender Professional MK II、EWSのBrute Drive BD-1(※ディストーション)、Z-VEXのMastotron、FUZZFACE、JHS PedalsのMini Foot Fuzz、FulltoneのOctafuzz。「APEX」ではTone BenderとFUZZFACEを使用。後半のクリーンは、ファズで歪ませながら、ボリュームを絞ることで得られる独特のサウンドだ。なお、前ページ写真でHIDEが弾いているManson Guitars DL-1にはZ-VEXのFuzz Factoryが内蔵されている。

──曲の一番のイメージを伝えるのはボーカルであり、ボーカルメロディではないかと思うのですが、AGさんは今回、ボーカリストとして、どんなふうに制作に臨みましたか?

AG:歌はもちろんですけど、歌に対するアイディアも含め、ボーカリストとして、自分にしかできないことをやるとか、自分が聴いてきたルーツとか、研究してきたものとかを全部詰めこむとか。いつもやっていることですけど、そういうことを意識しました。NOISEMAKERは英語の曲が多いんですけど、ここ最近は日本語を入れられるなら入れたいと考えているんです。今後は海外にツアーに行くことも視野に入っているんですけど、海外に行った時に日本の血はめちゃめちゃ武器になると思うんですよ。英語のリリックもカッコよくて、そこに混ざっている日本語の歌詞がちゃんとメッセージとしても、言葉としてもカッコよかったら最強じゃないですか。だから、なるだけ日本語は入れようとしています。入れられない時もあるんですけど、今回はすごくハマったから、そういうところも聴きどころだと思います。

──どんなところに日本語を入れようと思うんですか?

AG:リズムが多い歌だと入れやすいですね。逆に伸びやかなところだと、詰められないと言うか、ワードが限られてきちゃうと言うか、思いきり邦楽っぽくなっちゃうと言うか(笑)。

──邦楽っぽくなっちゃうのは違うわけですね?

AG:自分が影響を受けてきたルーツとは違うものになっちゃうんですよ。アニソンっぽくなっちゃう。アニソンが良くないというわけじゃなくて、自分たちが通ってきたものではないんです。あれ、ここ日本語だとか、ここは英語だとかっていう意識すらなく聴けるバランスが一番自然なんじゃないかな。

──「APEX」の日本語の歌詞で、自分でも良いものが書けたと思うところはありますか?

AG:日本語の部分は、そんなに多くないけど、そこだけでちゃんと伝えられていると思うんですよ。たとえば、“測り合う 価値 外す足並み”がそうなんですけど、今、みんなの考え方が違うじゃないですか。コロナ禍に関してもそうだし、飲食に対する締めつけもそうだし、ワクチンもそうだし、価値感が違ううえで、みんながお互いに測り合いながら、その一方では世の中の足並みから外れている人もいる。でも、それは悪いことではないしっていうのを全部、その一文に詰めてみたりとか。そこに続く“草臥れてく あの街並み”で飲食が潰れた後のシャッター街の様子を表現してたりとか。で、最後のサビだけ“明ける 日々 今 残す 昇る 灯す 届く”ってポジティヴになるところとか。

──歌詞を完成させるまでには、かなり時間を掛けているのではないでしょうか?

AG:掛けてます。レコーディングの直前まで日本語の歌詞が完成してなくて、ギリギリまで粘って、これだ!ってなりました。なぜ時間が掛かるかと言うと、一回全部、英語でちゃんと書くんですよ。

──えっ。

AG:だから、変な話、できれば変えたくないんです(笑)。でも、ぱっと聴いたとき、全部が英語だと、普通だと思っちゃうんですよ。それで、自分にしかできないことって話に繋がるんですけど、ここだったら日本語を入れられるかもしれないってところの英語の歌詞の符割と韻を生かしたまま、日本語しかわからない人が聴いても、そこだけである程度、曲の内容がわかるような歌詞にしようっていう。そういう自分の中のチャレンジと言うか、遊び感覚もあるトライをやっているんですよ。

──なるほど。歌詞の作り方もこだわりぬいている、と。

AG:みんな、わかってくれてるのかな(笑)。

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