【インタビュー】村田隆行、凄腕18名参加の初ソロアルバムに「テクニカルながら、そうとは聴こえないポップなベース」

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■スラップに惹かれる理由もパーカッシヴなところ
■32分音符を入れたりするのが自分にとって自然

──もちろん参加されたみなさんの熱さもあると思いますが、村田さんの楽曲そのものが、それぞれのアーティストの心に火を点けたということも大きく作用しているような気がします。『The Smiling Music』は楽曲がバラエティーに富んでいることもポイントで、たとえばインド風味が香る「Taj Mahal's Lunar Eclipse」は病みつき感のある1曲に仕上がっていますね。

村田:僕はインド調の音楽が昔から好きで、他のアーティストさんに提供した楽曲でも、そういうテイストのものが何曲かあるんですよ。それに、僕のファンの方々の多くはこの手の曲を好んでくれるんですね。だったら、今の感性でインド調を形にしようと思って作ったのが「Taj Mahal's Lunar Eclipse」です。ある意味、少しプログレっぽいですよね。

──音楽の形態以前に、スピリチュアルの部分でぶっ飛んでる感があります(笑)。

村田:そのとおりだと思います(笑)。僕がインド風味のある曲を作り出したのは10年前くらいからなんですけど、それにはきっかけがあって。『グレートインディア』という都内のインドカレー屋さんが好きでよく通っていたんですけど、店内にめちゃくちゃカッコいいBGMが流れているんですよ。ヒップホップやドラムンベースにインドテイストを融合させたものなんですけど、調べてみたら、インドのダンスミュージックで。それに感銘を受けて、インド音階やシタールを押し出したりするパターンではない形で、インドのエッセンスを採り入れた音楽を作りたいと思うようになったんです。それを試行錯誤していく中で、16分とか32分音符といった細かいビート感で埋めていくと、それっぽい世界観が作れることに気づいたんです。「Taj Mahal's Lunar Eclipse」もそういうリズムアレンジを活かしているし、そこにフルートを入れたということも、面白さを生んだかなと思います。


──そのフルートが摩訶不思議なメロディーを奏でていて、素晴らしいセンスだと思いました。

村田:音楽をやっていると、自分の前世はインドだったり、アフリカだったり、ジャマイカだったり、北欧だったんじゃないかなと感じることが多いんですよ。僕はブラックファンクミュージックからベーシストを志した人間なので、ジャマイカのグルーヴとかが大好きなんですけど、素の状態でできるのはインドっぽいものなんです。それに、思い返してみると音楽を始めた頃、CDショップに行ってガムランミュージックとかタブラだけが40分くらい鳴っている作品をよく買っていたんですね。だから、そういうことなのかなと勝手に思っています。

──おそらく、昔インドにいたことがあるのでしょう。

村田:ベースのスラップに惹かれる理由もパーカッシヴなところなんですよ。突然32分音符を入れたりするのが自分の中ではすごく自然で、たぶんそういうことなんだと解釈しています。あと、「Taj Mahal's Lunar Eclipse」はもうひとつ面白いところがあるんですね。トランペットとエレキピアノのソロ回しを入れたかったので、白井君に「エレピソロを適当に入れてほしい」とお願いしたんです。そうしたら、彼はちょうどツアーが重なっていて、大変なスケジュールの中、夜中の3時くらいにデータがきたんです。本当にヘロヘロだったらしくて、弾き直すつもりで仮ソロを入れて送ってくれたようなんけど、それが抜群だったので、「そのまま活かそうよ」と。「本当にこれでいいんですか?」と言ってましたけど、聴いていただくとわかるように、最高ですよね。トランペットの村田千紘さんはジャズの人で、一緒にライブをしていても、いつもなにかが降臨してるというか、ちょっと違うところにいるんですよ(笑)。マイルス・デイヴィスを神と崇めている人で、「Taj Mahal's Lunar Eclipse」のトランペットも独特の空気感がありますよね。白井君がガンガンいっている一方で、トランペットはどこかフワッとしている(笑)。その対比が面白いと思っています。



──面と向かって会話をしているのに、話が噛み合っていないようなふたりの空気感が絶妙です(笑)。続いて、ベースだけで深みのある世界を構築している「Play Alone」。

村田:この曲は3本のベースが鳴っていますけど、母体になっているハイポジションのアルペジオベースとコード弾きの2本だけで世界を作っているんですね。もう1本はハーモニクスとか味つけ程度なんです。「ギターを弾いたの?」と言われることがあるんですけど、もちろんベースのみ。しかも、別に6弦ベースとかではなくて、ワーウィックの4弦ベースです。

──意外です。

村田:僕はジョン・パティトゥッチとかの6弦スタイルも好きなんです、あのレベルには全然近づけないですけどね(笑)。でも、楽曲制作やアレンジ、ベーススタイルといったものを全部ひっくるめて一番惹かれるのは、やっぱりマーカス・ミラーなんです。彼とは19歳のときに知り合って、来日するたびにお手伝いをさせてもらっていたり、4年くらい前にステージに上げてもらえたり、本当に彼からいろんなエッセンスをもらっているんです。マーカスさんは全て4弦ベースでプレイするじゃないですか。それがすごくカッコいいし、フェンダーのジャズベースでオーソドックスなベース表現の完成形を提示していると思うんですよ。タッピングとか派手なプレイを入れ込むわけじゃなく、メロディーを弾いて、そこに必要なノートを入れる。

──わかります。

村田:マーカスさんとオフの日に一緒に出かけたことがあるんですけど、そのときに楽器屋に寄ったら、鍵盤からなにからいろんな楽器を遊ぶように弾いて、それが全部パーフェクト。だけど、いわゆるマルチプレイヤーの音楽的なハーモニーの考え方を元に、シンプルな4弦ベースでパフォーマンスしていると思うんです。あのベースのトーンに自分は影響を受けていて。だからこそ、僕は「Play Alone」のような曲でも、6弦ベースのハイCを使おうという考え方にはいかない。「Play Alone」ではアクティヴピックアップのEMGが載っているワーウィックを使っていて、それがアコギっぽいジャリンとした感じを生んでいるんです。

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