【インタビュー】Dannie May、最新作『ホンネ』と『タテマエ』は表裏一体

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2019年8月にEP『暴食(グラトニー)』から精力的にリリースを重ねる“コーラス系バンド”Dannie May。人なつっこい旋律を巧みに歌い上げるマサ(Vo, G)、その楽曲をユニークなアレンジで彩る田中タリラ(Vo, Key)、二人とコーラスを分け合いつつMVも手がけるYuno(Cho, Kantoku)の3人は、「ポップとマイナーの境界線」をキャッチフレーズに、バンドとしての成長と軌を一にして順調にファンを増やしている。

8月25日にサブスク配信がスタートした最新作『ホンネ』は通算4作めのEP。7月14日にCDで先行発売されたので、すでに聴いている方も多いだろう。6月30日にデジタルリリースされた『タテマエ』と対をなしていることはタイトルを見れば明らかだが、2作品の違いはどうも単純な“コントラスト”ではなさそうだ。『タテマエ』と『ホンネ』にどんな思いをこめたのか、3人に根掘り葉掘り聞いてみた。

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■ホンネとタテマエを再解釈する

──今回、10曲入りのアルバムではなく5曲入りのEP2枚に分けた意図は何ですか?

マサ:最初は5曲で1枚EPを出そうって話だったんですけど、、周りに「Dannie May曲書けるし、もう5曲いっちゃおう」と提案されまして(笑)。どうせならただ5曲ずつに分けるんじゃなくて、何か僕らの思いのあるところで曲を書きたいよね、っていうことで、Yunoがテーマを提案してこの2枚になりました。日本ってタテマエ文化みたいなところがありますけど、ネットの時代になって匿名性が担保されて、ホンネが言いやすくなったところもあるじゃないですか。アナログとデジタル、タテマエとホンネの再解釈というのがテーマですね。

──曲は全部できてから割り振ったんですか? それとも分けるつもりで作った?

マサ:できた後に振った曲もあったよね。

Yuno:あったね。半々ぐらいかもしれないです。

マサ:リード曲の「適切でいたい」(『タテマエ』)と「ええじゃないか」(『ホンネ』)は最初から分けてましたけど、「万年青」(『タテマエ』)とか「負け戦」(『ホンネ』)みたいに、制作の途中に考えながら分けていったのも多いです。後半は悩みましたね。

▲Dannie May/『タテマエ』

▲Dannie May/『ホンネ』

──タテマエは薬でホンネは毒、みたいなイメージがありますが、必ずしも白黒つけた分け方にはなっていませんよね。どちらにも両方の要素があるというか。

マサ:タテマエに関して言うと、人を傷つけたくないという優しさから口にするタテマエなのか、保身のためのタテマエなのかで全然違うと思うんです。例えば「万年青」はそういう優しさとしてのタテマエみたいなのをテーマに書いた曲だったりしますね。結局、タテマエもホンネも使い方次第なのかなって。

Yuno:この曲は『タテマエ』、この曲は『ホンネ』……と分けていく中で、どっちとも取れる曲があったんですよね。そこで気づいたのは、やっぱり表裏一体なんだなと。なので僕らとしては、この曲を『タテマエ』に入れる意味、この曲を『ホンネ』に入れる意味、という感じで分けていきました。

──当然ながら一筋縄ではいかないわけですね。

Yuno:フタを開けてみると意外に『タテマエ』のほうがエグみのある曲が多い気がするんですよね。さっきマサが言ったみたいに、保身でタテマエを言うこともあるけど、守りに入ることで自分にウソをついて傷つくこともあるだろうし、ホンネには純粋なイメージがあるけど、純粋さゆえに人を傷つけてしまうこともあるだろうし。そういう気づきがあって、大変でしたけど面白い作業でした。

──マサさんの曲が6曲、タリラさんが4曲。二人とものびのび曲を書いて歌っているように聞こえて、ますます自信がついてきたように感じられました。

マサ:歌ってても気持ちいい曲が書けた気はしますね。曲もけっこう振り切って作れたし。リード曲の「適切でいたい」と「ええじゃないか」は「こういう曲にしよう」って一点突破でいかないとこうはならないというか。それをやり切れたのはよかったなと思います。

──その2曲は明確なイメージがあったんですね。

マサ:「適切でいたい」は学校生活をテーマにすることが決まってたので、僕が学生時代に感じてたモヤモヤみたいなものを、思い切ってマイナー調でぶつけました。「ええじゃないか」のほうは、「灰々(はいばい)」か何かのMVの撮影帰りにみんなでモーニング娘。を聴いて「やっぱすげえな」ってなったことがあるんですよ。あれぐらいギミック盛り盛りのライブ曲を、と思って作った曲ですね。



──その対照はそれぞれのMVに反映されていますね。両方ともアニメだけどイメージは正反対で、かつ共有している部分もあるのが面白いです。

Yuno:ホンネとタテマエに表裏一体な部分や交わる部分があるように、MV同士をちょっとクロスオーバーさせたいなと思って、ひとつ大きなストーリーを書いて視点を二つに分けたんです。「適切」は学校生活で感じたフラストレーションを生のままぶつけてくれそうなアニメーターさんを探して、僕らよりずっと若い“提供わたし。”さんにお願いしました。一方の「ええじゃないか」はホンネ社会で生きる社会人の視点から書いてるので、学校よりもっとエグい実社会で生き残っている方にお願いしたいと思って、キャリアのあるカンタロさんにお願いして、対比を作ったんです。

──タリラさんとマサさんはMVについてはどうですか?

タリラ:実写だとやっぱり制約があって、Yunoのイメージを100%実現させるのが難しかったんですよ。その点、アニメーションだとアニメーターさんとちゃんとコミュニケーションできればそれを伝えられるから、Yuno自身もめちゃくちゃ納得のいくものになったと思います。俺らも脚本を読んで「これができたらすごいね」って言ってたんですけど、そのままできたんじゃないかなと。

マサ:モノが足りないとか時間がないみたいなことがなく2本ともできてるんで、余すところなくYunoの世界観を伝えられたかなって思います。なにしろこれまでは僕の家で3回ほど撮ってますからね(笑)。

Yuno:「この曲が人生最後の僕の代表曲だったら」と「夢花火」か。あと『DUMELA』のティーザーもマサの家で撮りました(笑)。

──YouTubeでMVを見ると、固定コメントでYunoさんがざっとコンセプトを説明して、コメント欄でいろんな人がそれに返したりしていて、対話の場みたいになっていますね。

Yuno:今回ようやく、僕が何も言わなくても意図したところにたどり着く人が増えてきたと思います。実写だとすべて意図通りにするのは難しかったし、せっかく歌詞とリンクさせたりしているので、見てくれる人にそれを伝える方法はないかなってずっと考えてたんですよ。僕が動画で解説するっていう案もあったんですけど、監督が自分で作ったものの意図を丁寧に解説するのってヤボじゃないですか(笑)。僕はそれがイヤだったから、じゃあ何か代替案を、ってことでああいう形になりました。

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