【ライブレポート】ポップしなないで、底知れない表現力を垣間見せたワンマンライブ

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ポップしなないでが9月20日に自主企画ワンマンライブ<作戦会議>を東京・渋谷WWW Xで開催した。

◆ライブ写真

本公演は、2020年に発売された1stフルアルバム『上々』のツアーファイナルとなった東京・神田明神ホール公演以来、約半年ぶりのワンマンとなる。ポップしなないでにとって、大きな進化を見せたライブの様子をレポートする。

   ◆   ◆   ◆

季節は少し秋めいてきていた中、当日は夏を思わせる天気で汗ばむほどだったが、開演が近づくと会場にはセミの声と波の音。ライブハウスとは思えないSEに観客は少し困惑気味だったが、照明が落ちるとサンプリングされたセミの音が規則正しく流れ始め、それにシンセサイザーのリフが合わさる。


真っ赤な照明の中、正統派ハウスミュージックを思わせるクラブサウンドの中ポップしなないでのかめがいあやこ、かわむらが拍手とともに入場した。今までにないライブ演出の中、会場のテンションが高まったところでかめがいの伸びやかな声が特徴的な新曲「Sunset」が始まった。

打ち込みと生ドラムが交錯する、ポップしなないでの新境地ともいえる曲のアウトロからオケが加速していき、彼らにまつわる過去の楽曲、音声のサンプリング混じりのノイズの音量が最高潮に達して音が消失し、そこで夏の代表曲「夢見る熱帯夜」のイントロに突入した。


ノイズの中で入場していたのは津田とばり(G)、カワノアキ(B)。また、マニュピレーターのミツビシテツロウもステージ上にいる。5人バンドセットでの演奏は心地よく、疾走感あふれる楽曲を彩った。カラフルな照明の中で、メンバー紹介をし「We are ポップしなないで!」とかめがいが発し会場が1つになった。

続いてかめがいの理不尽なMCからの「前頭葉」では、彼らの特徴でもあるしゃべるようなラップを巧みに操り、確かな演奏力のバンドセットでパワフルな演奏をこれでもかと見せつけた。


その後、再びメンバーふたりとなり、宇宙を連想させるような青い照明の中、ドープなポエトリーが楽しめる「Life is walking」で、WWW Xというライブハウスの音響を最大限に生かし、ポップしなないでらしいバラエティに第一部ともいえるパートを終えた。

ここまで休みなく進めてきたふたり。かわむらは「作戦会議のための作戦が大変だった」と今日までを振り返り、「今日この景色を見るためだと思ったらどうでもよくなった」と満員の会場を見渡しながら語った。この状況の中で大きな規模に挑戦する彼らの決意が感じ取れたように思える。


MCが終わり「tempura」では、彼らが積み重ねてきた集大成のようなシンプルなサウンドに、どこか知らない不思議な世界の感情に想いを馳せるような歌詞で観客の感情をざわつかせる。白と黄色のライトにつつまれ、かめがいの「ダンス!」の掛け声のあとにはミラーボールがフロアを照らした。続く新曲「クラヤミライダー」は唐突なかわむらのドラムイントロからスタート。エキゾチックな空気と壮大なサウンドを披露し、彼らの底知れなさを思い知ることとなった。

ここからは「魔法使いのマキちゃん」「Creation」と人気曲が続いて、「お前らを救いにきたぜ!」から始まるライブの定番曲「救われ升」で締める流れは、古今のファンにもたまらなかっただろう。会場は拳をあげ、手を叩き、彼らとファンの一体感でつつまれた。バンドセットが入ってもなお、ふたりのみの演奏部分を作る彼らの地力を堪能できるセクションだった。


かわむらはMCで「コロナもあり、当時の仲間が辞めたり違うことを始めたりして、(音楽というフィールドから)いなくなってしまったり、俺たちだけがやってるのかな?という寂しい気持ちになってしまうこともあった。だけど結局みんなそれぞれの人生を頑張っているだけで、俺たちも俺たちのやっている事を見せてやりたいと思った」と語り、大切な音楽をただ作った結果の曲という「SG」を披露。

叙情的なライトに包まれた中に、かめがいの祈りにも似たボーカルで会場の雰囲気を一変させると、この日のために演出されたイントロからはじまったのは「フルーツサンドとポテサラ」。カラフルな照明の中、彼らが積み上げてきた“ピアノとドラム”のサウンドの強さを感じさせる人気曲で、第二部ともいえるパートが終わった。


