【ライブレポート】オメでたい頭でなにより、「くだらんことで笑える場所、それが俺たちの作りたい場所」

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オメでたい頭でなによりが、8月29日に東京・USEN STUDIO COASTにて結成5周年ワンマンライブ<5周年だョ!全員集合>を開催した。

◆ライブ画像(13枚)

オフィシャル抽選先行限定で販売されたコンボチケットを購入した人々は、本編スタートより1時間早く入場。4月から7月にかけて全国を巡った<オメでたい頭でなにより ワンマンツアー2021〜今 いくね くるね Ⅱ TURBO〜>にも登場したバンド「お目出たズ」のオープニングアクトを楽しんだ。まずはその様子からレポートする。


「オメでたい頭でなによりのコピーバンド歴15年」という華々しい経歴を誇り、「片手ピースがトレードマーク」であるお目出たズのメンバーたちは、「IMITATION BLACK」をSEに登場。両目がギョロリと飛び出しているものの、全員の風貌がオメでたい頭でなによりのメンバーたちとどことなく似ているのは、コピーバンド歴15年である彼らの同バンドに対する並々ならぬリスペクトを窺わせた。324似の男(Vo)、赤飯似の男(G)、ミト充似の男(G)、ぽにきんぐだむ似の男(B)、mao似の男(Dr)……なんとなくパートを入れ替えたオメでたのようにも感じる瞬間があったが、おそらく気のせいだったのだと思う。

「俺たちがお目出たズです! 今日は僕たちがオープニングアクトを務めさせていただくことになりました。そんな光栄な、記念すべき日にぶち上るのにふさわしい1曲目を用意してきたので、聴いてもらっていいですか?」と324似のボーカルがオメっ子(ファンの呼称)たちに呼びかけてスタートしたのは海援隊のカバー「贈る言葉」。メンバー各々がソロで歌う場面も交えつつ、会場内を生温かいムードで包んでいった。


その後、ドラムが刻み始めたリズムに合わせて赤飯似の男が奏でた印象的なギターリフ。[Alexandoros]の「ワタリドリ」の演奏が始まるのかと思ったのだが……「そんなの予定になかっただろ!」と制止する324似のボーカル。それでも再びドラムがリズムを刻み始めて「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」が唐突に始まってしまい、もはや何が何だかわからない混沌状態が加速していく。しかし、メンバー内でテンポ良く重ねるボケとツッコミが、オメっ子たちをどんどん和ませていた。


そして、途中で意表を突く発表もあった。なんとお目出たズのメジャーデビューが決定したというのだ。「9月29日 メジャーデビュー決定!」と書かれた紙がクス玉の中から勢いよく垂れ下がるべきなのに、丸まったまま全然開かない……というトラブルがあったものの、どうにかこうにかメジャーデビューが発表されると、オメっ子たちは拍手で祝福。早速披露されたメジャーデビュー曲のタイトルは「メジャーデビュー曲」。このふざけたタイトルには、オメでたのメジャーデビュー曲が「鯛獲る」だったことに対するリスペクトが込められているのだろう。

そんな彼らのオープニングアクトは、オメでたのカバー「オメでたい頭でなにより」で締め括られた。「まだ半人前なのでシングルピースをもらっていいですか?」という324似のボーカルの呼びかけに応えて、ピースサインを掲げたオメっ子たち。様々な小ネタの連発で楽しませてくれたオープニングアクトであった。


オメでたのライブで恒例となっている舞台転換中のラジオ番組風の音声『オメでたい頭でなにより 赤飯のオールナイト転換』が流れた後、いよいよ本編がスタート。5年前に新宿ReNYで行われた1stライブの模様や様々な曲のミュージックビデオの断片によって構成されたオープニングムービーを経て、赤飯、ぽにきんぐだむ、324、mao、ミト充がステージに登場した。

