【コラム】Kroiを知るならまず「Balmy Life」

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今年の4月にポニーキャニオン/IRORI RECORDSからメジャーリリースを果たしたばかりのニューカマーバンド・Kroi(クロイ)が、いきなり旋風を巻き起こしているらしい。6月23日リリースのファーストアルバム『LENS』のリードトラック「Balmy Life」が、人気上位の主要な5つのサブスクリプションサービス(Apple Music、LINE MUSIC、Amazon Music Prime、Amazon Music Unlimited、Spotify)で、累計100万再生を突破。配信から2ヶ月経った今も、デイリー最高値を更新しているという。

◆「Balmy Life」ミュージックビデオ

「Balmy Life」は、これまでの記録を大幅に上回る全国47局のラジオステーションでパワープレイ/ヘビーローテーションを獲得すると、ラジオエアモニチャート1位、ビルボードHOT SEEKERS SONGSで2週連続1位など、新しい刺激的な音に飢えている音楽リスナーの耳をがっちりキャッチ。その他、各方面で新人としては異例の数字を連発し、特に「J-POPとして」検索されたチャートで上位に食い込んでいるのは、いわゆる業界受けや玄人受けしつつも大衆受けするポップな存在感を表しているようで面白い。

もともとKroiは、当時まだ10代だった内田怜央(Vo,G)の突出したソングライティング能力と、コンセプターとしての優れた能力を中心に、同級生の長谷部悠生(G)、年上の関将典(B)、益田英知(Dr)が集まって2018年2月に結成されたバンドだ。その存在は早耳音楽ファンの間で早くから注目を集め、2019年夏には新人アーティストの登竜門<出れんの!?サマソニ!?>オーディションを勝ち抜いて<SUMMER SONIC 2019>に出演している。同じ年の12月に千葉大樹(Key)が加入して最後のピースが揃うと、バンドは一気呵成にスターダムへの階段を駆け上がり始め、各種サブスクリプションのプレイリストや動画メディアにおける人気者になってゆく。メジャー1stアルバム『LENS』を掲げて行われている<Major 1st Album「LENS」Release Tour「凹凸」>も、全公演ソールドアウトだ。世の中からの見え方としてはいかにも現代的な、どこからともなく彗星のごとく現れてソーシャルメディアで一気に人気爆発タイプ、に映っているのかもしれない。

だが彼らの本質は、音楽性にしてもライブを重視する姿勢にしても、ある意味とてもオーソドックスでオールドスクールなものだ。“Kroi=黒い音楽が好き”というバンド名の由来からして、ブラックミュージックへの素直な愛情が感じられるし、ファンク、ブルース、ソウル、ヒップホップに至るまで、骨太かつしなやかな演奏力は本物。レッド・ホット・チリ・ペッパーズを音楽の入口に、ブラックミュージックもロックも貪欲に咀嚼してきた内田怜央のソングライティングは、マニアックとポップを両立させるバランスが実にうまい。同じバンドのメンバーとは思えないてんでんばらばらな髪形と服装も、攻撃的なエンタメ度の高いライブパフォーマンスも、「音楽は自由で楽しいものでしょ」という基本に忠実だ。ついでに、実際にメンバーと話した経験から言うと、見た目は怖そうでとっつきにくく見えるかもしれないが、5人ともフレンドリーで率直で、意外とシャイで真面目に感じた。

ファーストアルバム『LENS』には、シティポップにも通じるメロウネス、ヒップホップに接近したストイックで強靭なリズム、70年代ディスコやダンスクラシックスを思わせる祝祭感、ダークで静かな空気感にひたれるチルアウト感覚など、様々な要素が万華鏡のように一つの楽曲の中でキラキラ回る、魅力的な楽曲がこれでもかと詰め込まれている。中でも1曲目を飾るリードトラック「Balmy Life」の完成度の高さは、目を見張る。Kroiを知りたいなら「とりあえずこれ聴いとけ」と言っておけばたぶん間違いはない。

“Balmy”とは「穏やかな、爽やかな、香りの良い」という意味だが、アメリカのスラングでは「まともじゃない」という意味もあるらしい、まさにKroiにうってつけのキャッチーなワード。内田の書く歌詞は響きの良さと不思議な哀愁と熱気をたたえ、ファンキーなボーカル、うねうねと動き回るエフェクティブなギターとオルガンは、どこまでもホットでほんのり官能的。ちなみにミュージックビデオは、大掛かりな仕掛けと大量のエキストラを配し、演奏シーンを交えながら進行してゆくストーリーに引き込まれる、アーティスティックかつ娯楽作品。一見を勧めたい。

言葉を選ばずに言えば、Kroiの音楽は「ふざけてるなぁ」「遊んでるなぁ」というポップ感覚と、「知識が深い」「技術がある」「センスがいい」というディープ感覚を兼ね備え、「遊んでて深くてかっこいい」という、簡単そうで難しい特性を若くしてすでに獲得している。ここまで器の大きいバンドはそうそういるものじゃない。音楽の好みは好き好きだが、聴いてみない理由はない。2021年下半期、Kroiが巻き起こす嵐に注目せよ。

文◎宮本英夫



■Major 1st Album『LENS』


▲『LENS』

2021年6月23日(水)発売
CD+DVD / PCCA-06044 / 4,400円(税込)
CD Only / PCCA-06045 / 2,970円(税込)

[CD収録曲](全12曲)
01.Balmy Life
02.sanso
03.selva
04.夜明け
05.Pirarucu
06.ichijiku
07.a force
08.侵攻
09.NewDay
10.shift command
11.帰路
12.feeling

[DVD収録内容](全18曲)
Kroi「3rd EP 『STRUCTURE DECK』Release Tour “DUEL”」 from 2021.03.27 Shibuya WWW X
01.Noob
02.Finch
03.Monster Play
04.Suck a Lemmon
05.dart
06.Mr.Foundation
07.flight
08.侵攻
09.Never Ending Story
10.MAMA
11.Polyester
12.risk
13.Custard
14.Page
15.HORN
16.Network
17.Fire Brain
18.Shincha

[初回生産限定 封入特典]
オンラインライブ「Kroi “LENS” Acoustic Studio Session」視聴シリアルコード
開催日時:2021年7月7日(水)20:00~
イベント内容:Acoustic Studio Session
(※アーカイブは2021年8月31日(火) 23:59までご視聴いただけます。)

■<Major 1st Album「LENS」Release Tour「凹凸」>

※全会場ソールドアウト

2021年
7月4日(日)北海道・PLANT
7月10日(土)横浜・FAD
7月11日(日)千葉・LOOK
7月16日(金)大阪・バナナホール 
7月18日(日)名古屋・SPADEBOX
7月30日(金)福岡・DRUM Be-1
8月1日(日)京都・KYOTO MUSE
8月6日(金)東京・CLUB QUATTRO
【追加公演】
8月27日(金)東京・LIQUIDROOM

前売り:自由 3,800円(税込、ドリンク代別)
チケット受付URL:https://w.pia.jp/t/kroi-t/
※ご来場に関する注意事項など最新情報を公式サイトにて必ずご確認ください。公演前に発表する注意事項をご確認の上、ご来場をいただきますよう、お願い申し上げます。
※当日は新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインを遵守し、然るべき安全対策を講じた上で開催されます。

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