【連載】「建物語り」by うらら 第11回<コンクリ造りの和風建築、香川県庁>

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これは昨年の話である。

一瞬だった2020年の夏がゆき、秋もすっかり深まってきた頃、地元・大阪へと帰省する用事ができた。

冬の足音が少し聞こえはじめているものの、まだコートの出番はないこの過ごしやすい季節。せっかく西へとゆくのだから、建物の一つ二つ見に行きたいな、建物語りも書きたいし……と考えたのだが、実家のある大阪から建物を見にどこかへ行こうとすると、どうしても「淡路夢舞台」や「名塩ニュータウン」へと気持ちが向いてしまう。淡路島自体が好きだから行っちゃう夢舞台と、子どもの頃の思い出補正もかかっている大好きな名塩ニュータウン。どこのどんな建築を紹介されても、この二つが私の中で大きすぎるのである。

でもどっちも書きましたやん。この建物語りを楽しみに読んでくださっている方がどれくらいいるのか私にはわからないが、まだ11回目なのに同じ建物書くとかどうなん?うららさん。(しかも1年ぶりの更新なのである。平謝りである。)

と、葛藤していたところ、いろいろなタイミングが重なり、香川県へと行く用事ができた。

そうと決まれば、あそこへ行くしかない。

丹下健三の代表作、香川県庁。

◆「建物語り」by うらら 関連音源&画像

■口に出したくなる言葉
■ピロティ!

丹下健三の建築で、最もよく知られているのは、やはり東京都庁ではないだろうか(他にも超有名なのあるけど、なんとなく「建築!」としては都庁な気がする)。

東京都庁舎は1991年、香川県庁は1958年なので、都庁の約30年も前に建てられており、丹下健三の初期の建築である。

ちなみに私の出身地である大阪府吹田市にも丹下健三のデザインした建築がすこーしだけ残っている。万博公園にある、お祭り広場の大屋根跡である。万博開催時は太陽の塔を取り囲むように大きな屋根があったらしいのだが、私が知っているのは残された少しの骨組みだけ。お祭り広場では学生時代によくフリーマーケットをしたのだが、まさにその残された大屋根跡の真下に店を構えたことがあり、「どこおるん?」「なんか骨んとこの下!」などと友人たちと言い合っていた。「なんか骨んとこ」なんて、今考えたらなんて罰当たりな。今度から大屋根跡の下だよ、と伝えたい。

さて話を戻し、香川県庁。

前々からこの連載でも書いている通り、私は建築に明るいわけではない。ただ特定の建物をみると胸がキュンとしたり、きゅうっとなったり、憧れの人に会えたときのような喜び、好きな人を街で偶然みかけたときみたいな小さな痛みを感じるだけだ。

そんな私だが、知り合いに誘われて「日本の建築展」へと足を運んだことがあり、そのときに一番記憶に残っていたのがこの香川県庁だった。それが丹下健三の建築だとか、その人は有名な建築家で、代表作がなんだとか、そんなことも知らなかった時分だったので、本当にただ純粋にその見た目に惹かれ、「いつか見に行きたいな」と思っていた。一度写真で見ただけで、名前以外何も知らないけれど気になるあの人に、また会える。

調べておいたおいしいうどん屋の数々も楽しみにしながら、高松市内を県庁へと車を走らせる。香川県には大学生の頃に何度か足を運んだことがあるが、そのほとんどがうどんを食べて、それからうどんを食べて、最後にうどんを食べて帰るという旅だったので、市街地にはそれほど来たことはない。

近隣の駐車場に車を停め、そこから見た初めての生・香川県庁はこんなふうだった。



ピロティ!(口に出したくなる言葉、ピロティ!)



手前にある低い部分、議会棟の下がまるまるピロティになっていて、結構な「ドーン!」感で存在している。

ちなみにピロティっていうのはね丹下健三が憧れたル・コルビュジエの……近代……モダニズム……ええいその辺は検索して!


