【インタビュー】TENSONG、正解のなさを愛する“十人十色”の美学

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大分在住の大学生3人によって結成されたTENSONG。2020年4月に本格的な活動を始めて以降、実体験に基づいた歌詞や、耳に残るメロディー、それを歌い上げる圧倒的な歌唱力などがSNSで瞬く間に人気を集め、たった1年でTikTokのフォロワー数は79万人、YouTubeの総再生回数が2,200万回を突破。様々なメジャー・アーティストとのコラボレーションも果たすなど、急速に名前を広げている。初登場となる今回は、先日配信がスタートした最新楽曲「纏」(読み:まとい)を中心に、歌詞についてのこだわりや、結成から今日に至るまでのこと、そしてこれからのことについて、ボーカルのたか坊に話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■聴いた人の想像を膨らませたいんですよね。
■好きなように妄想してくれたらいいなって。


──TENSONGはどんなところから始まったんですか?

たか坊:大学の学園祭で音楽をやろうというところから始まりました。僕がボーカルで、ギター(拓まん)と、ボイスパーカッション(アルフィー)の3人で、Saucy Dogさんの「いつか」とか、RADWIMPSさんの「Sparkle」とかをカバーしたんですけど、やっていくうちに結構楽しくなってきて。そこからSNSを始めて、TikTokに動画を投稿してみたら、幸いなことに多くの方達が見てくださって、本格化していった感じですね。

▲たか坊(TENSONG)

──本格的に音楽をやろうという気持ちになったのはSNSが大きかったと。

たか坊:SNSに投稿して、多くの人に見てもらえて、「もしかしたら自分、歌えるのかもしれないな」って。あとは、ウチの社長が「SNSをやれば、お前ら有名になれる」って、何の根拠もないことを言い出して。いや、絶対無理やろって言ってたんですけど、彼の言う通り、意外と知名度的なものがついてきて。本気で音楽をやろうという意識を与えてくれたのは彼ですね。

──それはいつ頃だったんですか?

たか坊:彼とも大学1年生のときからの友達で、声をかけてくれたのが去年の4月ぐらいでした。学園祭に出たのが一昨年の10月とか11月ぐらいだったんですけど、そこからしばらく音楽はしてなかったんですよ。僕はスポーツ系男子で、運動ばかりしていたので。で、2020年の4月からSNSに投稿を始めました。

──そう考えると、この1年はとにかくめまぐるしかったでしょうね。

たか坊:そうですね(笑)。すごく濃ゆい1年でした。音楽しかしていないという1年でしたね。最初は、ただ歌が好きという気持ちでやっていたんですけど、聴いてくれる人がいて、聴いてくれるからこそ恩返しというか。そういう思いもだんだんと増していきましたし、アーティストとしてしっかりと活動していきたいと思うようになっていきました。

──そもそも昔から音楽は好きだったんですか?

たか坊:歌うのは好きだったんですけど、学ぼうと思ったことはなかったです。元々、自分の声にあまり自信もなかったので。

──そこが不思議ですよね。すごくいい声なのに。

たか坊:いや、あんまり自分の声を好きと思ったことがないんですよ。なので、人前で歌うこともあまりしたことなかったです。本当にここ最近ですね。

──どんな音楽が好きだったんですか?

たか坊:昔はR&Bを聴いてました。清水翔太さんとか、ソロアーティストを聴くことが多かったんですけど、今はバンドをよく聴きますね。それこそSaucy Dogさんとか、マカロニえんぴつさんとか。なんか、バンドって担当があるじゃないですか。ベース担当とかギター担当とか。そうやってみんなで音楽を作っていく感じがいいなって。

──過去に楽器の経験とかは?

たか坊:触れたことなかったですけど、最近ギターを始めました。まだ3ヶ月ぐらいですけど、作曲とかにも使うので、練習してみようって。

──曲を作るようになったのも最近?

たか坊:ここ1年ですね。曲はいつも簡易的なデモを作って、アレンジしていただく方にお願いしてるんですけど、歌詞が難しくて(苦笑)。僕は妄想して言葉を書くとか、物語を作ることができなくて、リアルな話じゃないと書けないんですよ。その場で感じたこと、自分が見たものを言葉にしていくんですけど……僕、作文は結構得意で。得意というか、バーっと言葉をたくさん書けるっていう感じではあるんですけど。ただ、歌詞となると凝縮しなければいけないし、自分が伝えたいことがメロディにハマらなかったりすると、別の言葉にしないといけない、だけどそのニュアンスで伝えたい、とか。

──文章のときのように、すらすら出てくるわけではなく。

たか坊:一切出てこないですね(苦笑)。8時間ぐらい座っていても、1文字も出てこない日もあります。今回の「纏」はすごくストレートな歌詞なんですけど、普段は比喩的なものを使いたがるタイプなんですよ。そっちのほうがおもしろいなと思っちゃうから。でも、人に想像させるためにどういうふうを書いたらいいのかとか、そこはこれからの課題になっていくんだろうなと思っています。


──特に作るのが大変だった曲を挙げるとすると?

