【コラム】大森元貴 (Mrs. GREEN APPLE)、2nd EP『Midnight』は日米韓テイストのミクスチャーにして大問題作

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7月初旬、突如として2022年の活動再開をアナウンスしたMrs. GREEN APPLE。それからほぼ1ヵ月後、続報を待ち焦がれるファンに届けられた新しいニュースは、何とバンドの話題ではなく、フロントマンである大森元貴の2ndデジタルEP『Midnight』リリースであった。またしても想定を超える展開に、多くのリスナーは、喜びと大きな驚きを覚えたに違いない。かく言う筆者も、誰よりも驚いたファンの一人である。

◆大森元貴 動画 / 画像

大森は、Mrs. GREEN APPLEの全楽曲の作詞・作曲・編曲を手がけるだけでなく、作品のアートワークやMV(ミュージックビデオ)のアイデアなど、楽曲にまつわるすべての要素を手がけてきたアーティストだ。そんな彼は、Mrs. GREEN APPLE“フェーズ1完結”の後、つまりバンドが活動休止中の今年2月、1stデジタルEP『French』でソロデビューを飾った。

デビュー作では、全収録曲(「French」「メメント・モリ」「わたしの音」)で作詞・作曲・編曲を自身でこなすという、それまでのバンドと同様の制作スタイルをとりながらも、より自由度を増したクリエイティブにより、大森の創造力を最大限に膨らませたアート性の高い楽曲と大きくレベルアップした歌唱力、さらに「French」のMVで見せたコンテンポラリーダンスで大きな話題となった。ただ、ソロデビューに関する大森自身の発言は極めて限定的なものにとどまり、その後のソロ活動の展望やMrs. GREEN APPLEの活動再開(すなわち“フェーズ2”)との関係性などは、あくまでも楽曲そのものから読み解くほかはなかった。

それから約5ヵ月後というハイペースで届けられた新作は、大森の思考が、さらにワイドに、シャープに、なおかつタイトに表現された作品となっている。


特筆すべきは、タイトル曲でもある「Midnight」のアプローチ。ポストEDMやヒップホップといったビート感を強調させる世界的トレンドと、印象的なワンフレーズをこれでもかというほど繰り返すことで強烈に印象付けるK-POP感を取り入れつつ、同時に、J-POPリスナーをDNAレベルで惹きつける楽曲のストーリー性を見事に描き切り、やや大袈裟な表現かもしれないが、ポップミュージックにおける日米韓テイストのミクスチャーといったものに仕上がっていた。

もう少し「Midnight」を詳しく分析してみよう。まずトラックは、プラック(木琴や弦をはじく音のように、アタックが強くて短いサウンド)とリズムを主体にシンプルに組み上げられている。この骨組みこそが、まさにEDMやヒップホップの必須要素であり、現在主流のダンスミュージックの基本フォーマットと言えるもの。これら冒頭から最後まで続くシンコペーションのリズムが、首尾一貫してこの曲のビート感を作り出している。

そこに乗るメロディ、すなわち歌も、メロディアスさというよりも、ビート感を補強するかのような音符の流れとなっており、歌とビートが対等にある点が特徴的。こうした関係性は、明らかに歌が主役であるJ-POPとは大きく違う点だ。しかも、全編が英語のようにも聴こえつつ、その合間にグラデーションのように日本語詞が混ざり合ってくるユニークな歌詞により、必要以上に歌(言葉)に耳が引っ張られず、それでいながら、印象的なワードが自然と耳にひっかかるという絶妙な効果を生み出している。

しかもそのメロディは、冒頭で“♪Midnight”と歌われる“G#-F#-E“という印象的なフレーズのバリエーションで曲の大半が構築されている。つまり、メロディとしては実にシンプルではあるが、それで1曲を押し通すことができる、シンプルさに耐えうる強靭なフレーズであり、それが形を変えて繰り返されることで、一聴してすぐにメロディを口ずさめるほどに強い中毒性を生み出している。


そのうえで注目したいのは、基本フレーズのバリエーション感によって、J-POP特有のAメロ、Bメロ、Cメロ、そしてサビという曲の抑揚、すなわちストーリー性を作り出しているという点だ。これは、キーとなるフレーズやリズムを反復させることで明確な展開を持たせないEDM/ヒップホップと大きく違う点であり、なおかつ、コードを大きく変えて曲を複雑に展開させ、最後のサビで盛り上がりを演出する典型的なJ-POPとも一線を画すポイント。

