【インタビュー】新生ファンキー・モンキー・ベイビーズの覚悟

■「やってみないとわからない」というものをずっと積み重ねてきている

──あと「エール」というタイトルは、「あれ？　前に使ってなかったっけ？」と思いました(笑)。

加藤：まさに俺たちが、そんな話をしていたんですよ。「エールっていう曲、なかったっけ？」って。逆に「何で今まで使わなかったんだろう」みたいな。

──ファンモンといえば、エールソングだったのに。

モン吉：そうですね。

加藤：ぶっちゃけ、「エール」というタイトルは、J-POPフィールド内ではだいぶ手垢のついたタイトルだと思うんですよ。同期のいきものがかりをはじめ、コブクロさん、ゆずさん、GReeeeNさん、同じフィールドにいる人たちはだいたい「エール」という曲を持っているんですけど、結局これも、「どういうメッセージを歌おうか？」ということを話し合って、一周回って応援ソングにたどりついたんですけど、タイトルも一周回って、「今はこんな時代だからこそ」ということと、「ファンモン・イズ・バック！戻って来たぜ！」という覚悟と、退路を断つ思いで、音楽業界の真ん中に旗を立てるような思いですね。もう逃げ道はないですから、「エール」というタイトルの曲を出す以上は。



──誰にどう比較されても、俺たちはこれなんだと。

加藤：そうそう。自分なりの決意みたいなところはあると思うんですよ。このタイトルを、あえて今つけるというところでは。けっこう怖いことではあるんですよね。「エール」というタイトルも、サビの中の「頑張れよ」というフレーズもすごく強いぶん、怖くもあるんですけど、そこはもう「ファンモンだから歌うっしょ！」みたいな思いですね。


──再始動にふさわしい曲だと思うし、またファンモンの歌が聴けることは本当にうれしいです。ただ、ファンキーモンキーベイビーズって、すごく大きな名前じゃないですか。それを出すということは、切り札的な意味もあるだろうし、それって、ずっとソロをやってきたことと比べて、「ファンモンに頼る」というふうに世の中から見られるんじゃないか？という懸念もあるんですね。言い方が失礼で申し訳ないけれど。

加藤：ファンモンの看板ということですよね。

──そう。それと、ソロ活動と、どう両立させていくのかな？と。

加藤：まあでも、個人的には、去年の今頃にはそんなこと（再始動）はまったく思っていなかったのですが、『音楽の日』の反響の大きさを受けて、すごくたくさんの人に愛されたグループなんだなと思ったし、僕のSNSに届く声にも「また見れてうれしいです」という声もあるし、「頼る」というよりは、また別の道がポンと出来た感じですかね。でもその道は決して平坦ではないし、厳しい道だと思うんですけど、ただひとつ、「懐メロミュージシャンにはなりたくない」という思いがあって、「懐かしいね」の一辺倒で終わるのは嫌だし、ファンモンはちゃんと今の音楽業界の、たとえばサブスクの数字とかともちゃんと向き合っていかなきゃいけないんだろうな、というのはありますけどね。

──よくわかりました。再始動ファンキーモンキーベイビーズの次の目標は、何にしましょうか。

モン吉：目標ですか？　気持ち的には、ファンモンでデビューした、途中からと同じような感じですね。自分たちが手を抜いたらすぐにダメになっちゃうから、という感じに近いかもしれない。だから変わらず、楽曲制作もライブも、どっちもしっかりやっていきたいですね。当時もそうなんですけど、「やってみないとわからない」というものをずっと積み重ねてきているので、今もそういう気持ちですね。

加藤：新生ファンモンは、前と違って、ゴールがどこにあるかわからないんですよね。前のファンモンの時は、ケミカルがいずれ住職になるという、ゴールテープをずっと意識しながらの活動だったので、東京ドームでゴールテープを切れたというのは、自分たち的には本当に充実感のあるゴールだったんですけど。今回は、よっぽどのことがない限り、ゴールをまったく定めていないので、それが逆に楽しみですよね。どこにたどり着くんだろう？って。

モン吉：確かに、新たなレースに入った感じはするよね。今までは、ゴールありきのところへ向かっていたけど。


加藤：プロレスラーの武藤敬司さんが、「プロレスはゴールのないマラソンだ」とよく言うんですよ。それに近い感じで、これからいろんな景色を、ゴールをどことは定めないで、その瞬間を一生懸命やって、どこにたどり着いて、最終的にどうなるんだろう？というものが、まったく想像つかないから、逆に楽しみですよね。目標というよりは、その瞬間の景色を精一杯楽しんでいきたいというか。

モン吉：一個一個を楽しみたいですね。前は、マラソンの距離を、100メートル走のスピードで走っているような感じで、周りが全然見えないぞこれは、という状態だったんですけど。

加藤：期間ありきの活動だったから、生き急いだし、せわしかったけど。今回は、もう少し気長にやりつつ、ソロでやりたいなと思ったら、ソロでやればいいということになるだろうし、そこで吸収したものを持って、またファンモンをやればいいと思うし、息長くできるんじゃないかな？という感じはしているんですけどね。その考えは前の時にはなかったし、それは楽しみではありますね。

取材・文◎宮本英夫
撮影◎いわなびとん