あちらの階段には柱がありません、うつくし……


その下にある消火栓、かわいい。ピロティの写真にもあったパイプ群もそうだけど、石垣で隠しがち。他が打ちっぱなしの鉄筋コンクリートだから、存在感があるし、ころんとしてかわいく見える。


ピロティの天井を見上げると、木の格子の間に蛍光灯が挟まるように設置されていた。直線だらけでどきどきする。ちなみに、私はストライプとチェックのお洋服が大好きである。


先程の階段とは違って、ピロティ真ん中にある階段には柱がついていた。丹下健三的には、これは妥協だったらしい。確かになかったらもっとかっこよかったかも……!

ところで(もしかしたらすでにお気づきの方もいるかもしれないが)、実は私は大変なミスを犯していた。この日は土曜日で、県庁がお休みだったのである。

中入れへんやないか!!!


反射してうまく写らないよ〜〜猪熊弦一郎の壁画見たいよ〜〜〜うわ〜〜〜ん入れて〜〜〜〜〜

と嘆いても仕方ないので(こういう「自分、なんでなん?」みたいなミスが日常的にあるので、すぐ切り替えられるのは私のいいところ。)、ピロティを抜け、議会塔の後ろに立つ高層棟を見に向かう。中庭がすごそう(すごそう)


太鼓橋と一緒にドーン!!これは日本庭園ですか??


小高い丘みたいになっているところがあって、ここからの景色が気持ちいい。


池〜


中庭側から見る県庁の中。猪熊弦一郎のやつ結構見える!やった!左側にある階段、手前の池も合わせて、一つの絵画みたい。




まるで和風建築のように組まれた鉄筋コンクリートの梁がこの建物の一番の特徴で、実際みた感想は「とてつもなく美しい」だった。iPhoneでも伝わりますか、この美しさ……(空が飛べたらいいのになぁ……真正面から撮りたい……)


中庭から望む議会棟、ピロティの抜け感やっぱりすごいなぁ。隔てられない。


これこれこの本棚!
これも建築展にいったときに見ました。




RC造の建物なのに、柱に木目が。コンクリートを流す型が木製だから、木目が写るみたい。おもしろい……!


打ちっぱなしの鉄筋コンクリート造りでありながら、梁がまるで和風建築で、和風庭園、太鼓橋まである。これが、親もまだ生まれていないような時代に作られていて、今もなお、現役バリバリで公共の施設やってる、ということに感動する。おもしろすぎる香川県庁。

こういう、建築にもっと詳しければ、もっと面白いと感じることができるのだろうなあという建物に出会うたび、「もっと勉強したい…」と思う。が、どこからどういうふうに勉強すればいいのかがわからず、ええいとりあえずかっこよさそうな建物見にいくぞ〜!となっている今である。

建築に詳しいお友達が欲しい(切実)。


ちなみに、私の本業はミュージシャンで、
7月にも新曲「i no ri」を配信リリースしたところである。



https://linkco.re/AdqHCHAH

色んな問題がおこる世の中で、日々の生活を大切にしながら、でも誰かの幸せを願う気持ちはあって…というようなことを歌にしている。

建造物も、歌も、創作物にはいつだって祈りが込められているように思う。「住民が入りやすいように」「伝統が残るように」「あの人が今日も笑顔でいられますように」ーーそのどれもが、誰かの、誰かへの、祈りだ。

あと「灯台」って曲もリリースしたんだけど、灯台ってかっこよくないですか?かっこいいな〜〜って思っちゃう、その存在意義も含めて。旅いくと見に行くものの一つなので、今度建物語り灯台編みたいにして灯台の写真まとめてみるのもいいいかもしれない(例に漏れず、灯台にも詳しくはない)。

今回、1年ぶりの更新になってしまったことを結構悔いているので、これからはもう少し短いスパンで書いていきたい。次回の建物語りも、楽しみに待っていてほしい。

うらら

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