もうひとつ細かな点ではあるが、先述したプラックサウンドとして、シンセではなく、ギターを使っている点もひとつのマジックだと言えよう。つまり、シンセ音色でプラックサウンドを鳴らしていれば、この曲が持つEDM/ヒップホップ感がモロに強まってしまうが、ギターを使うことで聴き手に“リフ”と感じさせることもでき、そう解釈することによって、途端にギターロックのフレーバーがほのかに香りはじめる。こうしたトリックによって、バンド好きなJ-POPリスナーにも違和感なく受け入れられるよう、間口を広く設けているのだ。

こうした細かなデザインによって、「Midnight」は、EDM/ヒップホップでありつつJ-POPさを醸し出す一方で、J-POPとして成立させながらも、EDM/ヒップホップの要素をふんだんに内包させた仕上がりとなっている。だからこそ、聴き手の音楽的バックボーンによって、ある人はこの曲をEDMとして聴くだろうし、ある人はK-POPテイストに魅力的に感じ取るだろうし、またある人は、純粋に新しいJ-POPとしてこの曲を歓迎するだろう。

実に多様性を持つアレンジだ。その実現には、大森本人のアイデアはもちろんのこと、外部アレンジャーとして迎え入れた、日米韓3ヶ国のカルチャーを熟知するサウンドプロデューサーデュオD&Hの役割も大きかったであろう。そうした他者との化学反応に大森が意欲的に取り組んだという意味でも、本作は画期的だと言えるだろう。


2nd EPには、ここまで解説した「Midnight」に加え、大森が描く世界観をさらに拡張する2曲が収録されている。まず、元松美紅(ぷらそにか)をゲストボーカルに迎え、すべての聴き手を主人公として音楽の世界に誘ってくれるデュエットソング「メイプル」。そして、極限まで削ぎ落とされたトラックを背景に珠玉のメロディが際立つ「ヒカルモノクラクナル」。これらを含めた3曲によって、今回のEPも、シンガーソングライター大森元貴の魅力がレイヤーを成した作品となっている(なお、「メイプル」では山下洋介、「ヒカルモノクラクナル」では久保田真悟(Jazzin'park)がアレンジャーとして、大森と共にクレジットされている)。

とは言え、やはりタイトル曲のインパクトはあまりに強烈。そして、この曲をさらに“大問題作”たらしめているのが、8月6日に公開されたMVだ。その衝撃は、百聞は一見にしかず。実際にMVを見て、是非それぞれで感じて欲しい。そして、新たに大森の公式TikTokアカウントが開設されたことも大きな話題となっている。Mrs. GREEN APPLEの“フェーズ1完結”後、メンバーすべての個人SNSが閉じられた現状、大森がTikTokで何をどのようなアプローチで発信していくのか、今後の動向が見逃せない。

これら大森のアクティブなソロ活動は、来るべくMrs. GREEN APPLE“フェーズ2”に、果たして一体どのようにリンクしていくのだろうか? 7月8日にアナウンスされた“Mrs. GREEN APPLE WILL CHANGE” “MGA WILL BE BACK in 2022”というメッセージの謎を紐解くヒントとなり得るのだろうか? それとも、バンドとは違ったソロでの展開がまだまだ用意されているのだろうか? その答えが分かるまでの間に、大森元貴のイマジネーションは、とどまることを知らずに、さらなる大きな広がりをみせていくに違いない。

構成・文◎布施雄一郎


■2nd Digital EP「Midnight」

2021年8月6日(金) 0:00配信開始
https://lnk.to/MOMidnight
1. Midnight
2. メイプル
3. ヒカルモノクラクナル

Motoki Ohmori 'Midnight'
Streaming will be available from 0:00 am(JST) on August 6, 2021


■絵本『メメント・モリ』

文・大森元貴
絵・大谷たらふ
定価:1,980円 (税込)
発売日:2021年9月15日(水)
仕様:A4菊判変形・並製・32頁予定
ISBN:978-404-8970976
発行:株式会社KADOKAWA
予約特典:直筆サイン(印刷)付 絵本イラスト「メメント・モリ」歌詞カード
(1)Amazon.co.jp〈絵柄A〉 (2)楽天ブックス〈絵柄B〉 (3)HMV & BOOKS online〈絵柄C〉 (4)タワーレコード〈絵柄D〉
予約リンク: https://lnk.to/mommbook

■1st Digital EP「French」

2021年2月24日(水)配信開始
https://lnk.to/MOFrench
1. French
2. メメント・モリ
3. わたしの音(ね)
※iTunes、レコチョク、Apple Music、Spotify、LINE MUSICほか主要配信サービスにてストリーミング/ダウンロード配信
※Motoki Ohmori 'French' is available on Apple Music, Spotify and etc..


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