たか坊:どれも大変でしたけど、すごく濃ゆかったのは「存在」かなと思います。いまのところ、既存曲のほとんどの作詞は僕がしているんですけど、この歌詞はギターの拓まんが書いていて。彼が失恋したときのことを書いた曲なんですけど、その現場を見ていたので。

──現場を、見ていた……!?

たか坊:あ、いや、失恋して帰ってきた直後に話したんですよ。5時間ぐらい話していたんですけど、彼の思いがひしひしと伝わってきて。彼も紆余曲折があっての恋愛だったと思うので、それを聞いたときに、これを曲にしようっていう話になって。

──出だしが強烈ですよね。《もし私が明日死ぬってわかってたら、こんな別れ方はしない》という。

たか坊:マジでこれを言われたらしいです(笑)。結構引きずってましたけど、今はもう全然大丈夫です。

──たか坊さんの歌詞は、ラブソングにしろ、メッセージソングにしろ、得てしてエモいものが多いなと思いました。

たか坊:いやぁ、もうちょい突き詰められたなって思ったりはするんですけどね(苦笑)。曲が出た後に、もうちょっとこうしておけばよかったなって。そういう後悔みたいなものがだんだん積み重なっているんですけど、逆に、ちゃんとこういうことを考えられるぐらい成長したんだなと思う自分もいて。なので、「纏」は、僕の中では1番、2番には入ってくる歌詞で。僕が失恋した経験とかを基に、拓まんと一緒に書いたんですけど、今回はすごくシンプルな言葉にしているので、多くの人に刺さるといいなと思っています。

▲TENSONG/「纏」(まとい)

──元々比喩が多かったとのことでしたけど、シンプルなものを書いてみたい気持ちもあったんですか?

たか坊:今回はシンプルにしたほうがいいんじゃない?って、拓まんに言われたんですよ。それで初めてザ・シンプルな歌詞を書いたんですけど、僕としてはこういう歌詞はあまり書かないというか、書けないというほうが正しいかもしれないです。

──なぜ「書けない」んです?

たか坊:なんか、かっこつけたくなっちゃうんですよ、音楽のときって。音に乗せて「好きだ」って言っても……ねぇ?ってなってしまうので。僕は、好きだったら普通に「好きだ」ってストレートに言うんですよ。だから、音楽のときぐらいかっこつけたいなって(笑)。

──音楽だったら普段は言えない恥ずかしい気持ちをストレートに伝えられるというわけではなく。

たか坊:なんていうか、聴いた人の想像を膨らませたいんですよね。たとえば、「好き」という感情をそのまま書くのではなく、敢えて違う言葉で表現して、「ああ、この人はこうだから好きなんだな」って感じてもらいたいというか。だから逆に、聴いた人が好きなように妄想してくれたらいいなって。こっちからストレートに伝えるのではなくて、伝えたいものを自然と想像できるような感じにしたいなと思って、歌詞は書いてます。

──でも、なぜまたそういった想像の余地を持たせるものにしたいんです?

たか坊:僕、本を読むのが好きなんですよ。特にSF小説が好きなんですけど、リアルにないものって、頭の中でいろんなものが想像できてめっちゃ楽しいなと思って。だから、僕は映画よりも小説の方が好きなんですけど、その癖というか、自分の好きなものが歌詞を書くところに影響しているんじゃないかなと思います。

──なるほど。歌詞については、基本的にどういう捉え方をしてもらっても構わないと。

たか坊:そうですね。もちろん自分の芯みたいなものは持って書いているんですけど、僕としては、「十人十色」ということをすごく意識していて。ひとつの曲に対して、すべての人が同じ想いにはならないというか。僕もそういう曲が好きだし、自分が作る曲に関しては、そう捉えてほしくて。たとえば、「好き」と言ったら、それはもう「好き」になってしまうじゃないですか。ひとりひとりが違う想いを持って「好き」と思って欲しいから、敢えてその前のストーリーは薄くして、遠回しに「好き」っていう言葉を伝えたりとか。恋愛の歌詞で言えばそういうイメージなんですけどね。

──グループ名のTENSONG(=十色)って、そういう意味ですもんね。

たか坊:そうです。ひとりひとりが違う想いになってほしいし、自分の曲だと思ってほしいので。1年前はそこまで想像できていなかったんですけど、最近はそのことをすごく意識しながら書いています。

──絶対的な正解を出したいわけじゃないってことですね、歌詞においては。

たか坊:きっとこの世の中って正解がないと思いますしね。それはきっと法律ぐらいで、それ以外に何かあるのかなって。恋愛にもきっと正解はないと思うし。わざわざ正解を突きつけるのはよくないのかなって思っちゃうタイプです。

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