【コラム】Da-iCE、最新シングル「Kartell」で表明した決意に迫る

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8月9日に配信リリースされた、Da-iCEの最新シングル「Kartell」。その表題曲は、結成10周年を迎えた彼らの新たな10年への初手として決意表明をした1曲となっている。作詞・作曲を手がけたのは、リーダーの工藤大輝。一度聴いたら忘れられないロックでファンクな力強いサウンドに、エッジィな歌詞が乗っている同曲は、工藤の胸のうちから湧き上がった強烈なメッセージが込められているように感じる。

◆ミュージックビデオ

その思いはサビの締めの歌詞かつ、キャッチコピーでもある「結果で捻じ伏せろ」という言葉にも表れているのではないだろうか。しかも、「Kartell」に関するSNS投稿ほとんどに「#結果で捻じ伏せろ」というタグが付いており、「メッセージを込めた同曲を拡散したい」、「より広い層に届けたい」という気持ちも垣間見える。

同曲の制作に関して、以前工藤はインタビューの中でボーカルのふたりがどうやったらライブで爆発できる曲になるか考えて曲を作ったこと、日本テレビ系で放送されたドラマ『極主夫道』主題歌「CITRUS」のヒットやBLUE ENCOUNTとのコラボ曲「Revolver」を経てロックなアプローチで勝負したいと考えていることを明かしていた。そして、Da-iCEのボーカルふたりがクロスすれば、数々のバンドにもダンスボーカルのグループが勝てる絵面が想像できるとも語っていた。

これだけを見ると、2020年8月から行なわれていた6ヶ月連続楽曲リリースの中で受けた影響をもとに、Da-iCEというグループがより魅力的に見えるため、バラードからロックまで幅広い楽曲を表現できることを示すためのアプローチのようにも見える。確かに「Kartell」では、今までの楽曲以上にボーカルの花村想太と大野雄大の掛け合いがフォーカスされており、ライブで盛り上がっている様子は想像に難くない。さらに力強いサウンドに乗った叫びにも似た感情たっぷりの声の出し方も非常にエモーショナルで、楽曲の輪郭を際立たせている。だが、真の制作意図としてはもっと深い意味がありそうだ。



実際、同曲のコンセプトに「長いモノに巻かれ思考停止に陥っていることへ警鐘を鳴らし、流れを淀ますモノに対する痛烈な批判を込めた宣戦布告とも取れる攻撃的な一面と、これまで積み上げてきた全てのことを信じ、希望に変えて突き進めというメッセージを込めた歌詞、そして、その世界観に呼応するように、激しく攻撃的でありながら、どこか心を奮わせるトラック」という文が含まれている。

さらに公式YouTubeチャンネルにアップされた「『Kartell』Music Video メイキング映像」の中でも、工藤は「世の中の理不尽みたいなのを突破していこうという気持ちを込めて、書かせていただきました」、「それ以外のところでも意思を持ってやりたい曲」と語っている。これらを総合して考えると、「Kartell」は「窮屈な社会に対するアンチテーゼ」が込められたクリティカルな楽曲だと言えるのではないだろうか。



特に歌詞をよく味わっていくと、様々な事象に対する主張が見えてくる。例えば、“段々と腐っては枯れる”から始まるBメロは、「アーティストに求められるものが増えすぎている現状」へのフラストレーションと彼らの反骨精神。今、アーティストは「いい曲を作る」、「いい演奏をする」、「いいパフォーマンスをする」だけでは成り立たなくなってきている。品行方正さ、抜かりない人間性、容姿、プロモーションの力……など様々なファクターが複雑に絡み合っており、それが正しく合致した時にだけ世に大きく羽ばたくことができている。もちろん音楽面以外の付随物があるに越したことはないが、そちらの要素が強くなりすぎて画一的になってしまっているとも言える。むしろ付随物の方がフォーカスされすぎてしまうえば、音楽性が今以上発展していくことはない。それに危機感を持ったDa-iCEたちの「この現状をそのままにしない」という決意も込められているように感じる。



そして、曲冒頭の“嘘くさい常識を並べて”から始まるAメロや、2コーラス目“安心安全な保証”から始まるBメロは、「多様性が叫ばれているにも関わらずSNSを中心に叩き合う風潮」への警告。昨今「多様性」「ダイバーシティ」という言葉が広がってきているにもかかわらず、自分と違う意見に対して噛み付く人が少なくない。相手の事情を知る努力もせずに自分が正しいと言わんばかりに言葉で攻撃する場面を度々目にするが、結局はその視野の狭さが自分の首を締めることになる。時代の変化がさらに激しくなっていけば通用しなくなる上に、「自分と違うモノ・意見は排除する」という考えが回り回って自分が支持する意見、ジャンル、人の進化を遅らせてしまうからだ。「戦うのではなく、敵も味方も巻き込んで議論をしていくべき」、そんな警告と提案のようにも見えてくる。

2コーラス目“いつまで経っても”以降のAメロは、「制限されたエンタメ活動」に対するもどかしさを嘆いているようだ。コロナ禍によってエンターテインメントの世界も今まで通りとはいかなくなった。徐々にライブや演劇などができるようにはなってきているが、もちろん制約も多い。定められているガイドラインですら二転三転することもあるため、思うようなエンターテインメントショーができないケースのほうが多いはずだ。エンターテインメントを求めている人はたしかにいるのに、ルールがうやむやな状態の今、求めている人に求められているものを提供することもままならなくなってしまっている。この歯がゆさともどかしさに溢れる日常を嘆いているのではないだろうか。

そして一番わかりやすのは、ストレートなワードで綴られているサビ部分。“蹴飛ばせ 忖度と不感症”からのパートで叫ばれている、「世の中にはびこる忖度」へアンチテーゼだ。世の中には、大なり小なり忖度がある。社会全体においてもそうだし、一企業で考えてもそうだ。「権力がある人には意見できない」、「間違っているとわかりつつも“被害を被るかも”と閉口する」、「損得勘定を考えての人付き合い」……そういったものが嫌になるほど溢れている。Da-iCEのメンバーたちももしかすると、エンターテインメントの世界や音楽業界で活動する中で、そういったものを感じているのかもしれない。次の10年で結果を出し、そのモヤモヤを取っ払っていく。そんな強い決意が込められているはずだ。

Da-iCEが「Kartell」で表明した決意とは、生きづらさ、窮屈さに負けず、長いモノに巻かれず、雑音を聞き入れず、Da-iCEとしての音楽を伝え続けて必ず結果を出す、ということなのだろう。さらに「Da-iCE」として世に出した曲ゆえ、作詞・作曲を担当した工藤だけでなくメンバー全体の総意のはずだ。……と、様々な事象と歌詞の関係性を考えてみたが、あくまでも予想の範疇を出ない。彼らの本当の胸の内はわからないが、Da-iCEが目指すべき姿を実現した時、ぜひこの曲の真意を明かしてほしい。10年間自分たちの思いをぶらさず努力を続けてきた彼らが、J-POPを代表する存在になり、その日が来ることを祈りたい。

■「Kartell」配信情報
https://Da-iCE.lnk.to/Kartell_DLSTR
▲「Kartell」ジャケット

◆Da-iCE オフィシャルサイト
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