【インタビュー】平岡優也、新曲「H」で紡ぐ一途な想いと類稀なる音楽半生

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■運命の赤い糸が違う人に繋がっていたら…
■その糸を断ち切ってでも、自分が決めた人のもとへ行く


──「H」はどんな思いのもとに、いつ頃書かれた曲でしょう?

平岡:この楽曲を制作したのは、多分2年前くらいだと思います。新曲ではなくて、路上ライブとかライブハウスで歌ってきた曲ではあるんですよね。この曲を作るきっかけになったのはSNSに4コマ漫画を投稿している漫画家さんがいて、Twitter上ですごくバズッていた作品があったんです。それは、“運命の赤い糸”が見える世界だったら……ということを描いた作品だった。主人公の女の子の小指に赤い糸がついていて、赤い糸をどんどん辿っていったら自分が想っている人ではない人とつながっていたんです。でも、その人が運命の人なわけですよ。その漫画を見て、もし自分の指に赤い糸が見えていたとしても、自分がこの人が運命の人だと決めた人がいたら、その糸を断ち切ってでも僕はその人のところに行くなと思ったんです。「H」はそういうことを歌いたいなと思って書きました。タイトルを“H”にしたのは、アルファベットのHは小指と小指が赤い糸でつながっている状態に見えるなと思ったんです。

──心に染みるバラードであると同時に、“運命は自分の意志で変えられる”ということを歌ったメッセージ・ソングになっているのがすごくいいなと思います。楽曲自体は、どんなふうに作られましたか?

平岡:僕はバラードがすごく好きだし、ピアノ弾き語りはどうしてもバラードに寄ってしまうところがあって、気をつけるようにしているんです。でも、今回の「H」に関しては、もうドバラードでいきたいなと思って作りました。メロディー・ラインも、それを意識して考えましたね。

▲平岡優也/「H」

──曲を作るときはピアノを弾きながらメロディーを考えることが多いんですね?

平岡:そう。曲の作り方には、いろいろあると思うんですよ。いきなり降ってきたメロディーが元になったり、コード進行から入っていったり、詩先だったりとか。僕はピアノを触りながらメロディーを手探りで探して、音程だけじゃなくて、ここは小さい文字を入れたいとか、ここは音を伸ばしたい、逆にここは細かい符割にしたいというようなことを頭の中で感じ取って、それにハマる言葉を探したりします。いつも、そんな感じで曲を作っていますね。「H」のサビの出だしの“僕は”というところも“ラ~ララ~”というメロディーと譜割でいきたいなというのが最初からありました。

──メロディーと同時に楽曲のリズムも鳴っているんですね。

平岡:そうなんですかね? 自分ではわからない(笑)。

──やはり無意識ですか(笑)。音楽はメロディーとコード、リズムで成り立っていますので、リズムは本当に重要ですよね。ですので、メロディーと同時にリズムを感じているということからも鋭いセンスを持たれていることがわかります。

平岡:もしそうだとしたら、“イェ~イ!”という感じです(笑)。

──なんと言いますか……平岡さんには、ずっと変わらずにいてほしいです(笑)。話を「H」に戻しますが、ストリング・カルテットをあしらったアレンジも印象的です。

平岡:スタッフ・チームと今回の楽曲はどういう感じにしたいかなという話をしていて、僕はシンガーソングライターなので、やっぱりピアノと声で表現するというのが芯としてあるんですね。ただ、バンドみたいなボリューム感を出したいという憧れはあるんです。ドラムがいて、ベースがいて、ギターが鳴っていて…という。そういう形態のアレンジもイメージしたけど、いつもアレンジをお願いしているアレンジャーさんに、この楽曲は詩の世界観とかメロディーに強いものがあるから、変にゴチャゴチャ音を入れるアレンジはしなくていいんじゃないかなという意見をいただいたんです。それで、ピアノとストリングスという編成でいくことにしました。

──たしかに、リズム・セクションを入れて、オーケストラを鳴らすようなアレンジでも成立する曲だと思いますが、ピアノとストリングス・カルテットのみというコンパクトなスケール感が心地いいです。

