【インタビュー】HISASHI(GLAY)が迎えた変化「子どもっぽいあがき方はもう終わった」

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コロナ禍の中でもバンド活動を止めずリモートレコーディングを推し進め、2年がかりで仕上げた16thアルバム『FREEDOM ONLY』。10月6日のリリースに向けて、GLAYは5月から5か月連続配信を実施。8月18日にその第4弾として世に送り出す「BAD APPLE」は、同日59thシングルとしてフィジカルパッケージとしてもリリースされる。

◆ミュージックビデオ

タイトル曲はアレンジャーにTomi Yoを初起用し、和の情緒と最新鋭のエレクトロサウンドを融合。カップリングには、「SHINING MAN」の他、GLAYの4ヵ月連続配信ライブシリーズのうち、HISASHI(G)がプレゼンターを務めた第2弾<THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK RESONANCE vol.3>から2曲の音源を収録。かつ、M5「Angelus」はデビュー前のGLAYがライブハウスで披露していた超レア曲で、音源の再構築・アレンジを手掛けているのはやはりHISASHIである。

自分らしさのアピールを控えた、と本人が控え目に語るシングルでありアルバムなのだが、 HISASHIの“色”は決して埋没することなく明確に感じ取ることができるし、それはTERU、TAKURO、JIROに関しても同様であることに気付かされる。デビュー27年目に突入しているGLAYは今、各メンバーの自分らしさがごく自然な形でGLAYらしさに昇華する、そんな新章を迎えているのではないだろうか? 

時には逸脱したり蛇行したりしながら、オリンピック開会式の直後という時世ならではのリアルな心情吐露も含め、HISASHIの口からは多岐にわたるエピソードが語られた。あちこちを流れる河が海へと辿り着くかのように、すべてが“今のGLAY”を紐解くヒントとなる、そんな手応えを感じるインタビューとなった。

   ◆   ◆   ◆

■今のこの現状が音に反映している
■そういうのがGLAYらしくもあり、人間らしくもあり


──HISASHIさんは「BAD APPLE」のデモを最初に聴かれた時、どう受け止められましたか?

HISASHI:僕が最初に聴いたデモは、Tomi Yoさんがもう既にアレンジをしていた段階のもので、かなり完成度が高くて。そして、今GLAYに必要な要素というか、新しい面が前面に出ていると感じましたね。時代と共に音の移り変わりがあると思うんですけども、GLAYはそういった音楽だったり、テクノロジーだったりと上手く付き合いながら調和して、順応していきたいなと思っているので。そういう意味で言うと、GLAYがまたすごく大きな一歩を進んだ感じがしましたね。

──Tomi Yoさんによるアレンジ後のデモを聴かれて、HISASHIさんがギターのフレーズを新たに考えたり、変えたりする作業もあったのでしょうか?

HISASHI:でも、ギターアプローチに関して言うと、ほぼすべての曲において “自分らしさ”というものをあまり変えずに、作品と共につくりあげることができた気はします。それはやっぱり、アイドルに楽曲を提供したり、プロデュースしたりという経験が自分のスキルに繋がっているのかな?とも思いますし。“弾いてみた”(ニコニコ動画)とかも僕はやっていますけれども、そういった自分に対する課題が積み重なって、今ではどんなタイプの楽曲が来ても“自分らしさ”が抜けないような、そんなアプローチになってきたんじゃないかな?と思いますね。

──では「BAD APPLE」に関して、HISASHIさんが何か新たに挑戦したことはなかったですか? 

HISASHI:そうですねぇ……やっぱり一番良くないのが、Tomi Yoさんの世界を無理矢理GLAY色に変えてしまうことで。GLAYは長年このメンバーでやってきたので、 もちろんいい意味でも、でも悪い意味でも結構“GLAY印”が勝手に押されてしまった楽曲になることがあると思うんですよね。どんな新しいことに挑戦しようにも、俺がギターを弾いたら“すごくGLAYっぽい感じ”になっちゃったりするので。だからあえてGLAY色をわりと抑え目で弾いた感じはありますね。



──そうだったんですね。「BAD APPLE」には“疫病”に“やまい”とルビを振って歌われていますし、オリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』の歌詞には昨今の時世を反映した言葉も多く見受けられます。そういった点についてはどう受け止められたのでしょうか?

