【インタビュー】ラッパーデビューを果たした“めだか専門家”青木氏が語る「福祉と新しいエンタメ」

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悪役キャラクター然とした仮面を被り、10月1日に「めだか達への伝言 feat.MIMORI(kolme)」でCDデビューを果たした異色のアーティスト、medakaya.com。

◆MV/撮り下ろし画像

改良メダカを日本に普及させ、日本初のめだか総合情報サイト「めだかやドットコム」を立ち上げ、「めだか×福祉」という革新的な福祉事業を展開させてきた青木崇浩氏は、なぜ今回medakaya.comとして自ら歌詞を書き、マイクを握ることになったのか。壮絶な体験を前進する力に変え、音楽/エンターテイメントの可能性を信じて作り上げた今作に込められた思いを訊いた。

   ◆   ◆   ◆

■自分のやっていることが世の中に広まっていくには
■歌や音楽など、エンターテイメントの力というのが必要


──お伺いしたいことは山のようにあるんですが(笑)、まずは、medakaya.comって何者?というところからお聞きしたいと思います。

medakaya.com:僕はめだかの専門家であり、医療福祉分野の事業主でもあります。まずこの“福祉”ですが、どうしても“堅い”みたいなイメージがありますよね。障害福祉には精神と知的と身体とあって、うちには精神障害の若者がいっぱいいるんですが、そもそもイメージとして暗いとかがあるから、社会復帰どころか引きこもりになっちゃう人も多かったりするんです。僕はそのイメージを変えたいと思っていますし、お涙頂戴ではなく、強い福祉をやっています。

──強い福祉とは?

medakaya.com:人に恵んでもらうのではなく、自分自身に力をつけること。そのためにも、僕はうちに来る子たちに“チャレンジする姿を見せること”が大事だなと考えているんです。言葉でああだこうだと言うだけではなく、仕事を頑張っていく姿勢やチャレンジする姿を実際に見せて、成功するだけじゃなく、失敗する姿も堂々と見せる。その子たちが力をつけ、どんどん社会に出ていくことが僕に求められた使命だと考えています。僕はめだかにおいても福祉においても自分の目指す分野で一番をとってきたと自負しています。ですから極端な話、今回のこの歌も中途半端な気持ちではなく必ず一番を獲っていくという気持ちがあります。

──10月1日にデビューシングル「めだか達への伝言 feat.MIMORI(kolme)」をリリースされるわけですが、このmedakaya.comというアーティスト名に関してはどんな由来があるのでしょうか。

medakaya.com:もともと、2004年に「medakaya.com」というホームページのサイトを作ったんです。金魚や鯉というのはすでにペットとして認知されていたんですが、めだかというのは当時まだマーケットがなかったんですね。めだかの専門的な情報サイトもなかったので、それまで自分でめだかを育てながら取り溜めていた情報を、「medakaya.com」という形にしました。そこからめだかブームとなり、金魚や鯉というアクアリウムの世界でもめだかだけが飛び抜け、今やペット市場で「犬・猫・めだか」になるくらい市場が大きくなりました。「medakaya.com」は、その大きなめだかブームの原点でもあるんです。



──今回はエイベックスから音源のリリースだけでなく、青木さんが開発された「水替えなし・エアレーションなし・臭いなし」という「生物濾過水槽システム」に、エイベックスがエンタテインメントの世界で培ってきた音や光の演出を融合させた進化系アクアリウムブランド「NIWA(庭)」というプロジェクトも立ち上がっているんですよね。

medakaya.com:はい。障害福祉、若い子たちの就労支援事業の中でめだかを育て、育てたものを販売し、その収益の全てを彼らに渡しているんです。障害福祉というと、1個1円の仕事を朝から晩までやって、微々たるお金を分配するようなイメージがあるかもしれませんが、僕は“作業から思考へ”という考えでやっています。みんなで考えて、いいものを作って、堂々と売る。障害者が作ったから100円で買ってくださいではなく、欲しいという人に適価で売る。そういう強い福祉を作るんだという思いがあって、僕はめだかでブランディングをし、分配するお金としてもどこにも負けないようにやってきました。今回エイベックスさんと新しい商品を作ったのも、そのためのひとつです。それが売れていけば、彼らが社会復帰するためのお金として使われますから。

▲次世代型水槽「行燈(ANDON)」

──そういうことなんですね。

medakaya.com:僕は自分の「自然浄化水槽」がアクアリウムでは日本一だと思っているのですが、この技術も広まらなければなんの価値もないんです。多くの人に僕の「NIWA」というものを見て、感じて、楽しんでもらいたい。そのためには、エンタメ性というものも非常に大切なんです。世の中に周知をさせるためには。

──もともと、エンタメの世界には興味があったんですか?

