【対談】感覚ピエロ 滝口大樹 × イラストレーター 深井涼介、初コラボがアパレルで実現「出力すべきフラストレーションを共有した」

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感覚ピエロの滝口大樹(B)が、自身のアパレルブランド“Canaan -Graceful and unconventional-”を設立したのが2021年5月のこと。そのセカンドラインとして先ごろ立ち上げられた“CICL. (Canaan × Illustrators Collection Line)”はブランド名通り、イラストレーターとのコラボレーションラインとなるもの。同プロジェクトの第一弾ゲストとして迎えられたイラストレーターが、『ARMS NOTE (アームズノート)』で知られる深井涼介だ。

◆滝口大樹 × 深井涼介 画像

「コロナ禍にジム通いの回数は増えました。絵を描くこととは違うけれど、メンタルと体力は鍛えようと今週3で通ってます」と深井が話せば、「すご〜い、ちゃんと行ってる〜(笑)」と滝口。軽快に進んだトークセッションだが、実はコロナ禍でのコラボ作業だったゆえ、2人が直接対面するのは今回が初だという。しかし製作を通じて打ち解け、瞬く間に生まれた両氏ならではのグルーヴ感は上質なクリエイター同士の成せる業なのかもしれない。

幕張メッセワンマンを成功させるなど、結成から8周年を迎えて着実に進化を遂げるロックバンドのベーシスト滝口大樹。女子高生とメカニックを融合したオリジナルキャラクター“バイオニック・ジョシコウセイ”が人気となり、即フィギュア化された深井涼介。互いの創作意欲に刺激を受けながらコロナ禍で製作された新商品は、一体どのような想いで作られたのか。この対談では、両氏の根底にあるモードとタイミングが合致して、類い希な化学反応を起こしたことが明かされている。CICL.は今後も様々なイラストレーターとの定期的コラボを予定しているが、その第一弾の対談には、普段見ることができない新たな表情と、クリエイティヴを楽しむ純粋な気持ちが溢れていた。

   ◆   ◆   ◆

■俺、音楽しかできへんのかな?
■って思ったんですよ

──コロナ禍ということもあって、コラボによる製作はオンラインで行われていたそうで。お2人が実際にお会いするのは、今回の取材が初めてなんですよね?

滝口&深井:はじめましてですね!

深井:でも、前から知っている人だなって感じがしてます。感覚ピエロさんはもちろん以前から知っていて、「拝啓、いつかの君へ」は聴いていましたから。あと、「メリーさん」とかね。

滝口:めちゃめちゃ初期じゃないですか(笑)! ありがとうございます。

──音楽がお好きなんですね。

深井:はい。何年か前に個展を開いたんですけど、男性のバンドさんやシンガーさんが好きなので、その個展でも星野源さんやポルノグラフィティ、ジャミロクワイとかを会場BGMに使わせていただきました。その時まで、好きな音楽に一定の方向性はないと思ってたんですけど、「スケールのデカいラブを歌ってる人が好きなんですね?」って言われて。たしかに“君と僕の歌”より、“人類好きだぜ”って歌のほうが好きなんだなって思いました。

滝口:うち、スケールのデカいラブは歌ってないですよ(笑)。


▲滝口大樹 (感覚ピエロ / B)

──いや、スケールは大きいですから。せっかくなので、それぞれの第一印象もうかがいたいんですが、滝口さんに対しては、アパレルというよりもアーティストとしての印象のほうが強かったということですよね?

深井:そうですね。感覚ピエロさんが新作ゲーム『テイルズオブシリーズ』のオープニングテーマを担当されたということも知ってますし、今回のコラボも、そのタイミングでタイムリーにやらせてもらえるんだってことがうれしいですね。

滝口:深井さんの第一印象は、“あ、喋れる人!”って感じ。俺らアーティストは融通が効かない人も多いから、“もしかしたら…”っていうイメージで勝手に身構えていたんですね。だから最初は、どこまでのことが出来るのかな?と思ってたんですけど、「これどうですか?」みたいなかたちでクリエイティブが柔軟にどんどん進んでいったんですよ。

深井:すごく早かったと思います。僕が「これ、やれますか?」って聞くと、すぐに「やってみましょう!」って言ってくれたり。

──異色の2人のようにも感じますが、そもそも滝口さんと深井さんが出会ったきっかけは?