HISASHI:このコロナ禍で制作されたオリジナルアルバムということで、すべて受け容れていくしかない今の状況だったりとか、いろいろな困難なことがあるということを、GLAYの作品を聴いて振り返られるようなものになったら、それがGLAYがこの数年間活動してきた意味だな、と思います。だから、何年か後にこのアルバムを聴いたら、「あの頃は大変だったね」と言いながら思い出せるような……今の段階が最低レベルであってほしいな、というかね。そういう楽曲のイメージになれたらなって。リモートレコーディングというのもやっぱり、レコーディングという作業に影響を及ぼすんですよ、実は。例えば「ここのソロは誰が弾くんだ?」とか、スタジオにいたらすぐ解決するようなことも、リモートではなかなか難しかったりするから。そういうのも僕らの中で後から笑い話になっているし、“こんな時期じゃないとできない”こと、想いがこのアルバムに詰まっていて。それを無理して排除するんじゃなくて、2020年、2021年のこの感じをオリジナルアルバムの要素の一つとして入れていければな、と。レコーディングというのは、音だけじゃなくて雰囲気とか匂いとか色とか風景とか、そういうものも込めることができると思うんですよね。だから、どこか前向きなんだけど、今のこの現状が音に反映していて。そういうのがGLAYらしくもあり、人間らしくもあり。そういうものを隠さずにつくれたんじゃないかな?と思いますね。

──雰囲気、現状という意味では、TERUさんが東京ではなく郷里・函館に構えたスタジオでヴォーカル・レコーディングをされていて。その空気感が作品に封じ込められていたり、HISASHIさんに影響したりする部分もあるんですか?

HISASHI:まさに函館スタジオというのも、最近のコロナ禍であったり、TERUの想いが函館に向いていたりという、今の“時代”をすごく象徴することだと思うしね。元はと言えばTERUとTAKUROから始まったGLAYなので、“二人で作り上げている感じ”が出ればいいなと今回は思ったんですよ。僕はほぼ全曲自宅でレコーディングして、パートで言うとスタジオに行ったのはアコギ1曲を弾く時ぐらいだったんだけども。TERUの函館スタジオと、僕がレコーディングしている自宅スタジオの温度感もやっぱり、全然違うから。僕の場合、ギターは家でデスクトップに向かってミックスしながらレコーディングするんですけども、それがスタジオワークではなかなかできなくて。僕のそういった立ち位置は、このアルバムでTERUとTAKUROがやっている作業とはほど遠いところがあるんです。でも、そういうのがむしろ、すごく今っぽくていいんじゃないかな?と思いましたね。

──様々なレコーディングの手法、場所が混在していて、これまでにあまりない貴重な作品の生み出され方をしてるんですね。

HISASHI:そう。あと、今回は亀田(誠治/アレンジャー兼プロデューサー)さんに楽曲が渡る前に、僕やTERUに対して「原型をつくってくれないか?」というお願いがTAKUROからあったりもして。アレンジの基礎を仕上げるという段階を、メンバー全員ではなくてまずはメンバーの誰か一人がする、という作業もあったんです。まぁコロナ禍ということも影響しましたけども、そういうこともあって、よりパーソナルな着地点に至ったというか……何だろうな? すごくインディーズっぽいっていうか。いろいろなところに所属してない頃の僕ら、みたいな(笑)。そういったメンバー間のやり取りがあったのは、大変だけど助け合っていこう、みたいな絆を感じることではありましたね。

──アルバム『FREEDOM ONLY』を通して聴かせていただきました。HISASHIさんがアレンジの基礎を担当されたのは「Hypersonic」と「Winter Moon Winter Stars」ですか?

HISASHI:あとは「青春は残酷だ」を、ホーン入る前(の段階)まではやってましたね。

──「Hypersonic」の冒頭のあの「イエーイ!」という賑やかな掛け声は……何でしょうか(笑)?

HISASHI:あれはね、ほんの5日前ぐらいですよ? 函館にいるTAKUROから、「頭にフレーズが欲しい。どっかから素材探してつくってくんない?」みたいなことを言われて。もうオリンピックが始まるっていう忙しい時にね(笑)。何かふと思いついたんでしょうね。それで、僕はiPhoneからビデオを探すわけですよ。意外とGLAYメンバーを撮ってないんだなということにも気付いたし。氣志團の綾小路翔やんのバースデー向けにスタジオで撮ったムービーがあったんですけども、そのテイクから抜粋して使いましたね。

──GLAYの皆さんの仲の良いムードが、あの一瞬から伝わってきました。

HISASHI:アレンジから何から、ギターのアプローチも含めて「これはもう、このままやるしかないよね」という感じでしたね。その曲に合わせる答えって一つなんじゃないかな?と思っています。いろんなアレンジ・ヴァージョンがあってもいいのかもしれないけども、今回の「Hypersonic」に関しては、メンバーがそれぞれ同じ方向を見ている感じがすごくしますね。

──「Winter Moon Winter Stars」は90年代に特徴的なギターサウンド、バンド・アンサンブルへのオマージュと言いますか、HISASHIさん色が濃く出ていますよね? 