ここでバンドメンバーが再度招集され、ライブハウスをチルな空気で包み込む「UFO surf」から、今までにないご機嫌なバンドサウンドにシニカルでリズミカルな歌が乗った新曲「city pops」が披露される。バンドサウンドでありながら、彼らの持つ楽曲の魅力が存分に発揮された新曲で、観客は思わず身体を揺らしていた。

続く「でも暮らし」は以前からライブでは演奏されていたが、カワノ(B)との3人編成となり、かめがいの歌の自由度が上がっているように思えた。彼らの強みは、ふたりしかいないことで逆に楽曲表現の自由度が高いことなのかもしれない。

再び津田(G)が入り、フルのバンドセットとなりはじまったのは最新のキラーチューン「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」。ダンサブルな演奏でライブはクライマックスを迎え、観客も一体となってそれを存分に楽しんでいた。


歪んだギターの中かめがいは「音楽をやっているとピュアなものに憧れて自分もそうありたいと思う。でも平気で嘘をついて生きていける自分がいる」「ステージの上だと嘘がつけない。丸裸で立っている。そういう場所ってすごく大事だと思っている」と続け、「見てくれるみんながいるから、ここに今日立てている。本当に感謝している」と語り、バンドセット最後の曲である「2人のサマー」が始まる。

ギターにかめがいとかわむらの声が重なっていき、少し季節外れで幻想的な夏の空気が渋谷WWW Xの中に充満する。やるせない感情を表すようなバンドが一体となった演奏とギターソロ後に、バンドメンバーがひとりずつ紹介され、退場していく。

最後に残ったかめがいは「記憶」を弾き語り、“We are ポップしなないで”と残しステージを後にした。


そして熱気の残る会場でアンコールに応じ出てきたふたりは新グッズの紹介をするとともに、かわむらのドラムロールに合わせ、ミニアルバム『美しく生きていたいだけ』を12月8日に発売すること、そしてリリースツアーを開催することを発表した。ツアーファイナルは東京・恵比寿リキッドルームというバンド史上最大のキャパシティとなるが、会場の観客は全員がそれを応援しているかのように拍手を送った。

アンコールでは最初期の楽曲「エレ樫」、そして「丑三キャットウォーク」でミラーボールが光る中会場を揺らし、鳴り止まぬ拍手の中ふたりは退場していった。


全体を通して、ポップしなないでが積み重ねてきた地力とサウンドに加え、ミュージシャンとしての底知れない表現力を垣間見ることとなったワンマンライブ。その魅力が詰まっているであろうミニアルバムの発売がとても楽しみとなる内容だった。


Photo by 稲垣 謙一

■公演情報

<ポップしなないでpresents『作戦会議』>
2021年9月20日(月)東京・渋谷WWW X
[セットリスト]
1.Sunset
2.夢見る熱帯夜
3.前頭葉
4.Life is walking
5.tempura
6.クラヤミライダー
7.魔法使いのマキちゃん
8.Creation
9.救われ升
10.SG
11.フルーツサンドとポテサラ
12.UFO surf
13.city pops
14.でも暮らし
15.支離滅裂に愛し愛されようじゃないか
16.2人のサマー
17.記憶
En.
18.エレ樫
19.丑三キャットウォーク

■<ポップしなないで「美しく生きていたいだけツアー」>

2022年
2月26日(土)福岡・UTERO
開場17:00 / 開演17:30

3月5日(土)仙台・spaceZero
開場17:00 / 開演17:30

3月12日(土)大阪・DROP
開場17:00 / 開演17:30

3月13日(日)名古屋・CLUB UPSET
開場17:00 / 開演17:30

3月27日(日)東京・LIQUIDROOM ※ワンマン
開場17:00 / 開演18:00
※東京以外は対バンあり

・チケット
東京以外:3,500円(+D代)
東京:4,000円(+D代)
https://eplus.jp/popsnnide/

・オフィシャル先行:9月20日(月・祝)20:00~10月3日(日)23:59
https://eplus.jp/popsnnide/

・プレオーダー先行:10月15日(金)18:00~10月31日(日)23:59
・一般発売:2022年1月29日(土)10:00~

※政府のガイドラインに基づき、お客様に安心してご来場いただけますよう開催準備を進めて参ります。
ご来場の皆様のご理解、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

◆ポップしなないで オフィシャルサイト
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