滝口:僕のアパレルブランドに近藤さんっていう生産管理担当でありデザイナーがいるんですけど。まず近藤さんが深井さんとお仕事をしたことがあったみたいで。

深井:そうだそうだ! うちのオリジナル作品に『ARMS NOTE』っていう同人誌があるんですけど、去年、そのボクサーパンツを出させてもらったことがあって。その時に近藤さんが僕のことを知ってくれたんですよね。

滝口:近藤さんから「イラストとか好きでしょ?」って今回の企画をもらった時に、深井さんの名前が挙がってて。普通の絵描きさんだったら「やらん」ってなってたと思うんですよね。でも、イラストを見て「お願いしよう!」って感じでした。今回はアパレルブランドCanaanでイラストレーターさんと新たにコラボするってことが、僕の中で全てイコールになったんです。

──それは感覚ピエロというバンドとしてでなく、滝口大樹個人としてやりたいことだったんですね。

滝口:そうですね。深井さんのイラストを初めて見た時に…失礼ですけど、めっちゃ上手いなと思って。『ARMS NOTE』っていう作品のオリジナリティの高さに惹かれたんですよ、深井さん自身の独創性の触発されたというか。僕自身もアーティストなので。

深井:うれしいですね。僕はコロナ禍の期間中に、できないことを嘆くより、力を溜められるんじゃないか?とポジティヴに考えてて。そういう意味で、“面白いことを準備したり、新しいことに踏み出せるよ”っていうことを発信したかった。だから今回はタイミングもよかったんですね。


▲同人誌『ARMS NOTE』

──滝口さんからオファーが届いた時は、深井さん自身、驚かれたんじゃないですか?

深井:この話は笑い話なんですけど、滝口さんから「感覚ピエロというバンドでベースをやっております、滝口と申しますが…」というメールが届いた時に、企画書もURLも何もなくて。“なりすましかな?”って思ってたんですよ。で、少し間をおいて、滝口さんが僕のTwitterアカウントをフォローしてくれたので、“本物か!”と(一同笑)。それが証拠となり、「やります!」ってなったんですね。

滝口:唐突にメールしたんですよ。今年5月に立ち上げたブランド“Canaan”の方向性は既にあって、 新ブランド“CICL. (Canaan × Illustrators collection line)”を立ち上げたので、今回は進行自体が急だったこともあり。

──そもそもCanaanを始めたのは、「コロナ禍で思うところがあった」とうかがっていますが?

滝口:昨年春に、感覚ピエロの1年半くらいのスケジュールが一旦全部飛んで、今まで頻繁に会ってたメンバーとも数週間も会わないって状況になったんです。コロナの影響ですよね。その時、異業種の人たちとやりとりしたんですね。それこそ、近藤さんは自身のブランド“CILANDSIA” (チランドシア)を立ち上げていて、感覚ピエロでは衣装として使わせてもらったりもしてて。「最近どうですか?」って話してみたら、「アパレルは展示会ができない。売れない」と。俺らバンドは「ライブができない」っていう状況だったので、「何か面白いこと、できないですかね?」って情報交換をしてたんですよ。

深井:そうだったんですね。

滝口:はい。そこでまず、CILANDSIAから僕名義のコラボスニーカーを発表したんです。企画から製作過程まで僕自身が関わったんですけど、近藤さんとのインスタライブ配信でデザインまで決定して、それを販売したんですね。その後、近藤さんから「ブランドにしましょうよ」って声をかけていただいて、結果立ち上げたのがCanaan。

深井:以前からアパレルブランドをやりたい気持ちがあったんですか?

滝口:いや、これがマジで、そんな気はなかったんですよ。感覚ピエロは他のメンバーもアパレルブランドをやってるし、“俺らのお客さんから見たらどうかな?”って考えて、断っていたというこだわりもあって。だけどスニーカーの製作過程で近藤さんから「滝口さんと物作りするの、すごく楽しくて好きなんです。だからやりたいんです」と言っていただいたんですね。その時、“久々にメンバー以外から「一緒に物作りしたい」とか「楽しい」って言われたな”と思って。

深井:なるほど。

滝口:この10年、“ベースだけ弾けたらいい”って思いながらバンド活動してきたので、このタイミングで異業種の方々と話したり、相談を受けてるうちに、“本当に俺、音楽しかできへんのかな?”と思ったところもあって。なので、「一緒にやりたい」と言ってくれる人が出てきたし、“じゃあ、やってみよう”っていう感じでした。

深井:僕もコロナ禍で、コミックマーケットをはじめとする大規模イベントの予定が白紙になったことで、フィギュアを展示する機会がなくなったり、新しい出会いもなくなったんです。それこそ、新しいことをやりたいと思っていたんですけど、名刺交換の機会もないという。基本的にフリーランスのイラストレーターはオンラインでやっているんですね。だから、生で会えたときのエネルギーは計り知れなかったし、みなさんからの「頑張ってください」っていう言葉がモチベーションアップに繋がっていました。

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