彼らが最初に届けてくれたのは「ふわっふー」。この意味に気づいた人は、かなりのオメでた通だろう。実は5年前の1stライブのオープニングもこの曲だったのだ。“ふわっふー”という赤飯の歌声に合わせて一斉にジャンプするオメっ子たちのエネルギーが、早くもものすごい。客席で声を出すことができない状況ではあるが、人々が飛び跳ねる風景はやはり楽しい。生で音を噛み締められるライブには格別な喜びがあるのだと改めて実感させられた。

真っ赤な炎が燃え上がるかのような爆音を轟かせた「日出ズル場所」。「何気にコースト、初ワンマンですか? そして5周年でございます! 5周年ワンマン、獲ったどー!」という赤飯の言葉と共に、すさまじいクライマックスへと雪崩れ込んだメジャーデビュー曲「鯛獲る」も届けられて、会場内は清々しいムードで満たされていた。

そして、VIPルームにいる豪華ゲストが紹介された最初のMCタイム。「あれはあの大国の歴代の大統領ではないか! その隣には某大物3人組アーティストもいる!」と、VIP(の姿を模したパネル)をみんなで大歓迎するシュールなひと時を経て、演奏は再開された。STUDIO COASTの名物である巨大ミラーボールが光の粒子をキラキラと放ち、会場に集まった人々を祝福していた「VIVAハピバ」。軽快な手拍子を巻き起こした「ピーマン」。陽気なサウンドがオメっ子たちを包み込んでいく様が、とても心地よかった。


ローラースケートの練習に打ち込んだ汗と涙の日々をメンバーたちのインタビューと共に紹介するドキュメンタリー映像『オメでたい陸』がスクリーンで流れた後にステージに現れたメンバーたち。スタートを披露したのは、言うまでもなく「推しどこメモリアル」。ローラースケートを使った5人のパフォーマンス、各々の歌の味わい深いソロパートが、往年のアイドルソングへのオマージュとなっていた。


そして、メンバー5人がヲタ芸的なダンスを踊る「推しごとメモリアル」も披露されたのだが、特殊ソングがさらに続いてびっくり。「俺たちがこの5年間の活動を通して、今日、この5周年を迎えるために作ったと言っても過言ではない!」という赤飯の叫びと共に、つボイノリオの名曲のカバー「金太の大冒険」がスタートすると、ゆっくりと下降してきた2つのミラーボール。黄金色の球体に挟まれながら時には朗々と、時には激しく歌い上げた赤飯は、紳士的でクレイジーなエンタテイナーぶりを発揮していた。

「5年間、好き放題やらせてもらってます。この状況になってから我々ができること、やらなきゃいけないことをたくさん考えて、やっぱり我々はくだらないことで笑ってもらう時間を作るのが“できること”だし、“やるべきこと”だと思いました。「金太の大冒険」をカバーしたのも、そういう理由があったからです。ただふざけてるわけじゃないです。俺たちはただ笑われてるだけじゃない。この2年間でいろんなものが変わりました。けど、俺たちとここにいるみんな、変わってないものが絶対に1つだけある。それが“NO MUSIC NO LIFE”」


ぽにきんぐだむの言葉を添えて披露された新曲「NO MUSIC NO LIFE」は、コロナ禍の中で抱いた想いを生々しく浮き彫りにしていた。続いて、赤飯バンド時代の曲にオメでた版のアレンジを施した「あれこれそれどれ」も届けられて、オメっ子たちの手拍子は激しさを増すばかりであった。

「オメでたはいろんなきっかけを与えてくれてるなあって思います。オメでたを通じてみなさんとも出会うことができました。改めて、今日来てくれてありがとうございます。気合い入れてやってかなあかんなと思ってます。何があるかわからんってずっと思ってたけど、ほんとこんなことになるとは思ってなかったですよ。だからって心腐らせてもしゃあないし、やるしかないんですよ。なあ、324くん?」(赤飯)
「せやな!」(324)

真面目に想いを語っていると思ったら、突然324に話を振った赤飯。「やっぱ324くんの“せやな!”には説得力があるなあ。きみのギターソロが聴きたい」という赤飯の言葉を受けて「俺の感情のギター!」と叫んだ324は、華麗なギターソロを披露した。そして、その勢いのまま「頑張っていきまっしょい」がスタート。熱いサウンドをメンバー全員が一丸となって高鳴らせる様がかっこいい。