medakaya.com:興味がなかったと言ったら嘘になりますが、歌手になってみんなの前で歌を歌いたいとか、そういう夢を持っていたわけではないんです。僕が最も好きなのは、実は福祉でもめだかでもなく、経営なんですね。学生時代から学んできましたし、アメリカで勉強もしました。一番好きだし得意だと思っています。それをただ単に金稼ぎという意味ではなく、社会的に、自分のやっていることがどれだけ世の中に広まっていくのかという風に捉えた時に、歌や音楽など、エンターテイメントの力というのが必要だと思っているんです。エンターテイメントは、人間が生活する上でなくてはならないものだと思っています。なんのために仕事を頑張るのかというと、人によっては好きなアーティストのコンサートに行くためだったり、いろんな音楽を聴くためだったりしますよね。だから仕事も頑張れるし、将来に向けてやっていける。生きる上で大事なのは、衣食住だけではない。絶対に、エンターテイメントが必要だと思っているんです。そういう意味で、僕はエンターテイメントをとてもリスペクトしているんですよね。もちろん、音楽は大好きです。趣味で少しギターを弾いたりもしています。

──では、今回の楽曲でラップというスタイルを選ばれたのはどうしてだったんでしょうか。

medakaya.com:会社で、毎朝ズームを使って全体の会議をするんですね。その時に、自分で作ったラップを職員に向けて歌っているんです(笑)。

──会議でラップ!

medakaya.com:後ろで流れるビートが聴こえてくるとみんな「またかよ」みたいな顔をするんだけど(笑)、僕は、言葉って心に突き刺さってナンボだと思っているんですよ。その方法論として、僕はラップほど素晴らしいものはないと思っています。学校の先生の話が全然面白くなかったみたいに、ただ普通に喋ると流れていっちゃうようなことでも、伝えたいこと、自分の思いをビートに合わせて自分の言葉でラップすると、聞こうとしてくれるし意外と頭に残っていくんですよ。人に物事を伝える武器として最高なんだぜ!と僕は思っているから、うちの若い職員にもやらせているんですけどね。ビート流して「はい、フリースタイル」って(笑)。パワハラじゃないですよ(笑)。

──すみません、結構ギリギリではないかと……(笑)。

medakaya.com:(笑)。でも大丈夫ですよ。うち、離職率はすごく低いですから(笑)。

──ちなみに、好きなラッパーとか憧れのアーティストの方はいらっしゃるんですか?

medakaya.com:僕らの世代はもう、Dragon Ashですよ。Kjです。音楽はもちろんですけど、とにかくかっこいいじゃないですか。娘がまだ小さい頃に(ふざけて)「パパはDragon Ashなんだよ」って言っていたら、それを幼稚園で話ちゃったらしく、先生から電話がかかってきたこともありました(笑)。


──それくらいお好きだったと(笑)。

medakaya.com:(笑)。こうしてCDを出すとか、音楽をやること自体が勇気を振り絞ることだし、自分の中ではすごくチャレンジです。世の中に出せば当然批判にも晒されるでしょうが、そんなの怖がっていません。その、僕がやる姿というものを見せたいという思いがありますから。

──冒頭のお話にもあったように。

medakaya.com:はい。今僕は小学校でめだかの講演もやっているんですが、その時にも歌を歌ったりしているんですよ。なぜかというと、こういう格好で入っていって歌ったら、みんな夢中になるんです。そこで、伝えたいことを講義で言う。するとみんな、頭に入るんですよ。

──動画で拝見しましたが、教室に入った時の「きゃー!」って言う驚きの声が可愛かったですよね。

medakaya.com:そうそう。でも結局それでみんな僕に興味を持って、話を聞こうとするわけです。

──かなり"悪役"感が漂う仮面ですが、このスタイルにしたのはどういう意図があったんですか?

medakaya.com:福祉をやっていると、「すごいですね」とか「偉い」とか言われることがよくあるんですが、すごく違和感があるんです。僕は公的な仕事もしていますが、みんなと同じように酒もタバコも大好きだし、金も欲しいし欲も深い。同じなんですよ。人間、みんな変わらない。今回の、ミュージックビデオの中で、最初はポイ捨てをしている人を注意したりしているんですが、最後にはあえて、自分でもゴミをそのままにして立ち去るというシーンがあるんです。それって、人間らしいなと思うんですよ。人間の本質。この仮面は、その象徴なんです。誰もがそういう部分を持っている。でもその上で、偽善でもなんでもいいから、ひとつくらいいいことしようぜって思うんです。たったひとつゴミを拾うだけでもいいんですよ。やれることをやる、それを福祉と言うんだと。誰も彼も、偉いも何もない。とにかくやってみようぜ、そしたら社会は良くなるよっていう思いを表しているんです。

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