平岡:ありがとうございます。アレンジャーさんが喜ぶと思います。

──それに、「H」はなんといってもボーカルが聴きどころです。大きなビブラートをかけたりしていないのに決して平坦な歌ではなくて、強く響く歌になっていますね。

平岡:本当ですか? 僕自身はやっぱりビブラートはあったほうがいいと思っていて、最近はレコーディングとかをするときにビブラートを意識したり、歌のディレクションをしてくださる方に、ここはビブラートをかけたほうがいいよねと言われてかけることが多いんです。

──完全なノン・ビブラートというわけではないですよね。でも、あまりビブラートをかけていないのにこの聴き応えということからは、平岡さんの歌唱力や表現力の高さがうかがえます。

平岡:……。

──あれっ? そんなことないですか?

平岡:いや、そうだとしたら嬉しいなと思って(笑)。なんて言うんだろう……僕の場合は、歌を歌うという感覚ではないんじゃないかなという気もしているんです。さっきも話したように、僕の活動の中ではストリート・ライブが大きなものになっているんですね。路上というのは本当に不思議な場所で、僕のことを全く知らないし、僕に興味も持たない人が大勢歩いているわけですよ。そこで、僕が誰かのカバーの曲を歌ったとしたら、その曲は街を歩いている人の人生を大きく支えている1曲だったりするんですよね。それで、いろんな人が足を止めてくれて、さっきまでお互いに知らない同士だった関係性が変わる。僕は歌うときにいろんな人の顔を見ながら歌うのが好きで、いつもそうしているんです。そうすると、今日という日がこの人にとってどんな1日だったかはわからないけど、僕の歌で足を止めてくれて、よかったよと言ってくれるのがすごく嬉しいんです。僕が発信したものを受け取ってくれる、感じ取ってくれるというのは凄いことだなと思っていて、そうすると歌を歌うというよりは言葉を届けるという感覚が強くなるんですよね。だから、僕の技術不足かもしれないけど、ビブラートだったり、テクニックといったことはあまり意識せずに歌っているのかなという気がします。

──ナチュラルな状態でリスナーの心に響く歌を歌えるわけですし、独自のスタイルになっていますから、それでいいと思います。

平岡:本当ですか? 嬉しいです。生まれてきて、よかった(笑)。親に感謝だなと、あらためて思いますね。

──“歌う”ということを選択されて、本当によかったです。もうひとつ、「H」はMVも作られたんですよね。

平岡:作らせていただきました。MVもスタッフ・チームと話し合って、ドラマ仕立てのもの……俳優さんや女優さんが出ていて、ストーリー性があって……というようなものよりは、自然体な感じのものがいいんじゃないかということになったんです。それで、レコーディング・スタジオでレコーディングしている風景みたいなものにして、そこに「H」で実際に弦を弾かれている方達を入れて撮ることにしました。ウッド調のスタジオを使っていて、柔らかい感じのMVになりましたね。


──落ち着いた雰囲気の映像が楽曲にマッチしていますし、平岡さんのナチュラルな表情やピアノを弾きながら歌っている姿なども見ることができて必見です。さて、「H」はMVも含めてより多くのリスナーを魅了することを予感させるシングルに仕上がりました。今後の活動も本当に楽しみです。

平岡:がんばります。今後の動きとしては、コロナ禍で中々厳しいですが、有観客ライブやオンライン・ライブの出演予定があるので是非、観ていただければと思います。あとは今、作品作りに力を入れていて、その作品を携えて全国をまわりたいというのはありますね。それに、ストリート・ライブも、もう人が集まり過ぎて無理ですという状態になるまで続けたいというのがあって。地元秋田や東北を始めとして、それこそ全国でやっていきたいと思っています。僕の中には自分の足でまわって、自分の生の歌で届けていきたいなという気持ちがあるんですよ。なので、平岡優也が近くにいったときは、ぜひ会いにきてほしいです。

取材・文◎村上孝之

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