ヘッドバンギングの嵐となった「生霊の盆踊り」。大浴場のように沸き立つフロア内で華々しい手拍子が打ち鳴らされた「スーパー銭湯~オメの湯~」。スクリーンに映し出された歌詞の言葉がオメっ子たちの心を鼓舞しているのを感じた「ザ・レジスタンス」。Wピースが客席で揺らぐ風景が、かけがえのないものをまざまざと示してくれた「オメでたい頭でなにより」……次々と届けられた曲たちは、どれも強烈な印象を残してくれた。

「今日は来てくれて改めてありがとう。ほんと白状するけど怖くて怖くて仕様がないわけ。だって、あんなに当たり前に身体をぶつけ合って、汗かいてたあの光景がもう1年半も失われてるわけ。このバンドを組んだのもフロアで騒ぐのが大好きだったから。そういうのを1人でも多くの人に知ってもらいたいと思ってこのバンドを組んでライブをやってる。だって、フロアで騒いでる時にまじで“ああ、生きててよかった”って心の底から思うもん。またあの日がいつ帰ってくるのかわからん。もしかしたら戻ってこないと思うとまじで怖い。だって生き甲斐だもん。具体的な答えはどこにもなくて……俺らができることって、お前らとライブするしかないねん。来たくても来られなかったやつがおるってツイッターで見て俺らめちゃめちゃ悲しい気持ちになったよ。でも、だからって止めるわけにはいかん。俺らができることってライブしかないねん! だから俺らはそういうやつらのためにも、きみらがいつでも帰ってこられる場所を守るためにも、ライブを続けようと思う。1年半、やりたくてもやれなかった曲をやりたい。ここに来てくれてるやつ1人1人と乾杯するつもりでこの曲をやりたい。俺たちの我慢し続けた1年半に、俺たちの5周年に、俺たちの守るべきこの場所に乾杯させてくれ!」


赤飯がオメっ子たちに呼びかけて、ラストに届けられたのは「乾杯トゥモロー」だった。イントロが鳴り響く中、エッチな模様に見えなくもない家紋が染め抜かれた旗を振った324とmao。ビールジョッキ型のバルーンを掲げたぽにきんぐだむ。銅鑼を打ち鳴らしたミト充。全く恥ずかしがることなく“Cin Cin”と熱唱した赤飯。5人それぞれが全力を尽くす様が眩しい。

「くだらんことで笑える場所、それが俺たちの作りたい場所だよー!」という赤飯の言葉と共に本編に突入すると、爆音が会場をビリビリと震わせた。掲げられた無数の腕が揺れるフロアは、平和な風景そのもの。今は仲間同士で騒いでグラスを交わすことはできないが、そんな中でも人の心は温かく交し合えるということが証明されていた。

こうして終演を迎えた<5周年だョ!全員集合>。結成5周年を祝福する公演となったのはもちろんだが、ライブというもののかけがえのなさも心底実感させられた。フロアで歌って踊って “思いやりのぶつけ合い”ができるライブを取り戻すまでには、まだ時間が必要なのかもしれない。しかし、音楽を愛するミュージシャンと観客がいる限り、長年に亘って育まれてきた空間は、誰の手によっても奪い去れるはずがない。未来を諦めない意思を示し、再会を誓い合うかのように締め括られたオメでたの5周年ライブは、明日への活力となり得る余韻を残してくれた。

文◎田中大
写真◎ゆうと。

セットリスト

OP.オメでたい後光が射すとき
01.ふわっふー
02.日出ズル場所
03.鯛獲る
04.VIVA!ハピバ
05.ピーマン
06.推しどこメモリアル
07.推しごとメモリアル
08.金太の大冒険
09.NO MUSIC NO LIFE
10.あれこれそれどれ
11.頑張っていきまっしょい
12.生霊の盆踊り
13.スーパー銭湯〜オメの湯〜
14.ザ・レジスタンス
15.オメでたい頭でなにより
16.乾杯トゥモロー

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