【インタビュー】果歩、“きみ”と過ごしたいろんな街を思う新EP

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昨年は3ヶ月連続でデジタルリリースした楽曲を含む弾き語りEP『女の子の憂鬱』を発表し、アコギ1本と歌で確かな存在感を打ち出した果歩。今回の新作EP『きみと過ごした街のなかで』には約2年ぶりにバンドでレコーディングされた5曲が収録されていて、全ての楽曲のアレンジは、数々のアーティストとの共演で知られるギタリストのひぐちけいが手掛けている。爽やかなグルーヴ感をキープしたサウンドと、私小説のようでありながら、きっとあなたのそばにもあったであろう時間や風景が重なっていく歌詞。聴き手の心の中でずっと発光しているような彼女の音楽に、ぜひ触れてみてほしい。

   ◆   ◆   ◆

■全部立ち会って、ひとつひとつの音に向き合うことができた

──新しいアー写、めちゃくちゃ可愛いですね。絶妙な距離感というか関係性みたいなものが表現されている気がします。

果歩:やったぁ(笑)。いつも撮ってもらっているカメラマンさんにお願いしたんですが、"彼氏目線"みたいな感じらしいです。ジャケットも同じ方なんですが、今回のEPのタイトルと曲からイメージして撮ってもらいました。

──レコーディングなども含め、作業はどうでした?

果歩:順調でした。今年の初めごろにそろそろ作ろうかなと思い、3月くらいには曲の候補をバーッと出したんですね。で、そこからアレンジを誰にやってもらおうかという相談を始め、6月にレコーディングでした。

──今回は全曲バンド編成で、アレンジは全曲ギタリストであるひぐちけいさんですね。

果歩:はい。去年弾き語りでやったこともあって、今年はバンドでやりたかったんですね。サウンド的には、最初のEPの『光の街』のような、ライブハウスでのバンドサウンドみたいな感じで。それで、ひぐちけいさんにお願いすることになりました。けいさんは、私の20歳の誕生日のワンマンライブでギターを弾いてくれたことがあるんですけど、そこからすごく良くしてもらっていたし、けいさんの音楽はすごくかっこいいから、全部お願いしてみたいなと思って。けいさんは私がこんな感じでゆるっとしているのも知ってるから(笑)、それを踏まえた上で、私の意図も汲んで、形にしてくれました。

──バンドでのレコーディングはどうでした?

果歩:楽しかったです。メンバーはけいさんがギターで、ドラムがナガシマタカトさん、ベースはなかむらしょーこさん。5曲を5日間で録ったんですが、私、5日もスタジオに通ったことがなかったんです。

──これまではどんな感じだったんですか?

果歩:『光の街』はみんなで一気に合わせてやる感じだったから2日くらいで終わったし、『水色の備忘録』はバンドで録ってもらったものを歌うっていう感じだったんです。今回は基本的には1人ずつ録っていくやり方だったんですが、5日間私も全部立ち会って、ひとつひとつの音に向き合うことができたんですよ。自分はギターと歌しかやってこなかったから、正直細かい音の違いとかわからない部分もあったんですが、すごくいい経験になりました。

──EPのリリースに先駆けて「きみの住む街」の配信もスタートしましたが(※取材時)、聴いた方からの反響はいかがですか?

果歩:たくさんの感想をいただいてます。前回が弾き語りだったこともあって、そのイメージが強かったからか「バンドサウンドもいいですね!」っていう声はやっぱり多かったですね。「ライブが楽しみです」とか。

──弾き語りとバンドサウンド、同じ熱量でやれるのは果歩さんの強みだなと思います。

果歩:ありがとうございます。私自身曲を作る時に、これはバンドでやりたいとかこれは弾き語りでやりたいっていう明確なイメージみたいなものがちゃんとあるし、じゃあバンドでって考えた時に一緒にやってくれる人がいるっていうのは本当にいいことだなと思っていて。最近特に弾き語りでもバンドでもライブに呼んでもらえるようになって、ちゃんとそういう部分が伝わっているのかなと思うと、やってきてよかったなって思いますね。

──では今回のEP『きみと過ごした街のなかで』について伺っていきたいのですが、このタイトルそのものがテーマのような作品かなと思いました。

果歩:そうですね。今回は"きみ"と過ごしたいろんな街──自分の住んでるところとか、いつも行くバイト先の街、よく一緒に飲みに行く街とか、その街その街で出来た曲が多かったなという印象だったのでこのタイトルをつけました。自分が何かを感じ取った景色はできるだけ忘れたくないなと思うから、いつも「いいな」と思ったものは曲にして忘れないようにしているんです。

▲『きみと過ごした街のなかで』

──「東京」という、ストレートなタイトルの楽曲もありますね。

果歩:私、「東京」という曲を作りたいなと思っていたんです。上京してから4年間、ずっと。いろんな人が「東京」っていう曲を作っていると思うんですけど、その人にとってすごく大切なものが多かったりすると思うし、やっぱり名曲が多いなってイメージなんですよね。自分が今まで書いてきた曲の中には「(仮)東京」というタイトルのものがいっぱいあるんですけど(笑)、やっぱり違うなって消したものもいっぱいあって。でも今回は、やっと「東京」っていうタイトルがつけられるなって思ったんです。

──なるほど。

果歩:タイトル先行じゃないけど、タイトルは絶対に「東京」にしたいと思っていたものがそもそもあった中で曲を作ってピッタリきたっていう意味では、すごく自分にとって特別ではあるかなって思いました。

──歌詞についてはどうですか?

果歩:「東京」の歌詞は実話なんですけど、この曲を作っていた時にすごく好きだった人がいて。この先もずっと一緒にいたいって、そんなふうに思ったことって今までなかったんです。その人と見た景色って、すごく特別なものが多かったんですよ。大切なことって、今までは曲にして覚えておくことが多かったけど、曲にしなくても覚えておきたいことがたくさんあったから、日記をつけることにしたんですね。忘れないようにたくさん書き貯めておいたものを見ていたら、これはいい曲が書けるかもしれないなと。完全にその人との思い出ばかりなんですが、あぁ、これが私にとっての東京の景色だなって感じがしたんですよね。その人に出会うためじゃないけど、こういう気持ちをもらってこの景色を見るために私は東京に来たのかもしれないなと。今まで東京に来て辛かったこととか、うまくいかなかったこともたくさんあったけど、嫌なことばかりじゃないなと思って、昔の私に対して「もうちょっと頑張ったらいい景色が見られるよ」って思いながら書いた曲なんです。

──この曲を、東京のライブハウスで歌う時はどんな気持ちになるんでしょうね。

果歩:泣いちゃうかもしれないですね(笑)。でも楽しみでもあります。やっと「東京」というタイトルの曲を歌えるなって思うから。自分がちゃんと納得した曲を歌えるのも、こうして出せるのも嬉しいし。

──以前「街と花束」という曲について話していた時、その時点での東京観を聞いたら「渋谷と新宿は苦手」と言われていましたが、最近はどうですか?

果歩:それは変わらないけど(笑)、前みたいに毛嫌いしているわけじゃないんですよね。例えば渋谷でも神泉あたりまで行くとか、新宿の花園神社や2丁目あたりになるといろんな気持ちがある街なんだろうなって思えるようになったりして。これからも東京にはしばらく住んでいるだろうし、いろんな経験をしていく大切な街であることには変わりはないので、東京という街を歌う曲はきっとこれからも増えていくだろうなと思います。タイトルに困っちゃいそうだけど(笑)。

──「東京」、作っちゃいましたからね(笑)。

◆インタビュー(2)
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