HISASHI:TAKUROからいろいろ言われたんですよ。レベッカだとか、80年代に僕らが聴いてたようなテイストにしたいっていうリクエストがあって。マイナーメロディアスな曲調のデモで、「どうやってこの1曲を楽しもうかな?」とか、僕なりにいろいろと考えたんですけども。そこで、まさに90年代初頭にめちゃくちゃ影響を受けたLUNA SEAの存在が思い浮かんだんです。「この曲、LUNA SEAっぽくしたらすごくカッコいいんじゃないかな?」って。今では、僕らのようなヴィジュアル系出身とかではないバンドも、LUNA SEAの影響をすごく受けていると思うし。バンドの印象を決定付けるのって、リズムとか休符、ヴォーカルの譜割だったりとかするんですよ。曲が似てる、似てないとかは実は関係なくて、そのバンドの癖なんですよね。GLAYにもちょっと16ビート寄りだったりするとか、そういう癖ってすごくあるし。そういう一つ一つを細かく調べて。特に初期のLUNA SEAの抜き方とか休符の置き方とか、ギターの跳ね方とか、そういうものを自分なりに考えて、受けた影響をそのまま表現しましたね。

──90年代感は、「BAD APPLE」のカップリングに収録されているライブ音源「Angelus」にも共通して漂っています。GLAY黎明期の超レア曲で、4ヵ月連続配信ライブ第一弾<THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK 魁☆照男達(シャイニングメン)>で披露。あの曲も、TAKAUROさんからのリクエストでHISASHIさんがアレンジされたと伺いました。

HISASHI:そうなんですよ、音源がもう手元にはなくて。函館の友達ぐらいしか持ってないんじゃないかな?と思うんですけど(笑)。結局動画サイトで探したらあったので、それを元にコード分析したりして、「今のGLAYだったらどういうふうにするかな?」って。93年ぐらいの曲ですからね。ダークな感じで、様式美的なサビの抜けるメロディーがあったり。TAKUROからは「ツインギターのソロは必ず入れてほしい」と言われました。



──X JAPANの「WEEK END」のイメージがTAKUROさんの中にはあったようですが、加えて、88年あたりのBUCK-TICKの匂いもするように感じました。

HISASHI:あぁ~(笑)。X JAPANの曲の中でもhideさんの曲が好きだったので、そういったメタル一辺倒ではないエッセンスに触れて、「どんな音楽を聴けばこういう楽曲になるんだろう?」と思い、遡ってBauhaus(※イギリスのゴシック・ロックの始祖的バンド)とかを聴いていた頃のことを思い出しましたね。

──「Angelus」には(3Xdecade Boost Mix)と付記されていますが、<照男☆達(シャイニングメン)>のライブ音源そのままではないということですか?

HISASHI:ネーミングについてはDJ Massくんがしてくれたので、俺もよく分からないんですよね(笑)。カップリングには、僕がプロデュースした日(<THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK RESONANCE vol.3>4月29日/東京キネマ倶楽部にて開催)のライブ音源も入るから、そのままだと永井(TOSHI NAGAI/GLAYのサポートドラマー)さんのドラムが生過ぎて混ざらないんじゃないか?ということで。当初7・3の比率だったドラムとMassくんの音とのバランスを変えて、<RESONANCE vol.3>の方向に寄せてもらうようにしたんです。生ドラムにMassくんのテイストをプラスする、というアイディアですね。



──「シューゲイザー(Gray Grow Mix)」、「妄想コレクター(HSMS Reconstruct Ver.)」はいずれもHISASHIさん楽曲で、先にお話しいただいたように<RESONANCE vol.3>のライブ音源です。これらを今回シングルに収録しようというのは、いつ決まったんですか?

HISASHI:ライブ後に、「今回の「〇〇」のアレンジ良かったよね、作品にしてリリースしたいね」という話をみんなでしていたんですよね。配信ライブで披露してるから、公式の音源としては(パッケージとしてのシングルの)付加価値としてこれを音源化しましょう、と。もともとは1曲の予定だったんだけど、TAKUROが「シューゲイザー」がすごく良かったと言って加わって、その2曲になったはずですね。

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